看多機の介護職員等処遇改善加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の介護職員等処遇改善加算は、(Ⅰ)イ16.8%・(Ⅰ)ロ17.7%・(Ⅱ)イ16.5%・(Ⅱ)ロ17.4%・(Ⅲ)15.3%・(Ⅳ)12.5%です。単位数ではなく、基本報酬と他の加算の合計に乗じる率で計算します。
区分の並びには規則があります。イとロを分けているのは、生産性向上推進体制加算の算定など3つの選択肢のうち1つを満たしているかどうか。(Ⅰ)と(Ⅱ)を分けているのは、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の届出があるかどうかです。上の区分を目指すなら、まず他の加算を整える順序になります。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のヰと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第81号・第58号の原文を確認して整理しました。
- 6区分の加算率と、区分を分けている要件
- 加算の対象となる単位数の範囲
- (Ⅰ)ロ・(Ⅱ)ロを分ける3つの選択肢
- (Ⅰ)と(Ⅱ)を分けるサービス提供体制強化加算の要件
- (Ⅰ)イに求められる年収440万円以上の職員1人
- 賃金改善額の2分の1以上を基本給等に充てる要件
- 届出先が市町村長であること
- 小規模多機能型居宅介護と加算率が違うこと
ちびウルフ(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロで0.9ポイントしか違わないですよね。そこまで気にする差ですか。
リハウルフ率で見ると小さいのですが、乗じる相手が基本報酬を含む総単位数です。要介護3で月24,481単位なら0.9ポイントで約220単位。登録者25人なら月5,500単位、年間66万円。ロに上がるための要件は生産性向上推進体制加算(Ⅱ)10単位でも満たせます。
看多機の介護職員等処遇改善加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の介護職員等処遇改善加算は、介護職員その他の職員の賃金改善に取り組む事業所を評価する加算です。告示126号 複合型サービス費のヰに規定されています。
介護分野の賃金水準は、他産業と比べて低い状態が続いてきました。事業所が独自に賃金を上げようとしても、報酬が公定価格である以上、原資には限りがあります。そこで報酬に上乗せする形で賃金改善の財源を確保し、その使途を事業所に義務づけるのがこの加算の仕組みです。
令和6年度介護報酬改定で、従来の3つの加算(介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算)が1本に統合されました。算定する側から見れば、届出も実績報告も1本化されたことになります。
他の加算と決定的に違うのは、受け取った額に相当する賃金改善を実施する義務が課される点です。事業所の収益として残せる加算ではありません。
介護職員等処遇改善加算の加算率
ヰ 介護職員等処遇改善加算
注 (略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所が、利用者に対し、指定看護小規模多機能型居宅介護を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、次に掲げる単位数を所定単位数に加算する。(略)
(1) (Ⅰ)イ イからウまでにより算定した単位数の1000分の168/(2) (Ⅰ)ロ 1000分の177/(3) (Ⅱ)イ 1000分の165/(4) (Ⅱ)ロ 1000分の174/(5) (Ⅲ) 1000分の153/(6) (Ⅳ) 1000分の125
| 区分 | 加算率 | 要介護3(24,481単位)の場合の目安 |
|---|---|---|
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)ロ | 17.7% | 約4,333単位 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)ロ | 17.4% | 約4,260単位 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅰ)イ | 16.8% | 約4,113単位 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅱ)イ | 16.5% | 約4,039単位 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) | 15.3% | 約3,746単位 |
| 介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) | 12.5% | 約3,060単位 |
※基本報酬のみに乗じた概算です。実際は他の加算も含めた合計に乗じます。
乗じる対象は「イからウまで」
条文は「イからウまでにより算定した単位数の1000分の◯」としています。イは看護小規模多機能型居宅介護費、ロは短期利用居宅介護費、ハ以降はハ(初期加算)からウ(サービス提供体制強化加算)までのすべての加算・減算です。
つまり基本報酬だけでなく、その月に算定した加算をすべて含めた合計に率を乗じます。看護体制強化加算3,000単位や総合マネジメント体制強化加算1,200単位を算定していれば、その分も処遇改善加算の対象になります。
小多機との比較
| 区分 | 看多機 | 小多機 |
|---|---|---|
| (Ⅰ)ロ | 17.7% | 18.6% |
| (Ⅳ) | 12.5% | — |
看多機の最大率は17.7%で、小多機の18.6%より低く設定されています。看多機は基本報酬そのものが高いため、率を掛けた金額では逆転する場面もあります。率だけを比べて損得を判断しないでください。
