先に結論をお伝えします。訪問介護の移動時間は、厚生労働省の通達で「原則として労働時間にあたる」とされていて、事業所は賃金を払う必要があります。事業所から利用者宅、利用者宅から次の利用者宅への移動が典型例です。待機時間、報告書を書く時間、研修の時間も、条件を満たせば労働時間になります。利用者のキャンセルで仕事がなくなった日も、事業所が代わりの仕事を探す努力をしていなければ休業手当の対象です。

この記事では、厚生労働省の通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」と、令和3年の周知徹底の通知の原文を確認して整理しました。

この記事でわかること
  • 訪問介護の移動時間が労働時間になる条件
  • 待機時間・報告書の作成時間・研修時間の扱い
  • 移動時間の時給と最低賃金の関係
  • 利用者のキャンセルで休みになったときの休業手当
  • 払われていないときの確認手順と相談先

訪問介護の移動時間は給料が出る?

出ます。厚生労働省は平成16年に「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(基発第0827001号)という通達を出していて、移動時間を次のように定義しています。

訪問介護労働者の法定労働条件の確保について 記2(2)ア

移動時間とは、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間をいい、この移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものであること。
具体的には、使用者の指揮監督の実態により判断するものであり、例えば、訪問介護の業務に従事するため、事業場から利用者宅への移動に要した時間や一の利用者宅から次の利用者宅への移動時間であって、その時間が通常の移動に要する時間程度である場合には労働時間に該当するものと考えられること。

この通達は、登録ヘルパーのように勤務表で働く日と時間が決まる働き方を「非定型的パートタイムヘルパー」と呼び、訪問介護で働く人の多数を占めると書いています。正社員だけでなく、登録ヘルパー・パートのヘルパーも対象です。

それでも移動時間を払わない事業所が残っていたため、令和2年3月には介護報酬のQ&Aで「訪問介護員の移動時間は労働時間に該当する」ことが改めて示されました。令和3年1月には、厚生労働省の労働基準局と老健局が連名で「訪問介護労働者の移動時間等の取扱いについて(周知徹底)」を出しています。

労働時間になる4つの時間

通達は、利用者宅でサービスをしている時間のほかに、次の4つの時間を挙げています。

時間労働時間になる条件(通達の要旨)
移動時間事業所が業務に必要な移動を命じ、その時間を自由に使えない場合。事業所→利用者宅、利用者宅→次の利用者宅で、通常かかる程度の時間
報告書などの作成時間介護保険制度や業務規定で作成が義務づけられていて、事業所の指揮監督のもとで事業所や利用者宅で作成している場合
待機時間急な依頼に対応するため、事業所などで待機を命じられ、その時間を自由に使えない場合
研修時間事業所の明示的な指示で受ける場合。指示がなくても、受けないと制裁がある、業務に支障が出るなど実質的に出席が強制されている場合

どれも「事業所に命じられているか」「その時間を自由に使えるか」で判断します。たとえば、次の訪問まで2時間空いて、その間に自宅へ帰って自由に過ごせるなら、その2時間は待機時間ではありません。一方、事業所で電話番をしながら待つように言われているなら、労働時間です。

ちびウルフちびウルフ

次の訪問まで30分しかなくて、近くのコンビニで待ってるんですけど、これも給料出ます?

リハウルフリハウルフ

通達の考え方だと、待機を命じられているか、その時間を自由に使えるかで決まります。事業所から「近くで待機して」と言われているなら労働時間に近いですし、何も指示がなく自由に過ごしているなら移動時間の部分だけ、という整理になりやすいです。まずは事業所がどう扱っているか聞いてみてください。

自宅から最初の利用者宅への移動は?

通達が例に挙げているのは、事業所から利用者宅への移動と、利用者宅から次の利用者宅への移動です。自宅から最初の利用者宅へ直接向かう移動(直行)や、最後の利用者宅から自宅へ帰る移動(直帰)については、通達には書かれていません。

直行直帰の移動は、一般には通勤と同じように扱われることが多いとされています。ただし、事業所に寄って鍵や記録を受け取るよう指示されている場合など、実態によって判断が変わる可能性があります。自分の場合がどうなるかは、就業規則と労働条件通知書で確認し、わからなければ事業所か労働基準監督署に確認してください。

移動時間の時給は低くてもいい?

