機能解剖学の本は、筋の起始・停止・作用を覚える本で土台をつくり、そのあと触診や運動療法につながる本に進む順番がおすすめです。迷ったら、学生や1年目のPT・OTは『触診とゴロで覚える 四肢&体幹の機能解剖学』、臨床で触診の精度を上げたい人は『運動療法のための機能解剖学的触診技術』から読んでください。

この記事では、機能解剖学の本を「筋と関節の基礎を覚える本」「関節の仕組みを深く理解する本」「触診と運動療法につなげる本」の3つに分けて9冊紹介します。書名・版・発行年は、出版社の紹介ページと国立国会図書館サーチの書誌で確認しました。

この記事でわかること
  • 機能解剖学の本を選ぶときの3つのポイント
  • 筋の起始・停止・作用・神経支配を覚えるための本
  • 名著『カパンジー機能解剖学』の3巻の違い
  • 触診と運動療法につなげる本
  • 学生・新人・中堅の読む順番
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解剖学と機能解剖学って、何が違うの?

リハウルフリハウルフ

解剖学は「どこに何があるか」を学ぶもので、機能解剖学は「その骨や筋がどう動いて、どんな働きをするか」を学ぶものだよ。リハビリでは、関節が動かない理由や痛みの原因を考えるときに、機能解剖学の知識が土台になるんだ。

機能解剖学の本を選ぶ3つのポイント

機能解剖学の本は、学生向けの暗記用から、臨床家向けの専門書まで幅広くあります。次の3つの視点で選ぶと、自分の段階に合った本が見つかります。

①今の段階に合っているか(暗記か、理解か、応用か)

学生や1年目のうちは、筋の起始・停止・作用・支配神経を正確に覚えることが先です。そのあと、関節の運動の仕組みを理解し、最後に触診や運動療法へ応用していきます。いきなり臨床の専門書を買うより、段階に合った本を1冊ずつ読むほうが身につきます。

②イラストや動画で立体的に理解できるか

関節の動きや筋の走行は、文章だけではイメージしにくいものです。イラストが豊富な本や、QRコードから動画を見られる本を選ぶと、立体的な動きをつかみやすくなります。

③臨床で使う部位が載っているか

整形外科のクリニックなら肩・膝・腰、回復期や訪問なら股関節や体幹、上肢の機能が求められます。自分がよく担当する部位の章が充実している本を選ぶと、すぐに臨床で役立ちます。

筋と関節の基礎を覚える機能解剖学の本2選

1. 触診とゴロで覚える 四肢&体幹の機能解剖学

理学療法士の高橋仁美氏による中山書店の本です(2025年10月発行・111ページ)。2013年の『ゴロから覚える 筋肉&神経』をもとにバージョンアップした本で、イラストをフルカラーにして、解剖図と解説を新しくしています。

徒手筋力テスト(MMT)に準じて、筋の作用、起始・停止、支配神経、髄節レベルの4つを網羅し、触診とゴロ合わせで楽しく覚えられる構成です。間違えやすい髄節レベルや神経支配を確かめる問題と解答も付いています。国家試験対策や、解剖学の授業の予習・復習用に向いています。

2. 骨格筋ハンドブック(原書第3版)

Chris Jarmey氏・John Sharkey氏の原著を、野村嶬氏が監訳した南江堂の本です(2018年3月発行・297ページ)。副題は「機能解剖からエクササイズまで一目でわかる」。骨格筋を1つずつ1ページでイラスト解説し、起始・停止・作用に加えて、その筋を使う動作や関連するけがも覚えられます。

体の動作への関与別に筋をまとめたページや、神経支配の経路を示したページも付録に入っています。筋を1つずつ引いて確認する辞書として、学生から臨床家まで長く使える1冊です。

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起始・停止なんて、覚えても臨床で使うの?

