看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の訪問看護体制減算は、要介護1〜3で1月925単位、要介護4で1,850単位、要介護5で2,914単位を基本報酬から差し引く減算です。看多機の減算のなかで、金額としては最も重いものです。

この減算のいちばんの特徴は、「看多機の指定を取っているのに、看護をしていない事業所」を名指しで狙っていることです。判定に使う3つの指標は、看護体制強化加算の要件とまったく同じ項目。同じ物差しの下端に沈むと減算、上端に届くと加算という設計になっています。

この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費の注14と、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第75号の原文を確認して整理しました。

この記事でわかること
  • 訪問看護体制減算の減算額(925/1,850/2,914単位)
  • 判定に使う3つの指標と、その数値基準
  • 3つ「すべて」に該当したときだけ減算されること
  • 判定期間が前3月間であること
  • 看護体制強化加算と同じ指標の裏返しであること
  • 減算額が小多機との基本報酬差の約7割にあたる意味
  • サテライト体制未整備減算(97%)が重ねてかかること
  • 注15・注16の医療保険の訪問看護に関する減算との違い
ちびウルフちびウルフ

3つのうち1つでも引っかかったら減算されるんですか? だとしたら怖いです。

リハウルフリハウルフ

逆です。3つすべてに該当したときだけ減算されます。条文は「次に掲げる基準のいずれにも適合すること」。看護サービスの提供割合が30%以上あれば、それだけで回避できます。ここを取り違えると、必要のない不安を抱えることになります。

看多機の訪問看護体制減算とは?

看護小規模多機能型居宅介護の訪問看護体制減算は、看護サービスの提供実績が乏しい事業所について、基本報酬を要介護度別の定額で減じる仕組みです。

看多機の基本報酬は、小規模多機能型居宅介護より高く設定されています。その差は「訪問看護を内包していること」への評価です。ところが実態として看護をほとんど提供していない事業所があれば、その評価分は根拠を失います。訪問看護体制減算は、その差額を事後的に取り戻す規定だと理解すると、金額の意味がつかめます。

減算の対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)です。ロの短期利用居宅介護費は対象外で、判定に使う利用者数からも短期利用者は除かれます。

令和6年度介護報酬改定では、この減算の枠組み自体に変更はありませんでした。看多機の報酬体系が「訪問看護をしているかどうか」を軸に組まれているという点は、改定を通じて一貫しています。

訪問看護体制減算の単位数

14 イについては、別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所については、訪問看護体制減算として、要介護状態区分が要介護1、要介護2又は要介護3である者については1月につき925単位を、要介護4である者については1月につき1,850単位を、要介護5である者については1月につき2,914単位を所定単位数から減算する。

要介護度減算額(1月)基本報酬減算後
要介護1△925単位12,447単位11,522単位
要介護2△925単位17,415単位16,490単位
要介護3△925単位24,481単位23,556単位
要介護4△1,850単位27,766単位25,916単位
要介護5△2,914単位31,408単位28,494単位

※基本報酬は同一建物に居住する者以外の場合。

減算額は小多機との差の約7割

要介護度看多機と小多機の基本報酬差訪問看護体制減算減算が差に占める割合
要介護1+1,989単位△925単位約47%
要介護3+2,122単位△925単位約44%
要介護4+3,089単位△1,850単位約60%
要介護5+4,199単位△2,914単位約69%

要介護度が上がるほど、減算が「上乗せ分の取り消し」に近づいていきます。要介護5では、看多機を名乗る根拠のうち約7割が消えるという設計です。

訪問看護体制減算の算定要件

判定基準は告示95号 第75号が定めています。3つの基準の「いずれにも適合」した場合に該当します。

七十五 看護小規模多機能型居宅介護費における訪問看護体制減算の基準
次に掲げる基準のいずれにも適合すること
イ 算定日が属する月の前三月間において、(略)利用者の総数のうち、主治の医師の指示に基づく看護サービスを提供した利用者の占める割合が百分の三十未満であること。
ロ (略)緊急時対応加算を算定した利用者の占める割合が百分の三十未満であること。
ハ (略)特別管理加算を算定した利用者の占める割合が百分の五未満であること。

