訪問介護の介護職員等処遇改善加算とは?

訪問介護の介護職員等処遇改善加算は、(Ⅰ)イ27.0%、(Ⅰ)ロ28.7%、(Ⅱ)イ24.9%、(Ⅱ)ロ26.6%、(Ⅲ)20.7%、(Ⅳ)17.0%。全サービス中で最も高い率です。
どれくらい突出しているかを並べると分かります。訪問介護28.7%に対して、グループホーム22.8%、老健9.7%、訪問入浴13.3%。老健の3倍近くあります。理由は単純で、訪問介護は報酬に占める介護職員の人件費割合が最も高いサービスだからです。
そしてこの率は、特定事業所加算(最大20%)を含めた合計に対して掛かります。特定事業所加算(Ⅰ)と処遇改善加算(Ⅰ)ロを両方算定すると、基本報酬がおよそ1.55倍になる計算です。訪問介護の収支は、この2つを取れているかでほぼ決まります。
この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問介護費のチ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第4号の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 訪問介護の処遇改善加算の率(27.0%〜17.0%)
- 全サービス中で最も高い理由
- 率を乗じる対象が「イからトまでにより算定した単位数」であること
- 特定事業所加算と重ねたときの実際の増え方
- 「イ」と「ロ」の差がケアプランデータ連携システム又は連携推進法人への所属であること
- (Ⅰ)イの基準にある月額440万円要件と2分の1要件
- (Ⅲ)(Ⅳ)は満たすべき項目が絞られること
- 複数区分の同時算定はできないこと
ちびウルフ28.7%って、他のサービスと桁が違いませんか?
リハウルフ桁違いです。老健9.7%、グループホーム22.8%と比べても突出しています。訪問介護は看護職員も専門職も設備費もほとんどなく、報酬のほぼすべてがヘルパーの人件費だからです。裏を返せば、基本報酬そのものが低く抑えられているということでもあります。
率は27.0%〜17.0%
告示19号の訪問介護費「チ 介護職員等処遇改善加算」の注は、次のとおりです。
(1) 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ イからトまでにより算定した単位数の1000分の270に相当する単位数
(2) (Ⅰ)ロ 1000分の287
(3) (Ⅱ)イ 1000分の249
(4) (Ⅱ)ロ 1000分の266
(5) (Ⅲ) 1000分の207
(6) (Ⅳ) 1000分の170
| 区分 | 率 |
|---|---|
| (Ⅰ)イ | 27.0% |
| (Ⅰ)ロ | 28.7% |
| (Ⅱ)イ | 24.9% |
| (Ⅱ)ロ | 26.6% |
| (Ⅲ) | 20.7% |
| (Ⅳ) | 17.0% |
注のただし書きにより、複数区分の同時算定はできません。
他サービスとの比較
| サービス | 最大の率 |
|---|---|
| 訪問介護 | 28.7% |
| グループホーム | 22.8% |
| 訪問入浴介護 | 13.3% |
| 老健 | 9.7% |
率はサービスごとの人件費構成を反映して決まっています。「訪問介護は儲かる」という話ではなく、基本報酬が低いぶんを処遇改善加算で補う構造だと理解するほうが実態に近いはずです。
率を乗じる対象は「イからトまで」
- イ 身体介護が中心である場合(163〜567単位+)
- ロ 生活援助が中心である場合(179単位・220単位)
- ハ 通院等のための乗車又は降車の介助(97単位)
- ニ 初回加算(200単位)
- ホ 生活機能向上連携加算
- ヘ 口腔連携強化加算
- ト 認知症専門ケア加算
特定事業所加算・夜間早朝・深夜・2人訪問などは「イの注」で所定単位数に対して増減するものなので、結果としてそれらを反映した後の単位数が計算基礎になります。(計算順序の詳細は請求ソフトの仕様と保険者の指示を確認してください)
身体介護30分以上1時間未満(387単位)を例にすると、
- 基本報酬のみ:387単位
- 特定事業所加算(Ⅰ)20%:387+77=464単位
- さらに処遇改善加算(Ⅰ)ロ28.7%:464+133=約597単位
基本報酬の約1.54倍。訪問介護の経営は、この2つの加算を取れるかどうかで景色が変わります。(試算は単位数を単純に乗じた概算で、端数処理により実際とは異なります)
「イ」と「ロ」の差は1項目だけ
告示95号第4号では、(Ⅰ)ロは(Ⅰ)イの基準すべてに適合したうえで、次のいずれかに適合することとされています。
(一) ケアプランデータ連携システム(公益社団法人国民健康保険中央会が運用及び管理を行う、居宅サービス計画の情報の共有等のための情報処理システム)を利用していること。
(二) 社会福祉法第128条第1号イに規定する社会福祉連携推進法人に所属していること。
訪問介護は居宅介護支援事業所とのやり取りが日常的に発生するサービスです。ケアプランデータ連携システムを導入していれば、(Ⅰ)イ27.0%から(Ⅰ)ロ28.7%へ1.7ポイント上がります。すでに導入済みなら、区分の切り替えを確認してください。
(Ⅰ)イの基準で押さえるべき2点
- 仮に(Ⅳ)を算定した場合に見込まれる額の2分の1以上を、基本給又は決まって毎月支払われる手当に充てること
- 経験・技能のある介護職員のうち1人は、賃金改善後の見込額が年額440万円以上であること(加算の算定見込額が少額であること等の理由により困難な場合を除く)
