看護小規模多機能型居宅介護(看多機)と小規模多機能型居宅介護(小多機)の違いは、名前のとおり「看護」が入っているかどうかです。ただし、その一語がもたらす制度上の差は想像以上に大きい。

いちばん実務に効くのは、併用できるサービスが違うことです。留意事項通知を並べると一目瞭然で、小多機は訪問看護を併用できるが、看多機は併用できません。看多機が訪問看護を内包しているからです。

そして看多機には、小多機にはない義務があります。看護サービスの提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けなければならない(省令34号 第178条第2項)。医師の指示書が要るサービスだ、ということです。

この記事では、指定地域密着型サービス基準(省令34号)と留意事項通知を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 併用できるサービスの違い(訪問看護の1点)
  • 看多機には主治医の指示書が必要であること
  • 人員基準の違い(常勤の保健師・看護師、常勤換算2.5以上)
  • 通いサービス・訪問サービスに看護職員を1人以上置く義務
  • 登録定員・利用定員は両者とも同じであること
  • 看多機が提供する「看護サービス」の定義に理学療法士等が含まれること
  • 「特殊な看護等はこれを行ってはならない」という規定
  • どちらを選ぶかの判断軸
  • 訪問リハビリはどちらでも併用できること
  • 宿泊者がいない夜間の人員の特例

併用できるサービスが違う。差は訪問看護の1点

留意事項通知が、両者を明確に書き分けています。

なお、小規模多機能型居宅介護を受けている間については、訪問看護費、訪問リハビリテーション費、居宅療養管理指導費及び福祉用具貸与費を除く指定居宅サービス並びに指定地域密着型サービスに係る費用の額は算定しないものであること。

なお、複合型サービスを受けている間については、訪問リハビリテーション費、居宅療養管理指導費及び福祉用具貸与費を除く指定居宅サービス並びに指定地域密着型サービスに係る費用の額は算定しないものであること。

サービス小多機看多機(複合型サービス)
訪問看護併用できる併用できない
訪問リハビリテーション併用できる併用できる
居宅療養管理指導併用できる併用できる
福祉用具貸与併用できる併用できる
訪問介護・通所介護・ショートステイ等併用できない併用できない
訪問リハビリはどちらでも併用できる

見落とされやすい重要な点です。訪問リハビリテーション費は、小多機でも看多機でも除外されています。

看多機は看護を内包していますが、リハビリテーションは内包していません。だから外から訪問リハビリを入れられる。「看多機に入ったからリハビリは受けられない」は誤りです。

看多機には主治医の指示書が必要

省令34号 第178条(主治の医師との関係)です。小多機にはこの条文がありません。

指定看護小規模多機能型居宅介護事業所の常勤の保健師又は看護師は、主治の医師の指示に基づき適切な看護サービスが提供されるよう、必要な管理をしなければならない。
2 指定看護小規模多機能型居宅介護事業者は、看護サービスの提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けなければならない。
3 指定看護小規模多機能型居宅介護事業者は、主治の医師に看護小規模多機能型居宅介護計画及び看護小規模多機能型居宅介護報告書を提出し、看護サービスの提供に当たって主治の医師との密接な連携を図らなければならない。

  • 看護サービスの開始には主治医の文書による指示が必要
  • 計画書と報告書を主治医に提出する
  • 管理するのは常勤の保健師または看護師

訪問看護と同じ枠組みです。看多機は「医師の指示のもとで動くサービス」であり、小多機は違う。この点が、利用開始のハードルにも直結します。

人員基準の違い

省令34号 第171条(看多機)と第63条(小多機)の比較です。

項目小多機看多機
通いサービス利用者3人につき1以上(常勤換算)利用者3人につき1以上(常勤換算)
訪問サービス2以上(常勤換算)2以上(常勤換算)
夜間・深夜夜間深夜勤務1以上+宿直勤務に必要な数夜間深夜勤務1以上+宿直勤務に必要な数
常勤の保健師・看護師1以上(必須)
看護職員の総数常勤換算2.5以上
通い・訪問の従業者のうち1以上が看護職員
介護支援専門員専ら従事する者を配置(研修修了者)同様の配置

看多機に追加されているのは、次の3項目です。

3 第一項の看護小規模多機能型居宅介護従業者のうち一以上の者は、常勤の保健師又は看護師でなければならない。
4 第一項の看護小規模多機能型居宅介護従業者のうち、常勤換算方法で二・五以上の者は、保健師、看護師又は准看護師でなければならない。
5 第一項の通いサービス及び訪問サービスの提供に当たる従業者のうち、一以上の者は、看護職員でなければならない。

「常勤換算2.5以上」は、訪問看護ステーションの人員基準と同じ水準です。看多機が訪問看護を内包していると言われるのは、この配置に裏づけがあります。

ちびウルフちびウルフ

小多機にも看護師さんはいますよね? 何が違うんですか?

