看多機の訪問体制強化加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の訪問体制強化加算は、1月につき1,000単位です。要件は2つだけで、うち1つは「延べ訪問回数が1月あたり200回以上」という明確な数値基準になっています。
見落とされやすいのが人員側の要件です。常勤2名以上の配置が求められますが、その数から保健師・看護師・准看護師・PT・OT・STは除かれます。看護職員が何人いても、この要件の頭数には入りません。看護を内包する看多機だからこそ入っている限定で、小規模多機能型居宅介護にはないものです。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のソと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第78号の2の原文を確認して整理しました。
- 訪問体制強化加算1,000単位の算定要件
- 常勤2名以上から看護職・リハ職が除かれること
- 延べ訪問回数200回以上という数値要件
- この「訪問回数」に看護サービスが含まれないこと
- 集合住宅を併設する場合の特例(50%要件)
- 小規模多機能型居宅介護の同名加算との違い
- 過少サービス減算の「訪問」との数え方の違い
- 200回を安定して超えるための考え方
ちびウルフ月200回って、けっこうな数ですよね。看護師の訪問も数に入れられるんですか?
リハウルフ入りません。条文の訪問サービスは「看護サービスを除く」と定義されています。つまりこの加算が数えているのは、介護職員による訪問だけ。看護の実績は看護体制強化加算が、介護の訪問はこの加算が評価するという分業になっています。
看多機の訪問体制強化加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の訪問体制強化加算は、登録者の在宅生活を続けるために、訪問サービスの提供体制を強化した事業所を評価する加算です。告示126号 複合型サービス費のソに規定されています。
看多機は通い・訪問・泊まりを組み合わせるサービスですが、運営上は通いに偏りやすい構造があります。通いは1か所に集めて支援できるため効率がよく、訪問は移動時間がかかるからです。包括報酬なので、訪問を増やしても報酬は変わりません。
放っておけば通いに寄っていく。しかし在宅生活を支えるには、自宅に出向く支援が欠かせません。この加算は、その構造的な偏りに対して報酬面から歯止めをかけるものです。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。
訪問体制強化加算の単位数
ソ 訪問体制強化加算 1,000単位
注 イについては、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所が、登録者の居宅における生活を継続するための指定看護小規模多機能型居宅介護の提供体制を強化した場合は、訪問体制強化加算として、1月につき所定単位数を加算する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 1,000単位 |
| 算定頻度 | 1月につき |
| 対象 | イ(看護小規模多機能型居宅介護費) |
| 届出 | 市町村長への届出が必要 |
基本報酬に対する比率
| 要介護度 | 基本報酬 | 加算を加えた場合 | 上乗せ率 |
|---|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | 13,447単位 | 約8.0% |
| 要介護3 | 24,481単位 | 25,481単位 | 約4.1% |
| 要介護5 | 31,408単位 | 32,408単位 | 約3.2% |
登録者全員に算定できる加算なので、登録者25人なら月25,000単位(約25万円)の増収になります。要件を満たせるかどうかで、事業所の収支が明確に変わる規模です。
訪問体制強化加算の算定要件
七十八の二 看護小規模多機能型居宅介護費における訪問体制強化加算の基準
次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
イ 指定看護小規模多機能型居宅介護事業所が提供する訪問サービス(略、看護サービスを除く。)の提供に当たる常勤の従業者(保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士を除く。)を二名以上配置していること。
ロ 算定日が属する月における提供回数について、当該指定看護小規模多機能型居宅介護事業所における延べ訪問回数が一月当たり二百回以上であること。ただし、(略)同一建物に集合住宅を併設する場合は、登録者の総数のうち複合型サービス費のイ(1)を算定する者の占める割合が百分の五十以上であって、かつ、イ(1)を算定する登録者に対する延べ訪問回数が一月当たり二百回以上であること。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| イ 人員 | 訪問サービスの提供に当たる常勤の従業者を2名以上配置(保健師・看護師・准看護師・PT・OT・STを除く) |
| ロ 実績 | 算定日が属する月の延べ訪問回数が200回以上 |
人員要件から6職種が除かれる
イの「常勤の従業者2名以上」は、保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を除いて数えます。実質的には介護職員2名以上ということです。
