住所地特例とは?介護保険の対象施設と保険者の決まり方

住所地特例は、施設に住民票を移しても、介護保険の保険者は元の市町村のままという特例です。特養や有料老人ホームが多い市町村に介護費用が集中しないように設けられています。
ただし、グループホームなど地域密着型の施設は対象外で、ここを取り違えると保険者番号・請求先・各種申請先がすべてずれます。この記事では、介護保険法第13条と関連条文の原文を確認して、対象施設・保険者の決まり方・入所後に使えるサービスを整理しました。
この記事でわかること
- 住所地特例のしくみと、設けられている理由
- 対象になる施設と、対象外になる施設
- 施設を移り住んだときに保険者がどこになるか
- 入所後に使える地域密着型サービスと地域支援事業
- 保険料・認定・負担軽減の申請先と、実務で起きやすいミス
介護保険の住所地特例とは?
介護保険の被保険者は、原則として住所のある市町村の被保険者になります(介護保険法第9条)。施設に入って住民票を移せば、本来は施設のある市町村の被保険者に切り替わるはずです。
これをそのまま適用すると、大きな特養や有料老人ホームがある市町村ほど、ほかの地域から来た高齢者の介護費用を負担することになります。そこで法第13条で、施設に入るために住所を移した人は、元の市町村の被保険者のままにすると定めています。
介護保険法 第13条第1項(原文の要点)
住所地特例対象施設に「入所又は入居(以下『入所等』という。)をすることにより当該住所地特例対象施設の所在する場所に住所を変更したと認められる被保険者」であって、入所等をした際に他の市町村に住所を有していたと認められるものは、「第九条の規定にかかわらず、当該他の市町村が行う介護保険の被保険者とする。」
たとえば、A市に住んでいた方がB市の特養に入り、住民票をB市に移したとします。この方は住民票上はB市民ですが、介護保険は引き続きA市の被保険者です。保険料もA市に納め、要介護認定もA市が行います。
住所地特例の対象施設
法第13条第1項は、対象施設を次の3つとしています。
| 法の区分 | 具体的な施設 |
|---|---|
| ①介護保険施設 | 特別養護老人ホーム(定員30人以上)、介護老人保健施設、介護医療院 |
| ②特定施設 | 有料老人ホーム(介護付き・住宅型・健康型)、軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホーム。有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅を含む |
| ③養護老人ホーム | 老人福祉法による入所措置で入った方 |
②の「特定施設」は、介護保険法第8条第11項で「有料老人ホームその他厚生労働省令で定める施設であって、地域密着型特定施設でないもの」と定義されています。省令で定める施設は養護老人ホームと軽費老人ホームです(施行規則第15条)。
注意したいのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けているかどうかは関係ないという点です。住宅型有料老人ホームも対象です。サービス付き高齢者向け住宅は、食事の提供などを行い有料老人ホームに該当するものが対象になります。該当するかどうかは施設に確認してください。
対象外になる施設
次の施設は住所地特例の対象ではありません。住民票を移せば、施設のある市町村の被保険者になります。
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 地域密着型介護老人福祉施設(定員29人以下の特養)
- 地域密着型特定施設(定員29人以下の介護付き有料老人ホームなど)
- 有料老人ホームに該当しないサービス付き高齢者向け住宅
地域密着型サービスは、その市町村の住民が使うことを前提にした施設です。そのため多くの市町村では、グループホームや小規模特養に入る条件として「その市町村に住所があること」を求めています。他市のグループホームを探すときは、まず入居できるかどうかを施設のある市町村に確認するのが先です。
ちびウルフ同じ「老人ホーム」なのに、グループホームだけ扱いが違うの?
リハウルフそうなんです。グループホームは地域密着型サービスで、「その町の人のための施設」という位置づけです。家族が「近くの特養と同じ感覚で隣の市のグループホームに申し込んだら断られた」という相談は、ケアマネをしているとときどき受けます。
施設を移り住んだときの保険者
特養から別の市の有料老人ホームへ、といったように対象施設を続けて移ることがあります。この場合も、最初の施設に入る前に住んでいた市町村が保険者のままです(法第13条第2項)。
| 移り方 | 保険者 |
|---|---|
| A市の自宅 → B市の特養 | A市 |
| A市の自宅 → B市の有料老人ホーム → C市の特養 | A市 |
| A市の自宅 → B市の特養 → 退所してB市の自宅 | B市(施設を出たため特例が終わる) |
| A市の自宅 → B市のグループホーム | B市(対象外の施設のため) |
3つめのように、施設を出て施設所在地で在宅生活に戻った場合は、特例の前提がなくなります。住民票のある市町村の被保険者に切り替わるので、被保険者証も新しい市町村で交付されます。
4つめのグループホームのケースで、グループホームから特養へ移った場合はどうなるか。グループホームは対象施設ではないので、移る直前の住所地であるB市が保険者になると考えられます。迷うケースは、必ず関係する市町村の介護保険担当に確認してください。
入所後に使えるサービス
保険者は元の市町村でも、実際に生活しているのは施設のある市町村です。そこで、生活圏で必要なサービスは施設のある市町村(法律上は「施設所在市町村」)のものを使えるようになっています。
地域密着型サービスの一部
介護保険法第42条の2で、住所地特例の方は、施設所在市町村が指定した「特定地域密着型サービス」を使えるとされています。法第8条第14項で定められた範囲は次の6つです。
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
