同居家族がいると生活援助は使えない?厚労省通知の原文で解説

同居家族がいても、生活援助は使えます。「同居家族がいるから生活援助は使えない」という運用は、厚生労働省が2度にわたって是正を求めてきたものです。
平成21年12月25日 老振発1224第1号は、都道府県に対してこう書いています。「生活援助等において同居家族等がいることのみを判断基準として、一律機械的にサービスに対する保険給付の支給の可否について決定することがないよう、改めて周知徹底していただくようお願いいたします。」
「改めて」とあるのは、その前にも同じ趣旨の事務連絡(平成20年8月25日付)を出しているからです。それでも直らないので念を押した、というのがこの通知の位置づけです。
この記事では、老振発1224第1号とその別紙リーフレット、老企第36号 第二の2(6)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 同居家族がいるだけでは生活援助を断れないという通知の原文
- 厚生労働省が2度にわたって是正を求めた経緯
- 使える場合として国のリーフレットが挙げている3類型
- 「障害や疾病でなくても」の具体例3つ(高齢・介護疲れ・就労)
- 老企第36号が「やむを得ない事情」を広く読んでいること
- ケアプランに算定理由を記載する義務
- それでも保険者ごとにローカルルールが残る理由
- 同居家族の分の家事はできないという別の制限
- 断られたときに確認すべきこと
- 訪問介護員が自分の同居家族にサービス提供できない規定
同居家族がいることだけを理由に生活援助を断ることはできない
平成21年12月25日 老振発1224第1号「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」(厚生労働省老健局振興課長)の本文です。
標記については、「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス及び介護予防訪問介護サービスの生活援助等の取扱いについて」(平成20年8月25日付老健局振興課事務連絡)等を通じて、適切なケアプランに基づき、個々の利用者の状況に応じて具体的に判断されるべきものであることを改めて周知するとともに、管内市町村、介護サービス事業者、関係団体、利用者等に幅広く情報提供していただくようお願いしているところです。
しかしながら、依然として同居家族等の有無のみにより生活援助の提供が判断されているという指摘があることから、各都道府県におかれては、管内の市町村に対して、生活援助等において同居家族等がいることのみを判断基準として、一律機械的にサービスに対する保険給付の支給の可否について決定することがないよう、改めて周知徹底していただくようお願いいたします。
- 判断は適切なケアプランに基づき、個々の利用者の状況に応じて具体的に行う
- 同居家族等がいることのみを判断基準にしてはならない
- 一律機械的に支給の可否を決定してはならない
この短い通知に「改めて」が2回登場します。平成20年8月の事務連絡で一度言い、それでも「依然として同居家族等の有無のみにより生活援助の提供が判断されているという指摘がある」ため、翌年また出した。
つまり国の側は、この運用を明確に問題視しているということです。「同居家族がいるから使えません」と言われた場合、この通知を示して再検討を求める余地があります。
国のリーフレットが示した3類型
同じ通知には別紙として、利用者向けのリーフレット「介護保険制度 訪問介護について ちょっとしたご案内」(厚生労働省)が付いています。ここに使える場合が具体的に書かれています。
どのような場合に生活援助は利用できますか?
