小規模多機能型居宅介護の認知症行動・心理症状緊急対応加算とは?

小規模多機能型居宅介護の認知症行動・心理症状緊急対応加算は、1日につき200単位、利用を開始した日から起算して7日を限度に算定します。
この加算の最大の特徴は、短期利用居宅介護費(ロ)にしか算定できないことです。条文の書き出しが「ロについて」となっており、通常の登録者(イ・月単位の包括報酬)では算定できません。
小多機は本来、登録して継続的に使うサービスです。その枠組みの外側にある「短期利用」で、BPSDによる緊急の受け入れを評価するのがこの加算です。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費のホ、ロの条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 認知症行動・心理症状緊急対応加算の単位数(200単位/日、7日限度)
- 短期利用居宅介護費(ロ)でしか算定できないこと
- 「医師が判断した者」が要件であること
- 短期利用居宅介護費そのものに届出が必要であること
- 登録者(イ)では算定できない理由
- 他サービスの同名加算との違い
ちびウルフ登録している人が急にBPSDで大変になった場合は、算定できないんですか?
リハウルフ算定できません。登録者は月単位の包括報酬なので、泊まりを増やしても報酬は変わらない仕組みです。この加算が想定しているのは、登録していない人を短期利用で緊急に受け入れる場面です。在宅で限界に達した人を、地域の小多機が受け止めるという役割ですね。
小規模多機能型居宅介護の認知症行動・心理症状緊急対応加算とは?
小規模多機能型居宅介護の認知症行動・心理症状緊急対応加算は、BPSDによって在宅生活が続けられなくなった人を、短期利用で緊急に受け入れたことを評価する加算です。
BPSDが激しくなったとき、家族が直面するのは「今夜どうするか」という問題です。夜通し歩き回る、興奮が収まらない、家族に手が出る。介護保険の通常の手続きを踏む余裕はありません。
小多機は通い・訪問・泊まりを1つの事業所で提供できるサービスです。顔なじみの職員が対応できる強みがあり、環境が変わることによる混乱を抑えやすい面があります。その受け皿としての機能を評価するのがこの加算です。
認知症行動・心理症状緊急対応加算の単位数
ロについて、医師が、認知症の行動・心理症状が認められるため、在宅での生活が困難であり、緊急に指定小規模多機能型居宅介護を利用することが適当であると判断した者に対し、指定小規模多機能型居宅介護を行った場合は、利用を開始した日から起算して7日を限度として、1日につき200単位を所定単位数に加算する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単位数 | 1日につき200単位 |
| 限度 | 利用を開始した日から起算して7日 |
| 最大 | 1,400単位 |
| 対象 | ロ=短期利用居宅介護費を算定する場合のみ |
| 判断者 | 医師 |
認知症行動・心理症状緊急対応加算の算定要件
医師が3点を判断していること
- 認知症の行動・心理症状(BPSD)が認められること
- そのため在宅での生活が困難であること
- 緊急に小規模多機能型居宅介護を利用することが適当であること
ケアマネジャーや事業所、家族の判断では算定できません。受け入れの相談が来た時点で、かかりつけ医や受診先の医師の判断をどう文書で残すかを決めておく必要があります。
前提となる短期利用居宅介護費
この加算は短期利用居宅介護費(ロ)に上乗せするものです。その短期利用居宅介護費自体に、届出と施設基準が必要です。
ロについては、別に厚生労働大臣が定める基準に適合するものとして、(略)市町村長に対し届出を行った指定小規模多機能型居宅介護事業所において、指定小規模多機能型居宅介護を行った場合に、登録者の要介護状態区分に応じて、それぞれ所定単位数を算定する。
| 要介護度 | 短期利用居宅介護費(1日につき) |
|---|---|
| 要介護1 | 572単位 |
| 要介護2 | 640単位 |
| 要介護3 | 709単位 |
| 要介護4 | 777単位 |
| 要介護5 | 843単位 |
要介護3の人を7日間受け入れた場合、709単位×7日+200単位×7日=6,363単位という計算になります。
認知症行動・心理症状緊急対応加算の注意点
条文の「ロについて」という限定が、この加算の性格を決めています。
