高齢者が疲れやすいときの対策は?原因の見分け方も解説

高齢者が疲れやすくなったとき、「年のせい」で片づけてよいものと、そうでないものがあります。貧血、甲状腺の病気、心不全、睡眠時無呼吸、うつ、薬の影響などは、治療によって改善します。一方で、動かないことによる体力低下は、動くことでしか戻りません。原因の見分けと、対策の方向がまったく違います。
この記事では、高齢者が疲れやすくなる原因を整理し、それぞれに何をすればよいのかをまとめました。理学療法士として在宅で高齢者の体力を見てきた立場から、家庭でできる運動と、受診すべきタイミングの両方を書いています。
- 「疲れやすい」の裏に隠れやすい病気
- 受診したほうがよいサインの見分け方
- 加齢による体力低下(フレイル)と病気の違い
- 薬が原因で疲れやすくなることがあること
- 安静にするほど悪化する仕組み
- 家庭でできる運動と、続けるための工夫
- 食事でとくに不足しやすい栄養素
- 介護保険で使えるサービス
高齢者が疲れやすい原因
原因は大きく3つに分けられます。どれに当たるかで、やるべきことが正反対になるため、まずここを整理してください。
| 分類 | おもな原因 | 対応の方向 |
|---|---|---|
| 治療で改善するもの | 貧血、甲状腺機能低下症、心不全、腎機能低下、睡眠時無呼吸、うつ、感染症、脱水 | 受診・治療が先 |
| 薬によるもの | 睡眠薬、抗不安薬、降圧薬、抗ヒスタミン薬など | 主治医・薬剤師に相談 |
| 使わないことによるもの | フレイル、サルコペニア、低栄養、活動量の低下 | 運動と食事で改善 |
治療で改善する病気
- 貧血:立ちくらみ、動悸、息切れ、顔色が悪いなどを伴います。高齢者では消化管からの出血が背景にあることもあり、原因を調べる必要があります
- 甲状腺機能低下症:だるさに加えて、寒がり、便秘、むくみ、体重増加、動作が遅くなるなどが出ます。血液検査でわかります
- 心不全:少し動くだけで息切れ、足のむくみ、横になると苦しい、数日で体重が増えるといった症状を伴います
- 睡眠時無呼吸:いびき、日中の強い眠気、朝の頭痛が特徴です。夜眠れているつもりでも休めていません
- うつ:気分の落ち込みより先に、だるさ・食欲低下・眠れないとして現れることがあります
- 感染症・脱水:高齢者は発熱しないまま進むことがあります
薬の影響
使わないことによる体力低下(フレイル)
病気がなくても、活動量が落ちると筋肉量と持久力は下がります。そして疲れやすいから動かない→さらに体力が落ちる→もっと疲れやすいという循環に入ります。高齢者ではこの循環の進み方が速く、数週間で目に見えて変わります。
ちびウルフ疲れてるなら、休ませたほうがいいんじゃないの?
リハウルフ病気が原因なら休養と治療が先です。でも原因が体力低下なら、休ませるほど悪くなります。訪問先でも「疲れるから」と1日中座っている方が、3か月後に立てなくなっていた、ということがあります。大事なのは、まず受診して病気を除外することです。順番を間違えないでください。
受診したほうがよいサイン
- 数週間のうちに急に疲れやすくなった
- 体重が意図せず減っている(半年で2〜3kg以上)
- 息切れや動悸を伴う
- 足がむくむ、横になると息苦しい
- 顔色が悪い、めまいや立ちくらみがある
- 寒がりになった、便秘がひどくなった
- いびきがひどく、日中に強い眠気がある
- 気分が落ち込む、何をしても楽しくない
- 最近、薬が増えた・変わった
とくに「急に」と「体重が減る」は重要です。加齢による体力低下は、ふつう数週間単位では進みません。まずかかりつけ医に相談し、血液検査で貧血・甲状腺・腎機能・炎症などを確認してもらうのが出発点になります。
高齢者の疲れやすさへの対策
1. 座っている時間を短くする
運動というより、まず「座りっぱなしの時間を切る」ことから始めます。30分から1時間に一度立ち上がるだけでも違います。テレビの区切り、トイレ、お茶を入れるなど、生活の中に立つ場面を増やしてください。
2. 太ももとふくらはぎを使う
疲れやすさに直結するのは、大きな筋肉です。次の2つは、椅子があればできます。
- 椅子から立ち座りをゆっくり繰り返す(できる回数から。反動を使わず、手すりや机に手を添えてよい)
- 椅子に座ったまま、かかとを上げ下げする(ふくらはぎのポンプが働き、むくみにも効きます)
- 立って何かにつかまり、片足を後ろに引く・横に開く動きをゆっくり行う
- できる日は、外を短くてもよいので歩く(連続でなくてよい)
回数より毎日続くことが大事です。1日10回でも、続けば3か月で変わります。逆に、はりきって多くやって筋肉痛で3日休むほうが効果は下がります。
3. たんぱく質を意識してとる
高齢者では、食事量そのものが減り、さらに主食に偏って、たんぱく質が不足しがちです。筋肉が作られなければ、運動しても体力は戻りません。
- 朝食にたんぱく質を入れる(卵、納豆、牛乳、ヨーグルトなど。朝が最も抜けやすい)
- 1日を通して分けてとる(夕食にまとめても効率が悪い)
- 食が細いなら、量より密度を上げる(味噌汁に卵を落とす、牛乳を活用する)
- 水分も忘れない(脱水はだるさの直接の原因になります)
