小規模多機能型居宅介護のサービス提供体制強化加算とは?750・640・350単位の要件を解説

小規模多機能型居宅介護(小多機)のサービス提供体制強化加算は、(Ⅰ)750単位・(Ⅱ)640単位・(Ⅲ)350単位(いずれも1月につき)です。短期利用居宅介護費を算定する場合は、1日につき25単位・21単位・12単位になります。
区分を分けているのは職員の資格構成と勤続年数です。ただし割合を計算するときに、看護師・准看護師を母数から除く区分と、除かない区分が混在している点が実務で混乱を招きます。(Ⅲ)の「常勤割合60%以上」と「勤続7年以上30%以上」だけは、看護職員も含めた全従業者で計算します。
算定率は(Ⅰ)19.7%・(Ⅲ)27.6%(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)。3区分のどれかを算定している事業所は約半数です。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費のヨ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第57号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 3区分の単位数と、短期利用の場合の単位数
- すべての区分に共通する2つの土台要件(研修計画・会議)
- (Ⅰ)介護福祉士70%または勤続10年以上の介護福祉士25%
- (Ⅱ)介護福祉士50%
- (Ⅲ)介護福祉士40%/常勤60%/勤続7年以上30%のいずれか
- 割合の母数から看護師・准看護師を除く区分と除かない区分の違い
- 3区分は同時に算定できないこと
- 算定率から見た現実的な狙いどころ
- 要支援でも算定できること
3区分の単位数|登録者は月額、短期利用は日額
| 区分 | 小規模多機能型居宅介護費(イ) | 短期利用居宅介護費(ロ) |
|---|---|---|
| サービス提供体制強化加算(Ⅰ) | 750単位/月 | 25単位/日 |
| サービス提供体制強化加算(Ⅱ) | 640単位/月 | 21単位/日 |
| サービス提供体制強化加算(Ⅲ) | 350単位/月 | 12単位/日 |
3区分は同時に算定できません。告示126号 ヨの注が「次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない」としています。
(Ⅰ)と(Ⅲ)の差は400単位/月。登録者20人なら月8,000単位、年間で96,000単位(約96万円)の違いになります。
すべての区分に共通する2つの土台
告示95号 第57号は、(Ⅱ)(Ⅲ)についても「イ(1)、(2)及び(4)に適合すること」を求めています。つまり次の3点はどの区分でも必須です。
- 研修計画と研修の実施:すべての小規模多機能型居宅介護従業者に対し、従業者ごとに研修計画を作成し、研修(外部研修を含む)を実施または実施を予定していること
- 会議の定期開催:利用者に関する情報もしくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達、または従業者の技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること
- 減算に該当しないこと:定員超過利用・人員基準欠如等(通所介護費等算定方法第7号)に該当しないこと
「事業所全体の年間研修計画」ではありません。条文は「小規模多機能型居宅介護従業者ごとに研修計画を作成し」としています。
常勤・非常勤を問わずすべての従業者が対象です。実地指導では、全職員分の個別計画が揃っているかを確認されます。ここが欠けていると、資格割合を満たしていても算定できません。
区分ごとの割合要件
| 区分 | 割合要件 | 母数 |
|---|---|---|
| (Ⅰ)750単位 | 介護福祉士の割合が70%以上 | 従業者のうち看護師・准看護師を除く |
| または、勤続年数10年以上の介護福祉士の割合が25%以上 | ||
| (Ⅱ)640単位 | 介護福祉士の割合が50%以上 | |
| (Ⅲ)350単位 | 介護福祉士の割合が40%以上 | 看護師・准看護師を除く |
| または、常勤職員の割合が60%以上 | 従業者の総数(看護職員を含む) | |
| または、勤続年数7年以上の者の割合が30%以上 |