- 看護師が訪問しているから人員要件を満たしている → 満たさない
- 訪問看護に力を入れているから訪問回数も足りている → 看護サービスは回数に入らない
- 常勤換算で2.0あればよい → 条文は「常勤の従業者を二名以上」
看多機は看護職員の配置が手厚いサービスですが、この加算に関しては看護職員が何人いても要件充足に寄与しません。介護職員の常勤2名を確保できているかを、まず確認してください。
訪問回数に看護サービスは含まれない
ロの「訪問サービス」も、イと同じ定義(看護サービスを除く)です。数えるのは介護職員等による訪問だけ。訪問看護の回数を積んでも200回には届きません。
| 訪問の種類 | 200回に数えるか |
|---|---|
| 介護職員による訪問(安否確認・食事介助・排泄介助など) | 数える |
| 看護職員による看護サービスの訪問 | 数えない |
| PT・OT・STによる訪問 | 条文の除外は人員要件の職種列挙。訪問回数側の定義は「看護サービスを除く訪問サービス」であり、取扱いは市町村に確認 |
200回はどれくらいの水準か
| 登録者数 | 1人あたりの月間訪問回数 | 1人あたりの週間訪問回数 |
|---|---|---|
| 20人 | 10回 | 約2.3回 |
| 25人 | 8回 | 約1.8回 |
| 29人(定員上限) | 約6.9回 | 約1.6回 |
登録者25人なら1人あたり週2回弱の訪問です。短時間の安否確認も1回として数えられるため、届かない水準ではありません。ただし通い中心の運営をしている事業所には、意識的な組み替えが必要になります。
集合住宅を併設する場合の特例
ロのただし書きは、事業所と同一建物に集合住宅(養護老人ホーム・軽費老人ホーム・有料老人ホーム・登録を受けたサービス付き高齢者向け住宅)を併設する場合の別基準です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① | 登録者の総数のうち、イ(1)=同一建物に居住する者以外を算定する者の割合が50%以上 |
| ② | イ(1)を算定する登録者に対する延べ訪問回数が1月あたり200回以上 |
併設の集合住宅の入居者ばかりを登録して、同じ建物内の移動を訪問回数として積み上げる。その運用を封じるための規定です。外部に住む登録者が半数以上いること、そしてその方々への訪問だけで200回に達することが求められます。
小規模多機能型居宅介護との違い
| 項目 | 看多機(第78号の2) | 小多機(第55号) |
|---|---|---|
| 単位数 | 1,000単位 | 1,000単位 |
| 常勤の従業者 | 2名以上(保健師・看護師・准看護師・PT・OT・STを除く) | 2名以上(職種の除外なし) |
| 訪問サービスの定義 | 看護サービスを除く | 除外の定めなし |
| 延べ訪問回数 | 200回以上 | 200回以上 |
| 集合住宅併設の特例 | あり(50%以上+200回) | あり(同じ) |
単位数も回数基準も同じですが、看多機だけ職種と看護サービスの除外が入っています。看護を内包するサービスであるがゆえに、「看護で数を稼ぐ」ことができないよう設計されているわけです。
小多機から看多機に転換した事業所は、ここで要件を落とすことがあります。小多機のときは満たせていた200回が、看護サービスを除いた途端に届かなくなる。転換時には必ず確認してください。
過少サービス減算の「訪問」とは数え方が違う
| 規定 | 数える対象 | 基準 |
|---|---|---|
| 訪問体制強化加算 | 訪問サービス(看護サービスを除く) | 延べ200回以上/月 |
| 過少サービス減算(注7) | 通いサービス+訪問サービス+宿泊サービス | 週平均1回未満、または登録者1人当たり週4回未満で70%算定 |
同じ「訪問」という言葉でも、加算と減算で数え方が違います。過少サービス減算は通い・泊まりも合算しますが、訪問体制強化加算は訪問だけ、しかも看護を除きます。集計表を1つで済ませようとすると混乱するので、別々に集計してください。
訪問体制強化加算の注意点
判定は「算定日が属する月」
ロは「算定日が属する月における提供回数」です。前3月間の平均ではなく、その月の実績で判定します。月ごとに変動するため、月末の集計で200回に届いているかを確認する運用が要ります。
担当したケースでも、年末年始やお盆で訪問回数が落ち、その月だけ200回を切ったという話を聞いたことがあります。休みが多い月ほど注意が必要です。
「常勤」の判断
条文は「常勤の従業者を二名以上」です。常勤換算ではありません。常勤の定義は指定地域密着型サービス基準によりますが、兼務の扱いなど具体的な判断は市町村の取扱いを確認してください。
1回の訪問の定義
告示は訪問の時間や内容による区別を設けていません。短時間の安否確認も1回として数えられると読めます。ただし取扱いは市町村によって異なる可能性があるため、確認してください。
短期利用居宅介護費には加算されない
ソの注は「イについては」と書かれています。対象は看護小規模多機能型居宅介護費であり、短期利用居宅介護費には加算されません。
- 介護職員の常勤者が2名以上いるか確認する(看護職・リハ職は除く)
- 訪問記録から、看護サービスを除いた訪問だけを抽出する集計表を作る
- 直近数か月の延べ訪問回数を集計し、200回との差を把握する
- 通いに偏っている登録者について、訪問への振り替えを計画に反映する
- 月末に集計し、200回に届いているかを確認してから請求する
よくある質問
看多機の訪問体制強化加算はいくらですか?
