小規模多機能型居宅介護の口腔・栄養スクリーニング加算とは?20単位の算定要件を解説

小規模多機能型居宅介護(小多機)の口腔・栄養スクリーニング加算は、1回につき20単位です。利用開始時と、利用中6月ごとに算定します。
同じ名前の加算が通所介護や看多機にもありますが、小多機だけ条文の構造が違います。通所介護・看多機は(Ⅰ)20単位・(Ⅱ)5単位の2区分で「口腔又は栄養」のどちらかでよいのに対し、小多機は区分がなく、口腔と栄養の両方を行った場合に20単位という設計です。
算定率は5.2%(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)。20事業所に1つしか算定していません。要件は「確認してケアマネジャーに情報提供する」だけで、届出も研修も不要な加算にもかかわらず、です。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費のヲ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第42号の6を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 口腔・栄養スクリーニング加算の単位数(20単位/回)と算定するタイミング
- 小多機には(Ⅰ)(Ⅱ)の区分がないこと
- 口腔と栄養の「両方」が必要である理由
- ケアマネジャーへの情報提供が要件の中心であること
- 状態が低下している場合に「改善に必要な情報」まで求められること
- 他の事業所で算定している場合は算定できないこと
- 通所介護・看多機の同名加算との違い
- 要支援でも算定できること
- 算定率5.2%をどう読むか
20単位・区分なし。口腔と栄養の両方が必要
告示126号の小規模多機能型居宅介護費「ヲ 口腔・栄養スクリーニング加算 20単位」の注は、次のとおりです。
イについて、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する指定小規模多機能型居宅介護事業所の従業者が、利用開始時及び利用中6月ごとに利用者の口腔の健康状態のスクリーニング及び栄養状態のスクリーニングを行った場合に、1回につき所定単位数を加算する。ただし、当該利用者について、当該事業所以外で既に口腔・栄養スクリーニング加算を算定している場合にあっては算定しない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 1回につき20単位 |
| 区分 | なし(1区分のみ) |
| タイミング | 利用開始時および利用中6月ごと |
| 対象 | 「イ」=小規模多機能型居宅介護費(登録者) |
| 届出 | 条文上の定めなし |
| 制限 | 他事業所で既に算定している場合は算定不可 |
注目すべきは「口腔の健康状態のスクリーニング及び栄養状態のスクリーニング」という書きぶりです。片方だけでは算定できません。
要件は「確認」と「ケアマネジャーへの情報提供」
告示95号 第42号の6が定める基準は、次の3つです。
- イ 口腔:利用開始時および利用中6月ごとに利用者の口腔の健康状態について確認を行い、その情報(口腔の健康状態が低下しているおそれのある場合は、その改善に必要な情報を含む)を、当該利用者を担当する介護支援専門員に提供していること
- ロ 栄養:利用開始時および利用中6月ごとに利用者の栄養状態について確認を行い、その情報(低栄養状態の場合は、その改善に必要な情報を含む)を、担当する介護支援専門員に提供していること
- ハ:定員超過利用・人員基準欠如等の減算に該当しないこと
この加算には職種の指定がありません。条文は「指定小規模多機能型居宅介護事業所の従業者が」としており、介護職員が実施しても構いません。
口腔機能向上加算や栄養改善加算のように、歯科衛生士・管理栄養士の関与を求める加算とは性格が異なります。スクリーニング(ふるい分け)に徹した加算だと理解してください。
「改善に必要な情報を含む」が実務の要点
単に「口腔に問題あり」「低栄養の疑いあり」と伝えるだけでは足りません。条文は、状態が低下している場合にはその改善に必要な情報を含めてケアマネジャーに提供することを求めています。
小多機の場合、担当の介護支援専門員は自事業所の職員です。外部のケアマネジャーへの情報提供ではなく、事業所内での情報共有が中心になります。
ちびウルフ事業所の中で情報を渡すだけなら、記録はどう残せばいいんでしょう?
