訪問看護の同一建物減算とは?

訪問看護の同一建物減算は、所定単位数の90%または85%です。1回につき適用されます。
訪問介護の同一建物減算とよく似ていますが、訪問看護には「利用者の90%以上が同一敷地内建物等に住んでいる場合の12%減算」がありません。老企第36号が訪問介護の(16)を参照する際、①〜⑤だけを引き、90%ルールの⑥を意図的に外しているためです。ここを知らずに訪問介護の記事を読むと、実際より厳しく判断してしまいます。この記事では、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問看護費の注8と、老企第36号 第2の4(14)・第2の2(16)の原文を確認して整理しました。
- 同一建物減算は90%と85%の2段階であること
- 訪問看護には訪問介護の12%減算(90%ルール)がないこと
- 「同一敷地内建物等」の定義
- 「同一の建物に20人以上」の定義と数え方
- 50人以上の場合は85%になること
- 位置関係だけで機械的に減算してはいけないこと
- 建物の管理法人が違っても該当すること
- 要支援(介護予防訪問看護)も同じ扱いであること
ちびウルフ同じ敷地の中にあれば、必ず減算になるんですよね?
リハウルフそこは通知が明確に否定しています。「本減算の適用については、位置関係のみをもって判断することがないよう留意すること」と書いてあります。広大な敷地に建物が点在している場合や、道路や河川で隔てられて迂回しないと行けない場合は、同一敷地内建物等に該当しない例として挙げられています。効率的なサービス提供につながらないなら減算すべきではない、という趣旨です。
訪問看護の同一建物減算とは?
同一建物減算は、事業所と同じ建物や同じ敷地に住む利用者に訪問する場合、移動の負担が小さいことを踏まえて報酬を減じる仕組みです。告示19号 訪問看護費の注8に規定されています。
訪問看護費には、移動にかかる時間とコストが織り込まれています。サービス付き高齢者向け住宅の1階に訪問看護ステーションがある、という形なら、1件ごとの移動はエレベーターで数分です。その効率性を報酬に反映させるのが、この減算の考え方です。
ただし、この仕組みは「囲い込み」への牽制という側面も持っています。同一建物の利用者だけを集めて訪問回数を積み上げる運営を抑える意図が読み取れます。
令和6年度介護報酬改定では、従来の10%減算に加えて、同一敷地内建物等に50人以上居住する場合の15%減算(85%)が設けられました。
同一建物減算の単位数
8 指定訪問看護事業所の所在する建物と同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物若しくは指定訪問看護事業所と同一の建物(以下この注において「同一敷地内建物等」という。)に居住する利用者((略)50人以上居住する建物に居住する利用者を除く。)又は指定訪問看護事業所における1月当たりの利用者が同一の建物に20人以上居住する建物(同一敷地内建物等を除く。)に居住する利用者に対して、指定訪問看護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の90に相当する単位数を算定し、指定訪問看護事業所における1月当たりの利用者が同一敷地内建物等に50人以上居住する建物に居住する利用者に対して、指定訪問看護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の85に相当する単位数を算定する。
| ケース | 算定する単位数 | 実質の減算率 |
|---|---|---|
| 同一敷地内建物等に居住(50人以上の建物を除く) | 所定単位数×90/100 | −10% |
| 同一敷地内建物等以外で、同一の建物に20人以上居住 | 所定単位数×90/100 | −10% |
| 同一敷地内建物等に50人以上居住 | 所定単位数×85/100 | −15% |
実際の単位数
| 時間区分(ステーション) | 通常 | 90% | 85% |
|---|---|---|---|
| 20分未満 | 314単位 | 283単位 | 267単位 |
| 30分未満 | 471単位 | 424単位 | 400単位 |
| 30分以上1時間未満 | 823単位 | 741単位 | 700単位 |
| 1時間以上1時間30分未満 | 1,128単位 | 1,015単位 | 959単位 |
| PT・OT・STによる訪問 | 294単位 | 265単位 | 250単位 |
※小数点以下の端数処理は請求システムの取扱いによります。
