老健の療養食加算とは?

老健の療養食加算は、1回につき6単位、1日3回を限度です。1日で最大18単位、1か月なら540単位ほど。金額としては大きくありませんが、対象になる食事が9種類に限定されていて、そこに「高血圧の減塩食」は入っていません。ここを取り違えたまま算定していた事例は珍しくありません。
この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)、老企第40号の原文を確認して、単位数・対象となる療養食・算定要件・実務でつまずく点を整理しました。
この記事でわかること
- 老健の療養食加算は1回6単位・1日3回までという単位数
- 対象となる療養食9種類の正確な名前
- 医師の食事箋と献立表という2つの必須書類
- 心臓疾患の減塩食は算定できて、高血圧の減塩食は算定できない理由
- 減塩食が「食塩相当量6.0g未満」でなければならないこと
- 貧血食・脂質異常症食・高度肥満症には数値の基準があること
- 経管栄養でも算定できること
- 経口移行加算・経口維持加算と併算定できること
老健の療養食加算とは?
療養食加算は、入所者の疾病の治療を目的として、医師が発行した食事箋にもとづく治療食を提供したことを評価する加算です。「栄養状態がよくない人に配慮した食事」を広く評価するものではなく、疾病治療の直接手段としての食事だけが対象になります。
老健の栄養関係の加算には、栄養マネジメント強化加算のように施設の体制を評価するものと、経口移行加算・経口維持加算のように個々の入所者への働きかけを評価するものがあります。療養食加算はそのどちらとも性格が違い、提供した食事そのものが要件を満たしているかどうかで決まります。令和6年度改定での見直しはなく、単位数・要件とも据え置かれています。
ちびウルフ栄養に配慮した食事を出していれば付く加算だと思っていました。
リハウルフそこが一番の誤解です。医師の食事箋があって、告示に並んだ9種類のどれかに当てはまる。この2つが揃わないと算定できません。
療養食加算の単位数
介護老人保健施設の療養食加算は、告示第21号の介護保健施設サービスのワに定められています。
ワ 療養食加算 6単位
注 次に掲げるいずれの基準にも適合するものとして、電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対し、老健局長が定める様式による届出を行った介護老人保健施設が、別に厚生労働大臣が定める療養食を提供したときは、1日につき3回を限度として、所定単位数を加算する。
| 区分 | 単位数 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 療養食加算 | 6単位 | 1回(1日3回を限度) |
| 1日あたりの上限 | 18単位 | — |
| 30日分の目安 | 540単位 | — |
注意したいのは、「1日につき6単位」ではなく「1回につき6単位」だという点です。朝・昼・夕の3食すべてが療養食に該当すれば18単位、昼だけなら6単位になります。療養食に該当しない食事を挟んだ日は、その回を除いて数えます。
療養食加算の対象になる9種類の食事
「別に厚生労働大臣が定める療養食」は、告示第94号の第66号が第23号を引く形で定められています。実際に並んでいるのは次の9種類です。
疾病治療の直接手段として、医師の発行する食事箋に基づき提供された適切な栄養量及び内容を有する糖尿病食、腎臓病食、肝臓病食、胃潰瘍食、貧血食、膵臓病食、脂質異常症食、痛風食及び特別な場合の検査食
- 糖尿病食
- 腎臓病食
- 肝臓病食
- 胃潰瘍食(流動食は除く)
- 貧血食
- 膵臓病食
- 脂質異常症食
- 痛風食
- 特別な場合の検査食
この9種類は限定列挙です。「これに準ずる食事」という包括的な規定はなく、老企第40号が個別に「準じて取り扱ってよい」と書いているものだけが例外的に加わります。
準じて取り扱えるもの
老企第40号 2の(21)は、次の取扱いを認めています。
| 実際の食事 | どの療養食に準じるか | 条件 |
|---|---|---|
| 心臓疾患等に対する減塩食 | 腎臓病食 | 食塩相当量の総量6.0g未満 |
| 十二指腸潰瘍に対する食事 | 胃潰瘍食 | — |
| 侵襲の大きな消化管手術の術後食 | 胃潰瘍食 | 胃潰瘍食に準ずる内容であること |
| クローン病・潰瘍性大腸炎等の低残さ食 | 療養食として取扱可 | 腸管の機能が低下している場合 |
| 高度肥満症の食事療法 | 脂質異常症食 | 肥満度+70%以上またはBMI35以上 |
数値の基準がある3つ
貧血食・脂質異常症食・高度肥満症には、老企第40号が明確な数値を置いています。ここは食事箋の病名だけでは判断できません。
| 療養食 | 対象者の基準 |
|---|---|
| 貧血食 | 血中ヘモグロビン濃度が10g/dL以下で、その原因が鉄分の欠乏に由来する者 |
