グループホームの高齢者虐待防止措置未実施減算とは?

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の高齢者虐待防止措置未実施減算は、所定単位数の1%減です。令和6年度改定で全サービスに導入されました。
減算の対象になるのは虐待が起きたときではありません。基準(指定地域密着型サービス基準第108条で準用する第3条の38の2)が求める①委員会の定期開催、②指針の整備、③研修の定期実施、④担当者の配置——この4つの措置を講じていない場合です。
4つ目の「担当者を置くこと」が最も見落とされます。委員会も指針も研修も整えたのに、担当者を明示していないために指摘を受ける事業所があります。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)認知症対応型共同生活介護費の注3、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第3条の38の2の条文を確認して整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算が1%であること
- 減算の対象が「虐待の発生」ではなく「措置の未実施」であること
- 求められる4つの措置(委員会・指針・研修・担当者)
- 委員会はテレビ電話装置等を活用できること
- 身体拘束廃止未実施減算(10%)との違い
- 本体・短期利用で率の区別がないこと
- 介護予防(要支援2)でも同じ1%であること
- 身体拘束の委員会と虐待防止の委員会をどう整理するか
ちびウルフ身体拘束の委員会と虐待防止の委員会は、別々に開かないといけませんか?
リハウルフ条文は別々の措置として定めていますが、開催の場を分けろとまでは書いていません。実務では同じ会議のなかで議題を分け、議事録上で「身体的拘束等の適正化に関する検討」「虐待の防止に関する検討」を明確に分けて記録している事業所が多いです。ただし身体拘束の委員会は3か月に1回以上という頻度要件があるので、そこに合わせるのが安全です。(運用の可否は市町村に確認してください)
減算率は1%
告示126号の注3は、次のとおりです。
別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
身体拘束廃止未実施減算と違い、本体(イ)と短期利用(ロ)で率の区別はありません。どちらも1%です。
| 減算 | 本体(イ) | 短期利用(ロ) |
|---|---|---|
| 身体拘束廃止未実施減算 | 10% | 1% |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 1% | 1% |
| 業務継続計画未策定減算 | 3% | 3% |
求められるのは4つの措置
基準(第3条の38の2)は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次の措置を講じることを求めています。
一 当該事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
二 当該事業所における虐待の防止のための指針を整備すること。
三 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
四 前三号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。
| 措置 | ポイント |
|---|---|
| 委員会 | 定期的に開催。テレビ電話装置等の活用可。結果を全従業者に周知徹底 |
| 指針 | 虐待の防止のための指針を整備 |
| 研修 | 定期的に実施 |
| 担当者 | 上記3つを適切に実施するための担当者を配置 |
4つ目の措置は、担当者の氏名・職名を明示し、役割を文書で定めておくことで示せます。「管理者が兼ねている」という説明だけでは、実施体制として弱いことがあります。運営規程や委員会規程に担当者の位置づけを記載し、職員に周知しておいてください。
「定期的に」の頻度は明示されていない
身体拘束の委員会は「三月に一回以上」と明記されているのに対し、虐待防止の委員会と研修は「定期的に」としか書かれていません。
そのため実務では、身体拘束の委員会に合わせて3か月に1回以上、研修は年1回以上(新規採用時を含む)とする運用が多く見られます。頻度の考え方は自治体が示している場合があるので、所在市町村に確認してください。
虐待防止と身体拘束は「地続き」
GHは認知症のある人だけが暮らす場です。BPSDへの対応に行き詰まったとき、身体拘束と虐待の距離は近づきます。
- 制止の言葉が強くなる
- 訴えを聞き流す時間が増える
- 「危ないから」を理由に行動を制限する
- 職員間で特定の入居者への否定的な言い方が共有される
こうした変化は、記録に残る前に現場の空気として現れます。委員会や研修が形式で終わっているかどうかは、こうした場面を議題に乗せられるかで決まります。(この整理は筆者の実務経験にもとづくもので、制度上の定めではありません)
介護予防(要支援2)でも同じ1%
介護予防認知症対応型共同生活介護費(平成18年厚生労働省告示第128号)の注3にも同じ規定があり、基準は告示95号第127号の4の2が定めています。
よくある質問
虐待が発生しなければ減算されませんか?
発生の有無ではなく、委員会・指針・研修・担当者の4つの措置を講じているかどうかで判断されます。措置が欠けていれば減算対象です。
委員会の頻度は決まっていますか?
条文は「定期的に開催」としており、頻度の明示はありません。身体拘束の委員会(3か月に1回以上)に合わせる運用が多く見られます。市町村の考え方を確認してください。
身体拘束の委員会と一緒に開催してもよいですか?
条文は別々の措置として定めていますが、開催の場を分けることまでは求めていません。議題と議事録を分けて記録する運用が実務では見られます。可否は市町村に確認してください。
担当者に資格は必要ですか?
条文に資格の定めはありません。措置を適切に実施するための担当者を置き、その役割を明確にしておくことが求められます。
短期利用も1%ですか?
そのとおりです。身体拘束廃止未実施減算と異なり、本体・短期利用で率の区別はありません。
研修は年何回必要ですか?
「定期的に実施」としか定められていません。年1回以上に加え、新規採用時に実施する運用が一般的です。
指針に決まった様式はありますか?
様式の定めはありません。市町村が例示している場合はそれを参考にしてください。
要支援2の入居者も同じ率ですか?
同じです。介護予防認知症対応型共同生活介護費でも1%です。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算は所定単位数の1%減
- 令和6年度改定で全サービスに導入された
- 減算の対象は虐待の発生ではなく、措置の未実施
- 求められる措置は、委員会の定期開催、指針の整備、研修の定期実施、担当者の配置の4つ
- 委員会はテレビ電話装置等を活用できる。結果は全従業者に周知徹底
- 「担当者を置く」は書面で示せるようにしておく
- 委員会・研修の頻度は条文に明示がないため、市町村の考え方を確認する
- 本体・短期利用で率の区別はない
- 介護予防(要支援2)でも同じ1%
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 認知症対応型共同生活介護費の注3(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第3条の38の2(虐待の防止)、第108条(準用)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第58号の4の2、第127号の4の2(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)別表 介護予防認知症対応型共同生活介護費の注3(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の減算率・基準は、厚生労働省の告示・省令にもとづいて整理したものです。実際の取扱いにあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。グループホームは地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、運用が自治体によって異なる場合があります。委員会の開催頻度、身体拘束の委員会との併催の可否、研修の回数については所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。現場の状況に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