通達は、サービスをしている時間と、移動などそれ以外の時間の時給を同じにする必要はないとしています。ただし条件があります。

訪問介護労働者の法定労働条件の確保について 記2(4)イ

訪問介護の業務に直接従事する時間と、それ以外の業務に従事する時間の賃金水準については、最低賃金額を下回らない範囲で、労使の話合いにより決定されるべきものであること。

つまり、移動時間の時給を身体介護の時給より低く設定することはできますが、最低賃金を下回ってはいけません。また、移動時間をまったく払わない(0円にする)ことはできません。

注意したいのが交通費です。通達は、事業所が実費として払っている交通費やガソリン代は「賃金とは認められない」ので、最低賃金と比べるときに含めないとしています。「交通費を出しているから移動時間の分は払わなくていい」という説明は、この通達の考え方とは合いません。

移動時間の分を、1回の訪問ごとの定額の手当で払っている事業所もあります。その場合も、移動時間を含めた労働時間全体で割って、1時間あたりの金額が最低賃金を下回っていないかが問われます。

利用者のキャンセルで休みになったら休業手当

登録ヘルパーで多いのが、利用者の入院や体調不良で訪問が急になくなるケースです。通達はこの場合の扱いも示しています。

訪問介護労働者の法定労働条件の確保について 記2(3)

利用者からの利用申込みの撤回、利用時間帯の変更を理由として労働者を休業させる場合には、例えば、他の利用者宅での勤務の可能性について然るべき検討を十分に行ったかどうか等当該労働者に代替業務を行わせる可能性等を含めて判断し、使用者として行うべき最善の努力を尽くしたと認められない場合には、使用者の責に帰すべき事由があるものとして休業手当の支払が必要となること。

ポイントを整理すると次のとおりです。

  • 対象になる前提:勤務表などで、働く日と時間がすでに示されていること
  • 金額:平均賃金の100分の60以上(労働基準法第26条)
  • 払わなくてよい場合:事業所がほかの利用者宅での仕事を用意した、または就業規則にもとづいて勤務時間や勤務日を変えてほかの仕事を用意した
  • 1日の一部だけ休みになった場合:その日に実際に働いた分の賃金が平均賃金の100分の60に満たなければ、差額を払う

「キャンセルは利用者の都合だから、事業所は関係ない」とは言えない、というのが通達の考え方です。事業所がほかの仕事を探す努力をしたかどうかで判断されます。

ちびウルフちびウルフ

正直、キャンセルの日に休業手当をもらったことないです…

リハウルフリハウルフ

現場ではまだそういう事業所もあると思います。ただ、勤務表で決まっていた訪問がなくなって、代わりの仕事も打診されなかったなら、通達上は休業手当の対象になりえます。いきなり揉めるより、まずは勤務表と連絡の記録を残しておくのが現実的ですね。

有給休暇と就業規則も対象になる

通達は、移動時間のほかにも、登録ヘルパーで問題になりやすい点を挙げています。

  • 有給休暇:1か月ごとの契約でも、更新して6か月続けて働き、8割以上出勤していれば付与が必要。日数は今後1年間に予定される労働日数に応じて決まり、算出しにくい場合は過去6か月の実績の2倍を1年間の労働日数とみなしてよい
  • 就業規則:短時間で働く人も「常時10人以上の労働者」の人数に含まれる。事業所に来る機会が少ないヘルパーには、書面で渡すのが望ましい
  • 労働条件の明示:契約期間の有無と期間を書面で示す。更新するたびに改めて示す

事業所の介護報酬に移動時間の分は含まれている?

