通所介護の口腔機能向上加算とは?単位数と算定要件を徹底解説【令和6年度】
通所介護(デイサービス)における口腔機能向上加算は、算定率が低い=裏を返せば他事業所と差別化できる「伸びしろの大きい加算」です。厚生労働省の調査でも、デイサービスでの算定率は加算(Ⅰ)が約7.9%、加算(Ⅱ)が約6.0%にとどまっています。自立支援・重度化防止が国の重点方針となるなか、口腔機能へのアプローチは今後ますます評価される分野です。
この記事では、令和6年度(2024年度)改定に対応した最新の制度内容をもとに、通所介護の口腔機能向上加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数・算定要件・対象者・算定の流れ・LIFE提出のポイントまで、管理者・経営者が「算定を始める」「正しく運用する」ために必要な情報を徹底的に解説します。新規算定の判断や、運営指導(実地指導)対策にもお役立てください。
- 通所介護の口腔機能向上加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数と月の算定上限
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の違い(カギはLIFEへのデータ提出)
- 算定要件と、対象となる利用者の判定基準(認定調査票・基本チェックリスト)
- スクリーニングから再評価までの算定の流れ(5ステップ)
- 経営メリットと、運営指導で見られる注意点
通所介護の口腔機能向上加算とは?
口腔機能向上加算とは、口腔機能が低下している、またはそのおそれがある利用者に対し、機能改善を目的とした取り組みを行った場合に算定できる加算です。デイサービス(通所介護)のほか、総合事業・通所リハビリ等が対象で、平成18年度に導入され、令和3年度に加算(Ⅱ)が新設されました。
口腔機能とは「食べる」「話す」「呼吸する」「表情をつくる」といった活動を支える、歯・舌・唾液腺などの働きの総称です。これを維持・向上させることで、誤嚥性肺炎や窒息のリスクを下げ、栄養状態や生活能力の改善が期待できます。リハビリ・栄養とならぶ、自立支援・重度化防止の重要な柱として位置づけられています。
ちびウルフ口腔ケアって歯みがきのことでしょ?それで加算がもらえるの?
リハウルフ歯みがきだけじゃないんだ。口腔機能向上加算は、専門職が利用者の口腔機能を評価して計画を立て、口腔ケア指導や摂食・嚥下訓練を計画的に提供する一連の取り組みを評価するもの。「アセスメント→計画→実施→再評価」のPDCAを回すことが前提なんだよ。
口腔機能向上加算(Ⅰ)(Ⅱ)の単位数
通所介護では、口腔機能向上加算(Ⅰ)と(Ⅱ)が算定できます。単位数は次のとおりです。
| 区分 | 単位数 |
|---|---|
| 口腔機能向上加算(Ⅰ) | 150単位/回 |
| 口腔機能向上加算(Ⅱ) | 160単位/回 |
算定回数には上限があり、要介護者は1か月につき2回まで、要支援者・総合事業の対象者は1か月につき1回までです。したがって月あたりの上限額は次のようになります。
| 対象 | 加算(Ⅰ)月上限 | 加算(Ⅱ)月上限 |
|---|---|---|
| 要介護1〜5 | 150単位×2回=300単位 | 160単位×2回=320単位 |
| 要支援・総合事業 | 150単位×1回=150単位 | 160単位×1回=160単位 |
加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは「LIFEへのデータ提出」
口腔機能向上加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の決定的な違いは、LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出とフィードバック活用の有無です。
| 区分 | 要件のポイント |
|---|---|
| 加算(Ⅰ) | 専門職の配置・計画作成・サービス実施・記録・定期評価などの基本要件を満たす。LIFE提出は不要。 |
| 加算(Ⅱ) | 加算(Ⅰ)の基準をすべて満たしたうえで、口腔機能改善管理指導計画等の情報をLIFEに提出し、フィードバックを口腔衛生管理の質向上に活用する。 |
