看多機の緊急時対応加算とは?算定要件や注意点を解説

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の緊急時対応加算は、1月につき774単位です。訪問看護の緊急時訪問看護加算にあたるもので、看多機では名称が「緊急時対応加算」に変わります。
金額は単体で見れば中程度ですが、この加算の本当の重みは「看護体制強化加算と訪問看護体制減算の判定指標そのもの」だという点にあります。算定できる方に算定していないと、774単位を逃すだけでなく、3,000単位の加算を落とし、最悪は2,914単位の減算を呼び込みます。看多機の加算のなかで、最も連鎖が大きい加算です。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のヲと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第76号の原文を確認して整理しました。
- 緊急時対応加算774単位の算定要件
- 「24時間連絡できる体制」だけでは足りないこと
- 緊急時の訪問と緊急時の宿泊、両方の体制が必要なこと
- 訪問については看護サービスに限られること
- 利用者の同意が要件に入っていること
- 看護体制強化加算・訪問看護体制減算の指標であること
- 訪問看護の緊急時訪問看護加算との違い
- 算定漏れが招く三重の損失
ちびウルフ看多機はもともと泊まりも訪問もできますよね。それなのに緊急時の加算が別にあるんですか?
リハウルフそこが要点です。条文は「計画的に訪問することとなっていない緊急時における訪問」「計画的に宿泊することとなっていない緊急時における宿泊」と書いています。評価しているのは、計画外の急な事態に応じられる体制のほう。予定どおりの通いや泊まりができることは、基本報酬に織り込み済みです。
看多機の緊急時対応加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の緊急時対応加算は、利用者や家族から看護に関する相談に24時間対応でき、計画外の訪問・宿泊にも応じられる体制を評価する加算です。告示126号 複合型サービス費のヲに規定されています。
看多機は、通い・訪問・泊まりに訪問看護を組み合わせたサービスです。あらかじめ組んだ計画に沿ってサービスを提供するのが基本ですが、在宅療養では発熱した、痛みが強くなった、介護者が倒れたといった計画外の事態が必ず起きます。
その受け皿として、24時間の連絡体制と、必要に応じて緊急に訪問・宿泊を受け入れる体制を持っていることを評価するのがこの加算です。加算の対象は利用者ごとで、体制を持っているだけでは算定できず、利用者の同意が必要です。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。
緊急時対応加算の単位数
ヲ 緊急時対応加算 774単位
注 イについては、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所が、利用者の同意を得て、利用者又はその家族等に対して当該基準により24時間連絡できる体制にあって、かつ、計画的に訪問することとなっていない緊急時における訪問及び計画的に宿泊することとなっていない緊急時における宿泊を必要に応じて行う体制にある場合(訪問については、訪問看護サービスを行う場合に限る。)には、1月につき所定単位数を加算する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 774単位 |
| 算定頻度 | 1月につき |
| 対象 | イ(看護小規模多機能型居宅介護費) |
| 算定単位 | 利用者ごと(同意が必要) |
| 届出 | 市町村長への届出が必要 |
基本報酬に対する比率
| 要介護度 | 基本報酬 | 加算を加えた場合 | 上乗せ率 |
|---|---|---|---|
| 要介護1 | 12,447単位 | 13,221単位 | 約6.2% |
| 要介護3 | 24,481単位 | 25,255単位 | 約3.2% |
| 要介護5 | 31,408単位 | 32,182単位 | 約2.5% |
緊急時対応加算の算定要件
要件は2つの層に分かれます。告示95号 第76号の体制要件と、告示126号 ヲの注が定める運用要件です。
告示95号 第76号(体制)
七十六 看護小規模多機能型居宅介護費における緊急時対応加算の基準
利用者又はその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあること。
告示126号 ヲの注(運用)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①届出 | 市町村長に対し、老健局長が定める様式による届出を行っていること |
| ②同意 | 利用者の同意を得ていること |
| ③24時間連絡体制 | 利用者・家族等に対して24時間連絡できる体制にあること |
| ④緊急時の訪問 | 計画的に訪問することとなっていない緊急時の訪問を必要に応じて行う体制(訪問看護サービスを行う場合に限る) |
| ⑤緊急時の宿泊 | 計画的に宿泊することとなっていない緊急時の宿泊を必要に応じて行う体制 |
