看多機の口腔機能向上加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の口腔機能向上加算は、(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)160単位です。3月以内の期間に限り、1月に2回を限度として1回につき算定します。
数字の並びに違和感を覚えるかもしれません。(Ⅱ)のほうが(Ⅰ)より10単位高いのです。要件が上乗せされる区分が下に来ているわけで、他の加算の感覚で「(Ⅰ)が上位」と思い込むと取り違えます。(Ⅱ)は(Ⅰ)の全要件にLIFEへの提出と活用を加えたものです。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のヌと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第75号の2・第20号の原文を確認して整理しました。
- 口腔機能向上加算(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)160単位の違い
- (Ⅱ)のほうが高い理由
- 言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員のいずれか1名以上という配置要件
- 看多機は看護職員の配置により要件を満たしやすいこと
- 3月を超えて継続算定できる条件
- 口腔・栄養スクリーニング加算との連動
- 口腔機能改善管理指導計画の作成・実施・評価の流れ
- 栄養改善加算との併算定の考え方
ちびウルフ言語聴覚士か歯科衛生士がいないと無理ですよね。看多機だと厳しいのでは。
リハウルフそこが看多機の強みです。条文は「言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員を一名以上配置していること」。看護職員でよいのです。看多機は看護職員の配置が必須なので、この要件は最初から満たしている事業所がほとんどです。
看多機の口腔機能向上加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の口腔機能向上加算は、口腔機能が低下している利用者やそのおそれのある利用者に対して、口腔清掃の指導・実施や摂食・嚥下機能の訓練を個別に行った場合に算定する加算です。告示126号 複合型サービス費のヌに規定されています。
口腔機能の低下は、食べられなくなることに直結します。噛めない、飲み込みにくい、口の中が汚れている。これらは低栄養、誤嚥性肺炎、そして在宅生活の継続困難へと連鎖していきます。
この加算は、その連鎖の入口で手を打つことを評価するものです。口腔・栄養スクリーニング加算が「気づく」段階を、この加算は「個別に介入する」段階を受け持ちます。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。
口腔機能向上加算の単位数
ヌ 口腔機能向上加算
注 イについて、(略)届出を行い、かつ、口腔機能が低下している利用者又はそのおそれのある利用者に対して、口腔機能の向上を目的として、個別的に実施される口腔清掃の指導若しくは実施又は摂食・嚥下機能に関する訓練の指導若しくは実施(略)を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、3月以内の期間に限り1月に2回を限度として1回につき次に掲げる所定単位数を加算する。(略)また、口腔機能向上サービスの開始から3月ごとの利用者の口腔機能の評価の結果、口腔機能が向上せず、口腔機能向上サービスを引き続き行うことが必要と認められる利用者については、引き続き算定することができる。
(1) 口腔機能向上加算(Ⅰ) 150単位
(2) 口腔機能向上加算(Ⅱ) 160単位
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 | LIFEへの提出 |
|---|---|---|---|
| 口腔機能向上加算(Ⅰ) | 150単位 | 1回につき、1月に2回を限度 | 不要 |
| 口腔機能向上加算(Ⅱ) | 160単位 | 同上 | 必要 |
条文は「ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない」としており、(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定はできません。
3月分をフルに算定した場合
| 区分 | 1月あたり(2回) | 3月合計(6回) |
|---|---|---|
| (Ⅰ)150単位 | 300単位 | 900単位 |
| (Ⅱ)160単位 | 320単位 | 960単位 |
差は3月で60単位です。LIFEへの提出体制がすでにある事業所なら、(Ⅱ)を選ばない理由はありません。科学的介護推進体制加算を算定している看多機であれば、提出の仕組み自体は動いているはずです。
口腔機能向上加算の算定要件
告示95号 第75号の2は第20号を準用しています(「通所介護費等算定方法第1号」を「第11号」と読み替え)。
(Ⅰ)150単位の5要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) 職種の配置 | 言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員を1名以上配置していること |
| (2) 計画の作成 | 利用者の口腔機能を利用開始時に把握し、言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員・介護職員・生活相談員その他の職種の者が共同して、利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画を作成していること |
| (3) サービスの提供と記録 | 計画に従い言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員が口腔機能向上サービスを行い、利用者の口腔機能を定期的に記録していること |
| (4) 進捗の評価 | 利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画の進捗状況を定期的に評価していること |
| (5) 定員超過等でないこと | 通所介護費等算定方法第11号に規定する基準のいずれにも該当しないこと |
(Ⅱ)160単位=(Ⅰ)+LIFE
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) | (Ⅰ)の(1)〜(5)すべてに適合すること |
| (2) | 利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画等の情報を厚生労働省に提出し、口腔機能向上サービスの実施に当たって、当該情報等を活用していること |
看護職員でよいことが看多機には効く
(1)と(3)の職種は「言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員」です。看多機は指定基準上、看護職員の配置が必須のサービスです。つまり配置要件は最初からクリアしていることになります。
通所介護でこの加算を算定しようとすると、看護職員の配置がない事業所では歯科衛生士や言語聴覚士を確保する必要があり、ハードルが上がります。看多機はその点で有利な位置にあるのに、算定していない事業所が多い印象です。
担当したケースでも、嚥下機能が落ちてきた方について、看多機の看護師が口腔ケアと嚥下体操を計画的に行っていたのに、加算として請求していなかったことがありました。やっていることは要件を満たしていたのに、計画書の形式が整っていなかっただけです。