訪問介護には、同一敷地内建物等に居住する利用者へのサービス提供が提供総数の90%以上を占める場合に12%減算とする規定(注12・老企36号 第2の2(16)⑥)があります。訪問看護の注8には、この規定がありません。老企第36号 第2の4(14)も「訪問介護と同様であるので、2(16)①〜⑤を参照されたい」として、⑥を引いていません。判定期間・減算適用期間・9月15日/3月15日の書類提出といった手続きは、訪問看護には及びません。
同一建物減算の算定要件(判定のしかた)
①「同一敷地内建物等」の定義
「同一敷地内建物等」とは、当該事業所と構造上又は外形上、一体的な建築物及び同一敷地内並びに隣接する敷地(道路等を挟んで設置している場合を含む)にある建築物のうち効率的なサービス提供が可能なものを指す。
| 類型 | 具体例 |
|---|---|
| 一体的な建築物 | 建物の1階部分に訪問看護事業所がある/建物と渡り廊下でつながっている |
| 同一敷地内・隣接する敷地内の建物 | 同一敷地内にある別棟の建築物/幅員の狭い道路を挟んで隣接する建物 |
人数の要件はありません。同一敷地内建物等に該当すれば、その建物の利用者が1人でも90%になります。
②位置関係だけで判断しない
③ 当該減算は、指定訪問介護事業所と建築物の位置関係により、効率的なサービス提供が可能であることを適切に評価する趣旨であることに鑑み、本減算の適用については、位置関係のみをもって判断することがないよう留意すること。具体的には、次のような場合を一例として、サービス提供の効率化につながらない場合には、減算を適用すべきではないこと。
(同一敷地内建物等に該当しないものの例)
・同一敷地であっても、広大な敷地に複数の建物が点在する場合
・隣接する敷地であっても、道路や河川などに敷地が隔てられており、横断するために迂回しなければならない場合
これは訪問看護にも準用される部分(①〜⑤)に含まれています。減算する側にも、しない側にも、根拠を示せるようにしておくことが必要です。
③「同一の建物に20人以上」の数え方
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 同一敷地内建物等に該当しない建築物 |
| 人数 | その建物に当該事業所の利用者が20人以上居住していること |
| 合算の可否 | 同一敷地内にある別棟や道路を挟んで隣接する建物の利用者数を合算しない |
| 計算方法 | 1月間(暦月)の利用者数の平均。1日ごとの該当建物の利用者の合計を、その月の日数で除する |
| 端数 | 小数点以下を切り捨てる |
「月の途中で20人を超えた日がある」では足りません。月の日数で割った平均が20人以上である必要があります。
④50人以上の場合は85%
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 同一敷地内建物等のうち、当該事業所の利用者が50人以上居住する建物 |
| 適用範囲 | その建物の利用者全員 |
| 計算方法 | 20人以上の場合と同じく1月間(暦月)の平均、小数点以下切り捨て |
50人以上は「同一敷地内建物等」であることが前提です。同一敷地内建物等でない建物に50人が住んでいても、85%にはなりません(90%です)。
⑤建物の管理法人が違っても該当する
④ ①及び②のいずれの場合においても、同一の建物については、当該建築物の管理、運営法人が当該指定訪問介護事業所の指定訪問介護事業者と異なる場合であっても該当するものであること。
「うちの法人が運営している建物ではないから対象外」は通りません。法人が別でも、位置関係と人数の要件を満たせば減算になります。
同一建物減算の注意点
減算されるのは所定単位数
90%・85%が掛かるのは、時間区分の所定単位数です。准看護師の90%と同一建物減算が重なる場合、両方が掛かることになります。順序や端数処理は請求システムの取扱いによります。
要支援も同じ扱い
介護予防訪問看護費の注7に、同じ内容の規定があります。90%・85%の2段階で、要介護と変わりません。
区分支給限度基準額の扱い
同一建物減算が適用されると、実際に請求する単位数は減ります。限度額の管理も減算後の単位数で行うのが一般的な取扱いですが、地域によって扱いが異なる場合があるため、保険者に確認してください。
- 事業所と建物の位置関係を図面で整理しているか
- 「広大な敷地に点在」「河川で隔てられ迂回が必要」に当たらないか
- 同一敷地内建物等でない建物は、暦月の平均で20人以上か
- 平均人数の計算で小数点以下を切り捨てているか
- 50人以上の85%は「同一敷地内建物等」に限って適用しているか
- 建物の管理法人が別であることを理由に除外していないか
- 准看護師の90%と重なる場合の計算を確認したか
担当したケースでも、サ高住の1階にステーションがあるのに減算していなかった事業所と、離れた別棟なのに一律で減算していた事業所の両方を見ています。位置関係の判断は、根拠を残しておかないと後から説明できません。
よくある質問
訪問看護の同一建物減算は何%ですか?
