社会福祉法人等による利用者負担軽減制度は、住民税非課税で生活が苦しい方の介護サービスの自己負担を、原則4分の1(老齢福祉年金受給者は2分の1)減らす制度です。特養の食費・居住費やデイサービスの食費まで対象になります。

ただし、軽減してくれるのは市町村に申し出た社会福祉法人などの事業所だけで、訪問看護や老健は対象外です。この記事では、国の通知(平成12年老発第474号)にもとづく市町村の実施要綱を確認して、対象者の条件・軽減の範囲・申請の流れ・ほかの制度との順番を整理しました。

この記事でわかること

  • 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度のしくみ
  • 対象者の条件(収入150万円・預貯金350万円など)
  • 軽減の割合と、軽減される費用の範囲
  • 対象になるサービス・ならないサービス
  • 申請の流れと、負担限度額認定・高額介護サービス費との順番

社会福祉法人等による利用者負担軽減制度とは?

この制度は、社会福祉法人がその社会的な役割として、生計が困難な方の利用者負担を軽くするしくみです。国の通知「低所得者に対する介護保険サービスに係る利用者負担額の軽減制度の実施について」(平成12年5月1日老発第474号)の別添「社会福祉法人等による生計困難者等に対する介護保険サービスに係る利用者負担額軽減制度事業実施要綱」が根拠で、各市町村が要綱をつくって実施しています。

市町村の実施要綱「目的」(高槻市・原文)

「低所得者で生計が困難である者及び生活保護受給者について、介護保険サービスの提供を行う社会福祉法人等が、その社会的な役割にかんがみ、利用者負担を軽減することにより、介護保険サービスの利用促進を図ることを目的とする。」

軽減した分は、事業所が負担します。その一部を市町村などが助成するしくみです。そのためすべての社会福祉法人が実施しているわけではなく、市町村や都道府県に「軽減を行う」と申し出た法人の事業所だけが対象になります。

あまり知られていない制度で、本人や家族が知らなければ、誰からも案内されないまま終わることもあります。負担限度額認定(補足給付)を受けている方は、あわせて確認する価値があります。

対象者の条件

対象は、市町村民税世帯非課税で、次の条件をすべて満たし、収入や世帯の状況などを総合的に勘案して市町村長が「生計が困難な者」と認めた方です。生活保護を受けている方も対象です。

条件基準
年間収入単身世帯で150万円以下(世帯員が1人増えるごとに50万円を加算)
預貯金等単身世帯で350万円以下(世帯員が1人増えるごとに100万円を加算)
資産住んでいる家など日常生活に必要な資産以外に、利用できる資産がない
扶養負担能力のある親族等に扶養されていない
保険料介護保険料を滞納していない

2人世帯なら、年間収入200万円以下・預貯金450万円以下が目安です。3人世帯なら250万円以下・550万円以下になります。

年間収入には、年金や給与のほか、遺族年金・障害年金といった非課税の年金も含めて申告を求める市町村もあります。課税の判定とは数え方が違うので注意してください。

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負担限度額認定証の条件と似てるけど、同じじゃないの?

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似ていますが別の制度で、申請も別です。負担限度額認定は施設の食費・居住費を下げる国の制度、こちらは社会福祉法人が自己負担そのものを減らす制度です。両方の条件を満たす方は少なくないので、限度額認定の申請のときに窓口で一緒に聞いてみてください。

軽減の割合と軽減される費用

軽減の割合は、対象者によって次のように決まっています。

対象者軽減の割合
生計が困難な者軽減対象費用の4分の1
うち老齢福祉年金受給者軽減対象費用の2分の1
生活保護受給者個室の居住費(滞在費)の全額

※市町村の判断で、軽減の割合を4分の1より大きくしている場合があります。

軽減の対象になる費用は、サービスによって違います。高槻市の要綱の別表をもとに整理すると次のとおりです。

サービス軽減の対象になる費用
特養(地域密着型を含む)利用者負担額、食費・居住費(負担限度額認定を受けている場合に限る)
ショートステイ(短期入所生活介護)利用者負担額、食費・滞在費(負担限度額認定を受けている場合に限る)
通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護利用者負担額、食費
訪問介護・夜間対応型訪問介護利用者負担額
小規模多機能・看護小規模多機能利用者負担額、食費、宿泊費
定期巡回・随時対応型訪問介護看護利用者負担額

総合事業の訪問型・通所型サービスのうち、従来の介護予防訪問介護・介護予防通所介護に相当するもの(自己負担割合が保険給付と同じもの)も対象です。

特養・小多機・看多機・定期巡回のただし書

高槻市の要綱の別表では、特養・小規模多機能・看護小規模多機能・定期巡回の利用者負担額について「高額介護サービス費等の利用者負担第二段階に該当する者を除く」とされています。

第2段階の方は、高額介護サービス費で月の負担上限がすでに低く抑えられているためです。この場合も、食費・居住費は軽減の対象になります。

特養の食費・居住費は金額が大きいので、軽減の効果も大きくなります。デイサービスの食費が軽減の対象に入るのも、この制度の特徴です。食費は保険外の費用で、高額介護サービス費でも負担限度額認定でも下がらない費用だからです。

対象にならないサービス

次のサービスは、社会福祉法人が運営していても軽減の対象になりません。

  • 訪問看護・訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション
  • 介護老人保健施設・介護医療院
  • 訪問入浴介護
  • 福祉用具貸与・特定福祉用具販売・住宅改修
  • グループホーム(認知症対応型共同生活介護)・特定施設入居者生活介護

ケアプランの中で訪問看護や通所リハの割合が大きい方は、軽減の効果が小さくなります。逆に、特養に入っている方や、デイサービスとショートステイが中心の方は効果が大きくなります。

