介護事業所の必須研修一覧|種類・頻度・年間計画を解説【2026年度】

介護事業所で必要な研修は、虐待防止・身体拘束適正化・感染症・業務継続計画(BCP)・認知症介護基礎研修の5つが柱です。ただし必要な回数は「在宅系か施設系か」で変わり、同じ研修でも年1回でよいものと年2回必要なものが分かれます。
この記事では、指定居宅サービス等基準(省令37号)と解釈通知(老企第25号)、介護老人保健施設の基準省令と解釈通知の原文を確認して整理しました。頻度の根拠となる文言まで示し、年間研修計画の組み方と、通知が認めている「一体的に実施してよい組み合わせ」までまとめます。
- 介護事業所で義務づけられた研修の全体像
- 在宅系と施設系で頻度が違うこと(虐待防止研修は年1回と年2回)
- 感染対策委員会は在宅系6月に1回、施設系3月に1回であること
- 身体拘束の措置義務があるサービス・ないサービスの線引き
- 認知症介護基礎研修の対象外になる資格の具体的な一覧
- 未実施減算の率(1%・3%・10%)と根拠条文
- 通知が認めている研修・訓練の一体的実施の組み合わせ
- 年間研修計画の立て方と運営指導で見られる点
ちびウルフ結局うちは、年に何回やればいいんですか?研修の種類が多すぎて数えきれません。
リハウルフ在宅系なら実質4本、施設系なら実質8本です。通知が「一体的に実施して差し支えない」と認めている組み合わせがあるので、正しく束ねると回数は減らせます。やみくもに増やす前に、束ねられる範囲を確認してください。
介護事業所で必要な研修とは?
介護事業所で必要な研修とは、運営基準(省令)で実施が義務づけられた研修のことです。事業所が自主的に行う勉強会とは性質が違い、実施していなければ基準違反となり、サービスによっては減算の対象になります。
義務の柱は次の5つです。
- 虐待の防止のための研修(+委員会・指針・担当者)
- 身体的拘束等の適正化のための研修(+委員会・指針)※対象サービスのみ
- 感染症の予防及びまん延の防止のための研修・訓練(+委員会・指針)
- 業務継続計画(BCP)に関する研修・訓練(+計画の策定・見直し)
- 認知症介護基礎研修の受講(無資格で介護に直接携わる職員)
注意したいのは、これらの義務は「事業所単位」で課されているという点です。訪問介護であれば登録ヘルパーを含む全従業者が対象になります。解釈通知も「登録訪問介護員等を含めて」と明記しています。
省令の本文は「研修を定期的に実施すること」としか書いていません。「年1回以上」「年2回以上」という具体的な回数は、解釈通知(老企第25号など)に書かれています。
そのため、条文だけを読んでも回数はわかりません。頻度を確認するときは必ず解釈通知まで見てください。
法定研修・委員会の頻度一覧【在宅系・施設系】
解釈通知の原文にもとづく頻度の一覧です。在宅系と施設系で回数が違う項目に注意してください。
| 研修・委員会 | 在宅系 (訪問介護・通所介護等) | 施設系 (特養・老健・介護医療院等) |
|---|---|---|
| 虐待防止 研修 | 年1回以上+新規採用時 | 年2回以上+新規採用時 |
| 虐待防止 委員会 | 定期的に開催 | 定期的に開催 |
| 虐待防止 担当者 | 設置(兼務可) | 設置(兼務可) |
| 感染症 研修 | 年1回以上 | 年2回以上+新規採用時 |
| 感染症 訓練 | 年1回以上 | 年2回以上 |
| 感染対策委員会 | おおむね6月に1回以上 | おおむね3月に1回以上 |
| BCP 研修 | 年1回以上 | 年2回以上 |
| BCP 訓練 | 年1回以上 | 年2回以上 |
| 身体拘束適正化 研修 | 対象サービスのみ 年2回以上+新規採用時 | 年2回以上+新規採用時 |
| 身体拘束適正化 委員会 | 対象サービスのみ 3月に1回以上 | 3月に1回以上 |
虐待防止研修は施設系だけ年2回
ここが最も間違えられている箇所です。解釈通知の文言を並べます。
「当該指定訪問介護事業者が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要である」
「当該介護老人保健施設が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修(年2回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要である」
同じ「虐待防止研修」でも、在宅系は年1回以上、施設系は年2回以上です。「虐待防止は年1回」と一律に覚えていると、施設系では回数不足になります。
なお、新規採用時の研修は在宅系・施設系のどちらも「必ず実施することが重要である」とされています。年度途中の採用者を見落とさないでください。
感染症は委員会の頻度が2倍違う