リハウルフ小多機はここが盲点になりやすいところです。「同じ事業所の中だから口頭で伝えている」では、提供したことを証明できません。
実務としては、スクリーニングの結果を様式に残し、それを小規模多機能型居宅介護計画の見直しに反映した記録まで残すのが確実です。介護支援専門員が受け取った日付が分かる形にしておいてください。
訪問リハの立場から言うと、口腔と栄養は誤嚥性肺炎と体重減少という、在宅生活が崩れる二大要因に直結します。20単位のための作業と考えるより、6月ごとに強制的に確認する仕組みが入ると考えたほうが実態に合います。
通所介護・看多機の同名加算との違い
同じ「口腔・栄養スクリーニング加算」でも、サービスによって構造が違います。
| サービス | 区分 | スクリーニングの対象 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 小規模多機能型居宅介護 | 区分なし・20単位 | 口腔及び栄養(両方) | 告示95号 第42号の6 |
| 看護小規模多機能型居宅介護 | (Ⅰ)20単位/(Ⅱ)5単位 | 口腔又は栄養 | 告示95号 第19号の2 |
| 通所介護 | (Ⅰ)20単位/(Ⅱ)5単位 | 口腔又は栄養 | 告示95号 第19号の2 |
看多機や通所介護の(Ⅱ)5単位は、栄養アセスメント加算や口腔機能向上加算を算定していて、片方のスクリーニングしかできない場合の受け皿として設けられた区分です。
小多機には栄養アセスメント加算も口腔機能向上加算もありません(いずれも看多機にはあります)。そのため調整すべき加算が存在せず、区分を分ける必要がないという構造になっています。
| 加算 | 小多機 | 看多機 |
|---|---|---|
| 口腔・栄養スクリーニング加算 | ○(20単位・区分なし) | ○(Ⅰ)20/(Ⅱ)5単位 |
| 栄養アセスメント加算 | × | ○(50単位) |
| 栄養改善加算 | × | ○(200単位) |
| 口腔機能向上加算 | × | ○(150/160単位) |
小多機は口腔・栄養に関する加算がこの1本しかありません。スクリーニングで問題を見つけても、事業所側にそれを評価する加算はない、という構造です。
他の事業所で算定している場合は算定できない
注のただし書きは「当該利用者について、当該事業所以外で既に口腔・栄養スクリーニング加算を算定している場合にあっては算定しない」としています。
もっとも小多機の登録者は、通所介護や通所リハなど他の通所系サービスを併用できません(登録者への給付調整)。実際に競合が起きる場面は限られます。
要支援でも算定できる
告示95号 第42号の6は、介護予防小規模多機能型居宅介護費も対象に含めています。指定地域密着型介護予防サービスの報酬告示(平成18年厚生労働省告示第128号)にも、20単位の口腔・栄養スクリーニング加算が置かれています。
| 加算 | 要支援での算定 |
|---|---|
| 口腔・栄養スクリーニング加算 | ○(20単位) |
| 科学的介護推進体制加算 | ○(40単位) |
| 総合マネジメント体制強化加算 | ○ |
| 認知症加算・看護職員配置加算・訪問体制強化加算 | × |
算定率5.2%|要件の軽さに対して極端に低い
| 加算 | 単位数 | 算定率(事業所ベース) | 要件の重さ |
|---|---|---|---|
| 総合マネジメント体制強化加算 | 1,000単位/月 | 90.0% | 体制・地域活動 |
| 訪問体制強化加算 | 1,000単位/月 | 42.4% | 常勤2名・月200回 |
| 科学的介護推進体制加算 | 40単位/月 | 33.3% | LIFE提出・活用 |
| 口腔・栄養スクリーニング加算 | 20単位/回 | 5.2% | 確認と情報提供 |
科学的介護推進体制加算(LIFEへのデータ提出が必要)が33.3%なのに対し、より要件の軽いこの加算が5.2%にとどまっています。
20単位×年2回=年40単位。登録者25人でも年間1,000単位(約1万円)です。手間に見合わないと判断されてきたのは理解できます。
ただし要件は「6月ごとに口腔と栄養を確認し、結果をケアマネジャーに渡す」ことです。小多機は担当の介護支援専門員が同じ事業所にいるため、外部連携の手間がありません。
すでに定期的な状態確認を行っている事業所なら、様式を整えて記録に残すだけで要件を満たす可能性があります。加算のために新しい業務を作るのではなく、やっていることを記録の形にできていないかを確認してみてください。
小多機の口腔・栄養スクリーニング加算はいくらですか?