住宅型有料老人ホームに入っている方が、近くの地域密着型デイサービスに通う、というのが典型例です。一方で、グループホーム・地域密着型特定施設・地域密着型特養は特定地域密着型サービスに含まれていません。
地域支援事業
介護予防・日常生活支援総合事業などの地域支援事業も、施設所在市町村が実施します。法第115条の45で、施設所在市町村の事業の対象に「当該市町村の区域内に所在する住所地特例対象施設に入所等をしている住所地特例適用被保険者を含む」と書かれています。
要支援の方が住宅型有料老人ホームに入っている場合、総合事業の訪問型・通所型サービスは施設のある市町村のものを利用します。
保険料・認定・申請はどこに出すか
住所地特例の方は、介護保険に関する手続きの多くが元の市町村(保険者)になります。
| 手続き | 窓口 |
|---|---|
| 介護保険料の納付 | 元の市町村 |
| 要介護認定の申請・更新 | 元の市町村 |
| 負担限度額認定・高額介護サービス費 | 元の市町村 |
| 地域密着型サービス(特定地域密着型)・総合事業 | 施設のある市町村のサービスを利用 |
要介護認定の訪問調査は、元の市町村から施設所在地の市町村などに委託して行われることがあります。調査員が施設のある市町村から来ても、認定するのは元の市町村です。
入所のときには、施設を通じて元の市町村に住所地特例の届出をするのが一般的です。様式や名称(「住所地特例適用届」など)は市町村によって違うので、入所の前後に施設の相談員と確認しておくと安心です。
医療保険の住所地特例は別の制度
国民健康保険と後期高齢者医療制度にも住所地特例がありますが、介護保険とは根拠法が別で、対象となる施設の範囲も同じではありません。介護保険の扱いがそのまま医療保険にも当てはまるとは限らないため、医療保険の窓口にも確認してください。
ケアマネ・事業所が間違えやすい点
住所地特例でいちばん困るのは、請求の誤りです。居宅介護支援やサービス事業所の立場で、実際につまずきやすいポイントをまとめます。
- 住民票の異動にあわせて、保険者番号を施設所在市町村のものに変えてしまう
- グループホームから退去した方を、住所地特例の方と同じ扱いにしてしまう
- 施設を退所して在宅に戻ったのに、元の市町村のまま給付管理を続ける
- 地域密着型サービスの利用で、施設所在市町村が指定した事業所かどうかを確認していない
確認の基本は、住民票の住所ではなく被保険者証に書かれた保険者を見ることです。被保険者証の保険者名が元の市町村になっていれば、住所地特例が適用されています。住所欄と保険者がずれているのは正常な状態です。
ちびウルフ住民票と保険証の市町村が違うと、何かの間違いかと思っちゃうね。
リハウルフ新しく担当になった利用者さんで最初に見るのがここです。有料老人ホームの入居者さんだと、保険者は県外の市ということも珍しくありません。認定更新の書類の送り先も元の市になるので、家族への説明が欠かせません。
よくある質問
住所地特例の対象施設はどこですか?
介護保険施設(特養・老健・介護医療院)、特定施設(有料老人ホーム・軽費老人ホーム・養護老人ホーム。地域密着型特定施設を除く)、措置入所の養護老人ホームです。
グループホームは住所地特例の対象ですか?
対象ではありません。住民票を移せば、グループホームのある市町村の被保険者になります。
住宅型有料老人ホームも対象ですか?
対象です。特定施設入居者生活介護の指定を受けているかどうかに関係なく、有料老人ホームであれば対象になります。
サービス付き高齢者向け住宅は対象ですか?
有料老人ホームに該当するサ高住は対象です。該当するかどうかは施設に確認してください。
介護保険料はどこに払いますか?
元の市町村(保険者)に納めます。住民票を移しても変わりません。
施設を2か所移った場合、保険者はどこですか?
対象施設を続けて移った場合は、最初の施設に入る前に住んでいた市町村が保険者のままです。
施設を出て、施設のある市で自宅に住むとどうなりますか?
住所地特例は終わり、住民票のある市町村の被保険者に切り替わります。
入所先の市のデイサービスは使えますか?
地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護など特定地域密着型サービスは、施設のある市町村が指定した事業所を利用できます。通常の通所介護はもともと市町村をまたいで利用できます。
要介護認定の更新はどこに申請しますか?
元の市町村です。訪問調査は施設のある市町村などに委託されることがありますが、認定するのは元の市町村です。
まとめ
- 住所地特例は、施設に住民票を移しても元の市町村が保険者のままになる特例
- 対象は介護保険施設・特定施設(有料老人ホームなど)・措置入所の養護老人ホーム
- グループホーム・地域密着型特養・地域密着型特定施設は対象外
- 対象施設を続けて移っても、最初の施設に入る前の市町村が保険者
- 特定地域密着型サービスと地域支援事業は施設のある市町村のものを使える
- 保険料・認定・負担軽減の申請は元の市町村。確認は被保険者証の保険者欄で行う
参考にした情報
※本記事の対象施設・保険者の決まり方・利用できるサービスは、介護保険法および介護保険法施行規則の条文にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および保険者の解釈をご確認ください。届出の様式・名称、訪問調査の委託の有無、地域密着型サービスの入居・利用の条件は市町村によって異なります。サービス付き高齢者向け住宅が有料老人ホームに該当するかどうかは、提供しているサービスの内容によって判断されます。制度に関する記述は2026年11月時点の内容として整理していますが、その後の改正により取扱いが変わる可能性があります。実務でのつまずきやすい点に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。
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