感染対策委員会の頻度は、省令の本文に直接書かれています。
| 区分 | 条文 | 頻度 |
|---|---|---|
| 訪問介護(在宅系) | 省令37号 第31条第3項第1号 | おおむね六月に一回以上 |
| 介護老人保健施設(施設系) | 老健基準省令 第29条第2項第1号 | おおむね三月に一回以上 |
研修についても、在宅系は「新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい」、施設系は「新規採用時には必ず感染対策研修を実施することが重要である」と、通知の書きぶりが違います。
身体拘束の措置義務があるサービス・ないサービス
身体的拘束等の適正化については、サービスによって義務の範囲が大きく違います。
| サービス | 委員会・指針・研修 | 拘束を行った場合の記録 |
|---|---|---|
| 特養・老健・介護医療院 | 義務(委員会3月に1回、研修年2回以上) | 義務 |
| グループホーム・特定施設・短期入所・多機能系 | 義務 | 義務 |
| 訪問介護・通所介護など | 委員会・指針・研修の義務なし | 義務 |
省令37号 第23条第3号・第4号は、指定訪問介護について「緊急やむを得ない場合を除き身体的拘束等を行ってはならない」「行う場合は態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録しなければならない」と定めています(令和6年厚生労働省令第16号による改正)。
在宅系にも記録義務はあります。委員会・指針・研修の義務がないだけで、拘束が自由にできるという意味ではありません。
訪問介護・通所介護で身体拘束の研修を「やらなくてよい」と判断してよいのは基準上の話であり、実務ではケアの質として実施している事業所が多い印象です。(この運用の傾向は筆者の実務経験にもとづく整理です)
認知症介護基礎研修の義務化と対象外になる資格
介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者には、認知症介護基礎研修を受講させる措置を講じることが義務づけられています。経過措置は終了済みです。
問題になるのは「誰が対象外か」です。解釈通知は具体的に列挙しています。
看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程または訪問介護員養成研修課程1級課程・2級課程修了者、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師 等
通知はこの対象外の理由を「各資格のカリキュラム等において、認知症介護に関する基礎的な知識及び技術を習得している者」と説明しています。
初任者研修の修了者は対象外です。「無資格=初任者研修も持っていない人」だけが対象になります。
生活援助従事者研修の修了者も対象外です。訪問介護で採用した生活援助限定のヘルパーを、誤って対象に含めている事業所があります。
認知症介護の研修には、基礎研修の上に段階があります。グループホームや認知症対応型通所介護では、修了者の配置が人員基準や加算の要件になるため、計画的な受講が必要です。
| 研修名 | 主な位置づけ |
|---|---|
| 認知症介護基礎研修 | 無資格で介護に直接携わる職員の受講義務 |
| 認知症介護実践者研修 | 実務経験のある介護職員のステップアップ |
| 認知症介護実践リーダー研修 | チームのリーダー・指導者 |
| 認知症対応型サービス事業管理者研修 | グループホーム等の管理者の要件 |
| 認知症対応型サービス事業開設者研修 | 指定を受ける際の要件 |
未実施減算はいくら引かれるか
研修を含む措置を講じていない場合、報酬が減算されます。率は減算の種類とサービスによって違います。
| 減算 | 減算率 | 対象になる不備の例 |
|---|---|---|
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の100分の1 | 委員会・指針・研修・担当者のいずれかが未実施 |
| 業務継続計画未策定減算(在宅系) | 所定単位数の100分の1 | BCP未策定、または研修・訓練の未実施 |
| 業務継続計画未策定減算(施設・居住系) | 所定単位数の100分の3 | 同上 |
| 身体拘束廃止未実施減算(施設・居住系) | 所定単位数の100分の10 | 委員会・指針・研修のいずれかが未実施 |
告示126号の原文は、たとえばグループホームの身体拘束廃止未実施減算について次のとおりです。