つまり、加算(Ⅱ)は加算(Ⅰ)にLIFE対応を上乗せした上位区分です。すでにLIFEに対応している事業所であれば、加算(Ⅱ)のほうが10単位/回高いため有利になります。これからLIFE運用体制を整える事業所は、まず加算(Ⅰ)から始め、体制が整い次第(Ⅱ)へ移行する流れが現実的です。
加算(Ⅱ)のLIFE提出頻度
加算(Ⅱ)で求められるLIFEへのデータ提出は、口腔機能改善管理指導計画の作成または変更を行った月の翌月10日までが目安です。少なくとも3か月に1回はLIFEへデータを提出する必要があります。提出するのは、利用者の口腔・口腔機能の状態(歯の汚れ、むせ・食べこぼし等)、改善管理指導計画、実施記録などです。
口腔機能向上加算の算定要件
加算(Ⅰ)の算定要件は次のとおりです。加算(Ⅱ)はこれらに加えてLIFE対応が必要です。
- 専門職の配置:言語聴覚士(ST)、歯科衛生士、または看護職員を1名以上配置していること(非常勤・兼務でも可)。
- 口腔機能の把握と計画作成:利用開始時に利用者の口腔機能を把握し、ST・歯科衛生士・看護職員・介護職員・生活相談員その他の職種が共同して、利用者ごとの「口腔機能改善管理指導計画」を作成すること。
- サービスの実施と記録:計画に沿ってST・歯科衛生士・看護職員が口腔機能向上サービスを行い、利用者の口腔機能を定期的に記録すること。
- 定期的な評価:計画の進捗状況を定期的に評価すること。
「口腔機能向上サービス」とは、利用者の口腔機能向上を目的とした口腔ケア指導・訓練、または摂食・嚥下訓練・指導を指します。単発の歯みがき介助ではなく、計画に基づいた継続的・専門的な働きかけが求められる点を押さえておきましょう。
対象となる利用者(判定基準)
口腔機能向上加算は、誰にでも算定できるわけではありません。次のいずれかに該当する、口腔機能が低下している(またはそのおそれがある)利用者が対象です。
①認定調査票による判定
認定調査票の「嚥下」「食事摂取」「口腔清潔」の3項目のいずれかが、「1(問題なし・自立)」以外に該当する者。
| 項目 | 「1」以外(=対象になりうる)の例 |
|---|---|
| 嚥下 | 「2:見守り」「3:できない」 |
| 食事摂取 | 「2:見守り」「3:一部介助」「4:全介助」 |
| 口腔清潔 | 「2:一部介助」「3:全介助」 |
②基本チェックリストによる判定
基本チェックリストの口腔機能に関する3項目(No.13・14・15)のうち、2項目以上が「1(はい)」に該当する者。
| No. | 質問項目 |
|---|---|
| 13 | 半年前に比べて硬いものが食べにくくなりましたか |
| 14 | お茶や汁物でむせることがありますか |
| 15 | 口の渇きが気になりますか |
このほか、「その他口腔機能の低下している、またはそのおそれがある者」も対象に含まれます。判定基準に形式的に該当するかだけでなく、実際の口腔状態を専門職がアセスメントして判断することが大切です。
ちびウルフ対象になる人って、実は結構多いんじゃない?
リハウルフその通り。高齢になると「むせやすい」「硬いものが食べにくい」「口が渇く」は珍しくないから、基本チェックリストや認定調査票を見直すと、対象者は思った以上にいることが多いんだ。算定率が低いのは、対象者がいないからではなく、体制を整えていないからなんだよ。
口腔機能向上加算の算定の流れ(5ステップ)
実際の運用は、次の流れで進めます。この一連のPDCAを記録として残すことが、算定と運営指導対策の両面で重要です。
- スクリーニング・アセスメント:口腔機能の低下またはそのおそれがある利用者の口腔衛生・摂食嚥下機能の状態を確認し、解決すべき課題を評価する。
- 口腔機能改善管理指導計画の作成:関連職種が共同で計画を作成する。厚生労働省の様式例を活用すると効率的。
- 利用者・家族への説明と同意:計画の目標や内容を説明し、サービス提供への同意を得る。
- 口腔機能向上サービスの実施:計画に基づき、ST・歯科衛生士・看護職員が口腔ケアや摂食・嚥下訓練を直接実施または指導する。
- モニタリング・再評価:適宜モニタリングして口腔機能を記録し、3か月ごとに課題・目標の進捗を再評価。改善していれば終了、必要なら継続する。
利用者・家族への説明と動機づけのコツ
口腔機能向上加算は利用者負担が発生するため、本人や家族への丁寧な説明が欠かせません。「なぜ口腔ケアが必要なのか」を腑に落ちる形で伝えられると、同意を得やすく、サービスの効果も高まります。