リハウルフリハウルフ

いる事業所は多いですが、小多機の人員基準には看護職員の必置規定がありません。看護職員配置加算という加算があるくらいで、置くかどうかは事業所の判断です。

看多機は常勤の保健師または看護師が1人以上、看護職員が常勤換算2.5以上、しかも通い・訪問の現場に必ず1人以上。数だけでなく「現場に配置する」ことまで義務づけられているのが決定的な差です。

だから医療的ケアが必要な方は看多機。ここは制度設計どおりに考えて構いません。

「看護サービス」の定義に理学療法士等が含まれる

ここは専門職として押さえておきたい点です。省令34号は看護サービスを次のように定義しています。

看護サービス(指定看護小規模多機能型居宅介護のうち、保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が利用者に対して行う療養上の世話又は必要な診療の補助であるものをいう。)の提供に当たっては、主治の医師との密接な連携により、及び看護小規模多機能型居宅介護計画に基づき、利用者の心身の機能の維持回復が図られるよう妥当適切に行わなければならない。

  • 看護サービスの担い手に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が明記されている
  • ただし内容は「療養上の世話又は必要な診療の補助」に限られる
  • 訪問看護と同じ枠組み(リハ職の訪問は看護業務の一環)

訪問看護における理学療法士等の位置づけと同じ構造です。看多機のリハビリ職は「看護サービスの担い手」として動くため、診療の補助の範囲を超える提供をしたい場合は、外から訪問リハビリテーションを入れることになります。

「特殊な看護等については、これを行ってはならない」

同じ条文に、あまり知られていない規定があります。「特殊な看護等については、これを行ってはならない。」

訪問看護の運営基準にも同趣旨の規定があり、科学的に妥当性が認められない看護を排除する趣旨と解されています。実務で問題になることは多くありませんが、条文上の制約として存在します。

登録定員・利用定員は両者とも同じ

意外に思われるかもしれませんが、定員の基準は完全に同じです。

項目小多機(第66条)看多機(第174条)
登録定員29人以下(サテライト型18人以下)29人以下(サテライト型18人以下)
通いサービスの利用定員登録定員の1/2〜15人登録定員の1/2〜15人
登録定員26・27人通い16人通い16人
登録定員28人通い17人通い17人
登録定員29人通い18人通い18人
宿泊サービスの利用定員通いの利用定員の1/3〜9人通いの利用定員の1/3〜9人

箱の大きさは同じで、中に入る職種が違う。これが小多機と看多機の関係を最も端的に表しています。

夜間の人員には特例がある

両者に共通する特例です。省令34号 第171条第6項(看多機)です。

宿泊サービスの利用者がいない場合であって、夜間及び深夜の時間帯を通じて利用者に対して訪問サービスを提供するために必要な連絡体制を整備しているときは、(中略)夜間及び深夜の時間帯を通じて夜間及び深夜の勤務並びに宿直勤務に当たる従業者を置かないことができる。

泊まりの利用者がいない日は、連絡体制さえ整えれば夜勤・宿直を置かなくてよい、という規定です。小規模な事業所の運営を支える現実的な緩和といえます。

どちらを選ぶかの判断軸

  • 医療的ケア(喀痰吸引、経管栄養、褥瘡処置、点滴管理など)の必要性を確認する
  • 主治医が看護の指示書を出せる状況かを確認する(看多機は文書による指示が必須)
  • 現在すでに訪問看護を使っているかを確認する(看多機に移ると外部の訪問看護は使えない)
  • 訪問リハビリの継続が必要かを確認する(どちらでも併用できる)
  • 退院直後で状態が不安定かを確認する(看多機は退院後の受け皿として設計されている)
  • 地域に看多機の事業所があるかを確認する(小多機に比べて数が少ない)
  • 登録は1か所のみで、担当ケアマネジャーも変わることを説明する

3つ目が実務でよく問題になります。長く付き合ってきた訪問看護ステーションがある方が看多機に移ると、その関係が切れます。看護の質そのものより、この人間関係のほうが移行の障壁になることが多い。

「看多機のほうが上位」ではない

看多機は看護が手厚いぶん、医師の指示という枠組みの中で動きます。指示書がなければ看護サービスを開始できません。

医療的ケアがなく、生活の組み立てが主な課題である方にとっては、小多機のほうが柔軟に動ける場合があります。そのうえで必要な訪問看護だけを外から入れる、という組み方もできる。

「重度なら看多機、軽度なら小多機」という単純な階段ではありません。何を外から入れたいかで選ぶのが実務的です。

よくある質問

看多機と小多機のいちばん大きな違いは何ですか?

