看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の認知症行動・心理症状緊急対応加算は、1日につき200単位・利用開始日から7日を限度として算定します。

この加算でいちばん重要なのは、対象が「ロ=短期利用居宅介護費」に限られることです。登録者には算定できません。看多機の加算の多くが「イについては」で始まるなかで、この加算だけが「ロについて」と書かれています。ここを読み違えると、算定できない請求を続けることになります。

この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のホの原文を確認して整理しました。

この記事でわかること
  • 認知症行動・心理症状緊急対応加算200単位の算定要件
  • 対象が短期利用居宅介護費に限られること
  • 登録者には算定できない理由
  • 医師の判断が要件になっていること
  • 7日限度の起算日
  • 認知症加算・若年性認知症利用者受入加算との対象の違い
  • ショートステイ・小多機の同名加算との比較
  • 緊急受入れの体制をどう用意するか
ちびウルフちびウルフ

登録者に算定できないのはなぜですか。看多機の利用者にもBPSDで困る方はいますよね。

リハウルフリハウルフ

登録者はもともと泊まりを使えるからです。緊急の宿泊は基本報酬と緊急時対応加算の側で評価されている。この加算が評価しているのは、登録していない方を緊急に受け入れる場面のほうです。同じBPSDでも、制度上は別の話として整理されています。

看多機の認知症行動・心理症状緊急対応加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護の認知症行動・心理症状緊急対応加算は、認知症の行動・心理症状(BPSD)によって在宅での生活が困難になった方を、緊急に受け入れた場合に算定する加算です。告示126号 複合型サービス費のホに規定されています。

認知症のBPSDは、急に強まることがあります。介護者が対応しきれなくなり、そのままでは在宅生活が続けられないという局面は珍しくありません。行き先が見つからずに救急搬送や精神科入院に至ることを避けるため、地域の受け皿として緊急に受け入れる。その手間とリスクを評価するのがこの加算です。

看多機には宿泊室があり、看護職員も配置されています。医療的な観察が必要なBPSDの方を受け入れられる数少ない在宅サービスとして、緊急受入れの役割が期待されているという位置づけです。

令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。

認知症行動・心理症状緊急対応加算の単位数

ホ 認知症行動・心理症状緊急対応加算
ロについて医師が、認知症の行動・心理症状が認められるため、在宅での生活が困難であり、緊急に指定看護小規模多機能型居宅介護を利用することが適当であると判断した者に対し、指定看護小規模多機能型居宅介護を行った場合は、利用を開始した日から起算して7日を限度として、1日につき200単位を所定単位数に加算する。

項目内容
単位数200単位
算定頻度1日につき
限度利用を開始した日から起算して7日
最大7日×200単位=1,400単位
対象ロ(短期利用居宅介護費)
届出条文上、届出の定めはない

短期利用居宅介護費に上乗せした場合の額

要介護度短期利用居宅介護費(1日)加算を加えた場合上乗せ率
要介護1571単位771単位約35%
要介護3706単位906単位約28%
要介護5839単位1,039単位約24%

基本の報酬に対して2〜3割の上乗せです。緊急受入れという負荷を考えれば、決して大きくはありませんが、受け入れの判断を後押しする水準ではあります。

認知症行動・心理症状緊急対応加算の算定要件

要件内容
①対象の報酬区分ロ(短期利用居宅介護費)を算定していること
②医師の判断医師が、認知症の行動・心理症状が認められると認めること
③在宅生活の困難性医師が、在宅での生活が困難であると判断すること
④緊急利用の適当性医師が、緊急に看多機を利用することが適当であると判断すること
⑤サービスの提供実際に指定看護小規模多機能型居宅介護を行うこと

判断するのは医師

②〜④はすべて医師の判断です。事業所やケアマネジャーが「緊急だ」と判断しても要件を満たしません。受け入れの前後に医師の判断を得て、その記録を残す必要があります。

条文は医師の所属や種別を限定していません。かかりつけ医、精神科医、協力医療機関の医師のいずれでも文言上は該当します。ただし判断の根拠を診療録や情報提供書で示せる形にしておかないと、実地指導で説明できません。

7日限度の起算日

「利用を開始した日から起算して7日」です。利用開始日を1日目として数えます。7日を超えて滞在を続ける場合、8日目以降はこの加算を算定できません。短期利用居宅介護費そのものは要件を満たす限り継続できますが、加算は7日で切れます。

届出の定めがない

他の看多機の加算と違い、ホの注には「別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして届出を行った事業所が」という文言がありません。体制の届出を前提としない加算です。ただし短期利用居宅介護費そのものを算定するには、注3により届出が必要です。

認知症関連の3つの加算の対象の違い

加算単位数対象の報酬区分評価しているもの
認知症加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)920/890/760/460単位(月)イ(登録者)体制または利用者の状態
若年性認知症利用者受入加算800単位(月)イ(登録者)若年性認知症の方の受入れ
認知症行動・心理症状緊急対応加算200単位(日)ロ(短期利用)BPSDによる緊急受入れ

認知症関連の3加算のうち、短期利用を対象にしているのはこの加算だけです。裏を返せば、対象が重ならないため「認知症加算を算定しているから緊急対応加算は算定できない」といった関係にはなりません。そもそも同じ人に同時に発生しない構造です。

他サービスの同名加算との比較

サービス単位数限度対象
看多機200単位/日7日短期利用居宅介護費のみ
小多機200単位/日7日短期利用居宅介護費のみ
ショートステイ(短期入所生活介護)200単位/日7日短期入所生活介護費

