先に結論をお伝えします。高齢の親の「聞き返しが増えた」「テレビの音が大きい」は、加齢性難聴のサインかもしれません。「年のせい」と決めつけず、まず耳鼻咽喉科で聞こえの検査を受けることが第一歩です。そのうえで、家族の話し方を少し変えるだけで、会話はずっと楽になります。

この記事では、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の解説や、厚生労働省の事業で作られた手引きを確認して、高齢者の難聴のサイン・受診の目安・伝わる話し方を整理しました。訪問リハビリで高齢の方と話すときに、私自身が気をつけていることも書いています。

この記事でわかること
  • 加齢性難聴とはどんな難聴か、何歳ごろから増えるか
  • 家族が気づける難聴のサイン
  • 「年のせい」と決めつけずに受診したほうがいい理由
  • 難聴の親に伝わりやすい話し方11のひと工夫
  • 補聴器を使うときの注意点
  • テレビの音量問題の解決方法

高齢の親の難聴とは?75歳以上では約半数が悩んでいる

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、年齢と難聴について次のように説明しています。

「60歳代になると、『軽度難聴』レベルまで聴力が低下する音域が増え、聞こえが悪くなったことを感じる人が急激に増えてきます。さらに70歳をこえるとほとんどの音域の聴力が『軽度難聴』〜『中等度難聴』レベルまで低下してしまいます。65-74歳では3人に1人、75歳以上では約半数が難聴に悩んでいるといわれています。」(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「難聴について」)

加齢による聞こえの低下は、高い音から始まるのが特徴です。同学会によると、主な原因は耳の奥(内耳)にある「有毛細胞」という音を感じる細胞がダメージを受けて減ることです。加齢以外に特別な原因がないものを「加齢性難聴」と呼びます。

ちびウルフちびウルフ

耳が遠くなるのって、お年寄りなら仕方ないんじゃないの?

リハウルフリハウルフ

年齢とともに聞こえが落ちるのは誰にでも起こりますが、「仕方ない」で放っておくのはもったいないんです。中耳炎など治療できる難聴が隠れていることもありますし、補聴器で聞こえを補えば、会話も外出もぐっと楽になりますよ。

家族が気づける難聴のサイン

加齢性難聴はゆっくり進むので、本人は気づきにくいものです。厚生労働省の事業で作られた手引きでも、加齢性難聴は本人が気づかないうちに進み、受診や支援につながりにくいことが課題とされています。次のような様子があれば、家族から受診をすすめてみてください。

  • 会話の聞き返しが増えた、聞き間違いが多い
  • テレビやラジオの音量が以前より大きい
  • 後ろから呼びかけても気づかない
  • 電話やインターホンの音に気づかないことがある
  • 大勢での会話に入らなくなった、話の輪から外れている
  • 話がかみ合わず、あいまいに笑ってやり過ごすことが増えた

訪問の現場では、「認知症が進んだのでは」と心配されていた方が、実は聞こえていなかっただけというケースに出会うこともあります。返事がずれる、指示が伝わらないときは、聞こえの問題も疑ってみてください。

「年のせい」と決めつけずに耳鼻咽喉科へ

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、加齢性難聴そのものには根本的な治療法がないとしたうえで、次のように注意しています。

「投薬治療や手術などで治療できる可能性もありますので、『耳が聞こえづらいのは齢(とし)のせいだ』と決めつけずに、必ず耳鼻咽喉科医に診てもらうようにしましょう。」(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「難聴について」)

同学会によると、外耳や中耳に原因のある「伝音難聴」は、薬や手術で改善することがあります。耳あかが詰まっているだけで聞こえにくくなっていることもあります。

難聴が生活に与える影響

同学会では、難聴によって次のような影響が出るとしています。

  • 必要な音が聞こえず、社会生活に影響が出る
  • 危険を察知する力が落ちる
  • 家族や友人とのコミュニケーションがうまくいかなくなる
  • 自信がなくなり、社会的に孤立してうつ状態に陥ることもある
  • 認知症を発症するリスクが大きくなる

聞こえにくさから人と話すのがおっくうになり、外出が減ると、体を動かす機会も減ります。リハビリ職としては、聞こえの問題は足腰の衰えにもつながると感じています。

難聴の親に伝わりやすい話し方

厚生労働省の手引きを出典にした自治体の資料では、聞き取りにくい・伝わりにくいときのひと工夫として、次の11項目が紹介されています(大分県「介護予防活動支援マニュアル」より)。

ひと工夫現場での補足
①室内の静かな場所で話すテレビを消すだけでも伝わり方が変わる
②1mくらいの距離で近づいて話す離れた部屋から声をかけない
③口元が見えるよう、正面から話す口の動きが聞き取りの手がかりになる
④ゆっくりめに話す言葉の区切りをはっきりさせる
⑤少し大きめの声で話すどなるような大声は、かえって聞き取りにくい
⑥相手が気づいてから会話を始める肩を軽くたたく、手を振るなどで合図する
⑦複数のときは一人ずつ順番に話す家族の集まりでは特に意識したい
⑧伝わっているか確認する「わかった?」より、内容を言い返してもらう
⑨言い方を変えてみる同じ言葉をくり返すより、別の言葉に言い換える
⑩文字で書いてみる日時や薬の飲み方など、大事なことはメモで
⑪ジェスチャーを使う指さしや身ぶりを添える
ちびウルフちびウルフ