「別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、身体拘束廃止未実施減算として、イについては所定単位数の100分の10に相当する単位数を、ロについては所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する」
身体拘束廃止未実施減算の10%は、介護報酬の減算のなかでもきわめて重い部類です。研修を年2回実施していない、委員会を3月に1回開催していないというだけで、基本報酬の1割が失われます。
なお、減算率と適用範囲はサービスごとに定められています。自事業所の該当条文は、告示19号(居宅サービス)または告示126号(地域密着型サービス)の該当サービスの注で確認してください。
年間研修計画の立て方
法定研修は「計画」と「実施記録」がセットで求められます。次の順で組みます。
- 自事業所に義務がある研修・委員会を洗い出す(在宅系か施設系か、身体拘束の措置義務があるかを確定させる)
- 回数を確定する(年1回以上か年2回以上か。委員会は3月に1回か6月に1回か)
- 一体的に実施できる組み合わせを決めて、年間カレンダーに配置する
- テーマ・講師・対象者・実施形式を決める(登録ヘルパー・非常勤・派遣も対象に含める)
- 実施後に記録を残す(日時・テーマ・出席者・資料・欠席者のフォロー)
通知が認めている一体的実施の組み合わせ
ここが実務でいちばん効きます。解釈通知は、次の組み合わせを明示的に認めています。
| 組み合わせ | 通知の文言 |
|---|---|
| 感染症のBCP研修 + 感染症の予防及びまん延の防止のための研修 | 一体的に実施することも差し支えない |
| 感染症のBCP訓練 + 感染症の予防及びまん延の防止のための訓練 | 一体的に実施することも差し支えない |
| 災害のBCP訓練 + 非常災害対策に係る訓練 | 一体的に実施することも差し支えない |
| 感染症に係るBCP + 感染症の予防及びまん延の防止のための指針 | それぞれに対応する項目を適切に設定している場合には、一体的に策定して差し支えない |
| 感染対策委員会 + 他の会議体 | 一体的に設置・運営することとして差し支えない |
感染症研修とBCP研修(感染症分)を一体で年1回、感染症訓練とBCP訓練(感染症分)を一体で年1回、災害のBCP訓練を非常災害訓練と一体で実施、これに虐待防止研修年1回を加える形です。
別々に開催すれば年6〜7本になるところを、通知の範囲内で圧縮できます。
ちびウルフ一体的にやったら、記録は1本でいいんですか?
リハウルフ記録は1本で構いませんが、「どちらの研修も内容として含んでいる」ことがわかる書き方にしてください。議題や資料の見出しに「感染症対策」と「感染症BCPの共有」の両方を明示しておくと、運営指導で説明が通ります。タイトルが片方だけだと、もう片方は未実施と見なされかねません。
委員会は独立設置が原則
研修と違い、委員会には制約があります。老健の解釈通知は、感染対策委員会について「運営委員会など施設内の他の委員会と独立して設置・運営することが必要である」としたうえで、「関係する職種、取り扱う事項等が相互に関係が深いと認められる他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営することとして差し支えない」としています。
つまり「無条件に何でも束ねてよい」わけではありません。身体的拘束等適正化検討委員会についても同様の記載があります。
運営指導で見られるポイント
- 年間研修計画が作成され、義務のある研修が回数どおり網羅されているか
- 実施記録に日時・テーマ・出席者・資料が残っているか
- 欠席者への補講・資料回覧の記録があるか
- 新規採用者への研修が採用時に実施されているか
- 委員会の開催記録が必要な頻度(3月に1回・6月に1回)を満たしているか
- 指針が整備され、内容が現状と合っているか
- 虐待防止・感染対策・身体拘束の各担当者が定められているか
- 認知症介護基礎研修の受講状況が職員別に把握されているか
解釈通知は、身体的拘束等適正化担当者・褥瘡予防対策担当者・感染対策担当者・事故防止の担当者・虐待防止の担当者について、「同一事業所内での複数担当の兼務や他の事業所・施設等との担当の兼務については、担当者としての職務に支障がなければ差し支えない」としています。
小規模事業所で担当者を人数分そろえられない場合でも、兼務で対応できます。ただし「日常的に兼務先の業務に従事しており、状況を適切に把握している者」を選任することとされています。
虐待防止の担当者については、通知は「虐待防止検討委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましい」としています。担当者を分散させるより、責任の所在を明確にするほうが趣旨に沿います。
よくある質問
虐待防止研修は年に何回必要ですか?
