訪問介護の認知症専門ケア加算は(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位。1日につき、です。単位数だけ見れば小さく感じますが、この加算には他の体制加算にない特徴があります。

割合要件を「前3月間のうち、いずれかの月」で判定できることです。3か月とも満たす必要はありません。届出後も、直近3月間のいずれかの月で基準を満たしていればよく、3月ともすべて下回ったときにはじめて届出(取り下げ)が必要になります。多くの体制加算が「平均」や「毎月維持」で判定されるのに比べて、かなり柔軟な設計です。

もうひとつ押さえておきたいのが、この加算は利用者全員に算定するものではないという点。告示は「別に厚生労働大臣が定める者に対して専門的な認知症ケアを行った場合」と書いています。

この記事では、指定居宅サービス介護給付費単位数表(厚生省告示第19号)訪問介護費 ト、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第3号の4、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(同第94号)第3号の2、老企第36号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • (Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位で、1日につき算定すること
  • 対象者に対してのみ算定する加算であること(全員ではない)
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)で対象者の範囲が違うこと
  • 割合要件を「前3月間のいずれかの月」で判定できること
  • 実人員数と延人員数のどちらでもよいこと
  • 研修修了者の配置数の計算方法
  • (Ⅰ)は認知症介護実践リーダー研修等、(Ⅱ)は認知症介護指導者養成研修
  • 会議は登録ヘルパーを含めグループ別・テレビ電話で開催できること
  • (Ⅱ)だけに研修計画の作成が求められること
  • 自立度の確認はサービス担当者会議等でケアマネから情報を得ること

認知症専門ケア加算とは?単位数は3単位と4単位

認知症専門ケア加算とは、認知症介護の専門的な研修を修了した職員を配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施している事業所を評価する加算です。

区分単位数算定の単位対象者
認知症専門ケア加算(Ⅰ)3単位1日につき日常生活自立度Ⅱ以上の者
認知症専門ケア加算(Ⅱ)4単位1日につき日常生活自立度Ⅲ以上の者

別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(中略)届出を行った指定訪問介護事業所において、別に厚生労働大臣が定める者に対して専門的な認知症ケアを行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1日につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。

利用者全員に付く加算ではない

中重度者ケア体制加算のように「要件を満たせば利用者全員に算定できる」タイプの加算と混同されがちですが、違います。「別に厚生労働大臣が定める者に対して」専門的な認知症ケアを行った場合に算定する——対象者を限定した加算です。

したがって、認知症のない利用者や、自立度が要件に届かない利用者には算定できません。利用者ごとに自立度を把握し、区分ごとの対象者を管理する必要があります。

対象者は日常生活自立度で決まる

「厚生労働大臣が定める者」は、平成27年厚生労働省告示第94号(利用者等告示)第3号の2に置かれています。

三の二 (中略)訪問介護費のトの注の厚生労働大臣が定める者

イ 認知症専門ケア加算(Ⅰ)を算定すべき利用者 周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者
ロ 認知症専門ケア加算(Ⅱ)を算定すべき利用者 日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者

この2つの表現が何を指すのか、老企第36号が数値で示しています。

「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者」とは、日常生活自立度のランクⅡ、Ⅲ、Ⅳ又はMに該当する利用者を指し、また、「日常生活に支障を来すおそれのある症状若しくは行動が認められることから介護を必要とする認知症の者」とは、日常生活自立度のランクⅢ、Ⅳ又はMに該当する利用者を指すものとする。

なお、認知症高齢者の日常生活自立度の確認に当たっては、例えばサービス担当者会議等において介護支援専門員から情報を把握する等の方法が考えられる。

区分対象となる自立度
(Ⅰ)3単位ランクⅡ・Ⅲ・Ⅳ・M
(Ⅱ)4単位ランクⅢ・Ⅳ・M
ちびウルフちびウルフ

訪問介護の事業所は、利用者の自立度をどうやって知るんですか?