看護を内包しているかどうかです。看多機には常勤の保健師または看護師1人以上、看護職員が常勤換算2.5以上という人員基準があり、通い・訪問の現場にも看護職員を1人以上配置します。

併用できるサービスは違いますか?

違います。小多機は訪問看護・訪問リハビリ・居宅療養管理指導・福祉用具貸与の4つ、看多機は訪問リハビリ・居宅療養管理指導・福祉用具貸与の3つです。差は訪問看護の1点です。

看多機で訪問看護を併用できないのはなぜですか?

看多機自体が看護サービスを提供するためです。外から訪問看護を入れると二重の給付になります。

訪問リハビリはどちらでも使えますか?

使えます。訪問リハビリテーション費は、小多機・看多機のいずれでも除外されており、併用できます。

看多機には医師の指示書が必要ですか?

必要です。省令34号 第178条第2項は「看護サービスの提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けなければならない」と定めています。

小多機に看護師はいませんか?

人員基準上の必置規定はありません。看護職員配置加算という加算はありますが、配置するかどうかは事業所の判断です。

看多機のリハビリ職は何ができますか?

省令は看護サービスの担い手に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を明記していますが、内容は「療養上の世話又は必要な診療の補助」に限られます。訪問看護と同じ枠組みです。

登録定員は違いますか?

同じです。どちらも29人以下(サテライト型は18人以下)で、通いサービス・宿泊サービスの利用定員の基準も同一です。

宿泊者がいない日も夜勤は必要ですか?

宿泊サービスの利用者がおらず、夜間・深夜を通じて訪問サービスを提供するための必要な連絡体制を整備している場合は、夜勤・宿直を置かないことができます。

訪問看護を使っている人が看多機に移るとどうなりますか?

外部の訪問看護は使えなくなり、看多機の看護サービスに切り替わります。長く関わってきた事業所との関係が切れるため、事前の説明が重要です。

重度なら必ず看多機がよいのですか?

そうとは限りません。看多機は医師の指示という枠組みの中で動きます。医療的ケアがなく生活の組み立てが課題であれば、小多機に必要な訪問看護だけを外から入れる組み方も有効です。

ケアマネジャーはどうなりますか?

どちらも事業所に配置された介護支援専門員が居宅サービス計画を作成します。それまでの居宅介護支援事業所からは離れます。

まとめ
  • 看多機と小多機の違いは「看護を内包しているか」に集約される
  • 併用できるサービスの差は訪問看護の1点だけ
  • 小多機は訪問看護・訪問リハビリ・居宅療養管理指導・福祉用具貸与の4つ
  • 看多機は訪問リハビリ・居宅療養管理指導・福祉用具貸与の3つ
  • 看多機で訪問看護を併用できないのは、自ら看護サービスを提供するため
  • 訪問リハビリはどちらでも併用できる(看多機はリハを内包していない)
  • 看多機は看護サービスの開始に主治医の文書による指示が必要
  • 計画書と報告書を主治医に提出する義務がある
  • 管理するのは常勤の保健師または看護師
  • 看多機は常勤の保健師または看護師を1人以上配置する
  • 看護職員は常勤換算2.5以上(訪問看護ステーションと同水準)
  • 通いサービス・訪問サービスの従業者のうち1以上が看護職員
  • 小多機には看護職員の必置規定がない
  • 看多機の「看護サービス」の担い手に理学療法士等が明記されている
  • ただし内容は「療養上の世話又は必要な診療の補助」に限られる
  • 「特殊な看護等については、これを行ってはならない」という規定がある
  • 登録定員は両者とも29人以下(サテライト型18人以下)で同じ
  • 通いは登録定員の1/2〜15人、宿泊は通いの1/3〜9人で同じ
  • 宿泊者がいない日は、連絡体制があれば夜勤・宿直を置かなくてよい
  • 看多機に移ると、外部の訪問看護との関係は切れる
  • 「重度なら看多機」という単純な階段ではない
  • 何を外から入れたいかで選ぶのが実務的
参考にした情報

※本記事の内容は、厚生労働省の省令、告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の利用・算定にあたっては原文および保険者(市町村)の解釈をご確認ください。小規模多機能型居宅介護および看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導監督は市町村が行うため、運用の細部が市町村によって異なる場合があります。人員基準の記載はサテライト型事業所や本体事業所との関係により例外が設けられている場合があり、本記事では基本的な形を示しています。詳細は省令の原文をご確認ください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。選択の判断軸や移行時の説明に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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