「訪問看護サービスを行う場合に限る」の意味
④のかっこ書きは読み飛ばされやすいところです。緊急時の訪問として評価されるのは、看護サービスを提供する訪問に限られます。
介護職員が急に駆けつけて安否確認や排泄介助を行う、という訪問は看多機の訪問サービスとして当然行われますが、この加算が想定しているのはそこではありません。看護職員が計画外に訪問し、看護サービスを提供できる体制を評価しています。
指定地域密着型サービス基準第177条第10号に規定する「看護サービス」がその定義です。看護体制強化加算や訪問看護体制減算の判定に使う「主治の医師の指示に基づく看護サービス」と同じ概念であることも、あわせて押さえておくと整理しやすくなります。
宿泊のほうに「看護に限る」の限定はない
⑤の緊急時の宿泊には、④のようなかっこ書きがありません。緊急時の宿泊は、看護に限らず受け入れる体制であればよいと読めます。
実務上は、宿泊室の空きを常に持っておけるかという運営の問題になります。定員いっぱいで回している事業所ほど、緊急の泊まりを受け入れる余地が乏しい。加算を算定するなら、宿泊室の稼働率をどこまで上げるかという経営判断とセットで考える必要があります。
この加算は「指標」でもある
緊急時対応加算の重要性は、774単位という金額だけでは測れません。看多機では、この加算の算定状況そのものが評価指標として使われます。
| 規定 | 緊急時対応加算の使われ方 | 影響額(要介護5) |
|---|---|---|
| 看護体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ) | 算定した利用者の割合が50%以上であること | +3,000単位/+2,500単位 |
| 訪問看護体制減算 | 算定した利用者の割合が30%未満であること(3指標すべて該当で減算) | △2,914単位 |
つまり、算定できる利用者に算定していない事業所は次の損失を同時に負います。
- 緊急時対応加算774単位/人・月そのものを逃す
- 看護体制強化加算の50%要件を満たせず、3,000単位を逃す
- 他の2指標も低ければ訪問看護体制減算に該当し、2,914単位を引かれる
要介護5の登録者で見ると、加算を取り切った場合と取り漏らした場合の差は、この加算だけを起点に月6,000単位以上に広がります。
訪問看護の現場から見ると、緊急時対応加算は「体制さえ組めば同意を得られる方が多い」加算です。24時間連絡できる先があることは、利用者・家族にとって明確なメリットになります。説明の順番を整えるだけで算定率が変わる加算だと思います。
訪問看護の緊急時訪問看護加算との違い
| 項目 | 看多機の緊急時対応加算 | 訪問看護の緊急時訪問看護加算 |
|---|---|---|
| 単位数 | 774単位/月 | 区分により異なる((Ⅰ)(Ⅱ)、ステーション・医療機関別) |
| 24時間連絡体制 | 必要 | 必要 |
| 緊急時の訪問 | 必要(看護サービスに限る) | 必要 |
| 緊急時の宿泊 | 必要 | 該当なし |
| 体制加算の指標 | 看護体制強化加算50%以上 | 看護体制強化加算50%以上 |
いちばんの違いは緊急時の宿泊まで求められることです。看多機が泊まりの機能を持っている以上、緊急対応の体制にも泊まりが含まれるという整理になっています。訪問看護事業所には宿泊機能がないため、この要件はありません。
緊急時対応加算の注意点
同意は記録に残す
条文は「利用者の同意を得て」と明記しています。同意の記録がなければ、体制があっても算定根拠を示せません。看護小規模多機能型居宅介護計画や重要事項説明の際に、加算の内容と自己負担額を説明したうえで同意を得た記録を残してください。
「体制」の評価であって出動回数ではない
この加算は、実際に何回緊急訪問したかを問うものではありません。体制があり、必要に応じて行える状態にあれば算定できます。1か月に1度も緊急訪問がなかったからといって返還になる性質のものではありません。
ただし、体制の実質が問われないわけではありません。連絡先が留守番電話のみで折り返しがない、緊急時の訪問ができる看護職員が確保されていない、といった状態は体制要件を満たさないと判断され得ます。オンコール表と対応記録を整えておくのが安全です。
短期利用居宅介護費には加算されない
ヲの注は「イについては」と書かれています。対象は看護小規模多機能型居宅介護費であり、ロの短期利用居宅介護費には加算されません。また、看護体制強化加算・訪問看護体制減算の割合を計算する際も、母集団から短期利用者は除かれます。
医療保険の訪問看護と重なる月
末期の悪性腫瘍等で医療保険の訪問看護が入る月は、注15により925/1,850/2,914単位が減算されます。この場合に緊急時対応加算をどう扱うかは、告示本文からは一義的に読み取れません。市町村に確認してください。
- 市町村長への届出を済ませているか
- 利用者ごとの同意を記録に残しているか
- 24時間つながる連絡先を利用者・家族に明示しているか
- 緊急時に看護サービスを提供できる訪問体制があるか
- 緊急の宿泊を受け入れる余地を確保しているか
- 算定対象になり得る登録者を取りこぼしていないか
よくある質問
看多機の緊急時対応加算はいくらですか?