リハウルフリハウルフ

使うよ。たとえば肩が上がらない人を診るとき、どの筋が硬いと、どの方向の動きが止まるかは、起始・停止と作用がわかっていないと考えられないんだ。触診で筋を探すときにも、付着部の位置が目印になるよ。

関節の仕組みを深く理解する名著カパンジー機能解剖学3選

『カパンジー機能解剖学』は、骨・関節・筋の機能解剖学、生体力学、運動学を、簡潔なイラストと文章で解説した世界的な名著です。医歯薬出版から、原著第7版の完訳版が全3巻(上肢・下肢・脊椎体幹頭部)で2019年に刊行されています。各巻に解剖学用語の一覧が加わりました。全3巻セットも発売されているので、まとめて買う場合はセットを選ぶと割安です。

3. カパンジー機能解剖学 Ⅰ 上肢 原著第7版

塩田悦仁氏が訳した医歯薬出版の本です(2019年発行・369ページ)。肩・肘・前腕・手関節・手指の運動の仕組みを、図解で丁寧に説明しています。第7版では「進化」に関する項目が新たに加わりました。手の外科やハンドセラピーに関わる作業療法士にとっては、上肢の動きの理解を深める定番の1冊です。

4. カパンジー機能解剖学 Ⅱ 下肢 原著第7版

同じく塩田悦仁氏が訳した医歯薬出版の本です(2019年発行)。股関節・膝関節・足関節と足部の運動の仕組みを扱い、第7版では「ジャンプ」と「歩行」の項目が新たに加わりました。高齢者の歩行やバランスに関わることが多い理学療法士は、3巻の中でまずこの下肢の巻から読むのがおすすめです。

5. カパンジー機能解剖学 Ⅲ 脊椎・体幹・頭部 原著第7版

塩田悦仁氏が訳した医歯薬出版の本です(2019年発行・338ページ)。脊柱や骨盤、体幹、頭部の機能解剖を扱い、第7版では「重心」や「関節」に関する項目が加わりました。腰痛や姿勢の評価に関わる人に向いています。

触診と運動療法につなげる機能解剖学の本4選

6. 運動療法のための機能解剖学的触診技術 上肢 改訂第2版(動画プラス)

青木隆明氏が監修し、林典雄氏が執筆したメジカルビュー社の本です(2022年12月発行・359ページ)。長く読まれてきた触診の定番書に、105本・約100分の動画を追加した版です。紙面のQRコードから、関連する動画をストリーミングで見られます。

複数のカメラで撮影したエキスパートの手技で、写真だけではイメージしにくい立体的な動きがよくわかります。新人のうちに「触れる」技術を身につけたい人に最適です。

7. 運動療法のための機能解剖学的触診技術 下肢・体幹 改訂第2版(動画プラス)

6の下肢・体幹の巻です(2022年12月発行・329ページ)。127本・約122分の動画が追加されています。高齢者の転倒予防や歩行練習、腰痛のリハビリに関わる理学療法士は、上肢の巻より先にこちらを読むと臨床に直結します。

8. 機能解剖と触診

工藤慎太郎氏とMKPT研究会(形態学と運動学に基づく理学療法研究会)が編集した羊土社の本です(2019年3月発行・294ページ)。書名のとおり、機能解剖と触診を結びつけて学ぶための本です。次の9と同じ編者によるシリーズなので、9の運動療法とセットで読むと、評価から治療までの流れがつながります。

9. 機能解剖と運動療法

工藤慎太郎氏が編集した羊土社の本です(2022年3月発行・259ページ)。運動器の理学療法で押さえておきたい108の手技を、見開き完結で解説しています。豊富な画像と解剖図で、「その運動療法がなぜ必要か、どう実施すべきか」を機能解剖学の視点から学べます。

肩・肘・手・頸部・腰部・股関節・膝・足の8章で構成され、各章にケーススタディが付いています。評価はできるけれど、治療の引き出しが少ないと感じている2〜5年目のPTに向いています。

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9冊もあると、どれから買えばいいか迷っちゃう…

リハウルフリハウルフ

学生なら『触診とゴロで覚える』、新人なら『機能解剖学的触診技術』をよく担当する部位の巻から1冊でいいよ。カパンジーは、臨床で「なぜこの関節はこう動くんだろう」と疑問がわいたときに開く本なんだ。