介護保険で利用できる生活援助は、適切なケアプランに基づき、次のような理由により自ら行うことが困難であると認められた、日常生活上必要な家事の支援です。
○利用者が一人暮らしの場合
○利用者の家族等が障害や疾病等の理由により、家事を行うことが困難な場合
※利用者の家族が障害や疾病でなくても、その他の事情により、家事が困難な場合
この「※」の部分に、例が3つ挙げられています。
| 例 | リーフレットの記載 |
|---|---|
| ①高齢 | 家族が高齢で筋力が低下していて、行うのが難しい家事がある場合 |
| ②介護疲れ | 家族が介護疲れで共倒れ等の深刻な問題が起きてしまうおそれがある場合 |
| ③就労 | 家族が仕事で不在の時に、行わなくては日常生活に支障がある場合 |
そしてリーフレットは、次の一文で締めくくられています。
上記のように、利用者に同居家族がいるということだけで一律に生活援助が利用できないわけではありません。ご家族の状況等を確認した上で、利用が可能な場合もありますので、担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)にご相談下さい。
国が利用者向けに配るチラシで、ここまで明言しています。「同居家族がいるから無理」という説明が、いかに国の立場から外れているかが分かります。
③の「仕事で不在の時に」は使いどころが広い
3つの例のうち、実務でいちばん効くのが③です。「家族が仕事で不在の時に、行わなくては日常生活に支障がある場合」。
共働き世帯や、日中に家族が働きに出ている世帯は珍しくありません。同居していても、日中は独居と変わらない状態という家庭は多い。この状況は、リーフレットが明示的に認めている類型です。
ただし条件があります。「行わなくては日常生活に支障がある」こと。夜に家族が帰ってきてからやれば足りる家事は、この理屈に乗りません。昼食の準備のように、その時間帯に行わなければならない家事であることが要ります。
ちびウルフケアマネさんに「同居だから生活援助は無理です」って言われたら、どうすればいいんですか?
リハウルフまず「保険者のローカルルールですか、それとも国の通知ですか」と聞いてください。国の通知には「無理」とは書いていない。書いてあるのは逆のことです。
そのうえで、家族の状況を具体的に伝える。何時から何時まで不在なのか、その時間帯にどの家事が必要なのか。「同居しているか」ではなく「その時間、その家事が本人にできるか」が論点です。ここを事実で埋めれば、判断が変わることは実際にあります。
老企第36号も「やむを得ない事情」を広く読んでいる
報酬算定のルールを定める老企第36号 第二の2(6)も、同じ方向です。
注3において「生活援助中心型」の単位を算定することができる場合として「利用者が一人暮らしであるか又は家族等が障害、疾病等のため、利用者や家族等が家事を行うことが困難な場合」とされたが、これは、障害、疾病のほか、障害、疾病がない場合であっても、同様のやむを得ない事情により、家事が困難な場合をいうものであること。
| 条文の文言 | 通知による解釈 |
|---|---|
| 利用者が一人暮らし | そのまま |
| 家族等が障害、疾病等のため家事が困難 | 障害・疾病がなくても、同様のやむを得ない事情があればよい |
「等」の一文字を、通知が明示的に広げています。告示の文言だけを読むと「障害か疾病がないとダメ」に見えますが、通知はそう読まないと言っているわけです。
ただしケアプランへの記載は義務
同じ(6)の後段は、ケアマネジャーに宿題を課しています。
なお、居宅サービス計画に生活援助中心型の訪問介護を位置付ける場合には、居宅サービス計画書に生活援助中心型の算定理由その他やむを得ない事情の内容について記載するとともに、生活全般の解決すべき課題に対応して、その解決に必要であって最適なサービスの内容とその方針を明確に記載する必要がある。
「同居家族がいても使える」の裏返しは、「なぜ必要なのかを書かなければならない」ということです。一人暮らしなら理由は自明ですが、同居家族がいる場合は説明が要る。
通知が求めているのは次の2点です。
- 生活援助中心型の算定理由、その他やむを得ない事情の内容
- 生活全般の解決すべき課題に対応した、サービスの内容とその方針
「同居家族は就労のため日中不在」だけでは足りません。その時間帯にその家事を行わないと生活に支障が出ることまで書いて、初めて説明になります。実地指導で見られるのはここです。
それでも保険者ごとのローカルルールが残る理由
国が2度も是正を求めたにもかかわらず、現在も保険者によって運用に差があります。理由は構造的なものです。
- 通知は「一律機械的に決定するな」と言っているが、どこまでなら認めるかの基準は示していない
- 判断は「個々の利用者の状況に応じて具体的に」=裁量が保険者に残る
- 保険者は給付費の適正化を求められており、抑制方向に働く動機がある
- 結果として、独自の判断基準を文書化する保険者が出る
したがって、「国の通知ではこうなっている」は正論として正しいが、それだけでは通らない場面があるのが現実です。国の通知を根拠にしつつ、その保険者が何を求めているかを確認する、という二段構えが要ります。
「使える」のは利用者本人のための家事だけ
ここは混同しやすいので分けて整理します。同居家族がいる場合の生活援助には、性質のまったく違う2つの制限がかかります。
| 制限の内容 | 根拠 | 同居家族がいる場合 | |
|---|---|---|---|
| ①使えるかどうか | 生活援助中心型を算定できるか | 老企第36号 第二の2(6) 老振発1224第1号 | 一律に否定してはならない |
| ②何ができるか | 誰のための家事か | 老振第76号 別紙 | 利用者以外の分はできない |
①が認められても、②の制限は残ります。老振第76号の別紙は、「利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し」と「主として利用者が使用する居室等以外の掃除」を、直接本人の援助に該当しない行為として明記しています。
つまり「同居家族がいても生活援助は使えるが、使えるのは利用者本人の分だけ」が正確な整理です。利用者の分の食事を作るのはよいが、家族の分も一緒に作ることはできません。
ちびウルフ一人分だけ作るって、かえって手間じゃないですか?