リハウルフリハウルフ

そこは通知が答えを書いてくれている。「サービス担当者会議等において介護支援専門員から情報を把握する等の方法が考えられる」

認知症高齢者の日常生活自立度は、要介護認定の主治医意見書や認定調査で判定されている。その情報を持っているのはケアマネジャーなんだ。

だから実務では、担当者会議のときに自立度を確認して、記録に残すのがいちばん早い。ケアマネ側から見ても、聞かれれば答えられる情報だよ。事業所側から「自立度を教えてください」と言ってもらったほうが助かる。

(Ⅰ)の3つの要件

厚生労働大臣が定める基準(告示第95号)第3号の4イです。

イ 認知症専門ケア加算(Ⅰ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。

(1) 事業所における利用者の総数のうち、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者(対象者)の占める割合が二分の一以上であること。
(2) 認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を、事業所における対象者の数が二十人未満である場合にあっては一以上、対象者の数が二十人以上である場合にあっては一に対象者の数が十九を超えて十又はその端数を増すごとに一を加えて得た数以上配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施していること。
(3) 当該事業所の従業者に対する認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催していること。

要件内容
(1)割合自立度Ⅱ以上の利用者が2分の1以上
(2)配置認知症介護実践リーダー研修等の修了者を対象者数に応じて配置
(3)会議認知症ケアに関する留意事項の伝達・技術的指導に係る会議を定期的に開催

研修修了者の配置数の計算

対象者の数必要な研修修了者数
20人未満1人以上
20人以上29人以下2人以上
30人以上39人以下3人以上
40人以上49人以下4人以上

条文の「一に対象者の数が十九を超えて十又はその端数を増すごとに一を加えて得た数」を読み解くと、上の表になります。対象者19人までは1人、そこから10人増えるごとに1人ずつ追加という考え方です。

「認知症介護に係る専門的な研修」とは

「認知症介護に係る専門的な研修」とは、(中略)「認知症介護実践リーダー研修」及び認知症看護に係る適切な研修を指すものとする。

認知症介護実践者研修ではなく、実践リーダー研修である点に注意してください。実践者研修を修了しただけでは要件を満たしません。

(Ⅱ)の4つの要件——(Ⅰ)より2つ多い

ロ 認知症専門ケア加算(Ⅱ) 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。

(1) イ(2)及び(3)の基準のいずれにも適合すること。
(2) 事業所における利用者の総数のうち、日常生活に支障を来すおそれのある症状又は行動が認められることから介護を必要とする認知症の者の占める割合が百分の二十以上であること。
(3) 認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者を一名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施していること。
(4) 当該事業所における介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、当該計画に従い、研修(外部における研修を含む。)を実施又は実施を予定していること。

要件(Ⅰ)(Ⅱ)
割合自立度Ⅱ以上が2分の1以上自立度Ⅲ以上が20%以上
実践リーダー研修等修了者対象者数に応じて配置同じ
会議の定期開催必要同じ
指導者養成研修修了者1名以上配置+事業所全体の指導
研修計画介護職員・看護職員ごとに作成し実施(予定)
(Ⅱ)は「指導者」が要る

(Ⅱ)で追加されるのは、認知症介護指導者養成研修の修了者を1名以上配置することです。通知が定義を示しています。

「認知症介護の指導に係る専門的な研修」=認知症介護指導者養成研修および認知症看護に係る適切な研修。実践リーダー研修よりさらに上位の研修です。

加算率の差は1単位ですが、必要な体制の差は小さくありません。まずは(Ⅰ)を確実に取り、指導者を育成してから(Ⅱ)へという順序が現実的です。

割合の判定——「前3月間のいずれかの月」でよい

この加算のいちばん有利な部分です。

認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の割合が2分の1以上、又は、Ⅲ以上の割合が100分の20以上の算定方法は、算定日が属する月の前3月間のうち、いずれかの月の利用者実人員数又は利用延人員数で算定すること。また、届出を行った月以降においても、直近3月間の認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ又はⅢ以上の割合につき、いずれかの月で所定の割合以上であることが必要である。なお、その割合については、毎月記録するものとし、直近3月間のいずれも所定の割合を下回った場合については、直ちに(中略)届出を提出しなければならない。

