訪問リハビリはなぜ給料が高い?5つの理由を現役PTが解説

「訪問リハビリはなぜ給料が高いのか」——理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)なら一度は考えるテーマです。結論から言うと、訪問リハビリの給料が高くなりやすいのは、報酬の仕組みと事業所のコスト構造がそうなっているからです。人気だから高い、大変だから高い、という話ではありません。
この記事では、訪問リハビリ歴10年以上の現役理学療法士(介護支援専門員)の立場から、訪問リハビリの給料が高い理由を、単位数・法令・統計という根拠つきで5つに分けて解説します。令和8年6月から訪問リハビリと訪問看護に処遇改善加算が新設された影響まで扱うので、これから職場を選ぶ人はここまで押さえておいてください。
- 訪問リハビリの給料が高い5つの理由(コスト構造・報酬・歩合・人材・新加算)
- 1回の訪問で事業所にいくら入るのか(308単位から計算)
- 令和8年6月に新設された処遇改善加算が給料に効く理由
- 訪問看護ステーションのリハ職のほうが有利になりやすい制度上の根拠
- PT・OT・STの平均年収と、公的統計の読み方の注意点
- 「週6回まで」という上限が、事業所の売上と給料に与える影響
- 高年収の求人に隠れているリスクの見分け方
- 面接で必ず確認しておきたい5つの項目
ちびウルフ訪問リハビリって、本当に病院より給料がいいの?
リハウルフ傾向としては高くなりやすいです。ただ「高い理由」を知らずに飛び込むと、職場選びを間違えます。理由の中には、あなたの努力で再現できるものと、できないものが混ざっているからです。そこを分けて説明します。
そもそもPT・OT・STの平均年収はいくらか
比較の土台として、公的統計を先に確認します。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」にもとづく数値は次のとおりです。
| 項目 | 男女計 |
|---|---|
| きまって支給する現金給与額 | 月額 30.99万円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 71.72万円 |
| 推定年収 | 約443.6万円 |
| 平均年齢 | 36.2歳 |
| 勤続年数 | 8.4年 |
求人サイトで見かける「訪問リハビリの年収は400〜600万円」といった相場観は、あくまで求人票の提示額を集計したものです。母集団も算出方法も統一されていないため、参考値として扱ってください。この記事では、相場の数字を並べる代わりに「なぜそうなるのか」という構造のほうを根拠つきで示します。構造がわかれば、目の前の求人票が妥当かどうかを自分で判断できるようになります。
訪問リハビリはなぜ給料が高い?5つの理由
訪問リハビリの給料が高くなりやすい理由は、次の5つに整理できます。
- ① 固定費が小さく、売上を人件費に回しやすい
- ② 訪問した回数がそのまま売上になる(報酬が出来高制)
- ③ 歩合制(インセンティブ制)が成立する構造がある
- ④ 経験年数の長い人材が集まりやすく、平均が押し上げられている
- ⑤ 令和8年6月から処遇改善加算が新設され、賃金原資が増えた
①〜③は事業所の仕組みの話、④は統計の見え方の話、⑤は制度の話です。性質がまったく違うものが「給料が高い」というひとつの結果に見えているため、ここを分けて理解することが職場選びの精度を決めます。
① 固定費が小さく、売上を人件費に回しやすい
訪問リハビリの運営に必要なものは、事務所・移動手段・人です。病院のような広い建物、大型の医療機器、大規模な設備投資が要りません。売上に対して固定費が占める割合が小さいぶん、人件費に配分できる余地が大きくなります。
病院のリハビリ部門は、建物・機器・病棟運営という大きな固定費を抱えた組織の一部門です。リハビリ部門が稼いだ分がそのままリハビリ職の給料に反映される構造にはなっていません。訪問は「売上と人件費の距離が近い」働き方だと言えます。
② 訪問した回数がそのまま売上になる
訪問リハビリテーション費は、1回につき308単位(令和8年6月版・病院又は診療所/介護老人保健施設/介護医療院いずれも同額)です。時間や成果ではなく、訪問という行為に対して単位が付きます。
そして老企第36号(留意事項通知)には、算定の単位がこう定められています。
(平成12年3月1日老企第36号 第二の4より引用)
つまり1回=20分です。現場で「40分の訪問」と言っているものは、報酬上は2回。「60分の訪問」は3回にあたります。1単位10円(その他地域)で計算すると次のようになります。
| 実際の訪問時間 | 算定上の回数 | 単位数 | 金額(1単位10円) |
|---|---|---|---|
| 20分 | 1回 | 308単位 | 3,080円 |
| 40分 | 2回 | 616単位 | 6,160円 |
| 60分 | 3回 | 924単位 | 9,240円 |
1日に40分の訪問を5件こなせば、その日の売上は30,800円。20日稼働で月616,000円です。セラピスト1人が生む売上が明確に数えられるため、給料の設計もしやすくなります。これが、病院勤務との決定的な違いです。
③ 歩合制(インセンティブ制)が成立する構造がある
②のように1件あたりの売上がはっきりしているため、「基準件数を超えた分は1件あたり◯円」という歩合制を設計できます。訪問すればスタッフの収入も事業所の利益も増えるため、両者の利害が一致します。
病院のリハビリでは、単位数を稼いでも給与に直結する仕組みは一般的ではありません。訪問で歩合制が広く使われているのは、売上の帰属が個人単位で計算できるからです。
ちびウルフじゃあ件数をどんどん増やせば、いくらでも稼げるの?