在宅系(訪問介護・通所介護等)は年1回以上、施設系(特養・老健・介護医療院等)は年2回以上です。いずれも新規採用時には必ず実施することとされています。
感染対策委員会は年に何回開けばいいですか?
在宅系はおおむね6月に1回以上、施設系はおおむね3月に1回以上です。感染症が流行する時期等を勘案して、必要に応じて随時開催することも求められています。
訪問介護や通所介護でも身体拘束の研修は必要ですか?
委員会・指針・研修の義務はありません。ただし身体的拘束等を行った場合の記録義務はあり、令和6年度改定で明確化されています。
感染症の研修とBCPの研修は分けて実施しないといけませんか?
分ける必要はありません。解釈通知は、感染症の業務継続計画に係る研修について「感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えない」としています。訓練についても同様です。
登録ヘルパーやパートも研修の対象ですか?
対象です。解釈通知は「登録訪問介護員等を含めて」と明記しています。研修及び訓練の実施にあたっては、すべての従業者が参加できるようにすることが望ましいとされています。
初任者研修を持っている職員も認知症介護基礎研修は必要ですか?
不要です。介護職員初任者研修修了者は、通知で対象外として明記されています。生活援助従事者研修の修了者も対象外です。
研修をやり忘れると減算はいくらですか?
高齢者虐待防止措置未実施減算は所定単位数の100分の1、業務継続計画未策定減算は在宅系が100分の1・施設居住系が100分の3、身体拘束廃止未実施減算は施設居住系が100分の10です。
研修の担当者は職種ごとに別の人が必要ですか?
必要ありません。解釈通知は複数担当の兼務や他事業所との兼務を、職務に支障がなければ差し支えないとしています。
研修は外部研修の受講でも認められますか?
通知は「事業所内での研修で差し支えない」としており、内部研修を否定していません。外部研修を活用する場合も、実施内容の記録を残してください。
訓練は机上のシミュレーションでもよいですか?
通知は「机上を含めその実施手法は問わない」としたうえで、「机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である」としています。
- 介護事業所の必須研修は虐待防止・身体拘束適正化・感染症・BCP・認知症介護基礎研修の5本柱
- 回数は省令ではなく解釈通知に書かれている
- 虐待防止研修は在宅系が年1回以上、施設系が年2回以上
- 虐待防止研修は在宅系・施設系とも新規採用時に必ず実施
- 感染症研修は在宅系が年1回以上、施設系が年2回以上
- 感染対策委員会は在宅系がおおむね6月に1回、施設系がおおむね3月に1回
- BCPの研修・訓練は在宅系が年1回以上、施設系が年2回以上
- 身体拘束適正化は委員会が3月に1回、研修が年2回以上(対象サービスのみ)
- 訪問介護・通所介護に身体拘束の委員会・指針・研修の義務はないが、記録義務はある
- 認知症介護基礎研修は初任者研修・生活援助従事者研修の修了者も対象外
- 減算は虐待防止1%、BCP1%または3%、身体拘束10%
- 感染症研修とBCP研修、感染症訓練とBCP訓練、災害BCP訓練と非常災害訓練は一体的実施が認められている
- 委員会は独立設置が原則だが、関係の深い会議体との一体的設置は差し支えない
- 各担当者は職務に支障がなければ兼務できる
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第23条、第30条の2、第31条、第37条の2
- 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(老企第25号)
- 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)第13条、第29条
- 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について(老企第44号)
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)
※本記事の研修頻度・要件は、厚生労働省の省令および解釈通知にもとづいて整理したものです。在宅系の頻度は訪問介護に関する記載、施設系の頻度は介護老人保健施設に関する記載を根拠としています。他のサービスでは表現や取扱いが異なる場合があるため、実際の運用にあたっては自事業所に適用される基準・解釈通知の原文および指定権者(都道府県・政令市・中核市・市町村)の解釈をご確認ください。減算率はサービスごとに定められており、本文の率は代表的なものです。研修の記録の書き方、一体的実施の記録上の留意点、担当者の置き方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。制度に関する記述は2026年9月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。


