老健のかかりつけ医連携薬剤調整加算は(Ⅰ)イ140単位・(Ⅰ)ロ70単位・(Ⅱ)240単位・(Ⅲ)100単位の4区分。いずれも入所者1人につき1回、退所時に算定します。

この加算の特徴は積み上げ構造にあります。(Ⅱ)は(Ⅰ)を、(Ⅲ)は(Ⅱ)を前提とするため、要件を満たしていけば140+240+100=480単位を1人の入所者について算定できます。

そして令和6年度改定で(Ⅰ)ロ70単位が新設されました。従来は「入所前の主治医と連携して調整した場合」しか評価されませんでしたが、施設内で評価・調整した場合も算定できるようになっています。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、老企第40号、令和6年度介護報酬改定における改定事項についてを突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 4区分の単位数と積み上げの構造(最大480単位)
  • (Ⅰ)ロが令和6年度改定で新設されたこと
  • 対象は入所前に6種類以上の内服薬が処方されている人
  • 「6種類」の数え方(頓服薬は除外・1銘柄1種類)
  • 4週間という服用期間の線引き
  • 入所後1月以内の主治医への説明と合意
  • 医師または常勤薬剤師の研修受講要件
  • (Ⅱ)は入所期間3月以上の見込みが必要なこと
  • (Ⅲ)は「継続して1種類以上減少」であること
  • ポリファーマシーの定義と家族への啓発

老健のかかりつけ医連携薬剤調整加算とは?

老健(介護老人保健施設)のかかりつけ医連携薬剤調整加算は、入所前から飲んでいた薬を医師が評価し、必要に応じて減らしたうえで、退所後のかかりつけ医へ引き継ぐことを評価する加算です。

老健には医師が常勤しています。高齢者が複数の医療機関から薬を処方され、飲み合わせも重複も分からなくなっている状態を、入所期間中に一度立て直せる数少ない場です。この加算はその機能に着目しています。

区分は積み上げ式になっており、入所前の主治医との連携、施設内での評価、LIFEへの提出、実際に薬が減ったという結果が段階的に評価されます。最上位まで取るには「継続して1種類以上減少」という結果が必要です。

かかりつけ医連携薬剤調整加算の単位数

区分単位数内容
(Ⅰ)イ140単位入所前の主治医と連携して薬剤を評価・調整
(Ⅰ)ロ70単位施設において薬剤を評価・調整(令和6年度新設)
(Ⅱ)240単位服薬情報をLIFEに提出
(Ⅲ)100単位退所時に入所時と比べて1種類以上減薬

注 別に厚生労働大臣が定める基準に適合する介護老人保健施設において、入所者に対し、介護保健施設サービスを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、当該入所者1人につき1回を限度として、当該入所者の退所時に所定単位数を加算する。ただし、かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)イを算定している場合には、かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)ロは算定しない。

最大480単位まで積み上がる

(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロは二者択一ですが、(Ⅰ)→(Ⅱ)→(Ⅲ)は積み上げられます。

  • (Ⅰ)イ140+(Ⅱ)240+(Ⅲ)100=480単位
  • (Ⅰ)ロ70+(Ⅱ)240+(Ⅲ)100=410単位

いずれも1人につき1回、退所時の算定です。最も大きいのは(Ⅱ)の240単位で、要件はLIFEへの服薬情報の提出です。

かかりつけ医連携薬剤調整加算の算定要件|対象は「入所前に6種類以上の内服薬」

かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)は、入所前に6種類以上の内服薬が処方されている入所者について、処方の内容を総合的に評価した上で、当該処方の内容を調整し、当該患者に対して療養上必要な指導を行う取組を評価するものである。

「6種類」の数え方が細かい

本加算は、入所前に内服を開始して4週間以上経過した内服薬が6種類以上処方されていたものを対象とする。この場合において、頓服薬については内服薬の種類数から除外する。また、服用を開始して4週間以内の薬剤については、調整前の種類数からは除外する。当該加算の算定における内服薬の種類数の計算に当たっては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤及び液剤については、1銘柄ごとに1種類として計算する。