| 脂質異常症食 | 空腹時定常状態のLDLコレステロール値140mg/dL以上、またはHDLコレステロール値40mg/dL未満、または血清中性脂肪値150mg/dL以上 |
| 高度肥満症(脂質異常症食に準じる) | 肥満度+70%以上またはBMI35以上 |
「貧血傾向だから貧血食」では算定できません。ヘモグロビン10g/dL以下という数値と、鉄欠乏という原因の両方が必要です。検査データを根拠として残しておかないと、実地指導で説明できなくなります。
特別な場合の検査食は、潜血食のほか、大腸X線検査・大腸内視鏡検査のために特に残さの少ない調理済食品を使用した場合が含まれます。
療養食加算の算定要件
告示第21号のワの注には、3つの基準が並んでいます。
- 食事の提供が管理栄養士または栄養士によって管理されていること
- 入所者の年齢、心身の状況によって適切な栄養量および内容の食事の提供が行われていること
- 食事の提供が、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する介護老人保健施設において行われていること
これに加えて、老企第40号 2の(21)①が2つの書類を求めています。
食事箋と献立表がそろって初めて算定できる
「利用者の病状等に応じて、主治の医師より利用者に対し疾患治療の直接手段として発行された食事箋に基づき、利用者等告示に示された療養食が提供された場合に算定すること。なお、当該加算を行う場合は、療養食の献立表が作成されている必要があること」とされています。食事箋は医師が発行するもので、施設の管理栄養士が判断して切り替えるものではありません。
もう一点、老企第40号 2の(21)③は「療養食の摂取の方法については、経口又は経管の別を問わない」としています。経管栄養の入所者でも、療養食に該当する内容であれば算定できます。経口摂取していないから対象外、という整理は誤りです。
療養食加算の注意点
高血圧の減塩食は対象にならない
実務で最も多い取り違えがここです。老企第40号 2の(21)④は次のように書いています。
心臓疾患等に対して減塩食療法を行う場合は、腎臓病食に準じて取り扱うことができるものであるが、高血圧症に対して減塩食療法を行う場合は、加算の対象とはならないこと。また、腎臓病食に準じて取り扱うことができる心臓疾患等の減塩食については、総量六・〇g未満の減塩食をいうこと。
同じ減塩食でも、心臓疾患が理由なら算定でき、高血圧症が理由なら算定できません。食事箋の病名がどちらで書かれているかで結論が変わります。そして心臓疾患の減塩食であっても、食塩相当量の総量が6.0g未満でなければ対象外です。「薄味にしている」では足りず、栄養価計算で6.0g未満を示せる必要があります。
退所時栄養情報連携加算とは扱いが違う
老企第40号は、退所時栄養情報連携加算・再入所時栄養連携加算の「特別食」について、「高血圧の入所者に対する減塩食(食塩相当量の総量が6.0グラム未満のものに限る。)及び嚥下困難者(そのために摂食不良となった者も含む。)のための流動食は、介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス、介護医療院サービス及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の療養食加算の場合と異なり、(中略)対象となる特別食に含まれる」と明記しています。同じ施設の同じ入所者でも、療養食加算では対象外、退所時栄養情報連携加算では対象、ということが起こります。「特別食」と「療養食」を同じものとして扱わないでください。
ちびウルフ同じ減塩食なのに、加算によって対象が違うんですか。
リハウルフ違います。しかも通知はわざわざ「療養食加算の場合と異なり」と書いています。書き分けているということは、混同する施設が多いということです。
流動食は胃潰瘍食から除かれる
告示第94号の対象に「胃潰瘍食」とありますが、老企第40号 2の(21)②は括弧書きで「流動食は除く」としています。手術前後に与える高カロリー食も加算の対象になりません。
経口移行加算・経口維持加算とは併算定できる
老企第40号 5の(32)は「経口による食事の摂取を進めるための栄養管理及び支援が行われている場合にあっては、経口移行加算又は経口維持加算を併せて算定することが可能である」としています。療養食加算は食事の内容を、経口移行加算・経口維持加算は摂食への働きかけを評価するもので、評価している対象が違うためです。
肝臓病食の範囲は広い
老企第40号 2の(21)⑤は、肝臓病食を「肝庇護食、肝炎食、肝硬変食、閉鎖性黄疸食(胆石症及び胆嚢炎による閉鎖性黄疸の場合を含む。)等」としています。胆石症・胆嚢炎による閉鎖性黄疸まで含まれる点は、見落とされやすいところです。
療養食加算のQ&A
1日3回を超えて療養食を提供した場合はどうなりますか?