1月につき774単位です。
利用者ごとに算定しますか?
はい。利用者の同意を得たうえで、利用者ごとに1月につき算定します。
24時間の連絡体制だけで算定できますか?
できません。24時間連絡できる体制に加えて、計画外の緊急時の訪問と緊急時の宿泊を必要に応じて行う体制が必要です。
緊急時の訪問は介護職員でもよいですか?
条文は「訪問については、訪問看護サービスを行う場合に限る」としています。看護サービスを提供する訪問が対象です。
緊急時の宿泊にも看護の限定はありますか?
告示の文言上、宿泊にはそのような限定は付いていません。
実際に緊急訪問がなかった月も算定できますか?
体制を評価する加算なので、出動回数を要件とはしていません。ただし体制の実質は問われます。
届出は必要ですか?
必要です。市町村長に対し、老健局長が定める様式による届出を行った事業所が対象です。
看護体制強化加算とどう関係しますか?
看護体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)は、緊急時対応加算を算定した利用者の割合が50%以上であることを要件としています。
算定しないと減算されますか?
直接の減算はありませんが、算定した利用者の割合が30%未満であることは訪問看護体制減算の判定指標の1つです。他の2指標も該当すると減算になります。
短期利用の利用者にも算定できますか?
できません。ヲの注は「イについては」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。
訪問看護の緊急時訪問看護加算と何が違いますか?
看多機は緊急時の宿泊まで体制要件に含まれる点が大きな違いです。訪問看護事業所には宿泊機能がないためこの要件はありません。
医療保険の訪問看護が入る月はどうなりますか?
基本報酬側で注15の減算がかかりますが、緊急時対応加算の取扱いは告示本文から一義的に読み取れません。市町村に確認してください。
- 看多機の緊急時対応加算は1月につき774単位
- 対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)で、短期利用は対象外
- 市町村長への届出が必要
- 利用者の同意を得たうえで、利用者ごとに算定する
- 24時間連絡できる体制が必要
- 計画外の緊急時の訪問を行う体制が必要(看護サービスに限る)
- 計画外の緊急時の宿泊を行う体制も必要
- 宿泊のほうには「看護に限る」の限定がない
- 実際の出動回数は要件になっていない(体制の評価)
- 看護体制強化加算は、この加算の算定割合50%以上を要件とする
- 訪問看護体制減算は、この加算の算定割合30%未満を判定指標の1つとする
- 算定漏れは774単位の逸失にとどまらず、3,000単位の加算と2,914単位の減算に連鎖する
- 訪問看護の緊急時訪問看護加算との最大の違いは、緊急時の宿泊が要件に入ること
- 同意とオンコール体制の記録を残しておくことが実務上の要
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ヲ、レ、注14、注15(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第76号(緊急時対応加算の基準)、第75号(訪問看護体制減算の基準)、第78号(看護体制強化加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに24時間連絡体制の具体的な水準、緊急時の宿泊を受け入れる体制の判断、医療保険の訪問看護が入る月の取扱い、月途中で同意を得た場合の算定可否については告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