リハウルフそこに「1人につき週6回まで」という天井があります。同じ利用者に通い続けても、週120分でカンストします。件数を増やすには利用者の実数を増やすしかない。だから歩合制の職場で稼げるかどうかは、あなたの頑張りより「事業所に利用者がいるか」で決まります。ここを面接で確認しない人が本当に多いです。
④ 経験年数の長い人材が集まりやすい
「訪問リハの平均年収が高い」というデータには、もうひとつのカラクリがあります。訪問リハビリには経験年数の長いセラピストが集まりやすいのです。
訪問は、その場に相談できる同僚がいません。利用者宅で急変の可能性を判断し、家族対応も1人で担います。新卒をいきなり配置する事業所は多くなく、病院・老健の中でも訪問部門には経験者が回されやすい。結果として、給与体系が高いというより、勤続年数の長い人が多いから平均が高く見えている側面があります。
これはあなたが転職しても再現されない部分です。「訪問は平均年収が高いらしい」という理由だけで動くと、期待とのズレが生まれます。①②③⑤は仕組みなので再現されますが、④は母集団の性質にすぎません。
⑤ 令和8年6月から処遇改善加算が新設された
ここが今回の最大の変化です。令和8年6月から、訪問リハビリテーションと訪問看護に「介護職員等処遇改善加算」が新設されました。これまで訪問リハビリはこの加算の対象外だったため、制度開始以来はじめての適用になります。
厚生労働省「令和8年度介護報酬改定の概要」には、次のように書かれています。
(厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定について」より引用)
| サービス | 加算率 | サービスコード |
|---|---|---|
| (介護予防)訪問リハビリテーション | 1.5%(所定単位数×15/1000) | 14 6191 |
| (介護予防)訪問看護 | 1.8%(所定単位数×18/1000) | 13 6191 |
| 居宅介護支援・介護予防支援 | 2.1% | — |
この加算が重要なのは、算定額に相当する賃金改善の実施が事業者に義務づけられている点です。局長通知には、増えた加算額について「新たに増加した処遇改善加算の算定額に相当する介護職員その他の職員の賃金改善を新規に実施しなければならない」「新規に実施する賃金改善は、ベースアップにより行うことを基本とする」と明記されています。
リハウルフ面接では「令和8年6月から処遇改善加算を算定していますか」と聞いてみてください。算定していれば、そのぶんの賃金改善は義務です。取っていない事業所は、要件を満たせないか、届出をしていないかのどちらか。賃上げの原資が1つ少ない状態ということになります。
訪問リハ事業所と訪問看護ステーションのリハ職は別物
「訪問リハビリ」と呼ばれる働き方には、制度上まったく異なる2種類があります。ここを混同したまま求人を見ている人が非常に多いところです。
| 比較項目 | 訪問リハビリテーション事業所 | 訪問看護ステーション(リハ職) |
|---|---|---|
| 算定する報酬 | 訪問リハビリテーション費 308単位/回 | 訪問看護費(訪看Ⅰ5) 294単位/回 |
| 回数の上限 | 1週に6回まで (退院後3月以内は週12回) | 介護保険上の回数上限なし (1日2回超は90/100) |
| 医師の配置 | 常勤の医師が必須 | 配置義務なし |
| 開設できる母体 | 病院・診療所・老健・介護医療院のみ | 法人であれば可 |
| 処遇改善加算(R8.6〜) | 1.5% | 1.8% |
訪問リハ事業所には必ず医師がいる
指定居宅サービス等基準(平成11年厚生省令第37号)は、訪問リハビリテーション事業所の人員・設備をこう定めています。
一 医師 指定訪問リハビリテーションの提供に当たらせるために必要な一以上の数
二 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士 一以上
2 前項第一号の医師は、常勤でなければならない。
第七十七条 指定訪問リハビリテーション事業所は、病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院であって(略)
つまり訪問リハビリ事業所は、必ず医師のいる医療機関・介護保険施設の中にある部門です。給与体系はその病院や老健と共通になり、訪問リハだけ特別に高く設定されることは多くありません。異動があれば病棟に戻る可能性もあります。
一方、訪問看護ステーションのリハ職には医師の配置義務がなく、経営者が看護師やセラピストであることもあります。職種による昇進の天井が低く、歩合制も導入しやすい。令和8年6月からの処遇改善加算も1.8%と、訪問リハの1.5%より高く設定されました。
給料の高さの裏側にあるもの
ここまでの5つの理由は、裏を返せばそのままリスクになります。
- 歩合制は収入が変動する——利用者のキャンセル、退院、入院、看取りで件数は簡単に落ちます。悪天候の日も同様です。
- 週6回の上限があるため、稼ぐには利用者数が要る——事業所の営業力・地域のケアマネとの関係が、あなたの収入を左右します。
- 1人で判断する場面が多い——急変時の判断、家族対応、リスク管理を単独で担います。相談できる体制がない事業所は、給料が高くても消耗します。
- 移動が仕事時間を食う——エリアが広いほど1日に回れる件数は減ります。件数で稼ぐ設計なら、移動距離は収入に直結します。
- 処遇改善加算の配分は事業所の裁量——「事業所内で柔軟な配分を認める」とされているため、加算を算定していても自分の給与にどう反映されるかは事業所ごとに違います。
面接で確認すべき5つのこと