説明の際は、「口腔機能の低下を放置するとどうなるか」を具体的に伝えるのが効果的です。例えば「むせや食べこぼしが続くと誤嚥性肺炎のリスクが高まること」「噛む・飲み込む力が落ちると食事量が減り、低栄養から全身の衰え(フレイル)につながること」などです。そのうえで、専門職が計画的に関わることで「好きなものを安全においしく食べ続けられる」「会話や表情が豊かになる」といった前向きな目標を共有すると、利用者・家族の納得感が高まります。
また、3か月ごとの再評価のタイミングで「むせが減った」「義歯を清潔に保てるようになった」といった改善を具体的にフィードバックすると、サービスの価値を実感してもらえ、継続にもつながります。口腔機能向上は成果が見えやすい分野でもあるため、小さな改善をこまめに共有することが、利用者満足とリピートの両面で効いてきます。
経営者目線:算定すべき理由と収益インパクト
口腔機能向上加算は、少ない追加コストで算定でき、かつ差別化につながる加算です。経営的なメリットを整理します。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 追加人件費が小さい | 看護職員等の既存スタッフで算定開始できるケースが多く、新規採用なしで始めやすい。 |
| 差別化につながる | 算定率が約6〜8%と低いため、口腔機能向上に取り組むデイは利用者・ケアマネへの訴求力が高い。 |
| 自立支援・重度化防止に直結 | 誤嚥性肺炎予防・栄養改善は利用者のQOL向上に直結し、サービスの質の評価にもつながる。 |
| LIFE活用で上位加算へ | 体制を整えれば加算(Ⅱ)でさらに10単位/回上乗せ。他のLIFE関連加算との相乗効果も期待できる。 |
例えば要介護者30名が加算(Ⅰ)を月2回(300単位/月)算定すれば、単純計算で月9,000単位(地域区分により概ね9万円超)の増収になります。既存スタッフで対応できれば、その大部分が事業所の収益改善に直結します。算定していない事業所は、まず対象者の洗い出しから始めてみる価値があります。
算定を始めるための準備ステップ
「算定したいが、何から手をつければいいか分からない」という管理者の方へ。新規算定までの準備を整理します。多くの場合、既存の体制を少し整えるだけで算定を始められます。
- 専門職の配置を確認する:ST・歯科衛生士・看護職員のいずれかが配置(兼務可)されているか確認。看護職員がいれば多くの場合クリアできる。
- 対象者を洗い出す:現在の利用者について、認定調査票・基本チェックリストの口腔関連項目を確認し、対象者をリストアップする。
- 計画書・記録様式を準備する:厚生労働省の様式例をもとに、口腔機能改善管理指導計画・同意書・実施記録・再評価記録の書式を整える。
- 業務フローを決める:誰が・いつスクリーニング/計画作成/サービス実施/再評価を担うか、役割分担と頻度を決める。
- 体制届出を行う:算定要件を満たしたら、指定権者へ加算に係る体制届出を提出する。
口腔機能向上サービスの具体的な内容
「口腔機能向上サービスとは、具体的に何をするのか」がイメージできないと、算定に踏み出しにくいものです。計画に基づいて行う代表的な取り組みを整理します。これらを利用者ごとの課題に合わせて選び、計画的・継続的に実施します。
| 区分 | 具体的な内容の例 |
|---|---|
| 口腔清潔・口腔ケア指導 | 正しい歯みがき・義歯清掃の指導、口腔内の清潔保持、舌や粘膜のケアなど。誤嚥性肺炎予防の基本となる。 |
| 口腔機能の訓練 | 舌・口唇・頬の運動、唾液腺マッサージ、発音・発声訓練(パタカラ体操等)、口腔体操など。 |
| 摂食・嚥下訓練 | 飲み込みの機能を高める訓練、むせ・食べこぼしへの対応、食事姿勢や食形態のアドバイスなど。 |
これらは言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員が直接実施または指導します。単発で終わらせず、計画→実施→記録→再評価のサイクルを回すことが算定の前提です。利用者にとっても「食べる楽しみを取り戻す」「むせが減って安心して食事できる」といった生活の質の向上につながります。
口腔機能改善管理指導計画の作成ポイント
算定の中心となるのが「口腔機能改善管理指導計画」です。厚生労働省が様式例を示しているため、これを活用すると効率的です。作成時のポイントを押さえましょう。