食事量が落ちている場合の工夫は高齢者の低栄養・フレイル対策も参考にしてください。
4. 睡眠の質を整える
- 朝、カーテンを開けて光を浴びる
- 日中に横になる時間を長くしすぎない(昼寝は30分以内、午後3時まで)
- 夕方以降のカフェインを避ける
- いびきや無呼吸を指摘されたら受診する
高齢になると眠りが浅くなるのは自然なことですが、日中の強い眠気は別問題です。夜間に呼吸が止まっている、頻尿で何度も起きているなど、原因があることがあります。
介護保険で使えるもの
要介護認定を受けていれば、次のようなサービスが体力の維持に使えます。
| サービス | できること |
|---|---|
| 通所リハビリテーション(デイケア) | リハビリ専門職による運動。送迎があるため外出の機会にもなる |
| 通所介護(デイサービス) | 入浴・食事・機能訓練。人と会う機会が増える |
| 訪問リハビリテーション | 自宅で、生活動作に沿った運動を指導してもらえる |
| 訪問介護 | 家事の負担を減らし、その分の体力を活動に回せる |
| 福祉用具貸与 | 手すりや歩行器で、動くときの負担を下げる |
要支援の場合でも、総合事業の通いの場や体操教室を利用できることがあります。まずは地域包括支援センターに相談してください。
ちびウルフ本人がやる気になってくれないときは、どうしたらいいの?
リハウルフ「運動しよう」ではなく、目的のある用事にすると続きます。ゴミ出し、郵便を取りに行く、孫と電話しながら足踏みする、でもいいんです。訓練として渡されたメニューは長続きしませんが、役割として頼まれたことは続きます。ここは家族にしかできない工夫です。
よくある質問
高齢者が疲れやすいのは加齢のせいですか?
加齢による体力低下はありますが、貧血、甲状腺の病気、心不全、うつ、薬の影響など治療で改善するものが隠れていることがあります。急に変化した場合は受診してください。
まず何科に行けばよいですか?
かかりつけ医に相談してください。血液検査で貧血、甲状腺、腎機能、炎症などを確認することが出発点になります。必要に応じて専門科を紹介されます。
疲れているときは休ませたほうがよいですか?
病気が原因なら治療と休養が優先です。体力低下が原因なら、休むほど悪化します。まず受診して病気を除外することが先です。
どのくらい運動すればよいですか?
回数より継続です。椅子からの立ち座りを1日10回でも、毎日続けば数か月で変わります。息が上がって会話できないほどの強さは必要ありません。
たんぱく質はどのくらい必要ですか?
必要量は体格や腎機能によって異なります。腎臓の病気がある場合は制限が必要なこともあるため、主治医や管理栄養士に確認してください。
サプリメントで補えますか?
食事が基本です。薬との飲み合わせもあるため、使う場合は主治医や薬剤師に相談してください。
体重が減っているのですが問題ありますか?
意図しない体重減少は重要なサインです。半年で2〜3kg以上減っている場合は受診してください。
介護保険を使うほどではない場合は?
要支援や事業対象者として、総合事業の通いの場や体操教室を利用できることがあります。地域包括支援センターに相談してください。
暑い時期だけ疲れやすいのですが。
脱水や熱中症の可能性があります。高齢者は喉の渇きを感じにくいため、時間を決めて水分をとることが必要です。ぐったりしている、汗が出ないなどがあれば受診してください。
- 疲れやすさの原因は「病気」「薬」「使わないこと」の3つに分けて考える
- 貧血、甲状腺機能低下症、心不全、睡眠時無呼吸、うつは治療で改善しうる
- 睡眠薬、降圧薬、抗ヒスタミン薬などが疲れやすさにつながることがある
- 薬が変わった時期と、だるくなった時期が一致していないか確認する
- 自己判断で薬を中止しない
- 数週間で急に疲れやすくなった場合は受診する
- 意図しない体重減少は重要なサイン
- 体力低下が原因の場合、休むほど悪化する
- まず座りっぱなしの時間を切ることから始める
- 椅子からの立ち座りとかかと上げが基本の運動になる
- 回数より毎日続くことを優先する
- 朝食にたんぱく質を入れる。1日に分けてとる
- 脱水はだるさの直接の原因になるため、水分も意識する
- 日中の強い眠気は睡眠時無呼吸などの可能性がある
- 通所リハビリ、訪問リハビリ、総合事業の通いの場などが活用できる
※本記事は、一般の方向けに高齢者の疲れやすさの考え方を整理したものであり、医学的な診断を目的としたものではありません。記載した症状と原因の対応は代表的な例にすぎず、実際の原因は診察と検査によってのみ判断できます。急な変化や体重減少がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。服薬の変更は必ず主治医または薬剤師にご相談ください。運動や食事に関する記述は一般的な整理であり、心臓・腎臓の病気がある場合など、個別に制限が必要なことがあります。実施前に主治医にご確認ください。運動・生活面に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理です。2026年9月時点の情報として整理しています。