  • 判定は前3月間のうち、いずれかの月(3月とも満たす必要はない)
  • 利用者実人員数または利用延人員数のどちらでもよい
  • 届出後も直近3月間のいずれかの月で基準を満たしていればよい
  • 割合は毎月記録する
  • 直近3月間のいずれも下回った場合に、直ちに届出
他の体制加算より緩い判定

たとえば通所介護の中重度者ケア体制加算は「前年度または前3月の平均」で判定し、下回れば直ちに取り下げです。認知症専門ケア加算は「3月のうち1月でも満たしていればよい」という設計になっています。

利用者の入退院や新規・終了で月ごとに割合が上下する訪問介護では、この差は大きく効きます。1か月だけ割合が落ちた、というだけで算定を止める必要はありません。

ただし毎月の記録は必須です。3月分の記録がなければ「いずれかの月で満たしている」ことを示せません。

実人員と延人員のどちらでもよい

割合の計算に用いるのは、利用者実人員数または利用延人員数。事業所が有利なほうを選べます。

認知症のある利用者に頻回訪問しているなら、延人員数で計算したほうが割合は高くなります。逆に、認知症のある利用者が週1回の訪問中心なら実人員数のほうが有利です。両方を計算してから判断してください。

会議はグループ別・テレビ電話で開催できる

訪問介護は登録ヘルパーが多く、全員を一堂に集めるのが難しいサービスです。通知はその実情に配慮しています。

「認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議」の実施に当たっては、登録ヘルパーを含めて、全員が一堂に会して開催する必要はなく、いくつかのグループ別に分かれて開催することで差し支えない。

また、「認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議」は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。

  • 登録ヘルパーも含める(一部の職員だけの会議では足りない)
  • ただし一堂に会する必要はない
  • グループ別に分けて開催してよい
  • テレビ電話装置等を活用してよい

「定期的に」の頻度について、この加算の通知には明示がありません。特定事業所加算の会議が「おおむね1月に1回以上」とされていることを参考に、月1回程度の開催と記録を目安に組み立てるのが安全です。頻度の解釈は指定権者に確認してください。

算定にあたっての実務ステップ

  • ケアマネジャーから、利用者ごとの認知症高齢者の日常生活自立度を把握する(担当者会議等)
  • 自立度Ⅱ以上の割合と、Ⅲ以上の割合を、実人員数と延人員数の両方で計算する
  • 直近3月間のうち、いずれかの月で基準を満たしているかを確認する
  • 対象者数に応じた認知症介護実践リーダー研修等修了者の必要数を確認する
  • (Ⅱ)を狙う場合は、認知症介護指導者養成研修の修了者を1名以上確保する
  • (Ⅱ)の場合は、介護職員・看護職員ごとの認知症ケア研修計画を作成する
  • 認知症ケアに関する留意事項の伝達・技術的指導に係る会議を定期的に開催し、記録する(グループ別・テレビ電話可)
  • 都道府県知事へ届け出る
  • 割合を毎月記録し、直近3月間のいずれも下回った場合は直ちに届け出る
  • 対象者に該当する利用者にのみ、1日につき算定する

1つ目がすべての起点です。自立度の情報がなければ、割合も対象者も確定できません。ケアマネジャーとの情報共有の仕組みを先に作ってください。

よくある質問

単位数はいくらですか?

認知症専門ケア加算(Ⅰ)は1日につき3単位、(Ⅱ)は1日につき4単位です。

利用者全員に算定できますか?

