訪問看護は、利用者さんの自宅で医療やケアを届けるやりがいの大きい仕事です。一方で、一人で訪問するからこその理不尽さや、思わず「ムカつく!」と感じてしまう瞬間があるのも事実ではないでしょうか。

こうした感情は、決して「自分が未熟だから」ではありません。この記事では、訪問看護師がムカつくと感じやすい代表的な場面を整理し、その場での対処法、ハラスメントとして組織で対応すべきライン、そして感情をためないセルフケアまでを、現場目線でお伝えします。

この記事でわかること
  • 訪問看護で「ムカつく!」と感じやすい代表的な7つの場面
  • その場で感情に飲まれないための基本対応
  • 暴言・暴力・セクハラを「我慢」で終わらせない組織的な対応の流れ
  • ムカついた感情をためないリフレッシュ・セルフケアの方法
  • 限界を感じたときに考えたい環境を変える選択肢

訪問看護で「ムカつく!」と感じる代表的な瞬間7選

ちびウルフちびウルフ

仕事中にイラッとしちゃう自分って、ダメな看護師なのかな…?

リハウルフリハウルフ

全然ダメじゃないよ。むしろ自然な感情なんだ。大事なのは“感情が湧くこと”じゃなくて、“その後どう扱うか”。まずはみんなが感じる場面を整理してみよう。

訪問看護で「ムカつく!」と感じやすいのは、おもに次のような場面です。

① 利用者さんから暴言・暴力があったとき

病状や環境の変化からくるストレスを、看護師にぶつけてくる利用者さんがいます。冷静な対応が求められますが、理不尽にぶつけられる側の負担は小さくありません。

② 利用者さんからセクハラを受けたとき

一対一の閉じた空間という訪問看護の特性上、セクハラに遭遇することは残念ながら少なくありません。これは看護師が我慢して受け流すべきものではありません

③ 「担当の看護師を変えてほしい」と言われたとき

信頼関係の構築途上やコミュニケーションのすれ違いから言われることがあります。落ち込みやすい場面ですが、要望の背景を丁寧に聞くことが第一歩です。

④ 理不尽なことで怒られたとき

予定の遅れや小さな行き違いなど、些細なことで強く怒られることがあります。生活空間に入り込む仕事だからこその難しさです。

⑤ 家に動物がたくさんいたとき

アレルギーや感染のリスクがあり、ケアに集中しづらい環境です。安全に配慮しつつ、ケアの場を調整する相談が必要になります。

⑥ 家にダニや虫が多いとき

衛生環境が整っていない住居では、感染予防の観点から負担が大きくなります。一人で抱えず、事業所として対策を講じる場面です。

⑦ 上司に怒られたとき

業務上のミスや報告の行き違いから、上司に強く言われて落ち込むこともあります。前向きに切り替える工夫が求められます。

ポイントこれらは多くの訪問看護師が経験する「あるある」です。自分だけではないと知るだけでも、感情の重さは少し軽くなります。

なぜ訪問看護は「ムカつく」と感じやすいのか

同じ看護でも、病棟と訪問では感情の負担のかかり方が違います。背景を知っておくと、「自分の感情に問題がある」と責めずに済みます。

一人で訪問するため逃げ場がない

病棟ならその場に同僚や上司がいますが、訪問看護は基本的に一人で利用者宅に入ります。理不尽な言動を受けても、すぐに誰かに相談したりフォローを受けたりしにくく、感情を一人で抱えやすい構造です。

「生活の場」に入る難しさ

利用者さんの自宅は、その人の価値観や生活習慣がそのまま表れる場所です。こちらの「当たり前」が通じないことも多く、些細なすれ違いが衝突につながりやすくなります。

感情労働の負担が大きい

相手の状態に合わせて、自分の感情を抑えながら丁寧に対応し続ける——訪問看護は感情労働の側面が強い仕事です。気づかないうちに消耗が蓄積し、ふとした場面で「ムカつく」として表に出ることがあります。

ポイントイラッとする背景には、訪問看護という働き方そのものの構造があります。仕組みの問題として捉えると、自分を責めすぎずに対処へ意識を向けられます。

ムカつく瞬間への基本対応(その場の鉄則)

イラッとした瞬間に大切なのは、感情そのものを否定することではなく、行動を一拍おくことです。その場で意識したい鉄則を整理します。

場面その場の基本対応
暴言・理不尽に怒られた言い返さず、まず一呼吸。落ち着いた声で事実と相手の意図を確認する
担当変更を求められた否定せず要望を受け止め、理由を丁寧に聞く。一人で抱えず上司に共有
衛生・動物などの環境問題その場で無理に解決しようとせず、安全を優先しケアの場や方法を提案
感情が高ぶってきた訪問後に記録・報告し、事業所として情報を共有する
注意「自分が我慢すれば丸く収まる」と抱え込むのが、もっとも危険な対応です。とくに安全に関わる場面は、必ず事業所に共有し、組織として判断しましょう。

暴力・暴言・セクハラは「我慢」しない|組織で対応する

ちびウルフちびウルフ

暴言やセクハラって、利用者さんだから仕方ないって我慢しなきゃダメ…?