所定単位数の90%(−10%)または85%(−15%)です。
訪問介護のような12%減算はありますか?
ありません。老企第36号は訪問介護の(16)①〜⑤のみを参照しており、90%以上で12%減算とする⑥は引かれていません。
同一敷地内建物等なら何人でも減算ですか?
人数の要件はありません。同一敷地内建物等に該当すれば、利用者が1人でも90%になります。
85%になるのはどんな場合ですか?
同一敷地内建物等のうち、当該事業所の利用者が50人以上居住する建物の利用者全員が対象です。
同一敷地内建物等でない建物に50人いたら85%ですか?
なりません。20人以上に該当するため90%です。85%は同一敷地内建物等に限られます。
20人の数え方を教えてください。
1月間(暦月)の利用者数の平均です。1日ごとの該当建物の利用者数の合計を、その月の日数で除し、小数点以下を切り捨てます。
別棟の利用者数を合算できますか?
できません。同一敷地内にある別棟や道路を挟んで隣接する建物の利用者数を合算するものではないとされています。
同じ敷地なら必ず減算ですか?
違います。広大な敷地に建物が点在する場合など、サービス提供の効率化につながらない場合は減算を適用すべきでないとされています。
建物の運営法人が別なら対象外ですか?
対象外にはなりません。管理・運営法人が異なる場合であっても該当します。
准看護師の90%と重なるとどうなりますか?
いずれも所定単位数に対する調整であり、両方が適用されます。計算の順序と端数処理は請求システムの取扱いによります。
要支援の方も同じですか?
同じです。介護予防訪問看護費の注7に同内容の規定があります。
加算部分も減算されますか?
減じられるのは時間区分の所定単位数です。加算の取扱いは請求システムおよび指定権者の取扱いをご確認ください。
- 訪問看護の同一建物減算は90%と85%の2段階
- 訪問介護にある12%減算(90%ルール)は訪問看護にはない
- 老企第36号が訪問介護の(16)①〜⑤だけを参照し、⑥を引いていないため
- 判定期間・9月15日/3月15日の書類提出といった手続きも及ばない
- 同一敷地内建物等なら人数を問わず90%
- 同一敷地内建物等でない建物は、暦月の平均で20人以上なら90%
- 同一敷地内建物等に50人以上なら、その建物の利用者全員が85%
- 人数は1月間の平均、小数点以下切り捨て
- 別棟や隣接する建物の利用者数は合算しない
- 位置関係だけで機械的に判断してはいけない
- 広大な敷地に点在する場合、河川等で隔てられ迂回が必要な場合は該当しない例
- 建物の管理・運営法人が異なっても該当する
- 准看護師の90%と重なる場合は両方が適用される
- 介護予防訪問看護も同じ90%・85%の2段階
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第19号)別表「訪問看護費」注8(厚生労働省法令等データベース)
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)第2の2(16)①〜⑤、第2の4(14)(全国老人保健施設協会 法令データベース)
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表「介護予防訪問看護費」注7(全国老人保健施設協会 法令データベース)
※本記事の減算率・判定方法は、厚生労働省の告示および通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・指定都市・中核市)の解釈をご確認ください。とくに「効率的なサービス提供が可能なもの」に該当するかどうかの判断、准看護師の減算と重なる場合の計算順序と端数処理、区分支給限度基準額の管理方法については、指定権者・保険者および請求システムの取扱いによります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