大きい声で話せば伝わると思ってた…

リハウルフリハウルフ

実は、大声は逆効果になることがあるんです。加齢性難聴は音がひずんで聞こえることも多いので、大きくしても言葉がはっきりしないんですね。正面から、ゆっくり、少し大きめくらいがちょうどいいですよ。

補聴器を使うときの注意点

同じ資料では、補聴器を使うときの注意点として次のことが挙げられています。

  • まずは最寄りの耳鼻咽喉科を受診する
  • 自分ひとりで補聴器を選ばない
  • 値段が高ければよいわけではない
  • 定期的に補聴器専門医や言語聴覚士、認定補聴器技能者などに見てもらう

補聴器は買って終わりではなく、聞こえに合わせた調整と、慣れるための練習が必要です。買ったのに「うるさい」と使わなくなってしまう方も多いので、調整に通える販売店を選ぶことが大切です。補聴器の購入費用の助成を行っている自治体もあるので、お住まいの市区町村に確認してみてください。

テレビの音量問題をどう解決するか

難聴の親と暮らす家族から一番多い悩みが、テレビの音量です。本人に合わせると家族にはうるさく、家族に合わせると本人には聞こえません。

解決策としては、手元スピーカーやワイヤレスイヤホンで本人の耳元に音を届ける方法、字幕表示を使う方法、聞き取りやすい音に変えるスピーカーを使う方法などがあります。それぞれの違いは高齢者がテレビの音を聞き取りやすくする方法|補聴器以外の選択肢で詳しく比べています。

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テレビの音を大きくするより、
「聞き取りやすい音」に変える。

ミライスピーカー・ホームは、テレビの横に置いて使うスピーカーです。独自の「曲面サウンド」技術で、テレビの音を聞き取りやすい音に変えるとされています。音量を上げすぎずに済むので、本人と家族が同じ音量でテレビを楽しめるようになります。テレビにつないだあとは、いつもどおりリモコンで操作するだけです。

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※補聴器の代わりになるものではありません。聞こえにくさを感じたら、まず耳鼻咽喉科を受診してください。価格・保証の条件は公式サイトでご確認ください

音量でもめるのは、家族の側にも大きなストレスです。家族の気持ちの整理については親のテレビ音量が大きい…家族のストレスを減らす方法もあわせてご覧ください。

よくある質問

加齢性難聴は治りますか?

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、加齢性難聴そのものには根本的な治療法はありません。ただし、ほかの原因の難聴が重なっていれば治療できる可能性があるため、耳鼻咽喉科を受診してください。補聴器で聞こえを補うことで、生活の質の改善が期待できます。

親が耳鼻科に行きたがりません。どう誘えばいいですか?

「耳が遠い」と指摘するより、「耳あかがたまっていないか見てもらおう」「健康診断のついでに」と軽い理由で誘うと受け入れてもらいやすくなります。かかりつけ医から耳鼻咽喉科をすすめてもらう方法もあります。

難聴と認知症は関係がありますか?

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、難聴によって認知症を発症するリスクが大きくなるとしています。聞こえていないために返事がずれて、認知症と間違われることもあるため、まずは聞こえの検査を受けることが大切です。

集音器と補聴器は違いますか?

補聴器は医療機器として認められたもので、聞こえの状態に合わせて調整できます。集音器は音を大きくする機器で、細かな調整はできないものが多いです。選ぶ前に耳鼻咽喉科で相談してください。

補聴器の購入に補助はありますか?

身体障害者手帳(聴覚障害)の対象になる場合は、障害者総合支援法の補装具費の支給を受けられることがあります。対象にならない方向けに、独自の購入助成を行っている自治体もあります。お住まいの市区町村の窓口に確認してください。

テレビ用のスピーカーは補聴器の代わりになりますか?

なりません。テレビ用スピーカーはテレビの音を聞き取りやすくする道具で、会話や外出時の聞こえは補えません。聞こえにくさを感じたら、まず耳鼻咽喉科を受診してください。

まとめ
  • 65〜74歳の3人に1人、75歳以上の約半数が難聴に悩んでいるとされる
  • 聞き返し・テレビの音量・呼びかけへの反応の遅れは難聴のサイン
  • 「年のせい」と決めつけず、まず耳鼻咽喉科で聞こえの検査を受ける
  • 話すときは、静かな場所で、正面から、ゆっくり、少し大きめの声で
  • 補聴器はひとりで選ばず、医師や専門職と一緒に調整しながら使う
  • テレビの音量問題は、手元スピーカーや聞き取りやすいスピーカーで解決できることがある
参考にした情報

※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。難聴の割合・原因・影響は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の解説、話し方の工夫と補聴器の注意点は自治体資料(厚生労働省の手引き等を出典とするもの)にもとづいて記載しています(2026年10月確認)。補聴器の購入助成の有無や条件は自治体によって異なります。訪問の現場に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、診断に代わるものではありません。聞こえにくさを感じたら耳鼻咽喉科を受診してください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味