訪問看護の初回加算は、令和6年度介護報酬改定で(Ⅰ)350単位と(Ⅱ)300単位の2区分になりました。それまでは一律300単位だったので、「初回加算=300単位」で記憶が止まっている方も多いと思います。50単位の差ですが、分岐の条件が「退院・退所した当日に、看護師が訪問したかどうか」という具体的なもので、事業所の動き方しだいで取れたり取れなかったりします。

この記事では、告示と老企第36号の原文にもとづいて、(Ⅰ)と(Ⅱ)の分岐、そして退院時共同指導加算とは併算定できないことを整理します。あわせて、意外と間違えやすい「過去2か月間に利用がないこと」という新規の判定——ここに医療保険の訪問看護も含まれる点まで扱います。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 初回加算(Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位という単位数
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)を分ける「退院当日・看護師」という2条件
  • 准看護師やリハビリ職が訪問した場合は(Ⅰ)を算定できないこと
  • 「新規」の判定は過去2か月間(暦月)で行うこと
  • その判定に医療保険の訪問看護も含まれること
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できないこと
  • 退院時共同指導加算600単位とは併算定できないこと
  • 1月につき算定する加算であること
  • 要支援(介護予防訪問看護)でも同額で算定できること
  • 令和6年度改定で2区分になった背景
ちびウルフちびウルフ

新しく担当になったら、とりあえず初回加算を付ければいいんですよね?

リハウルフリハウルフ

それが落とし穴です。「一度終了した人が3か月後に再開した」なら算定できますが、2か月以内の再開だと算定できません。しかも、その2か月には医療保険で入っていた分も含まれます。特別訪問看護指示書で医療保険に切り替わっていた期間は、要注意です。

訪問看護の初回加算とは?(Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位

初回加算は、指定居宅サービス介護給付費単位数表の訪問看護費「ニ」に定められた加算です。令和6年度改定で新しく(Ⅰ)が設けられました。厚生労働省の改定資料は、その趣旨をこう説明しています。

「要介護者等のより円滑な在宅移行を訪問看護サービスとして推進する観点から、看護師が退院・退所当日に初回訪問することを評価する新たな区分を設ける。
(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」1.(3)⑦より引用)

単位数の変更は次のとおりです。

改定前改定後
初回加算 300単位/月初回加算(Ⅰ) 350単位/月(新設)
初回加算(Ⅱ) 300単位/月

従来の300単位が(Ⅱ)としてそのまま残り、退院・退所当日の訪問に50単位を上乗せする形で(Ⅰ)が新設されたという構造です。全体としては減額されていないので、これまで300単位を算定できていたケースは、少なくとも300単位は維持できます。

(Ⅰ)350単位を算定できる2つの条件

老企第36号は、(Ⅰ)の要件を短く、しかし明確に示しています。

「② 病院、診療所又は介護保険施設から退院又は退所した日に看護師が訪問する場合に初回加算(Ⅰ)を算定する。
③ 初回加算(Ⅰ)を算定する場合は、初回加算(Ⅱ)は算定しない。」
(平成12年3月1日老企第36号 第二の4(25)より引用)

条件は2つに分解できます。

  • タイミング:病院・診療所・介護保険施設から退院/退所した「その日」に初回訪問すること。翌日以降では(Ⅱ)になります。
  • 職種:訪問するのが「看護師」であること。
准看護師・リハビリ職では(Ⅰ)にならない通知の文言は「看護師」です。准看護師やPT・OT・STが退院当日に訪問しても、(Ⅰ)350単位は算定できません。訪問看護費の本体では准看護師も「看護師等」に含まれますが、ここでは区別されています。退院当日の訪問を誰に振るかで50単位が変わる、ということです。

なお、退院日に訪問看護が入れるかどうかという前提の議論もあります。医療保険との切り分けを含めて退院日に訪問看護は入れる?医療保険・介護保険と令和6年度改定を解説で扱っていますので、あわせてご確認ください。

(Ⅰ)と(Ⅱ)の使い分け早見表

状況算定できる区分
退院当日に看護師が初回訪問(Ⅰ)350単位
退院当日に准看護師が初回訪問(Ⅱ)300単位
退院当日にPT・OT・STが初回訪問(Ⅱ)300単位
退院翌日以降に初回訪問(Ⅱ)300単位
入院を経ていない新規(在宅から開始)(Ⅱ)300単位