- イ=小規模多機能型居宅介護費(登録者・1月につきの包括報酬)→ 算定できない
- ロ=短期利用居宅介護費(1日につき)→ 算定できる
すでに登録している人のBPSDが悪化して泊まりが増えても、この加算は算定できません。登録者は月単位の包括報酬であり、泊まりの回数によって報酬が変わらない仕組みだからです。
緊急受入れは記録が後回しになりやすい
- 受け入れ相談の時点で、医師の判断を得る経路を確認する
- 医師の判断(日時・判断者・内容)を記録に残す
- 在宅生活が困難と判断した具体的な状況を記録する
- 利用開始日を確定し、7日目がいつかを管理表に記入する
BPSDの緊急対応は、家族が限界に達している場面で動きます。受け入れ調整と本人対応に人手が取られ、書面の整備が後回しになりがちです。受入れ当日に何を残すかを様式化しておくことをおすすめします。(運用に関する記述は筆者の実務経験にもとづく整理です)
他サービスの同名加算との違い
| サービス | 単位数 | 算定できる場面 |
|---|---|---|
| 小規模多機能型居宅介護 | 200単位/日・7日限度 | 短期利用居宅介護費のみ |
| グループホーム | 200単位/日・7日限度 | 短期利用のみ |
| ショートステイ | 200単位/日・7日限度 | — |
| 特養 | 200単位/日・7日限度 | — |
小多機とグループホームは「短期利用に限る」という共通の制約があります。どちらも本来は継続利用を前提としたサービスだからです。
7日を超えた場合
算定できるのは利用開始日から7日までです。8日目以降は短期利用居宅介護費のみの算定になります。短期利用そのものは継続できますが、日数の上限など短期利用居宅介護費の要件を確認してください。
認知症行動・心理症状緊急対応加算のQ&A
登録者にも算定できますか?
できません。条文は「ロについて」と限定しており、短期利用居宅介護費を算定する場合のみが対象です。
ケアマネジャーの判断で算定できますか?
できません。医師が、BPSDのため在宅生活が困難で緊急利用が適当と判断していることが要件です。
7日を超えて算定できますか?
できません。利用を開始した日から起算して7日が限度です。
短期利用居宅介護費の届出は必要ですか?
必要です。短期利用居宅介護費(ロ)自体が、基準に適合するものとして市町村長への届出を行った事業所で算定できるものです。
若年性認知症利用者受入加算と併算定できますか?
若年性認知症利用者受入加算は「イについて」の加算で、ニ(認知症加算)を算定している場合は算定しないと定められています。組み合わせは条文と市町村の解釈を確認してください。
どんな記録を残せばよいですか?
様式の定めはありません。医師の判断の日時・内容、在宅生活が困難と判断した具体的な状況を記録に残してください。
グループホームの同名加算と同じですか?
単位数と7日限度という枠組みは共通で、短期利用に限られる点も同じです。
届出先はどこですか?
市町村長です。小多機は地域密着型サービスのため、指定・指導・届出はすべて市町村が所管します。
- 認知症行動・心理症状緊急対応加算は1日200単位、利用開始日から7日が限度
- 算定できるのは短期利用居宅介護費(ロ)のみ
- 登録者(イ・月単位の包括報酬)では算定できない
- 要件は、医師がBPSDのため在宅生活が困難で緊急利用が適当と判断していること
- ケアマネジャーや家族の判断では算定できない
- 前提として短期利用居宅介護費の届出と基準適合が必要
- 短期利用居宅介護費は要介護1で572単位、要介護5で843単位
- グループホームと同じく「短期利用に限る」制約がある
- 届出先は市町村長
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 小規模多機能型居宅介護費のホ(認知症行動・心理症状緊急対応加算)、ロ(短期利用居宅介護費)、注3(厚生労働省法令等データベース)
- 同 別表 認知症対応型共同生活介護費の注7(比較のため)(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、加算の解釈や届出の運用が自治体によって異なる場合があります。判断を行う医師の範囲、日数の数え方、短期利用居宅介護費の要件については所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