3月を超えて算定するには
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ①評価の実施 | 口腔機能向上サービスの開始から3月ごとに利用者の口腔機能を評価すること |
| ②評価の結果 | 口腔機能が向上していないこと |
| ③必要性の判断 | 口腔機能向上サービスを引き続き行うことが必要と認められること |
栄養改善加算とまったく同じ構造です。3月で機械的に打ち切る加算ではありません。3月ごとの評価の記録が、継続算定の唯一の根拠になります。
他の加算との関係
| 加算 | 口腔機能向上サービス提供中の扱い |
|---|---|
| 口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)20単位 | 算定できない |
| 口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)5単位 | 栄養のスクリーニングのみで算定できる場合がある |
| 栄養改善加算 | 告示に併算定を制限する定めはない |
| 栄養アセスメント加算 | 告示に併算定を制限する定めはない |
口腔と栄養は別系統として整理されているため、口腔機能向上加算と栄養改善加算・栄養アセスメント加算を同時に算定することを禁じる定めは、告示のうえでは見当たりません。ただし取扱いは市町村に確認してください。
口腔機能向上加算の注意点
「個別的に実施される」ことが要件
条文は「個別的に実施される口腔清掃の指導若しくは実施又は摂食・嚥下機能に関する訓練の指導若しくは実施」としています。全員参加の集団的な口腔体操は、これだけでは要件を満たしません。利用者ごとの計画にもとづく個別の関与が必要です。
計画は共同で作成する
(2)は「言語聴覚士、歯科衛生士、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して」と定めています。看護師が1人で作成する形では要件を満たしません。日々の食事場面を見ている介護職員の情報を入れてください。
サービスを提供するのは3職種
(3)は「言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員が」口腔機能向上サービスを行うとしています。計画の作成は多職種共同ですが、サービスの実施はこの3職種に限られます。介護職員が単独で行った口腔ケアは、この加算の対象になりません。
1月に2回まで
月に3回以上サービスを提供しても、算定できるのは2回までです。
短期利用居宅介護費には加算されない
ヌの注は「イについて」と書かれています。対象は看護小規模多機能型居宅介護費であり、短期利用居宅介護費には加算されません。
- 市町村長への届出を済ませているか
- 言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員のいずれかを1名以上配置しているか
- 利用開始時に口腔機能を把握しているか
- 口腔機能改善管理指導計画を多職種共同で作成しているか
- サービスを実施しているのが3職種のいずれかか
- 3月ごとの評価を行い、継続の根拠を記録しているか
- (Ⅱ)を算定するならLIFEへの提出と活用を行っているか
よくある質問
看多機の口腔機能向上加算はいくらですか?
(Ⅰ)が150単位、(Ⅱ)が160単位です。3月以内の期間に限り、1月に2回を限度として1回につき算定します。
なぜ(Ⅱ)のほうが高いのですか?
(Ⅱ)は(Ⅰ)の全要件に加えて、口腔機能改善管理指導計画等の情報を厚生労働省に提出し活用することが要件だからです。
(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できますか?
できません。いずれかを算定している場合はその他を算定できません。
言語聴覚士や歯科衛生士がいないと算定できませんか?
できます。条文は「言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員を一名以上配置していること」としており、看護職員でも要件を満たします。
介護職員が口腔ケアをした場合も算定できますか?
できません。サービスを実施するのは言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員のいずれかです。
集団の口腔体操でも算定できますか?
条文は「個別的に実施される」ことを求めています。利用者ごとの計画にもとづく個別の関与が必要です。
3か月で必ず終了しますか?
終了しません。3月ごとの評価で口腔機能が向上せず、引き続き必要と認められる方については継続して算定できます。
計画は誰が作成しますか?
言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員・介護職員・生活相談員その他の職種の者が共同して作成します。
口腔・栄養スクリーニング加算と併算定できますか?
(Ⅰ)20単位は算定できません。栄養のスクリーニングのみを行い(Ⅱ)5単位を算定できる場合があります。
栄養改善加算と併算定できますか?
告示に併算定を制限する定めは見当たりません。取扱いは市町村に確認してください。
月に3回サービスを提供したら3回算定できますか?
できません。1月に2回が限度です。
短期利用の利用者にも算定できますか?
できません。ヌの注は「イについて」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。
- 看多機の口腔機能向上加算は(Ⅰ)150単位・(Ⅱ)160単位
- (Ⅱ)のほうが10単位高く、LIFEへの提出と活用が要件に加わる
- 3月以内の期間に限り、1月に2回を限度として1回につき算定
- 対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)で、短期利用は対象外
- (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
- 配置要件は言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員のいずれか1名以上
- 看多機は看護職員の配置が必須のため、配置要件を最初から満たしている
- 口腔機能改善管理指導計画は多職種共同で作成する
- サービスを実施するのは言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員の3職種
- 介護職員が単独で行った口腔ケアは対象にならない
- 「個別的に実施される」ことが要件で、集団の口腔体操だけでは足りない
- 3月ごとの評価で向上せず必要と認められれば継続算定できる
- 口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)とは併算定できない
- 栄養改善加算・栄養アセスメント加算との併算定を制限する定めは告示に見当たらない
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ヌ、リ、ト、チ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第75号の2(看護小規模多機能型居宅介護費における口腔機能向上加算の基準)、第20号(通所介護費における口腔機能向上加算の基準)、第19号の2(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに「個別的に実施される」と認められる範囲、「1回」の口腔機能向上サービスとして数えられる範囲、3月ごとの評価に用いる指標、栄養改善加算等との併算定の可否については告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