申請の流れと確認証

申請先は住んでいる市町村(介護保険の保険者)です。一般的な流れは次のとおりです。

  • 利用している(または利用したい)事業所が軽減を実施しているか、市町村の一覧や事業所に確認する
  • 市町村に確認申請書と収入等申告書を出す(預貯金の通帳の写しなどを求められることが多い)
  • 市町村が審査し、対象と認められれば決定通知書と確認証が交付される
  • 確認証を事業所に提示する
  • 事業所が軽減後の金額で請求する

確認証には有効期間があります。高槻市の要綱では、申請した月の初日から、原則として翌年度の7月末日までとされています(4月〜7月に申請した場合はその年度の7月末日まで)。毎年の更新が必要になるので、負担限度額認定と同じタイミングで手続きしておくと忘れにくくなります。

軽減は確認証を提示した事業所でだけ受けられます。デイサービスとショートステイを別の法人で使っている場合は、それぞれの事業所が軽減を実施しているか確認が必要です。

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どこの事業所が軽減してくれるかは、どうやって調べるの?

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市町村が実施法人の一覧を持っていて、ケアマネにも情報提供されることになっています。担当のケアマネに「社福軽減をやっている事業所を入れられますか」と聞くのが早いです。事業所を選ぶときの判断材料にもなります。

ほかの軽減制度との順番

介護保険には、自己負担を下げる制度がいくつかあります。社会福祉法人等の軽減は、ほかの制度を使ったあとに適用されるものと、先に適用するものがあります。

ほかの制度適用の順番
負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)先に負担限度額認定を適用し、残った食費・居住費に社福軽減
高額介護サービス費社福軽減を適用した後の自己負担額で計算する
利用者負担額の減額・免除(災害など)先に減額・免除を適用し、その後に必要に応じて社福軽減

特養の食費・居住費が軽減の対象になるのは、負担限度額認定を受けている場合に限られます。限度額認定の申請をしていない方は、まずそちらを先に済ませてください。限度額認定のしくみは介護保険負担限度額認定証とは?で解説しています。

高額介護サービス費は、社福軽減の後の金額で計算されます。軽減で自己負担が下がった分、高額介護サービス費の払い戻しが減ることもありますが、トータルの負担が増えることはありません。高額介護サービス費のしくみは高額介護サービス費とは?をご覧ください。

市町村によって違う点

この制度は国の要綱をもとに市町村が実施しているため、細かい部分は市町村ごとに違います。

  • 老齢福祉年金受給者の扱い(収入・預貯金の条件を求めない市町村もある)
  • 軽減の割合(4分の1より大きくしている市町村もある)
  • 確認証の有効期間と更新の時期
  • 申請に必要な書類(通帳の写し、年金の通知書など)
  • 申請日より前の利用分にさかのぼれるかどうか

特に最後の点は、申請が遅れると損をする部分です。高槻市の要綱では、軽減を受けようとするサービスを利用する14日前までに申請することとされています。利用を始める前に手続きしておくのが確実です。

よくある質問

社会福祉法人等の利用者負担軽減制度の対象者は?

市町村民税世帯非課税で、年間収入が単身150万円以下、預貯金等が単身350万円以下などの条件を満たし、市町村長が生計困難と認めた方です。生活保護受給者も対象です。

どれくらい安くなりますか?

原則として軽減対象費用の4分の1です。老齢福祉年金受給者は2分の1です。生活保護受給者は個室の居住費(滞在費)の全額が軽減されます。

2人世帯の収入と預貯金の基準はいくらですか?

年間収入200万円以下、預貯金等450万円以下が基準です。世帯員が1人増えるごとに収入50万円・預貯金100万円が加算されます。

どの社会福祉法人でも軽減してもらえますか?

いいえ。軽減を行うことを市町村や都道府県に申し出た法人の事業所だけです。市町村の一覧で確認できます。

訪問看護や老健は対象になりますか?

なりません。対象は訪問介護、通所介護、ショートステイ、特養、小規模多機能、看護小規模多機能、定期巡回などに限られます。

デイサービスの食費も安くなりますか?

なります。通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の食費は軽減の対象です。

特養の食費・居住費も対象ですか?

負担限度額認定を受けている場合に限り、対象になります。先に負担限度額認定の申請を済ませてください。

申請はどこにしますか?

住んでいる市町村の介護保険の窓口です。決定されると確認証が交付され、事業所に提示して軽減を受けます。

毎年更新が必要ですか?

確認証には有効期間があり、多くの市町村で毎年の更新が必要です。期間や時期は市町村によって異なります。

まとめ

  • 住民税非課税で生計が困難な方の自己負担を、社会福祉法人等が原則4分の1軽減する制度
  • 対象者は収入150万円・預貯金350万円以下(単身)など5つの条件を満たした方と生活保護受給者
  • 特養の食費・居住費やデイサービスの食費も軽減の対象になる
  • 軽減するのは申し出た法人の事業所だけで、訪問看護・老健などは対象外
  • 負担限度額認定を先に受け、高額介護サービス費は軽減後の額で計算する

参考にした情報

※本記事の対象者の条件・軽減の割合・対象サービス・ほかの制度との適用関係は、国の通知「低所得者に対する介護保険サービスに係る利用者負担額の軽減制度の実施について」(平成12年5月1日老発第474号)にもとづいて定められた市町村・都道府県の実施要綱をもとに整理したものです。国の通知本文は公開ページで確認できなかったため、通知を引用している自治体の要綱で内容を確認しています。実際の申請にあたっては、お住まいの市町村の要綱および窓口の説明をご確認ください。老齢福祉年金受給者の扱い、軽減の割合、確認証の有効期間、申請の期限、必要書類は市町村によって異なります。制度に関する記述は2026年11月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。利用の仕方や効果の大きいケースに関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味