(Ⅰ)と(Ⅲ)はいずれか1つを満たせば足ります。(Ⅱ)だけは介護福祉士50%以上の一本道です。
条文を読み比べると、次の違いがあります。
介護福祉士の割合を見る要件((Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(一))は、いずれも「小規模多機能型居宅介護従業者(看護師又は准看護師であるものを除く。)の総数のうち」と書かれています。
一方、(Ⅲ)の常勤割合60%と勤続7年以上30%は、「小規模多機能型居宅介護従業者の総数のうち」とだけあり、看護師・准看護師を除く括弧書きがありません。
看護職員を母数に含めるかどうかで割合は変わります。要件ごとに計算し直す必要があります。
ちびウルフうちは介護福祉士が半分くらい。(Ⅱ)は届きそうだけど(Ⅰ)は遠いです……。
リハウルフその場合は(Ⅰ)のもう一方の道=「勤続10年以上の介護福祉士が25%以上」を計算してみてください。
小多機は開設から年数が経っている事業所も多い。介護福祉士の総数が少なくても、そのうちベテランが多ければ25%に届くことがあります。
たとえば看護職員を除く従業者が12人、うち介護福祉士6人(50%)なら(Ⅱ)です。しかしその6人のうち3人が勤続10年以上なら、12人中3人=25%で(Ⅰ)の要件も満たします。同じ職員構成でも、計算の切り口を変えると750単位に届くということです。
算定率から見た狙いどころ
厚生労働省の資料による算定率(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)は次のとおりです。
| 区分 | 単位数/月 | 算定率(事業所ベース) |
|---|---|---|
| サービス提供体制強化加算(Ⅰ) | 750単位 | 19.7% |
| サービス提供体制強化加算(Ⅱ) | 640単位 | (件数ベース25.2%) |
| サービス提供体制強化加算(Ⅲ) | 350単位 | 27.6% |
※(Ⅱ)は事業所ベースの数値が0と集計されており、件数ベースの値を参考として示しています。
(Ⅲ)の算定率が最も高いのは、3つの選択肢(介護福祉士40%/常勤60%/勤続7年以上30%)があり、どれかに当てはまりやすいからだと考えられます。
(Ⅲ)を算定していない事業所は、次の3つを個別に計算してみてください。
- 介護福祉士の割合(看護職員を除く母数)が40%以上か
- 常勤職員の割合(看護職員を含む母数)が60%以上か
- 勤続7年以上の者の割合(看護職員を含む母数)が30%以上か
小多機は宿泊・夜勤があるため常勤職員の比率が高くなりやすいサービスです。介護福祉士の割合だけを見て諦めている事業所は、常勤割合で拾える可能性があります。
短期利用居宅介護費を算定する場合
告示126号 ヨの注は「イについては1月につき、ロについては1日につき」と書き分けています。
| 報酬区分 | (Ⅰ) | (Ⅱ) | (Ⅲ) |
|---|---|---|---|
| イ 小規模多機能型居宅介護費(登録者) | 750単位/月 | 640単位/月 | 350単位/月 |
| ロ 短期利用居宅介護費 | 25単位/日 | 21単位/日 | 12単位/日 |
短期利用は7日以内(やむを得ない事情があれば14日以内)の受入れです。7日間で(Ⅰ)なら175単位という規模になります。
要支援でも算定できる
指定地域密着型介護予防サービスの報酬を定める平成18年厚生労働省告示第128号にも、介護予防小規模多機能型居宅介護費のサービス提供体制強化加算が置かれています。
| 加算 | 要支援での算定 |
|---|---|
| サービス提供体制強化加算 | ○ |
| 総合マネジメント体制強化加算 | ○ |
| 初期加算 | ○ |
| 科学的介護推進体制加算 | ○ |
| 認知症加算・看護職員配置加算・訪問体制強化加算・看取り連携体制加算 | × |
職員体制を評価する加算なので、要介護・要支援を問わず算定できるのは理にかなっています。
小多機のサービス提供体制強化加算はいくらですか?
登録者については1月につき(Ⅰ)750単位・(Ⅱ)640単位・(Ⅲ)350単位です。短期利用居宅介護費を算定する場合は1日につき25単位・21単位・12単位になります。
3区分を同時に算定できますか?
できません。告示の注が「いずれかの加算を算定している場合においては、その他の加算は算定しない」としています。
すべての区分に共通する要件は何ですか?