できません。告示は「別に厚生労働大臣が定める者に対して専門的な認知症ケアを行った場合」としており、対象となる利用者にのみ算定します。

対象となる利用者は誰ですか?

(Ⅰ)は日常生活自立度のランクⅡ・Ⅲ・Ⅳ・Mに該当する者、(Ⅱ)はランクⅢ・Ⅳ・Mに該当する者です。

自立度はどうやって確認しますか?

通知は「サービス担当者会議等において介護支援専門員から情報を把握する等の方法が考えられる」としています。

(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できますか?

できません。いずれかの加算を算定している場合は、その他の加算は算定しないとされています。

割合は3か月とも満たす必要がありますか?

ありません。算定日が属する月の前3月間のうち、いずれかの月で所定の割合以上であればよいとされています。

割合が下がったらすぐ取り下げですか?

直近3月間のいずれも所定の割合を下回った場合に、直ちに届出を提出することとされています。1か月だけ下回った場合は該当しません。

割合は実人員と延人員のどちらで計算しますか?

どちらでも構いません。通知は「利用者実人員数又は利用延人員数で算定すること」としています。

必要な研修は何ですか?

(Ⅰ)(Ⅱ)に共通して必要なのは認知症介護実践リーダー研修および認知症看護に係る適切な研修です。(Ⅱ)ではさらに認知症介護指導者養成研修の修了者を1名以上配置します。

認知症介護実践者研修でも要件を満たしますか?

通知が示しているのは「認知症介護実践リーダー研修」および認知症看護に係る適切な研修です。実践者研修とは別の研修です。

研修修了者は何人必要ですか?

対象者が20人未満なら1人以上、20人以上の場合は1人に、対象者の数が19を超えて10またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上です。

会議は全員を集めないといけませんか?

いいえ。登録ヘルパーを含めて全員が一堂に会する必要はなく、グループ別に分かれて開催することで差し支えないとされています。テレビ電話装置等の活用も可能です。

まとめ
  • 訪問介護の認知症専門ケア加算は(Ⅰ)3単位・(Ⅱ)4単位、1日につき
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
  • 利用者全員ではなく、対象となる利用者にのみ算定する
  • (Ⅰ)の対象は日常生活自立度Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・M
  • (Ⅱ)の対象は日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M
  • 自立度はサービス担当者会議等でケアマネから把握する
  • (Ⅰ)は自立度Ⅱ以上が2分の1以上、(Ⅱ)はⅢ以上が20%以上
  • 割合は前3月間のうち、いずれかの月で満たしていればよい
  • 実人員数と延人員数のどちらで計算してもよい
  • 割合は毎月記録する
  • 直近3月間のいずれも下回った場合に直ちに届出が必要
  • 1か月だけ下回っても算定を止める必要はない
  • 研修修了者は対象者20人未満で1人、以降10人増ごとに1人追加
  • 共通して必要なのは認知症介護実践リーダー研修等の修了者
  • 実践者研修では要件を満たさない
  • (Ⅱ)は認知症介護指導者養成研修の修了者を1名以上配置する
  • (Ⅱ)は介護職員・看護職員ごとの研修計画の作成も必要
  • 会議は登録ヘルパーを含めるが、一堂に会する必要はない
  • グループ別開催・テレビ電話の活用が認められている
  • まず(Ⅰ)を確保し、指導者を育成してから(Ⅱ)を狙うのが現実的
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第36号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。会議の「定期的」の頻度について本加算の通知に明示はなく、本文中の月1回程度という目安は他加算の規定を参考にした筆者の整理です。必ず指定権者にご確認ください。「認知症看護に係る適切な研修」に該当する研修の範囲、割合の集計方法、届出の様式・提出方法についても指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。体制づくりの進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
PR

リハビリ職の転職・求人なら
レバウェルリハビリ

リハノメ 無料で求人を見る ▶
PR

PT・OT・STのオンラインセミナー
リハノメ

リハノメ セミナーを詳しく見る ▶