- 給与の内訳を分解して聞く:基本給・固定給と歩合の割合。歩合が半分以上を占める提示額なら、それは「上限の金額」であって保証額ではありません。
- 提示額に必要な訪問件数を聞く:「その年収を得ている人は1日何件・月何件訪問していますか」。実在する人の実績で聞くのがコツです。
- キャンセル時の扱いを聞く:利用者都合のキャンセルが歩合から引かれるのか、事業所が負担するのか。ここは事業所ごとに大きく違います。
- 処遇改善加算の算定状況を聞く:令和8年6月から算定しているか、賃金改善をどの項目(基本給・手当・賞与)に充てているか。
- 担当エリアと移動手段を聞く:エリアの広さ、車か自転車か、ガソリン代や駐車場代の負担。移動コストを自己負担している職場は、実質の手取りが下がります。
ちびウルフそこまで聞いて、感じ悪くならない?
リハウルフまっとうな事業所なら、むしろ「制度をわかっている人だ」と評価されます。この質問を嫌がる事業所こそ、聞いておいてよかったということです。給料の話を避ける職場に、給料が高い職場はありません。
訪問リハビリの給料が高いのは、単価が高いからですか?
未経験・若手でも訪問リハビリで高い給料をもらえますか?
訪問リハビリは1人にどれくらい訪問できますか?
病院の訪問リハと訪問看護ステーションのリハ、どちらが給料は高いですか?
令和8年6月の処遇改善加算で、実際に給料は上がりますか?
歩合制と固定給、どちらを選ぶべきですか?
PTの平均年収444万円というデータは信用できますか?
訪問リハビリの給料は今後も高いままですか?
- 訪問リハビリの給料が高くなりやすい理由は、コスト構造・報酬設計・給与制度・人材構成・新設加算の5つ。
- 固定費が小さいため、売上を人件費に配分しやすい構造になっている。
- 訪問リハビリテーション費は1回(20分)308単位。40分なら2回616単位、60分なら3回924単位として計算する。
- 1単位10円(その他地域)なら、40分の訪問で6,160円。地域区分により単価は上がる。
- 売上が個人単位で計算できるため、歩合制(インセンティブ制)が成立しやすい。
- ただし1人につき1週6回(退院後3月以内は週12回)が上限で、稼ぐには利用者の実数が必要。
- 「訪問リハの平均年収が高い」というデータには、経験年数の長い人材が集まりやすいという母集団の偏りが含まれている。
- 令和8年6月から訪問リハビリに処遇改善加算1.5%、訪問看護に1.8%が新設された(制度開始以来はじめて)。
- 令和8年度改定は賃上げのための期中改定で、改定率+2.03%のほとんどが処遇改善に充てられている。
- 加算を算定した事業所には賃金改善の実施義務があり、増加分はベースアップによることが基本とされている。
- 訪問リハビリ事業所は常勤医師が必須で、病院・診療所・老健・介護医療院にしか置けない(省令37号第76条・77条)。
- 年収を上げたいなら、単位数の高さではなく、組織構造・回数上限・給与制度・加算の算定状況で職場を比較する。
- 厚生省老人保健福祉局企画課長通知「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月1日老企第36号)第二の4
- 「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第76条・第77条
- 厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定について」(「令和8年度介護報酬改定の概要」ほか告示・通知の掲載ページ)
- 厚生労働省老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月13日 老発0313第6号)2⑵、3⑵、別紙1表1−5
- 厚生労働省老健局「介護保険事務処理システム変更に係る参考資料の送付について(確定版)」(令和8年5月25日事務連絡)資料1「介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)」、資料2②「介護給付費単位数等サービスコード表 介護サービス(R8.6.1)」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別データ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士)
※本記事の単位数・算定要件・人員基準は、厚生労働省の告示・通知および関係省令にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。金額は1単位10円(その他地域)で計算した目安であり、地域区分により1単位あたりの単価が異なります。記事中の売上の試算は仮の訪問件数を置いたものであり、実際の金額を保証するものではありません。賃金構造基本統計調査の数値は「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士」の4職種を合算した統計であり、理学療法士単独の数値ではありません。同調査の具体的数値については二次情報を参照して整理しており、原表と細部が異なる可能性があります。求人相場に関する記述は公的統計にもとづくものではありません。処遇改善加算の賃金への反映方法は事業所ごとに異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。職場選び・面接に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。
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