介護職員等処遇改善加算の算定要件
告示95号 第81号は第58号(小規模多機能型居宅介護費における基準)を準用しています。
(Ⅰ)イの10要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) 賃金改善の計画 | 賃金改善に要する費用の見込額が加算の算定見込額以上となる計画を策定し、措置を講じていること (一) 仮に(Ⅳ)を算定した場合の見込額の2分の1以上を基本給または決まって毎月支払われる手当に充てること (二) 経験・技能のある介護職員のうち1人は、賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上であること(算定見込額が少額である等の理由で困難な場合を除く) |
| (2) 計画書の作成・周知・届出 | 介護職員等処遇改善計画書を作成し、全ての職員に周知し、市町村長に届け出ていること |
| (3) 賃金改善の実施 | 加算の算定額に相当する賃金改善を実施すること |
| (4) 実績報告 | 事業年度ごとに処遇改善に関する実績を市町村長に報告すること |
| (5) 労働法令の遵守 | 算定日が属する月の前12月間において、労働基準法・最低賃金法等に違反し罰金以上の刑に処せられていないこと |
| (6) 労働保険料 | 労働保険料の納付が適正に行われていること |
| (7) キャリアパス | 職責・職務内容等の要件の設定と書面での周知、資質向上の支援計画と研修の実施、経験・資格等に応じた昇給の仕組みとその書面での周知(計6項目) |
| (8) 処遇改善の内容の周知 | 賃金改善以外の処遇改善の内容と費用の見込額を全ての職員に周知していること |
| (9) 公表 | (8)の内容等について、インターネットの利用その他の適切な方法により公表していること |
| (10) サービス提供体制強化加算 | サービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)のいずれかを届け出ていること |
区分を分けているもの
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| (Ⅰ)イ | (1)〜(10)のすべて |
| (Ⅰ)ロ | (1)〜(10)+3つの選択肢のいずれか |
| (Ⅱ)イ | (1)〜(9)((10)が不要) |
| (Ⅱ)ロ | (1)〜(9)+3つの選択肢のいずれか |
| (Ⅲ) | (1)(一)および(2)〜(8)(年収440万円要件・(9)公表・(10)が不要) |
| (Ⅳ) | (1)(一)、(2)〜(6)、(7)(一)〜(四)、(8)(昇給の仕組みも不要) |
ロを分ける3つの選択肢
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| (一) | 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定していること |
| (二) | ケアプランデータ連携システムを利用していること |
| (三) | 連携推進法人に所属していること |
いずれか1つで足ります。生産性向上推進体制加算(Ⅱ)は10単位の加算ですが、これを取ることでイからロに上がり、0.9ポイントの上乗せになります。費用対効果としては最も取りやすいルートです。
- キャリアパス要件((7))と就業規則・賃金規程を整える
- 賃金改善計画を立て、市町村長に届け出る
- サービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を届け出て(Ⅱ)から(Ⅰ)へ上げる
- 生産性向上推進体制加算(Ⅱ)を算定してイからロへ上げる
- 経験・技能のある介護職員1人の年収440万円以上を確保する
介護職員等処遇改善加算の注意点
届出先は市町村長
看多機は地域密着型サービスなので、計画書の届出先も実績報告先も市町村長です。訪問介護や通所介護(居宅サービス)では都道府県知事(指定都市・中核市は市長)が届出先ですが、看多機は違います。複数のサービスを運営する法人では取り違えやすい点です。
賃金改善額の2分の1以上を基本給等に
(1)(一)は「仮に(Ⅳ)を算定した場合に算定することが見込まれる額の2分の1以上を基本給又は決まって毎月支払われる手当に充てる」ことを求めています。一時金だけで配分する形は認められません。全区分に共通する要件です。
年収440万円要件には例外がある
(1)(二)は経験・技能のある介護職員のうち1人について年額440万円以上を求めていますが、「介護職員等処遇改善加算の算定見込額が少額であることその他の理由により、当該賃金改善が困難である場合はこの限りでない」という但し書きがあります。
小規模な看多機では、この例外に該当する場合があります。該当するかどうかの判断は市町村に確認してください。
公表が要件に入っている
(9)は「インターネットの利用その他の適切な方法により公表」です。(Ⅰ)(Ⅱ)を算定するなら、処遇改善の内容を外部から見える形にする必要があります。介護サービス情報公表システムの活用が想定されます。
受け取った額は賃金改善に充てる
(3)により、加算の算定額に相当する賃金改善の実施が義務づけられています。経営悪化等で事業継続が困難な場合に賃金水準を見直すことはやむを得ないとされていますが、その内容を市町村長に届け出る必要があります。
- 届出先が市町村長であることを確認したか
- キャリアパス要件を就業規則・賃金規程に落とし込んでいるか
- 計画書を全職員に周知した記録があるか
- 賃金改善額の2分の1以上を基本給等に充てているか
- (Ⅰ)(Ⅱ)を目指すなら処遇改善の内容を公表しているか
- (Ⅰ)を目指すならサービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)を届け出ているか
- ロを目指すなら3つの選択肢のいずれかを満たせるか
- 事業年度ごとの実績報告を行っているか
よくある質問
看多機の介護職員等処遇改善加算の加算率は?