段階別の機能解剖学の本を読む順番

9冊すべてをそろえる必要はありません。今の段階に合わせて、次の順番で読み進めましょう。

PT・OT学生の場合

  • 『触診とゴロで覚える 四肢&体幹の機能解剖学』で、筋の作用・起始停止・神経支配を覚える
  • 自分の体で筋を触って、教科書の位置と照らし合わせる
  • 『骨格筋ハンドブック』で、覚えた筋が関わる動作を確認する

1年目のPT・OTの場合

  • 担当する患者さんに多い部位の『機能解剖学的触診技術』を1冊選ぶ
  • 動画で手技を確認し、同僚どうしで触診を練習する
  • 臨床で迷った関節の動きを『カパンジー機能解剖学』で調べる

2〜5年目のPT・OTの場合

  • 『機能解剖と運動療法』で、部位ごとの運動療法の手技と根拠を整理する
  • 『機能解剖と触診』で、評価のための触診を見直す
  • 担当症例でケーススタディと同じ流れで評価と治療を組み立てる
在宅でこそ機能解剖学が効く

訪問リハでは、病院のように画像所見や検査値がすぐに手元にあるとは限りません。限られた情報の中で痛みや動きにくさの原因を考えるには、触診と機能解剖学の知識が頼りになります。担当した利用者さんで、膝の痛みの原因が実は股関節まわりの筋の硬さにあったケースもありました。

よくある質問

機能解剖学の本は、学生のうちに何を買えばいいですか?

『触診とゴロで覚える 四肢&体幹の機能解剖学』がおすすめです。筋の作用、起始・停止、支配神経、髄節レベルをゴロ合わせと触診で覚えられ、問題と解答も付いています。授業の予習・復習や国家試験対策に使えます。

『カパンジー機能解剖学』は3巻すべて必要ですか?

必須ではありません。よく担当する部位の巻から1冊ずつそろえれば十分です。理学療法士は下肢の巻、上肢を多く診る作業療法士は上肢の巻から読むのがおすすめです。3巻まとめて買うなら、割安な全3巻セットもあります。

『カパンジー機能解剖学』は難しいですか?

イラストが中心で文章は簡潔ですが、生体力学の説明も多いため、解剖学の基礎を覚えてから読むほうが理解しやすいでしょう。学生のうちは、授業で習った関節の動きを確かめる参考書として使うのがおすすめです。

触診の本は、上肢と下肢・体幹のどちらから買えばいいですか?

よく担当する患者さんの部位で選びましょう。高齢者の歩行や腰痛、膝の痛みに関わることが多い理学療法士は下肢・体幹の巻、手の外科や上肢の機能訓練が多い作業療法士は上肢の巻が先です。

動画付きの本は、旧版と何が違いますか?

『運動療法のための機能解剖学的触診技術』の動画プラス版は、書籍の内容はそのままに、アプリ版に収載されていた動画を追加した版です。紙面のQRコードから動画を見られるので、これから買うなら動画プラス版を選びましょう。

作業療法士にも機能解剖学の本は必要ですか?

必要です。上肢の機能訓練やスプリントの作製、ADLの動作の分析には、関節の動きと筋の働きの理解が欠かせません。上肢の巻の『カパンジー機能解剖学』や『機能解剖学的触診技術』が役立ちます。

機能解剖学の本と運動療法の本は、どちらを先に読むべきですか?

機能解剖学の本を先に読むのがおすすめです。運動療法の手技は、関節の動きや筋の働きがわかっていないと応用できません。基礎を押さえてから『機能解剖と運動療法』のような手技の本に進みましょう。

まとめ
  • 機能解剖学の本は、暗記→理解→応用の段階に合わせて選ぶ
  • 学生は『触診とゴロで覚える 四肢&体幹の機能解剖学』から始める
  • 関節の仕組みを深めるなら『カパンジー機能解剖学』を部位別に読む
  • 新人は動画付きの『機能解剖学的触診技術』で触れる技術を身につける
  • 治療の引き出しを増やすなら『機能解剖と運動療法』
参考にした情報

※書籍の書名・版・出版社・発行年は、2026年11月3日時点の国立国会図書館サーチの書誌と各出版社の紹介ページで確認したものです。在庫や価格、新しい版の刊行状況は変わる可能性があるため、購入時に販売ページでご確認ください。本の選び方や読み方、臨床の事例に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理です。本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味