小規模多機能型居宅介護の生産性向上推進体制加算は、(Ⅰ)が100単位、(Ⅱ)が10単位(いずれも1月につき)です。

この加算の構造を理解する鍵は、(Ⅱ)を先に取り、実績を積んでから(Ⅰ)に上がるという段階設計になっていることです。(Ⅰ)の要件には「実績があること」が含まれており、いきなり(Ⅰ)から算定することは想定されていません。

もう一つ重要なのが、報告先が市町村ではなく厚生労働省である点です。小多機は地域密着型サービスで届出先は市町村長ですが、この加算の実績報告だけは厚生労働省あてと定められています。

この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)のカと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)五十六の二・三十七の三を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数
  • (Ⅱ)→(Ⅰ)という段階設計になっていること
  • 委員会で検討すべき4つの事項
  • (Ⅰ)に必要な「介護機器を複数種類」の意味
  • 実績報告先が厚生労働省であること
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できないこと
ちびウルフちびウルフ

(Ⅱ)は10単位ですよね。月に100円ちょっとですけど、取る意味あるんですか?

リハウルフリハウルフ

金額だけ見れば小さいです。ただ(Ⅰ)の要件に「実績があること」が入っているので、(Ⅱ)を取って実績を作らないと(Ⅰ)には進めません。(Ⅱ)は(Ⅰ)への入口として設計されています。10単位そのものを狙うというより、100単位への助走と考えた方が実態に合います。

小規模多機能型居宅介護の生産性向上推進体制加算とは?

小規模多機能型居宅介護の生産性向上推進体制加算は、介護機器の活用と業務改善によって、職員の負担軽減とケアの質の確保に取り組む体制を評価する加算です。令和6年度改定で新設されました。

小多機は通い・訪問・泊まりを1つの事業所で回すサービスです。日によって利用者の動きが変わり、職員の勤務も組み替えが多くなります。記録も通い・訪問・泊まりで分かれ、事務負担が重くなりやすい構造があります。

この加算が求めているのは、機器を導入して終わりではなく、委員会で継続的に検討し、実績を確認し、報告するという一連のサイクルです。要件の中心は機器そのものではなく、体制と記録にあります。

生産性向上推進体制加算の単位数

カ 生産性向上推進体制加算
注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(略)市町村長に対し届出を行った指定小規模多機能型居宅介護事業所において、利用者に対して指定小規模多機能型居宅介護を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
(1) 生産性向上推進体制加算(Ⅰ) 100単位
(2) 生産性向上推進体制加算(Ⅱ) 10単位

区分単位数(1月につき)位置づけ
生産性向上推進体制加算(Ⅰ)100単位取組の実績と機器複数種類が必要
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)10単位委員会+機器活用で算定可

(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できません。どちらか一方のみです。

生産性向上推進体制加算の算定要件

小多機の基準は「第三十七号の三の規定を準用する」とされており、短期入所生活介護と同じ内容です。

(Ⅱ)の要件

  • 委員会において後述の4事項を検討し、実施を定期的に確認していること
  • 介護機器を活用していること
  • 事業年度ごとに取組の実績を厚生労働省に報告すること

委員会で検討する4つの事項

要件の中核は、利用者の安全・介護サービスの質の確保・職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会です。

検討事項内容
(一)介護機器を活用する場合における利用者の安全及びケアの質の確保
(二)職員の負担の軽減及び勤務状況への配慮
(三)介護機器の定期的な点検
(四)業務の効率化・質の向上・負担軽減を図るための職員研修

条文は「必要な検討を行い、及び当該事項の実施を定期的に確認していること」と書いています。検討だけでなく、実施の確認まで求められています。

(Ⅰ)の要件

  • 上記の委員会で4事項を検討し、実施を定期的に確認していること
  • 取組と機器活用による業務の効率化・ケアの質の確保・職員の負担軽減に関する実績があること
  • 介護機器を複数種類活用していること
  • 委員会において職員の業務分担の明確化等による効率化・質の確保・負担軽減を検討し、取組を実施し、実施を定期的に確認すること
  • 事業年度ごとに実績を厚生労働省に報告すること
(Ⅰ)と(Ⅱ)の差は3点
  • 実績があること((Ⅱ)には不要)
  • 機器が複数種類であること((Ⅱ)は「活用していること」のみ)
  • 業務分担の明確化等の検討・実施・確認((Ⅱ)には不要)