(Ⅰ)イ16.8%、(Ⅰ)ロ17.7%、(Ⅱ)イ16.5%、(Ⅱ)ロ17.4%、(Ⅲ)15.3%、(Ⅳ)12.5%です。
何に対して率を乗じますか?
条文は「イからウまでにより算定した単位数」としています。基本報酬とその月に算定した加算を含めた合計です。
イとロの違いは何ですか?
ロは、生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定、ケアプランデータ連携システムの利用、連携推進法人への所属のいずれかを満たす場合です。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?
(Ⅰ)はサービス提供体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を届け出ていることが要件に含まれます。(Ⅱ)はこの要件が不要です。
いちばん取りやすい上位区分への道は?
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)10単位を算定してイからロに上がるルートです。0.9ポイントの上乗せになります。
届出先はどこですか?
市町村長です。看多機は地域密着型サービスのため、居宅サービスのように都道府県知事ではありません。
年収440万円の職員が必要ですか?
(Ⅰ)(Ⅱ)では経験・技能のある介護職員のうち1人について必要です。ただし算定見込額が少額である等の理由で困難な場合は除くという但し書きがあります。
一時金だけで配分してよいですか?
いけません。仮に(Ⅳ)を算定した場合の見込額の2分の1以上を基本給または決まって毎月支払われる手当に充てる必要があります。
公表は必要ですか?
(Ⅰ)(Ⅱ)では必要です。処遇改善の内容等をインターネットの利用その他の適切な方法により公表することが要件です。
加算分を事業所の収益にできますか?
できません。加算の算定額に相当する賃金改善の実施が義務づけられています。
小多機と加算率は同じですか?
違います。看多機の最大は17.7%、小多機は18.6%です。ただし看多機は基本報酬が高いため、金額では逆転する場面もあります。
短期利用の利用者にも加算されますか?
条文は「イからウまでにより算定した単位数」としており、ロ(短期利用居宅介護費)も含まれます。
- 看多機の介護職員等処遇改善加算は(Ⅰ)イ16.8%・(Ⅰ)ロ17.7%・(Ⅱ)イ16.5%・(Ⅱ)ロ17.4%・(Ⅲ)15.3%・(Ⅳ)12.5%
- 単位数ではなく、イからウまでにより算定した単位数に率を乗じる
- 基本報酬だけでなく、その月に算定した加算も対象に含まれる
- 令和6年度改定で従来の3つの処遇改善関連加算が1本に統合された
- イとロを分けるのは、生産性向上推進体制加算の算定・ケアプランデータ連携システムの利用・連携推進法人への所属のいずれか
- (Ⅰ)と(Ⅱ)を分けるのは、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)の届出の有無
- 生産性向上推進体制加算(Ⅱ)10単位でロに上がり、0.9ポイントの上乗せになる
- 賃金改善額の2分の1以上を基本給または毎月の手当に充てる必要がある
- (Ⅰ)(Ⅱ)は経験・技能のある介護職員1人の年収440万円以上が要件(例外あり)
- (Ⅰ)(Ⅱ)は処遇改善の内容の公表が要件に含まれる
- 届出先・報告先は市町村長(居宅サービスの都道府県知事とは異なる)
- 加算の算定額に相当する賃金改善の実施が義務づけられている
- 事業年度ごとの実績報告が必要
- 看多機の最大率17.7%は小多機の18.6%より低い
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ヰ、イ〜ウ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第81号(複合型サービス費における介護職員等処遇改善加算の基準)、第58号(小規模多機能型居宅介護費における同加算の基準)、第79号の2、第80号(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の加算率・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに年収440万円要件の例外に該当するかの判断、公表の具体的な方法、賃金改善計画の様式・提出期限、実績報告の方法については告示本文に明記がなく、留意事項通知および関連する事務連絡、市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。記事中の金額は基本報酬のみに率を乗じた概算であり、実際は他の加算を含めた合計に乗じるため異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