告示にも「(Ⅱ)を算定している場合は(Ⅰ)は算定しない」「(Ⅰ)を算定している場合は(Ⅱ)は算定しない」と相互に明記されており、両方を足すことはできません。

「新規」の判定は過去2か月間|医療保険の訪問看護も含む

(Ⅰ)(Ⅱ)に共通する大前提が、「新規に訪問看護計画書を作成した利用者」であることです。この「新規」の判定方法が、老企第36号に示されています。

「本加算は、利用者が過去2月間(暦月)において、当該訪問看護事業所から訪問看護(医療保険の訪問看護を含む。)の提供を受けていない場合であって新たに訪問看護計画書を作成した場合に算定する。」
(老企第36号 第二の4(25)①より引用)

ここに3つのポイントが埋まっています。

  • 過去2か月間:3か月ではありません。2か月空いていれば新規扱いです。
  • 暦月:「◯月◯日から2か月」ではなく、月単位でのカウントです。
  • 医療保険の訪問看護を含むここがいちばんの落とし穴です。
特別訪問看護指示書の期間に注意特別訪問看護指示書が交付されると、その14日間は医療保険の訪問看護になります。この期間も「訪問看護の提供を受けていた」期間としてカウントされます。介護保険の記録上は空白に見えても、医療保険で入っていれば新規ではありません。算定前に、医療保険での訪問実績を必ず確認してください。

また、この判定は「当該訪問看護事業所から」です。他のステーションから訪問看護を受けていた利用者が自事業所に切り替えた場合は、自事業所としては新規にあたります。

退院時共同指導加算とは併算定できない

初回加算でもっとも判断を要するのが、退院時共同指導加算との関係です。告示の訪問看護費「ホ」に、はっきり書かれています。

「(退院時共同指導加算は)当該退院又は退所につき1回(特別な管理を必要とする利用者については、2回)に限り、所定単位数を加算する。ただし、ニの初回加算を算定する場合は、退院時共同指導加算は算定しない。
(指定居宅サービス介護給付費単位数表 訪問看護費 ホより引用)

退院してきた新規利用者に対して退院前カンファレンスに参加していれば、両方の要件を同時に満たします。しかし算定できるのは一方だけです。金額を並べると判断は明確です。

加算単位数
退院時共同指導加算600単位(特別な管理を必要とする利用者に複数日実施なら1,200単位)
初回加算(Ⅰ)350単位
初回加算(Ⅱ)300単位

退院前カンファレンスに参加できたなら、退院時共同指導加算を選ぶ。参加していないなら、初回加算を算定する。——この整理で実務は回ります。裏を返せば、退院当日訪問で(Ⅰ)350単位を狙うより、カンファレンスに参加して600単位を取るほうが有利だということです。

「両取り」を狙わない私が現場で見かける誤りの多くは、初回加算と退院時共同指導加算を両方入力してしまうパターンです。システムによっては警告が出ないことがあります。退院直後の新規ケースは、請求前に「どちらを算定したか」を必ず1回チェックする運用にしておくと安全です。

算定は「1月につき」|訪問日ではなく月単位

条文はいずれも「1月につき所定単位数を加算する」となっています。初回訪問の日に付ける形にはなりますが、月額の加算という位置づけです。訪問回数が月に何回あっても、初回加算は1回だけです。

また、月をまたいで訪問が続く場合も、加算が付くのは初回の月だけです。2か月目以降は算定できません。

要支援でも同額|介護予防訪問看護の初回加算

指定介護予防サービス介護給付費単位数表の介護予防訪問看護費「ハ」にも、まったく同じ内容の初回加算(Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位が定められています。要件も単位数も要介護と同一です。

訪問看護の加算のなかで要支援と要介護に差がつくのは、看護体制強化加算(要介護550/200単位に対し要支援100単位)と、そもそも要支援に存在しないターミナルケア加算などです。初回加算・特別管理加算・専門管理加算・退院時共同指導加算は同額なので、要支援だからと算定を控える必要はありません。

ちびウルフちびウルフ

退院当日に看護師を出せる体制って、小さいステーションだと難しくないですか?

リハウルフリハウルフ

正直、簡単ではありません。ただ50単位のために無理をする加算ではないと私は思っています。退院当日の訪問が本当に必要かどうかは、利用者の状態で決めるべきです。加算を目的に当日訪問を組むより、カンファレンスに参加して600単位を確実に取るほうが、収益的にも支援の質としても筋が通ります。

よくある質問
初回加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は両方算定できますか?