リハウルフ手間です。でも制度はそう作られています。保険料と税で賄うものだから、受益者は利用者本人に限るという筋です。
担当したケースでは、最初の契約時に「本人の分だけです」と説明しておいて、それでも家族分が必要なら自費のメニューを併せて提示していました。途中から線を引き直すのがいちばん揉めるので、入口で言い切るほうが結局うまくいきます。
訪問介護員が自分の同居家族に提供することはできない
関連する別の規定も押さえておきます。指定居宅サービス等基準(平成11年厚生省令第37号)第25条です。
指定訪問介護事業者は、訪問介護員等にその同居の家族である利用者に対する訪問介護の提供をさせてはならない。
これは「同居家族がいる利用者が生活援助を使えるか」とはまったく別の話です。ヘルパー資格を持つ家族が、自分の親に訪問介護として入ることはできないという規定です。混同されることがあるので、区別して覚えてください。
断られたときに確認すること
ケアマネジャーとして、あるいは家族として確認すべき順序です。
- 断る根拠が国の通知なのか、保険者の独自基準なのかを確認する
- 保険者の基準なら、その文書を示してもらう(口頭のみの運用であることが少なくない)
- リーフレットの3類型(高齢・介護疲れ・就労による不在)のどれかに当てはまらないか検討する
- 当てはまるなら、その時間帯にその家事を行わないと生活に支障が出ることを、事実で具体化する
- 居宅サービス計画書に算定理由とやむを得ない事情の内容を記載し、再度協議する
- それでも認められない場合は、保険者に直接照会する
順番が大事です。いきなり通知を突きつけるより、まず「何が根拠か」を確認するほうが話が進みます。多くの場合、根拠として示されるのは国の通知ではありません。
よくある質問
同居家族がいると生活援助は使えませんか?
使えます。平成21年12月25日 老振発1224第1号は、同居家族等がいることのみを判断基準として一律機械的に支給の可否を決定しないよう、都道府県を通じて市町村に周知徹底を求めています。
家族が健康でも使えますか?
使える場合があります。厚生労働省のリーフレットは「利用者の家族が障害や疾病でなくても、その他の事情により、家事が困難な場合」を挙げ、例として家族の高齢による筋力低下、介護疲れ、仕事による不在を示しています。
家族が日中働いている場合は?
「家族が仕事で不在の時に、行わなくては日常生活に支障がある場合」としてリーフレットに明示されています。ただし「その時間帯に行わないと支障がある」ことが要件です。
介護疲れも理由になりますか?
なります。「家族が介護疲れで共倒れ等の深刻な問題が起きてしまうおそれがある場合」がリーフレットに例示されています。
ケアプランには何を書けばよいですか?
老企第36号は、生活援助中心型の算定理由その他やむを得ない事情の内容と、解決すべき課題に対応したサービスの内容・方針を、居宅サービス計画書に明確に記載することを求めています。
同居家族の分の食事も作ってもらえますか?
できません。老振第76号の別紙は「利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し」を直接本人の援助に該当しない行為としています。生活援助が使えることと、家族の分ができることは別です。
家族が使う部屋の掃除はできますか?