論点取扱い
服用期間内服開始から4週間以上経過したもの
頓服薬種類数から除外
服用開始4週間以内の薬剤調整前の種類数から除外
剤形錠剤・カプセル剤・散剤・顆粒剤・液剤は1銘柄ごとに1種類
ちびウルフちびウルフ

入院してから始まった薬は数えないんですね。

リハウルフリハウルフ

そこが重要な線引きなんだ。4週間という期間で「もともと飲んでいた薬」と「最近始まった薬」を分けている。

この加算が減らそうとしているのは長く続いてきた処方であって、急性期治療で一時的に増えた薬ではない。急性期病院から老健に来た方は、入院中に始まった薬がいくつもあるはずだけど、それらは分母から外れる。

つまり「入院で薬が増えたから6種類以上」では対象にならない。入所前から4週間以上続いている薬が6種類あるか——ここを確認するには、入院前の処方内容までさかのぼる必要がある。

お薬手帳や、入所前の主治医からの情報がそのまま算定根拠になる。入所受付時に集めておくべき情報だよ。

(Ⅰ)イ140単位——入所前の主治医と連携する

  • 施設の医師または常勤の薬剤師が、高齢者の薬物療法に関する研修を受講している(十分な経験がある場合はみなし)
  • 入所後1月以内に、処方内容を変更する可能性があることを主治の医師に説明し、合意する(別紙様式8を参考)
  • 入所中に、施設の医師と主治の医師が共同して処方内容を総合的に評価・調整し、療養上必要な指導を行う
  • 合意した内容や評価・調整の要点を診療録に記載する
  • 処方内容を変更する場合は、変更する薬剤と留意事項を医師・薬剤師・看護師等の多職種で共有する
  • 処方変更による病状の悪化や新たな副作用の有無を多職種で確認し、必要に応じて再度総合的に評価する
  • 本人または家族に、ポリファーマシーに関する一般的な注意の啓発を行う
  • 退所時または退所後1月以内に、評価の内容・変更の理由や経緯・変更後の状態等を主治の医師へ情報提供する(別紙様式9を参考)
  • 情報提供の内容を診療録に記載する
「入所後1月以内の合意」が起点

もっとも見落とされやすいのが2つ目です。入所後1月以内に、主治の医師へ「処方を変更する可能性がある」と説明し、合意を得る。

入所して落ち着いてから薬を見直そう、では遅い可能性があります。入所直後のタイミングで主治医に連絡を取る手順を、入所時のフローに組み込んでください。

通知は「その際、処方経緯等の情報を収集することが望ましい」とも書いています。なぜその薬が始まったのかを聞いておくと、後の調整がしやすくなります。

研修要件——薬剤師でもよい

当該介護保健施設サービスを行う介護老人保健施設の医師又は常勤の薬剤師が、高齢者の薬物療法に関する内容を含む研修を受講していること。ただし、高齢者の薬物療法に関する十分な経験を有する医師又は薬剤師については、高齢者の薬物療法に関する研修を受講した者とみなす。

受講するのは医師でも常勤薬剤師でもよく、十分な経験があれば受講したものとみなされます。ただし「みなし」の判断根拠は説明できるようにしておいてください。

評価の際に参考にする指針

その際、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(厚生労働省)、「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」(厚生労働省)及び日本老年医学会の関連ガイドライン(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン)等を参考にすること。

(Ⅰ)ロ70単位——施設内で完結できる新区分

かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)ロは、介護老人保健施設において、処方の内容を評価及び調整した場合に算定を行うもの。

(Ⅰ)ロについては、上記の⑥及び⑧〜⑪を準用する。特に、介護老人保健施設において薬剤を評価・調整する場合であっても、退所時において入所前の処方の内容から変更があった場合には、退所後の主治の医師に処方の変更の内容や経緯等の情報提供を行うこと。また、介護老人保健施設において行った処方の内容の評価及び調整の要点を診療録に記載すること。