「訪問介護の報酬は訪問している時間の分しか出ないから、移動時間は払えない」と説明されることがあります。令和3年の周知徹底の通知は、この点にも触れています。

訪問介護労働者の移動時間等の取扱いについて(周知徹底)記2

事業主にサービスの対価として支払われる訪問介護の介護報酬については、サービスに要する平均的な費用(労働時間に対して支払われる賃金等の人件費も含まれる)の額を勘案して包括的に単位設定しているものである。いずれにしても、上記1のとおり、事業主は、移動時間や待機時間も含め、労働時間に対して適正に賃金を支払う必要があること。

介護報酬は移動時間などの人件費も含めて設定されている、というのが厚生労働省の説明です。報酬の仕組みを理由に、移動時間を払わなくてよいことにはなりません。

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移動時間が払われていないときの確認手順

移動時間や休業手当が払われていないと感じたら、次の順番で確認していくのがおすすめです。

  • 労働条件通知書と就業規則で、移動時間・待機時間・キャンセル時の扱いがどう書かれているか確認する
  • 勤務表、訪問の実績、移動にかかった時間、キャンセルの連絡を受けた日時を記録しておく
  • 給与明細と照らし合わせて、移動時間の分がどの項目で払われているか確認する
  • わからない点を、サービス提供責任者や事務担当に書面かメールで質問する
  • 説明に納得できなければ、勤務先を管轄する労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談する

同じ地域でも、移動時間を時給で払う事業所、1回ごとの手当で払う事業所、月給制で移動も含めて勤務時間にしている事業所など、扱いはさまざまです。いまの事業所で改善が難しいなら、応募の段階で移動時間とキャンセル時の扱いを確認して選ぶのも一つの方法です。

よくある質問

登録ヘルパーでも移動時間の給料はもらえますか?

もらえます。通達は、勤務表で働く日と時間が決まる登録ヘルパーのような働き方も対象にしています。事業所から利用者宅、利用者宅から次の利用者宅への移動で、通常かかる程度の時間は労働時間にあたります。

移動時間の時給は、介護の時給と同じでないといけませんか?

同じである必要はありません。最低賃金を下回らない範囲で、労使の話し合いで決めるものとされています。ただし、まったく払わないことはできません。

交通費が出ていれば、移動時間の給料はなくてもいいですか?

いいえ。実費として払う交通費は賃金とは認められないため、最低賃金と比べるときにも含めません。移動時間の賃金とは別のものです。

利用者がキャンセルしたら、その日の給料はゼロですか?

勤務表で決まっていた訪問がなくなり、事業所が代わりの仕事を用意する努力をしていない場合は、平均賃金の100分の60以上の休業手当の対象になります。ほかの利用者宅での仕事を用意された場合は、休業手当は必要ありません。

自宅から利用者宅へ直行する時間も労働時間ですか?

通達には直行直帰の移動についての記載はありません。一般には通勤と同じように扱われることが多いとされていますが、事業所への立ち寄りを指示されているなど実態で変わる可能性があります。就業規則を確認し、わからなければ労働基準監督署に確認してください。

研修に出た時間も給料は出ますか?

事業所の指示で受ける研修は労働時間です。指示がなくても、受けないと不利益な扱いがある、業務に支障が出るなど実質的に出席が強制されている場合は労働時間にあたります。

まとめ
  • 訪問介護の移動時間は、通達で原則として労働時間にあたるとされている
  • 登録ヘルパー・パートのヘルパーも対象
  • 待機時間・報告書の作成時間・研修時間も、条件を満たせば労働時間
  • 移動時間の時給は低く設定できるが、最低賃金は下回れない。交通費は賃金に含めない
  • 利用者のキャンセルで休みになっても、代わりの仕事がなければ休業手当の対象になりうる
  • 払われていないと感じたら、記録を残して事業所に確認し、必要なら労働基準監督署へ
参考にした情報

※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。移動時間・待機時間・報告書の作成時間・研修時間・休業手当・有給休暇・就業規則に関する記述は、厚生労働省の通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」と令和3年1月15日の周知徹底の通知にもとづいて整理しています(2026年10月確認)。個別のケースが労働時間にあたるかどうかは、事業所の指示や実態によって判断されます。判断に迷う場合は、勤務先を管轄する労働基準監督署にご確認ください。直行直帰の扱い、現場でよくある運用、確認手順に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、法令上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味