できません。「主として利用者が使用する居室等以外の掃除」も給付対象外とされています。
保険者ごとに判断が違うのはなぜですか?
通知は「一律機械的に決定するな」と定めていますが、どこまで認めるかの具体的な基準は示していません。判断は「個々の利用者の状況に応じて具体的に」とされ、裁量が保険者に残るためです。
断られた場合はどうすればよいですか?
まず断る根拠が国の通知か保険者の独自基準かを確認し、独自基準ならその文書の提示を求めてください。そのうえで家族の状況を具体的な事実として示し、再度協議します。
厚生労働省は同じ内容を何度も通知しているのですか?
平成20年8月25日付の事務連絡に続き、平成21年12月25日にも通知が出されています。後者には「依然として同居家族等の有無のみにより生活援助の提供が判断されているという指摘がある」と明記されています。
ヘルパー資格のある家族が親に訪問介護を提供できますか?
できません。指定居宅サービス等基準第25条が「訪問介護員等にその同居の家族である利用者に対する訪問介護の提供をさせてはならない」と定めています。これは同居家族と生活援助の話とは別の規定です。
身体介護には同居家族の制限がありますか?
生活援助中心型に固有の要件であり、身体介護中心型にはこの要件はありません。身体介護は利用者本人への直接の介助であるため、同居家族の有無で算定の可否が変わるものではありません。
- 同居家族がいるだけで生活援助を否定することはできない
- 根拠は平成21年12月25日 老振発1224第1号
- 「同居家族等がいることのみを判断基準として、一律機械的に決定しないよう」と明記
- 判断は適切なケアプランに基づき、個々の利用者の状況に応じて具体的に行う
- 平成20年8月25日付の事務連絡に続く2度目の通知である
- 「依然として同居家族等の有無のみにより判断されている」と国が問題視している
- 国のリーフレットは、一人暮らし/家族の障害・疾病/その他の事情の3類型を示す
- その他の事情の例は、家族の高齢による筋力低下
- 同じく、介護疲れによる共倒れ等のおそれ
- 同じく、家族が仕事で不在の時に行わないと生活に支障がある場合
- リーフレットは「一律に生活援助が利用できないわけではありません」と明言している
- 老企第36号も「障害、疾病がない場合であっても、同様のやむを得ない事情」を認める
- ただし居宅サービス計画書への算定理由の記載は義務
- 「同居家族は就労のため不在」だけでは記載として不十分
- その時間帯にその家事を行わないと支障が出ることまで書く
- 通知は具体的な基準を示していないため、保険者ごとに運用差が残る
- 「使えるか」と「何ができるか」はまったく別の制限
- 使える場合でも、利用者以外の分の洗濯・調理・買い物・布団干しはできない
- 主として利用者が使用する居室等以外の掃除もできない
- ヘルパー資格のある家族が自分の同居家族に提供することは基準第25条で禁止
- 断られたら、まず根拠が国の通知か保険者の独自基準かを確認する
- 身体介護中心型には、同居家族の有無による要件はない
- 同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて(平成21年12月25日 老振発1224第1号 厚生労働省老健局振興課長)(PDF)本文および別紙「介護保険制度 訪問介護についてちょっとしたご案内」(厚生労働省)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号)第二の2(6)「生活援助中心型」の単位を算定する場合(全国老人保健施設協会 法令・Q&A検索システム)
- 指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について(平成12年11月16日 老振第76号)(PDF)別紙「一般的に介護保険の家事援助の範囲に含まれないと考えられる事例」(国立社会保障・人口問題研究所)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第25条(同居家族に対するサービス提供の禁止)(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の内容は、厚生労働省の通知および省令にもとづいて整理したものです。実際の判断にあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。生活援助中心型の算定の可否、「やむを得ない事情」に該当するかどうかの判断は、市町村(保険者)によって解釈・運用が異なる場合があります。本記事は特定の保険者の運用を保証するものではありません。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。断られた場合の確認手順や家族への説明の進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