単位数も7日限度も共通です。制度としては「BPSDで在宅が難しくなった方を、泊まれる場所が緊急に受け止める」という同じ設計を、複数のサービスに横断的に置いていると読めます。

担当したケースでも、夜間の徘徊が急に強まって家族が限界になった方について、ショートステイと看多機の短期利用のどちらが早く空くかで調整したことがあります。報酬が同じなので、選択は空床と医療的な観察の要否で決まります。看護職員が配置されている看多機は、内服調整の直後など観察が要る場面で選ばれやすいと感じます。

認知症行動・心理症状緊急対応加算の注意点

登録者には算定できない

繰り返しになりますが、ここが最大の注意点です。看多機の登録者がBPSDで急に泊まりを利用しても、この加算は算定できません。

登録者の緊急の宿泊は、緊急時対応加算774単位が評価しています。緊急時対応加算の要件に「計画的に宿泊することとなっていない緊急時における宿泊を必要に応じて行う体制」が含まれているのは、まさにこの場面のためです。登録者は緊急時対応加算、非登録者は認知症行動・心理症状緊急対応加算、という住み分けになっています。

「緊急」の判断基準

告示は「緊急に指定看護小規模多機能型居宅介護を利用することが適当であると判断した者」とのみ定めています。何日以内の受入れなら緊急にあたるのか、事前に予約された利用は対象外なのかは、告示本文からは読み取れません。留意事項通知および市町村の取扱いを確認してください。

7日を超えたあとの支援

7日で加算が切れたあと、その方をどう支えるかは別の問題として残ります。短期利用の継続、登録への切り替え、他サービスへの移行のいずれかを、受入れの初日から並行して検討しておくほうが現実的です。加算の7日は、その調整期間だと考えるのが実務的な整理だと思います。

短期利用居宅介護費の届出が前提

この加算は短期利用居宅介護費に上乗せするものなので、短期利用居宅介護費を算定できない事業所では、そもそも算定機会が生じません。注3にもとづく届出を済ませているか、まず確認してください。

算定前に確認したいこと
  • 短期利用居宅介護費の届出を済ませているか
  • 受け入れる方が登録者ではないか(登録者なら算定できない)
  • 医師がBPSD・在宅生活の困難性・緊急利用の適当性を判断しているか
  • 医師の判断を記録で示せるか
  • 利用開始日を1日目として7日を数えているか
  • 8日目以降の支援方針を初日から検討しているか

よくある質問

看多機の認知症行動・心理症状緊急対応加算はいくらですか?

1日につき200単位です。利用を開始した日から起算して7日を限度に算定します。

登録者にも算定できますか?

できません。ホの注は「ロについて」とあり、対象は短期利用居宅介護費です。

登録者が緊急に泊まった場合はどうなりますか?

緊急時対応加算774単位の体制要件が、計画外の緊急時の宿泊を含んでいます。登録者はそちらで評価される整理です。

誰が緊急性を判断しますか?

医師です。事業所やケアマネジャーの判断では要件を満たしません。

どの医師の判断でもよいですか?

条文は医師の所属や種別を限定していません。ただし判断の根拠を記録で示せる必要があります。

7日はいつから数えますか?

利用を開始した日から起算します。利用開始日が1日目です。

7日を超えて滞在した場合は?

8日目以降はこの加算を算定できません。短期利用居宅介護費そのものは要件を満たす限り継続できます。

最大でいくらになりますか?

7日×200単位で1,400単位です。

届出は必要ですか?

ホの注に届出の定めはありません。ただし短期利用居宅介護費そのものの算定には注3にもとづく届出が必要です。

認知症加算と併算定できますか?

認知症加算はイ(登録者)が対象、この加算はロ(短期利用)が対象なので、同じ人に同時には発生しません。

事前に予約した利用でも算定できますか?

告示本文に「緊急」の判断基準は書かれていません。市町村の取扱いを確認してください。

ショートステイの同名加算と違いはありますか?

単位数200単位・7日限度は共通です。対象となる報酬区分が異なります。

まとめ
  • 看多機の認知症行動・心理症状緊急対応加算は1日につき200単位
  • 利用を開始した日から起算して7日が限度、最大1,400単位
  • 対象はロ(短期利用居宅介護費)で、登録者には算定できない
  • 登録者の緊急の宿泊は緊急時対応加算774単位の体制要件が受け持つ
  • 医師が、BPSDが認められ在宅生活が困難で緊急利用が適当と判断することが要件
  • 事業所やケアマネジャーの判断では要件を満たさない
  • 医師の判断を記録で示せる形にしておく必要がある
  • ホの注に届出の定めはないが、短期利用居宅介護費の届出は必要
  • 短期利用居宅介護費に対して2〜3割の上乗せになる
  • 認知症加算・若年性認知症利用者受入加算はイ(登録者)が対象で、対象が重ならない
  • 小多機・ショートステイの同名加算とは単位数・7日限度が共通
  • 選択は報酬ではなく、空床と医療的な観察の要否で決まる
  • 「緊急」の判断基準や事前予約の扱いは告示本文からは読み取れない
  • 7日は次の支援先を調整する期間と考えるのが実務的
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに「緊急に利用することが適当」と認められる範囲、事前に予約された利用の扱い、医師の判断を示す書面の要件、7日を超えて滞在する場合の取扱いについては告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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