①従業者ごとの研修計画の作成と研修の実施(実施予定を含む)、②情報伝達や技術指導を目的とした会議の定期開催、③定員超過利用・人員基準欠如等の減算に該当しないこと、の3点です。
研修計画は事業所全体で1つ作ればよいですか?
足りません。条文は「小規模多機能型居宅介護従業者ごとに研修計画を作成し」としています。すべての従業者について個別に必要です。
(Ⅰ)の要件は介護福祉士70%だけですか?
いいえ。「介護福祉士70%以上」または「勤続10年以上の介護福祉士25%以上」のいずれかで足ります。
割合の母数に看護師は含みますか?
要件によって異なります。介護福祉士の割合を見る要件は「看護師又は准看護師であるものを除く」総数が母数です。一方、(Ⅲ)の常勤割合60%と勤続7年以上30%は、看護職員を含む従業者の総数が母数です。
(Ⅲ)の要件はどれか1つでよいですか?
はい。介護福祉士40%以上、常勤職員60%以上、勤続7年以上30%以上のいずれかに適合すれば足ります(共通要件は別途必要です)。
介護福祉士が少なくても算定できますか?
(Ⅲ)なら可能性があります。常勤職員の割合60%以上、または勤続7年以上の者の割合30%以上でも要件を満たすためです。
短期利用の場合はどう算定しますか?
1日につき(Ⅰ)25単位・(Ⅱ)21単位・(Ⅲ)12単位です。短期利用は原則7日以内なので、(Ⅰ)でも1回の受入れで175単位程度になります。
要支援でも算定できますか?
できます。介護予防小規模多機能型居宅介護にもサービス提供体制強化加算が設けられています。
- サービス提供体制強化加算は(Ⅰ)750・(Ⅱ)640・(Ⅲ)350単位(1月)
- 短期利用居宅介護費の場合は1日25・21・12単位
- 3区分は同時に算定できず、いずれか1つ
- (Ⅰ)と(Ⅲ)の差は月400単位、登録者20人なら年間約96万円
- すべての区分に共通する要件は、従業者ごとの研修計画・会議の定期開催・減算非該当
- 研修計画は事業所全体ではなく「従業者ごと」に作成する
- (Ⅰ)は介護福祉士70%以上、または勤続10年以上の介護福祉士25%以上
- (Ⅱ)は介護福祉士50%以上の一本道
- (Ⅲ)は介護福祉士40%/常勤60%/勤続7年以上30%のいずれか
- 介護福祉士の割合を見る要件は、母数から看護師・准看護師を除く
- (Ⅲ)の常勤60%と勤続7年以上30%は、看護職員を含む総数が母数
- 要件ごとに母数が変わるため、割合は個別に計算し直す必要がある
- 算定率は(Ⅰ)19.7%・(Ⅲ)27.6%(事業所ベース)
- 選択肢が3つある(Ⅲ)がもっとも算定されている
- 小多機は夜勤があるため常勤比率が高くなりやすく、常勤60%で拾える可能性がある
- 介護福祉士の割合だけで諦めず、(Ⅲ)の3要件をすべて計算する
- 要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)でも算定できる
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 指定地域密着型サービス介護給付費単位数表「小規模多機能型居宅介護費」ヨ(サービス提供体制強化加算)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第57号(小規模多機能型居宅介護費におけるサービス提供体制強化加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)別表「介護予防小規模多機能型居宅介護費」(厚生労働省法令等データベース)
- 社会保障審議会介護給付費分科会(第218回)資料2「小規模多機能型居宅介護」(PDF)小規模多機能型居宅介護の算定状況(介護給付費等実態統計 令和4年4月審査分)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および審議会資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。地域密着型サービスの指定・指導は市町村が行うため、割合の算定方法(常勤換算か実人員か、算定期間の取り方)や勤続年数の通算の可否が自治体によって異なる場合があります。本記事は告示の文言にもとづいて整理しており、留意事項通知の細目までは反映していません。算定率は令和4年3月サービス提供分の数値で、(Ⅱ)の事業所ベースの値は資料上0と集計されているため件数ベースを参考として示しています。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。職員構成の計算例や狙いどころに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