算定は1日3回が限度です。おやつや補食を含めて4回以上提供しても、加算は18単位までです。
医師の食事箋がなくても、管理栄養士の判断で療養食にできますか?
できません。老企第40号 2の(21)①は「主治の医師より利用者に対し疾患治療の直接手段として発行された食事箋に基づき」と明記しています。食事箋は算定の前提です。
経管栄養の人でも算定できますか?
算定できます。老企第40号 2の(21)③が「経口又は経管の別を問わない」としています。ただし提供している内容が9種類の療養食に該当している必要があります。
高血圧の減塩食はどうしても算定できませんか?
療養食加算としては算定できません。心臓疾患等に対する減塩食であれば腎臓病食に準じて算定できるため、食事箋の記載がどの疾患を治療対象としているかが分かれ目になります。判断に迷う場合は指定権者に確認してください。
嚥下調整食は療養食加算の対象ですか?
嚥下調整食そのものは9種類に含まれていないため、対象外です。ただし退所時栄養情報連携加算・再入所時栄養連携加算の特別食には含まれるとされており、加算ごとに範囲が異なります。
糖尿病と腎臓病を併せ持つ人に1つの食事を出した場合、2回分になりますか?
なりません。提供した食事の回数で数えるため、1食は1回です。
届出は必要ですか?
必要です。告示の注が「電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対し、老健局長が定める様式による届出を行った介護老人保健施設が」としています。届出前に提供した分は算定できません。
転換老健(介護保健施設サービス費(Ⅱ)〜(Ⅳ))でも算定できますか?
算定できます。褥瘡マネジメント加算のように「イ(1)、ロ(1)について」という限定が付いている加算とは異なり、療養食加算の注にはその限定がありません。
ショートステイ(短期入所療養介護)の療養食加算と同じ内容ですか?
対象となる療養食の9種類は同じです。ただし単位数は施設・サービスごとに定められているため、金額は別に確認してください。
まとめ
- 老健の療養食加算は1回につき6単位、1日3回が限度(1日最大18単位)
- 「1日につき」ではなく「1回につき」で数える
- 対象は糖尿病食・腎臓病食・肝臓病食・胃潰瘍食・貧血食・膵臓病食・脂質異常症食・痛風食・特別な場合の検査食の9種類
- 9種類は限定列挙で、通知が個別に認めたものだけが準用できる
- 算定には医師が発行した食事箋と、療養食の献立表の両方が必要
- 管理栄養士または栄養士による食事の管理と、届出が前提
- 心臓疾患等の減塩食は腎臓病食に準じるが、食塩相当量の総量6.0g未満に限られる
- 高血圧症に対する減塩食は療養食加算の対象にならない
- 胃潰瘍食から流動食は除かれ、手術前後の高カロリー食も対象外
- 貧血食はヘモグロビン10g/dL以下かつ鉄欠乏が原因であることが必要
- 脂質異常症食はLDL140以上、HDL40未満、中性脂肪150以上のいずれかが必要
- 高度肥満症(肥満度+70%以上またはBMI35以上)は脂質異常症食に準じる
- 経管栄養でも算定でき、経口移行加算・経口維持加算とは併算定できる
- 退所時栄養情報連携加算・再入所時栄養連携加算の「特別食」とは範囲が異なる
参考にした情報
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第21号)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第23号・第66号
- 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準等に関する留意事項について(老企第40号)2の(21)、5の(32)、8の(32)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。取扱いは都道府県・市町村(指定権者)によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