できません。告示に「(Ⅰ)について、(Ⅱ)を算定している場合は、算定しない」「(Ⅱ)について、(Ⅰ)を算定している場合は、算定しない」と相互に明記されています。どちらか一方のみです。

退院当日に准看護師が訪問した場合はどうなりますか?

初回加算(Ⅱ)300単位を算定します。通知が「退院又は退所した日に看護師が訪問する場合に初回加算(Ⅰ)を算定する」としており、准看護師は含まれません。PT・OT・STが訪問した場合も同様に(Ⅱ)です。

2か月前まで訪問看護に入っていた人が再開した場合は算定できますか?

過去2か月間(暦月)に当該事業所から訪問看護の提供を受けていない場合が要件です。2か月以内に提供実績があれば算定できません。なお、この2か月間には医療保険の訪問看護も含まれます。

特別訪問看護指示書で医療保険に切り替わっていた期間はどう扱われますか?

訪問看護の提供を受けていた期間としてカウントされます。介護保険の請求実績がない月でも、医療保険で訪問していれば「新規」にはあたりません。初回加算を算定する前に、医療保険での訪問実績を確認してください。

他のステーションから切り替えてきた利用者には算定できますか?

算定できます。通知は「当該訪問看護事業所から訪問看護の提供を受けていない場合」としており、判定は自事業所での提供実績で行います。他事業所からの利用歴は関係ありません。

初回加算と退院時共同指導加算は両方算定できますか?

できません。告示のただし書きに「ニの初回加算を算定する場合は、退院時共同指導加算は算定しない」と明記されています。退院時共同指導加算600単位のほうが金額が大きいため、退院前カンファレンスに参加できた場合はそちらを算定するのが通常です。

初回加算は毎月算定できますか?

できません。「1月につき」とありますが、これは新規に訪問看護計画書を作成した初回の月に算定するという意味です。2か月目以降は算定できません。

ショートステイから帰宅した日に訪問した場合は(Ⅰ)を算定できますか?

算定できません。(Ⅰ)の対象は「病院、診療所又は介護保険施設から退院又は退所した日」です。ショートステイ(短期入所)からの帰宅はこれにあたりません。なお、そもそも新規に訪問看護計画書を作成する場面でなければ初回加算自体を算定できません。

要支援の人にも算定できますか?

算定できます。介護予防訪問看護費にも同じ初回加算(Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位が定められており、要件も同一です。

初回加算は区分支給限度基準額に含まれますか?

含まれます。訪問看護の加算のうち区分支給限度基準額の対象外とされているのは緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算などで、初回加算はこれに含まれません。限度額が逼迫しているケースでは、ケアマネジャーとの調整が必要です。

まとめ
  • 初回加算は令和6年度改定で(Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位の2区分になった
  • (Ⅰ)の要件は「退院・退所した当日に」「看護師が」初回訪問すること
  • 准看護師・PT・OT・STが訪問した場合は(Ⅰ)を算定できない
  • 退院翌日以降の初回訪問、在宅からの新規はいずれも(Ⅱ)300単位
  • (Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定できない
  • 大前提は「新規に訪問看護計画書を作成した利用者」であること
  • 新規の判定は過去2か月間(暦月)に当該事業所からの提供がないこと
  • この2か月間には医療保険の訪問看護も含まれる
  • 特別訪問看護指示書による医療保険期間もカウント対象になる
  • 他のステーションからの切り替えは自事業所としては新規にあたる
  • 退院時共同指導加算600単位とは併算定できない
  • 両方の要件を満たす場合は金額の大きい退院時共同指導加算が有利
  • 「1月につき」の加算で、2か月目以降は算定できない
  • 要支援(介護予防訪問看護)でも同額で算定できる
参考にした情報
  • 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 指定居宅サービス介護給付費単位数表「訪問看護費」ニ・ホ
  • 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表 指定介護予防サービス介護給付費単位数表「介護予防訪問看護費」ハ
  • 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号)第二の4(25)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」1.(3)⑦ 円滑な在宅移行に向けた看護師による退院当日訪問の推進

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。「介護保険施設」の範囲や新規の判定などの解釈は、都道府県・市町村によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。区分支給限度基準額の取扱いに関する記述は厚生労働省の分類にもとづく整理です。実務上の運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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