指標基準判定期間
主治医の指示に基づく看護サービスを提供した利用者の割合30%未満算定日が属する月の前3月間
緊急時対応加算を算定した利用者の割合30%未満同上
特別管理加算を算定した利用者の割合5%未満同上

母集団から短期利用者を除く

条文は、利用者の総数から「複合型サービス費に係る短期利用居宅介護費を算定する者を除く」と明記しています。短期利用の受け入れが多い月に分母が膨らんで割合が下がる、という事故は起きない仕組みです。

ここは実務で取り違えやすいところです。分母は登録者。短期利用者は入れません。台帳を作るときに、短期利用者を別枠で管理しておくと計算が安定します。

「3つすべて」に該当したときだけ

もう一度確認します。1つでも基準を上回っていれば、減算には該当しません。

看護サービス提供割合緊急時対応加算特別管理加算判定
20%10%3%減算に該当
35%10%3%該当しない
20%35%3%該当しない
20%10%8%該当しない

現場感覚でいえば、いちばん動かしやすいのは1つ目の「看護サービスの提供割合30%」です。主治医の指示に基づく看護サービスを、登録者の3割に提供していればよい。医療ニーズのある方を一定数受け入れている看多機なら、通常は自然に超えます。

看護体制強化加算は同じ指標の裏返し

この減算を理解するうえで欠かせないのが、看護体制強化加算との対比です。告示95号 第78号が定める要件は、まったく同じ3項目を使っています。

指標訪問看護体制減算看護体制強化加算
看護サービスを提供した利用者の割合30%未満80%以上
緊急時対応加算を算定した利用者の割合30%未満50%以上
特別管理加算を算定した利用者の割合5%未満20%以上
金額(要介護5)△2,914単位+3,000単位(Ⅰ)/+2,500単位(Ⅱ)

要介護5の登録者1人あたり、減算と加算の間には月5,914単位(約6万円)の開きが生まれます。登録者20人の事業所なら、同じ人数を見ていても年間で1,000万円規模の差になり得るということです。

訪問看護の現場から見ると、緊急時対応加算と特別管理加算は「取れる人には取れる」加算です。指標に直結するので、算定漏れをなくすところから始めるのがいちばん早い改善策だと思います。

訪問看護体制減算の注意点

サテライト体制未整備減算が重ねてかかる

注8は、サテライト型事業所または本体事業所が注14(訪問看護体制減算)の届出をしている場合に、1月につき所定単位数の97%を算定するとしています。

つまりサテライトを持つ体制で看護の実績が乏しいと、訪問看護体制減算の定額と、97%算定の両方がかかります。サテライトを設ける計画がある事業所は、先に3指標を固めておくべきです。

注15・注16の減算とは目的が違う

看多機には、金額が同じ925/1,850/2,914単位という減算がもう1つあります。注15の減算です。混同しやすいので整理します。

条文減算の名称・内容減算額趣旨
注14訪問看護体制減算925/1,850/2,914単位(1月)看護の実績が乏しい事業所への減算
注15主治医が末期の悪性腫瘍その他厚生労働大臣が定める疾病等により訪問看護が必要と指示した場合925/1,850/2,914単位(1月)訪問看護が医療保険から給付されるための調整
注16主治医が急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護が必要と特別の指示をした場合指示日数×30/60/95単位同上

注15・注16は事業所の姿勢を問う減算ではありません。医療保険側から訪問看護が給付されるぶん、介護報酬から控除するという調整です。末期がんの方を受け入れた月は看多機の報酬が実質的に小多機水準まで下がりますが、これは事業所の落ち度ではありません。そのうえでターミナルケア加算2,500単位を算定する流れになります。