1回につき20単位です。利用開始時と利用中6月ごとに算定します。区分はありません。
口腔だけ、栄養だけの確認でも算定できますか?
できません。小多機の条文は「口腔の健康状態のスクリーニング及び栄養状態のスクリーニングを行った場合」としており、両方が必要です。通所介護や看多機では「又は」となっており、片方でも(Ⅱ)5単位を算定できます。
誰が実施すればよいですか?
条文は「事業所の従業者が」としており、職種の指定はありません。歯科衛生士や管理栄養士の関与は要件になっていません。
要件の中心は何ですか?
確認した結果を、担当する介護支援専門員に情報提供することです。口腔の健康状態が低下しているおそれがある場合や低栄養状態の場合には、改善に必要な情報を含めて提供する必要があります。
小多機は担当ケアマネジャーが同じ事業所ですが、それでも情報提供が必要ですか?
必要です。同一事業所内であっても、提供したことが記録で確認できる状態にしておくべきです。口頭のみでは要件を満たしたことを説明できません。
届出は必要ですか?
告示の注に届出の文言はありません。ただし運用は市町村にご確認ください。
6月ごととは、いつから数えますか?
利用開始時に1回算定し、その後は利用中6月ごとです。年2回のペースになります。
他の事業所で算定されている場合はどうなりますか?
算定できません。ただし小多機の登録者は通所系サービスを併用できないため、実際に競合する場面は限られます。
小多機に栄養改善加算や口腔機能向上加算はありますか?
ありません。いずれも看多機には設けられていますが、小多機の口腔・栄養に関する加算はこの1本のみです。
要支援でも算定できますか?
できます。介護予防小規模多機能型居宅介護にも20単位の口腔・栄養スクリーニング加算が設けられています。
- 小多機の口腔・栄養スクリーニング加算は1回20単位、区分なし
- 利用開始時と利用中6月ごとに算定する(年2回のペース)
- 口腔と栄養の両方のスクリーニングが必要(通所や看多機は「又は」)
- 要件は確認と、担当する介護支援専門員への情報提供
- 状態が低下している場合は「改善に必要な情報」まで含めて提供する
- 実施者の職種指定はなく、歯科衛生士や管理栄養士の関与は不要
- 小多機は担当ケアマネジャーが自事業所のため、記録で提供を示すことが重要
- 他の事業所で既に算定されている場合は算定できない
- 小多機は通所系サービスを併用できないため、競合場面は限られる
- 小多機には栄養アセスメント加算・栄養改善加算・口腔機能向上加算がない
- 調整すべき加算がないため、(Ⅰ)(Ⅱ)の区分も設けられていない
- 要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)でも20単位で算定できる
- 算定率は5.2%で、より要件の重い科学的介護推進体制加算(33.3%)を下回る
- 年40単位・登録者25人で年間約1万円と金額は小さい
- すでに定期的な状態確認をしているなら、記録の整理だけで要件を満たす可能性がある
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 指定地域密着型サービス介護給付費単位数表「小規模多機能型居宅介護費」ヲ(口腔・栄養スクリーニング加算)、「複合型サービス費」ト・チ・リ・ヌ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第42号の6(特定施設入居者生活介護費、小規模多機能型居宅介護費等における口腔・栄養スクリーニング加算の基準)、第19号の2(通所介護費、看護小規模多機能型居宅介護費等における同加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)別表「介護予防小規模多機能型居宅介護費」チ(口腔・栄養スクリーニング加算)(厚生労働省法令等データベース)
- 社会保障審議会介護給付費分科会(第218回)資料2「小規模多機能型居宅介護」(PDF)小規模多機能型居宅介護の算定状況(介護給付費等実態統計 令和4年4月審査分)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および審議会資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。地域密着型サービスの指定・指導は市町村が行うため、スクリーニングの実施方法・記録様式・情報提供の証明方法が自治体によって異なる場合があります。本記事は告示の文言にもとづいて整理しており、留意事項通知の細目までは反映していません。本文中の金額は単位数を単純に積算した概算です。算定率は令和4年3月サービス提供分の数値です。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。記録の残し方や口腔・栄養の重要性に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