- 課題(解決すべき問題)を明確に書く:アセスメントで把握した口腔の状態(汚れ・むせ・食べこぼし・口腔乾燥など)を具体的に記載する。
- 目標を具体的・測定可能にする:「むせの回数を減らす」「義歯を清潔に保てるようになる」など、再評価できる目標を設定する。
- サービス内容と担当者を明記する:誰が・どのような口腔機能向上サービスを・どの頻度で行うかを書く。
- 多職種共同で作成する:ST・歯科衛生士・看護職員に加え、介護職員・生活相談員等が関与して作成する。
他の口腔関連加算との違い・関係
口腔に関する加算は複数あり、混同されがちです。代表的なものとの違いを整理しておきましょう。
| 加算 | 主な内容 |
|---|---|
| 口腔機能向上加算(本記事) | 口腔機能が低下した利用者に、専門職が計画的に口腔機能向上サービスを提供することを評価。 |
| 口腔・栄養スクリーニング加算 | 利用者の口腔の健康状態と栄養状態をスクリーニング(確認)し、ケアマネに情報提供することを評価。スクリーニングが中心で、機能向上サービスの実施までは求めない。 |
| 口腔連携強化加算(令和6年度新設・訪問系等) | 事業所の従業者が口腔の健康状態を評価し、歯科医療機関・ケアマネに情報提供した場合に算定(訪問系・ショート・定期巡回等)。 |
このうち、通所介護では口腔・栄養スクリーニング加算と口腔機能向上加算には併算定の制限があります(同時に算定できない組み合わせがある)。自施設がどの加算を中心に組み立てるか、対象者の状態像と体制に応じて整理しておくと、取りこぼしや算定ミスを防げます。
ちびウルフスクリーニング加算と向上加算、両方取れたらお得じゃない?
リハウルフそこが要注意なんだ。口腔に関する加算は併算定できない組み合わせがあるから、「同じ月に何と何が取れるか」を事前に整理しておくこと。詳細な算定可否は最新の厚生労働省の通知・Q&Aで必ず確認してね。
よくある算定ミスと運営指導対策
口腔機能向上加算は、書類不備による返戻が起こりやすい加算でもあります。実地指導でよく指摘される点を先回りして対策しましょう。
| ありがちなミス | 対策 |
|---|---|
| 対象者要件を満たさない利用者に算定 | 認定調査票・基本チェックリストで対象判定を記録に残す。 |
| 計画書はあるが同意の記録がない | 利用者・家族への説明と同意(署名等)を必ず残す。 |
| サービスの実施記録が不十分 | 誰が・いつ・どんなサービスを行ったかを毎回記録する。 |
| 3か月ごとの再評価をしていない | 再評価の時期を業務フローに組み込み、記録を残す。 |
| 専門職が関与していない | ST・歯科衛生士・看護職員のいずれかが実施・指導した記録を残す。 |
口腔機能向上加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?
月に何回まで算定できますか?
歯科衛生士がいないと算定できませんか?
対象者はどう判定しますか?
運営指導で特に見られるポイントは?
口腔・栄養スクリーニング加算と一緒に算定できますか?
加算(Ⅱ)のためにLIFEは必須ですか?
- 通所介護の口腔機能向上加算は(Ⅰ)150単位/回・(Ⅱ)160単位/回。要介護者は月2回、要支援・総合事業は月1回まで。
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の違いはLIFEへのデータ提出・フィードバック活用の有無。(Ⅱ)は(Ⅰ)+LIFE対応の上位区分。
- 算定要件は専門職(ST・歯科衛生士・看護職員のいずれか1名以上、兼務可)の配置・計画作成・実施記録・定期評価。
- 対象者は認定調査票・基本チェックリストで口腔機能低下のおそれがある利用者。実は対象者は多い。
- 算定率は約6〜8%と低く、少ない追加コストで差別化・増収できる伸びしろの大きい加算。書類整備を徹底して算定を。
出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定について」、厚生労働省「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」関連資料、口腔機能向上サービスに関する計画書(様式例)。単位数・要件は最新の厚生労働省告示・通知および指定権者の案内で必ず確認してください。

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