1月につき1,000単位です。
算定要件は何ですか?
訪問サービスの提供に当たる常勤の従業者を2名以上配置していること、算定日が属する月の延べ訪問回数が200回以上であることの2つです。
常勤2名に看護師は含められますか?
含められません。保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は除いて数えます。
訪問看護の回数は200回に数えられますか?
数えられません。条文の訪問サービスは「看護サービスを除く」と定義されています。
常勤換算で2.0あればよいですか?
条文は「常勤の従業者を二名以上」です。常勤換算ではありません。
判定期間はいつですか?
算定日が属する月です。前3月間の平均ではなく、その月の実績で判定します。
短時間の訪問も1回に数えますか?
告示に時間や内容による区別の定めはありません。取扱いは市町村に確認してください。
集合住宅を併設している場合は?
登録者の総数のうち同一建物以外の者が50%以上であり、かつその方々への延べ訪問回数が200回以上であることが要件になります。
小多機の同名加算と違いはありますか?
単位数と200回という基準は同じですが、看多機だけ人員要件から6職種が除かれ、訪問サービスから看護サービスが除かれます。
小多機から転換した場合の注意点は?
小多機では満たせていた200回が、看護サービスを除いた集計では届かなくなることがあります。転換時に必ず確認してください。
過少サービス減算の訪問回数と同じですか?
違います。過少サービス減算は通い・訪問・宿泊の合計で判定し、看護サービスの除外もありません。
短期利用の利用者にも算定できますか?
できません。ソの注は「イについては」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。
- 看多機の訪問体制強化加算は1月につき1,000単位
- 対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)で、短期利用は対象外
- 要件は人員(常勤2名以上)と実績(延べ訪問回数200回以上)の2つ
- 常勤2名から保健師・看護師・准看護師・PT・OT・STは除かれる
- 実質的に介護職員の常勤2名以上が必要
- 常勤換算ではなく、常勤の従業者が2名以上
- 200回に数える訪問サービスからは看護サービスが除かれる
- 判定は前3月間の平均ではなく、算定日が属する月の実績
- 登録者25人なら1人あたり週2回弱の訪問で200回に届く
- 集合住宅を併設する場合は、同一建物以外の登録者50%以上+その方々への200回が要件
- 併設住宅の入居者だけで回数を積む運用を封じる規定になっている
- 小多機の同名加算には職種・看護サービスの除外がない
- 小多機から転換した事業所は要件を落とすことがある
- 過少サービス減算の「訪問」とは数え方が違うため、集計は別にする
- 登録者全員に算定できるため、25人規模なら月25,000単位の差になる
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ソ、イ、注7(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第78号の2(看護小規模多機能型居宅介護費における訪問体制強化加算の基準)、第55号(小規模多機能型居宅介護費における同加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第171条第1項(訪問サービス)、第177条第10号(看護サービス)(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに1回の訪問として数えられる範囲(時間・内容)、理学療法士等による訪問の取扱い、「常勤」の判断や兼務の扱い、月途中で要件を満たさなくなった場合の取扱いについては告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