リハウルフリハウルフ

その我慢はしなくていいんだ。暴力・暴言・セクハラは“ハラスメント”。看護師個人の問題じゃなく、事業所が組織として守るべきものなんだよ。

厚生労働省も、介護現場における利用者・家族からのハラスメントについて対策マニュアルを整備しており、事業者が組織として職員を守ることを求めています。つまり、これらは「個人が耐える」話ではありません。

  1. その場では明確に「やめてください」と伝え、身の安全を最優先に確保する
  2. 発生した事実(日時・状況・言動)を客観的に記録する
  3. 上司・管理者へ速やかに報告し、組織として情報を共有する
  4. 担当変更・複数訪問・契約の見直しなど、事業所として対応方針を決める
  5. 必要に応じて関係機関(ケアマネ・主治医等)や、深刻な場合は警察等とも連携する
ポイント記録と報告は「大げさ」ではありません。客観的な記録が積み重なることで、組織が動きやすくなり、あなた自身と次の担当者を守ることにつながります。

ムカついた感情をためない|リフレッシュ&セルフケア

その場の対応をしたあとに大切なのが、感情を引きずらないセルフケアです。ストレスをためたままにすると、仕事のパフォーマンスにも心身にも影響します。次のような方法を試してみてください。

仕事から意識を切り離す

休日や勤務後に、趣味や好きなことに没頭する時間をつくると気分転換になります。仕事のことを一度頭から離す時間が、回復を助けます。

同僚と気持ちを分かち合う

同じ立場の同僚と話すと「自分だけじゃない」と思え、気持ちが軽くなります。一人で抱えず、共有できる相手を持っておきましょう。

十分に休む

睡眠とリラックスの時間を確保することは、感情を立て直す土台です。忙しいときほど、意識的に休息をとることが大切です。

やりがいに目を向ける

利用者さんやご家族からの感謝の言葉など、ポジティブな面に意識を向けると、ムカつく瞬間を乗り越えやすくなります。

注意気分の落ち込みや不眠が続く、仕事に行くのがつらいといった状態が長引く場合は、自己流で抱え込まず、産業医や専門の相談窓口に相談しましょう。

それでも限界なら|環境を変える選択肢も

対処やセルフケアを尽くしても、職場環境そのものに無理があるケースもあります。慢性的な人手不足、相談しても改善しない、安全が守られない——こうした状況が続くなら、事業所を変えることも前向きな選択肢です。

同じ訪問看護でも、ハラスメント対応の体制や相談しやすさは事業所ごとに大きく異なります。「我慢して続ける」ことだけが正解ではない、と知っておくだけでも気持ちに余裕が生まれます。

よくある質問(FAQ)

仕事中にイライラしてしまう自分は看護師に向いていないのでしょうか?
そんなことはありません。理不尽な場面で感情が湧くのは自然なことです。大切なのは感情を否定することではなく、その後の行動を一拍おいて整えることです。
利用者さんからの暴言やセクハラも我慢すべきですか?
我慢する必要はありません。これらはハラスメントであり、看護師個人ではなく事業所が組織として対応すべきものです。記録し、上司へ報告しましょう。
担当を変えてほしいと言われ、落ち込んでいます。
まずは要望の背景を丁寧に聞くことが大切です。相性やコミュニケーションのすれ違いが原因のこともあります。一人で抱えず、上司と共有して対応を考えましょう。
ストレスがたまったとき、まず何をすればいいですか?
仕事から意識を切り離す時間をつくる、同僚に話す、しっかり休む、の3つが基本です。落ち込みが長引く場合は専門の相談窓口の利用も検討しましょう。
事業所に相談しても改善しない場合は?
安全が守られない状態が続くなら、転職など環境を変える選択肢も前向きに検討してよい場面です。我慢し続けることだけが正解ではありません。

まとめ

ちびウルフちびウルフ

イラッとしても、一人で抱え込まなくていいんだね。少し気持ちが楽になったよ。

リハウルフリハウルフ

そう。感情は自然なもの。その上で、記録して、報告して、ちゃんと休む。組織で守り合うのが訪問看護なんだ。

まとめ
  • 訪問看護で「ムカつく!」と感じるのは自然なこと。自分だけではない
  • その場では言い返さず一拍おき、事実と相手の意図を冷静に確認する
  • 暴力・暴言・セクハラはハラスメント。我慢せず記録し、組織で対応する
  • 感情はためない。切り離す時間・同僚との共有・休息・やりがいでケアを
  • 改善しない・安全が守られないなら、環境を変える選択肢も前向きに検討

参考:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」等。深刻なハラスメントや心身の不調が続く場合は、事業所の管理者・産業医・各種相談窓口にご相談ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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