届出をしている事業所が対象という書き方

注14は「別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所については」と書かれています。減算にもかかわらず届出が前提という、やや読みにくい構造です。

実務上は、3指標が基準に該当する状態になった時点で市町村に届け出ることになります。該当しているのに届け出ずに満額請求していれば、指導・監査で返還を求められます。3か月ごとに自己点検する仕組みを持っておくのが安全です。

実務でやっておきたいこと
  • 登録者台帳から短期利用者を分けて、分母を確定させる
  • 直近3か月の「看護サービスを提供した登録者」を数える
  • 緊急時対応加算・特別管理加算の算定人数を月ごとに集計する
  • 3指標をそれぞれ割合に直し、30%・30%・5%と照合する
  • 1つでも上回っていれば減算に該当しないことを記録に残す

よくある質問

訪問看護体制減算はいくら減算されますか?

要介護1・2・3で1月925単位、要介護4で1,850単位、要介護5で2,914単位です。

3つの基準のうち1つでも該当すると減算されますか?

されません。条文は「次に掲げる基準のいずれにも適合すること」なので、3つすべてに該当した場合だけです。

いちばん回避しやすい指標はどれですか?

主治医の指示に基づく看護サービスを提供した利用者の割合です。30%以上あれば、それだけで減算に該当しなくなります。

判定はいつの実績で行いますか?

算定日が属する月の前3月間の実績です。

短期利用の利用者も割合の計算に含めますか?

含めません。条文は短期利用居宅介護費を算定する者を除くと明記しています。

短期利用居宅介護費も減算されますか?

注14は「イについては」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。ロの短期利用居宅介護費は対象外です。

看護体制強化加算とはどういう関係ですか?

同じ3指標を使っています。減算は30%未満・30%未満・5%未満、加算は80%以上・50%以上・20%以上です。

サテライトがある場合はどうなりますか?

注8により、サテライト型事業所または本体事業所が注14の届出をしている場合は、さらに所定単位数の97%で算定します。

末期がんの方に訪問看護が入った場合の減算と同じですか?

金額は同じ925/1,850/2,914単位ですが、根拠は注15で別のものです。医療保険から訪問看護が給付されるための調整であり、事業所の実績を問う減算ではありません。

特別指示が出た場合の減算はいくらですか?

注16により、指示の日数に要介護1〜3は1日30単位、要介護4は60単位、要介護5は95単位を乗じた額です。

減算に該当したら届出が必要ですか?

注14は届出を行った事業所を対象とする書き方になっています。基準に該当した場合の届出の時期や様式は市町村に確認してください。

過少サービス減算と重複しますか?

告示上、注7(70%算定)と注14は別々の規定です。重複適用の可否や計算順序については市町村に確認してください。

まとめ
  • 訪問看護体制減算は要介護1〜3で925単位、要介護4で1,850単位、要介護5で2,914単位
  • 減算するのは1月につき、対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)
  • 判定は告示95号第75号の3指標すべてに該当した場合のみ
  • ①看護サービス提供割合30%未満 ②緊急時対応加算30%未満 ③特別管理加算5%未満
  • 判定期間は算定日が属する月の前3月間
  • 1つでも上回れば減算に該当しない
  • 母集団から短期利用居宅介護費を算定する者は除く
  • 要介護5の減算額は小多機との基本報酬差の約7割にあたる
  • 看護体制強化加算は同じ3指標を80%・50%・20%以上にしたもの
  • 要介護5では減算と加算で月5,914単位の開きが生まれる
  • サテライト体制未整備減算(97%)が重ねてかかる場合がある
  • 注15・注16の減算は医療保険との調整で、目的が異なる
  • 緊急時対応加算・特別管理加算の算定漏れをなくすことが最短の改善策
参考にした情報

※本記事の単位数・判定基準は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに割合の具体的な計算方法(月ごとに算出するのか3月分を通算するのか)、月途中の登録者の扱い、減算に該当した場合の届出時期、過少サービス減算との重複適用の可否については告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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