440万円要件には「ただし書き」があります。算定見込額が少額であるなど、賃金改善が困難な場合はこの限りでないとされています。小規模事業所が上位区分を諦める理由になりがちですが、条文には例外が用意されています。
(Ⅲ)(Ⅳ)は求められる基準が絞られる
| 区分 | 基準の範囲(第4号) |
|---|---|
| (Ⅰ)イ | (1)から(10)までのすべて |
| (Ⅰ)ロ | (Ⅰ)イの基準+データ連携システム又は連携推進法人 |
| (Ⅱ)イ | (1)から(9)まで |
| (Ⅱ)ロ | (Ⅱ)イの基準+データ連携システム又は連携推進法人 |
| (Ⅲ) | (1)(一)及び(2)から(8)まで |
| (Ⅳ) | (1)(一)、(2)から(6)まで、(7)(一)〜(四)及び(8) |
(Ⅳ)でも17.0%です。他サービスの最上位区分より高い水準なので、まず(Ⅳ)や(Ⅲ)を確実に取り、段階的に上位を目指す進め方が現実的です。
職場環境等要件と特定事業所加算
第4号イ(10)には、職場環境等要件に関して「訪問介護費における特定事業所加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)のいずれか」に言及する規定があります。他サービスではこの部分が読み替えられており、訪問介護の特定事業所加算が、処遇改善加算の基準における「基準となる加算」として位置づけられている形です。
上位区分を狙うなら、特定事業所加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定とセットで検討してください。
よくある質問
率は何に対して掛けるのですか?
「イからトまでにより算定した単位数」です。基本報酬に加え、初回加算・生活機能向上連携加算・口腔連携強化加算・認知症専門ケア加算を含めた合計が対象です。
特定事業所加算も計算基礎に含まれますか?
特定事業所加算は「イの注」で所定単位数に対して加算されるため、結果としてそれを反映した単位数が基礎になります。計算順序の詳細は請求ソフトの仕様と保険者の指示を確認してください。
「イ」と「ロ」は何が違うのですか?
ロは、ケアプランデータ連携システムの利用、又は社会福祉連携推進法人への所属のいずれかに適合することが加わります。その他の基準は同じです。
年額440万円の職員を用意できません。(Ⅰ)は無理ですか?
条文には、加算の算定見込額が少額であることその他の理由により賃金改善が困難な場合はこの限りでない、というただし書きがあります。該当性は保険者に確認してください。
複数の区分を同時に算定できますか?
できません。いずれかを算定している場合、その他の区分は算定できません。
なぜ他サービスより率が高いのですか?
率はサービスごとの人件費構成を反映して設定されています。訪問介護は報酬に占める介護職員の人件費割合が最も高いためと理解できます。
届出先はどこですか?
都道府県知事(指定都市・中核市はその市長)です。
総合事業の訪問型サービスにも同じ率が使えますか?
総合事業の単価・加算は市町村ごとに定められます。実施要綱を確認してください。
- 訪問介護の処遇改善加算は(Ⅰ)イ27.0%〜(Ⅳ)17.0%
- 最大28.7%は全サービス中で最も高い
- 率を乗じる対象は「イからトまで」で算定した単位数
- 特定事業所加算(Ⅰ)と重ねると基本報酬の約1.5倍になる
- 「イ」と「ロ」の差は、ケアプランデータ連携システムの利用又は社会福祉連携推進法人への所属
- (Ⅰ)イの基準には、(Ⅳ)相当額の2分の1以上を基本給等に充てる要件と、年額440万円要件がある
- 440万円要件には、算定見込額が少額である場合等のただし書きがある
- (Ⅳ)でも17.0%で、他サービスの最上位区分より高い
- 職場環境等要件は特定事業所加算(Ⅰ)(Ⅱ)と関係する
- 複数区分の同時算定はできない
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 訪問介護費のチ(介護職員等処遇改善加算)、注10(特定事業所加算)(全国老人保健施設協会 法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第4号(訪問介護費における介護職員等処遇改善加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)認知症対応型共同生活介護費のツ、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)介護保健施設サービス(率の比較のため)(厚生労働省法令等データベース)
- 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第128条第1号イ(社会福祉連携推進法人)
※本記事の率・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文、厚生労働省が示す事務処理手順および保険者・指定権者の解釈をご確認ください。計算順序、440万円要件のただし書きの該当性、ケアプランデータ連携システムの利用可否については別途確認が必要です。総合事業の単価・加算は市町村ごとに異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。本文中の試算は単位数を単純に乗じた概算であり、地域区分や端数処理により実際の請求額とは異なります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