生産性向上推進体制加算の注意点

報告先は厚生労働省

小多機は地域密着型サービスであり、届出先は市町村長です。しかしこの加算の実績報告は「厚生労働省に報告すること」と定められています。

届出(市町村長)と実績報告(厚生労働省)で宛先が分かれる点は、算定を始める前に確認しておいてください。

「介護機器」の定義

条文は「業務の効率化及び質の向上又は職員の負担の軽減に資する機器」と定義しています。具体的な機器名の列挙はありません。

見守り機器、インカム、介護記録ソフト、移乗支援機器などが該当すると考えられますが、どこまでを1種類と数えるか、自事業所の導入機器が「複数種類」に当たるかは、市町村への確認をおすすめします。(機器の該当性に関する記述は筆者の理解であり、告示に列挙されているものではありません)

算定を始めるまでの流れ

  • 委員会を設置する(既存の会議体を活用してもよい)
  • 4つの検討事項を議題に位置づけ、議事録を残す
  • 介護機器を導入・活用する
  • (Ⅱ)の届出を市町村長に行い、算定を開始する
  • 取組の実績を蓄積し、事業年度ごとに厚生労働省へ報告する
  • 実績と複数機器の要件が整った段階で(Ⅰ)へ移行する

委員会は既存の会議と兼ねられるか

条文は独立した委員会の設置を明文で求めてはいません。小多機では運営推進会議や事業所内会議など既存の会議体があります。ただし検討事項と実施確認が議事録上で追えることが必要です。兼務の可否は市町村に確認してください。(運用に関する記述は筆者の実務経験にもとづく整理です)

他の加算との関係

この加算は介護職員等処遇改善加算の算定基礎に含まれます。条文の「イからヨまでにより算定した単位数」に生産性向上推進体制加算(カ)が含まれるため、処遇改善加算の額もわずかに増えます。

生産性向上推進体制加算のQ&A

(Ⅰ)と(Ⅱ)を両方算定できますか?

できません。いずれかを算定している場合、その他は算定しないと条文に定められています。

いきなり(Ⅰ)から算定できますか?

(Ⅰ)は取組と機器活用による実績があることが要件です。実績のない段階での算定は想定されていません。

実績報告はどこに出しますか?

厚生労働省です。届出先の市町村長とは別なので注意してください。

介護機器に指定はありますか?

条文は「業務の効率化及び質の向上又は職員の負担の軽減に資する機器」と定義するのみで、機器名の列挙はありません。

「複数種類」は何種類ですか?

条文に数の明記はありません。2種類以上と読めますが、種類の数え方は市町村に確認してください。

委員会は毎月開く必要がありますか?

開催頻度の定めは条文にありません。「定期的に確認していること」が求められています。

短期利用居宅介護費でも算定できますか?

条文に「イについて」の限定はなく、区分に従い1月につき加算するとされています。取扱いは市町村に確認してください。

処遇改善加算に影響しますか?

処遇改善加算はイからヨまでの単位数を基礎とするため、この加算の分も算定基礎に含まれます。

まとめ
  • 生産性向上推進体制加算は(Ⅰ)100単位・(Ⅱ)10単位(1月につき)
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
  • 基準は短期入所生活介護(告示95号 三十七の三)を準用する
  • 共通要件は委員会での4事項の検討と実施の定期的確認
  • 4事項は安全・質の確保、負担軽減と勤務配慮、機器の定期点検、職員研修
  • (Ⅱ)は介護機器の活用でよい
  • (Ⅰ)は実績・機器複数種類・業務分担の明確化が追加で必要
  • 実績報告先は厚生労働省(届出先の市町村長とは別)
  • 令和6年度改定で新設された加算
参考にした情報
  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 小規模多機能型居宅介護費のカ(厚生労働省法令等データベース)
  • 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)五十六の二 小規模多機能型居宅介護費における生産性向上推進体制加算の基準、三十七の三 短期入所生活介護費における生産性向上推進体制加算の基準(厚生労働省法令等データベース)

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、加算の解釈や届出の運用が自治体によって異なる場合があります。介護機器の該当性、「複数種類」の数え方、委員会と既存会議体の兼務の可否、厚生労働省への報告方法については所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
PR

リハビリ職の転職・求人なら
レバウェルリハビリ

リハノメ 無料で求人を見る ▶
PR

PT・OT・STのオンラインセミナー
リハノメ

リハノメ セミナーを詳しく見る ▶