要件(Ⅰ)イ(Ⅰ)ロ
入所後1月以内の主治医への説明と合意必要
施設の医師と主治医の共同評価必要
指針等を参考にした総合的評価必要必要
多職種での共有・確認必要必要
ポリファーマシーの啓発必要必要
研修受講必要必要
退所時の主治医への情報提供必要変更があった場合に必要
主治医との事前合意が取れない場合の受け皿

(Ⅰ)イは、入所前の主治医との事前の合意が前提です。連絡が取れない、あるいは合意に至らないケースでは算定できませんでした。

令和6年度改定で新設された(Ⅰ)ロは、施設内での評価・調整だけで算定できます。そのぶん単位数は半分(70単位)ですが、(Ⅱ)240単位・(Ⅲ)100単位への入口としては同じ役割を果たします。

ただし、退所時に処方が変わっていれば退所後の主治医への情報提供は必要です。

(Ⅱ)240単位——入所3月以上の見込みとLIFE提出

① かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)イ又はロの算定要件を満たすこと。
② 入所期間が3月以上であると見込まれる入所者であること。
③ 厚生労働省への情報の提出は、入所期間が3月を超えると見込まれる入所者について、LIFEを用いて行うこととする。

  • (Ⅰ)イまたはロの要件を満たしていること
  • 入所期間が3月以上と見込まれる入所者であること
  • 服薬情報等をLIFEへ提出すること

4区分のなかで最も単位数が大きいのが(Ⅱ)の240単位です。短期入所を繰り返すような使い方ではなく、3月以上の入所が見込まれる方が対象である点に注意してください。

かかりつけ医連携薬剤調整加算の注意点|(Ⅲ)は「継続して1種類以上減少」

かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅱ)の算定要件を満たした上で、退所時において処方されている内服薬の種類が、入所時に比べ継続して1種類以上減少している場合に、当該入所者1人につき1回を限度として、当該入所者の退所時に所定単位数を加算する。

「継続して」がポイント

単に退所時点で1種類少ない、では足りません。条文は「継続して1種類以上減少している」としています。

一時的に止めてすぐ再開した、という状態は想定されていないと読めます。減薬後の状態を一定期間観察し、その経過を記録しておくことが実務上必要になります。

なお種類数の計算方法は(Ⅰ)と同じです。頓服薬は除外し、1銘柄ごとに1種類として数えます。

ポリファーマシーの定義

ここでいうポリファーマシーとは、「単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」をいう。入所者に対してポリファーマシーに関する一般的な注意の啓発を行うに当たっては、「高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用(日本老年医学会、日本老年薬学会)」等を参考にすること。

「薬が多い=ポリファーマシー」ではありません。問題につながっている状態を指す、と通知が定義しています。減薬そのものが目的ではない、という前提を本人・家族への説明でも共有してください。

算定にあたっての実務ステップ

  • 入所受付時に、お薬手帳等で入所前の処方内容と服用開始時期を確認する
  • 頓服薬を除き、内服開始から4週間以上経過した内服薬が6種類以上かを数える(1銘柄1種類)
  • 施設の医師または常勤薬剤師の研修受講状況を確認する
  • 入所後1月以内に、主治の医師へ処方変更の可能性を説明し合意を得る((Ⅰ)イを狙う場合)
  • 主治医との連携が難しい場合は、(Ⅰ)ロとして施設内で評価・調整する
  • 指針・ガイドラインを参考に、処方内容を総合的に評価・調整する
  • 処方変更時は医師・薬剤師・看護師等で留意事項を共有し、変更後の状態を多職種で確認する
  • 本人・家族にポリファーマシーに関する啓発を行う
  • 合意内容・評価と調整の要点を診療録に記載する
  • 入所期間が3月以上見込まれる場合は、服薬情報等をLIFEへ提出する((Ⅱ))
  • 退所時の内服薬が入所時より継続して1種類以上減っていれば(Ⅲ)を算定する
  • 退所時または退所後1月以内に、主治の医師へ情報提供し診療録に記載する

1つ目と2つ目が起点です。入所前の処方を正確に把握できなければ、そもそも対象者かどうかが判定できません。

かかりつけ医連携薬剤調整加算のQ&A

4区分の単位数は?

(Ⅰ)イ140単位、(Ⅰ)ロ70単位、(Ⅱ)240単位、(Ⅲ)100単位です。いずれも入所者1人につき1回、退所時に算定します。

全部合わせるといくらになりますか?

(Ⅰ)イ+(Ⅱ)+(Ⅲ)で480単位、(Ⅰ)ロ+(Ⅱ)+(Ⅲ)で410単位です。(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロは併算定できません。

対象となるのはどんな入所者ですか?

入所前に内服を開始して4週間以上経過した内服薬が6種類以上処方されていた入所者です。

頓服薬も6種類に数えますか?

数えません。頓服薬は内服薬の種類数から除外されます。

入院中に始まった薬は数えますか?

服用を開始して4週間以内の薬剤は、調整前の種類数から除外されます。

種類数はどう数えますか?

錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤および液剤については、1銘柄ごとに1種類として計算します。

(Ⅰ)ロはいつ新設されましたか?

令和6年度介護報酬改定です。施設において薬剤を評価・調整した場合を評価する区分として新設されました。

主治医への説明はいつまでに行いますか?

(Ⅰ)イでは、入所後1月以内に処方内容を変更する可能性があることを主治の医師に説明し、合意することが求められます。

研修は医師が受けないといけませんか?

医師または常勤の薬剤師です。高齢者の薬物療法に関する十分な経験を有する医師・薬剤師は、研修を受講した者とみなされます。

(Ⅱ)に入所期間の条件はありますか?

あります。入所期間が3月以上であると見込まれる入所者であることが要件です。

(Ⅲ)の「1種類以上減少」はいつ判定しますか?

退所時において処方されている内服薬の種類が、入所時に比べ継続して1種類以上減少している場合に算定します。

ポリファーマシーとは薬が多いことですか?

違います。通知は「単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」と定義しています。

まとめ
  • 老健のかかりつけ医連携薬剤調整加算は4区分
  • (Ⅰ)イ140単位・(Ⅰ)ロ70単位・(Ⅱ)240単位・(Ⅲ)100単位
  • いずれも入所者1人につき1回、退所時に算定する
  • (Ⅰ)イと(Ⅰ)ロは併算定できない
  • (Ⅰ)→(Ⅱ)→(Ⅲ)は積み上げられ、最大480単位
  • (Ⅰ)ロは令和6年度改定で新設された
  • 対象は入所前に4週間以上経過した内服薬が6種類以上の入所者
  • 頓服薬は種類数から除外する
  • 服用開始4週間以内の薬剤も調整前の種類数から除外する
  • 剤形にかかわらず1銘柄ごとに1種類として数える
  • (Ⅰ)イは入所後1月以内に主治医へ説明し合意を得る
  • 施設の医師と主治医が共同で総合的に評価・調整する
  • (Ⅰ)ロは施設内での評価・調整で算定できる
  • (Ⅰ)ロでも処方が変わればの退所後の主治医への情報提供が必要
  • 医師または常勤薬剤師の研修受講が要件(経験によるみなしあり)
  • 処方変更時は多職種で共有・確認する
  • 本人・家族へポリファーマシーの啓発を行う
  • (Ⅱ)は入所期間3月以上の見込みとLIFEへの提出
  • (Ⅲ)は退所時に継続して1種類以上減薬していること
  • 入所前の処方内容の把握が算定判定の起点になる
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、老企第40号の留意事項通知および令和6年度介護報酬改定の資料にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。本記事は介護報酬の算定要件を整理したものであり、個々の入所者の処方内容の適否や減薬の可否について述べるものではありません。薬剤の評価・調整は医師および薬剤師が、入所者の病状を踏まえて判断するものです。「高齢者の薬物療法に関する十分な経験を有する」ことによるみなしの判断、「継続して1種類以上減少」の判定方法、種類数の数え方の細部については、指定権者によって取扱いが異なる場合があります。LIFEへの提出情報・提出頻度は「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」によります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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