特養の特別通院送迎加算は1月につき594単位。令和6年度介護報酬改定で新設されました。

透析に通う入所者を、施設職員が月12回以上送迎した場合に算定できます。ポイントは3つ。①対象は透析だけ、②月12回以上という回数要件、③届出の規定がない——体制を整えるタイプの加算ではなく、実際に送迎した実績で決まる加算です。

そして通知が明確に線を引いています。「透析以外の目的による通院送迎は当該加算のための回数に含めない」。内科の定期受診や整形外科への通院を足して12回にすることはできません。

この記事では、指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準(厚生省告示第21号)、老企第40号、令和6年度介護報酬改定における改定事項についてを突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 単位数は1月につき594単位であること
  • 令和6年度改定で新設された加算であること
  • 対象は透析を要する入所者に限られること
  • 透析以外の通院は回数に含めないこと
  • 「やむを得ない事情」として通知が挙げる具体例
  • 月12回以上という回数要件の実務上の意味
  • 週3回の透析でも月によって12回に届かない場合があること
  • 体制の届出の規定が置かれていないこと
  • 対象施設は特養と地域密着型特養であること
  • 算定に必要な記録

特別通院送迎加算とは?単位数は594単位

特別通院送迎加算とは、透析が必要な入所者を、施設職員が月12回以上送迎した場合に算定できる加算です。

項目内容
単位数594単位
算定の単位1月につき
対象透析を要する入所者
回数要件1月に12回以上
対象施設介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
新設令和6年度介護報酬改定

ワ 特別通院送迎加算 594単位

注 透析を要する入所者であって、その家族や病院等による送迎が困難である等やむを得ない事情があるものに対して、1月に12回以上、通院のため送迎を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。

体制ではなく「実績」で決まる加算

特養の加算の多くは「厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして届出を行った施設が」という書き出しで始まります。しかし特別通院送迎加算の注には、その文言がありません。

人員配置も、研修修了者も、体制の届出も不要。該当する入所者に対して、実際に月12回以上送迎した月に算定する——それだけの構造です。

改定の趣旨——透析患者の受入れ負担を軽減する

1.(3)⑰ 介護老人福祉施設等における透析が必要な者に対する送迎の評価

透析が必要な者の受入れに係る負担を軽減する観点から、定期的かつ継続的に透析を必要とする入所者であって、家族や病院等による送迎が困難である等やむを得ない事由がある者について、施設職員が月12回以上の送迎を行った場合を評価する新たな加算を設ける。

ちびウルフちびウルフ

透析の人は特養に入りにくい、と聞いたことがあります。

リハウルフリハウルフ

実際そうなんだ。週3回、決まった時間に透析クリニックへ送り迎えする——特養にとってはかなりの負担になる。

職員が車を出せば、その時間は現場から抜ける。往復の待機時間まで含めると半日仕事になることもある。それが週3回、毎週続く。受入れをためらう理由としては、正直よくわかる。

だから改定資料も「透析が必要な者の受入れに係る負担を軽減する観点から」とはっきり書いている。この加算は、入所の門戸を広げるための施策なんだ。

ただ594単位=約5,940円。月12回送れば1回あたり約495円。コストを完全に埋める額ではないというのが率直なところだと思う。

「やむを得ない事情」の具体例

老企第40号が、算定できる場面を具体的に示しています。

特別通院送迎加算は、施設外において透析が必要な入所者が、家族等による送迎ができない、送迎サービスを実施していない病院又は診療所を利用している場合等のやむを得ない事情により、施設職員が送迎を行った場合に算定できるものであり、透析以外の目的による通院送迎は当該加算のための回数に含めない。

やむを得ない事情の例内容
①家族等による送迎ができない家族が遠方、就労等で対応できない場合など
②送迎サービスを実施していない医療機関を利用している通院先のクリニックに送迎便がない
  • 透析が施設外で行われていること
  • 上記のようなやむを得ない事情があること
  • 施設職員が送迎を行うこと
  • 回数に数えるのは透析目的の通院のみ
他科受診の送迎は合算できない

通知は「透析以外の目的による通院送迎は当該加算のための回数に含めない」と明記しています。

透析が月10回、内科の定期受診が月2回——合わせて12回だから算定できる、とはなりません。透析だけで12回に達している必要があります。

送迎記録に「通院目的」の欄を設け、透析かそれ以外かを区別して記録してください。

月12回以上——週3回の透析でも割れることがある

透析は週3回が標準的です。単純計算では月12〜15回になりますが、月によっては12回に届かないことがあります。

状況透析回数の目安算定
週3回×4週の月12回前後12回に達すれば可
週3回×5週にかかる月13〜15回
月の途中で入所した月12回未満になりやすい不可の可能性
入院により透析を中断した月12回未満になりやすい不可の可能性
家族が一部を送迎した月施設送迎は12回未満不可の可能性
数えるのは「施設職員が送迎した回数」

条文は「施設職員が送迎を行った場合」と読める構造です。家族が送迎した回はカウントできません。

週3回の透析でも、月に2回だけ家族が連れて行ったなら、施設送迎は10回。その月は算定できないことになります。

「毎月必ず算定できる加算」ではなく、月ごとに回数を数えて判定する加算だと理解してください。

入退所月・入院月に注意

月の途中で入所した場合や、体調不良で入院した月は、施設からの送迎回数が減ります。その月は12回に届かず、算定できない可能性が高いことを、請求担当と共有しておいてください。

逆に、入院から戻った月に週3回のペースを取り戻せば、翌月から再び算定できます。算定を止めた月があっても、要件を満たせば再開できる加算です。

対象施設は特養と地域密着型特養

施設算定
介護老人福祉施設(特養)
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
介護老人保健施設(老健)対象外
介護医療院対象外

改定資料が対象として挙げているのは介護老人福祉施設と地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の2つです。老健や介護医療院にはこの加算がありません。

老健や介護医療院は医師・看護職員の配置が手厚く、医療との関わり方が特養とは異なります。「配置医師が中心で、施設内に医療を持たない特養」だからこその加算という位置づけと読めます。

他の加算との併算定に制限はない

特別通院送迎加算の注には、他の加算との排他規定が置かれていません。看護体制加算、配置医師緊急時対応加算、日常生活継続支援加算など、特養の他の加算といずれも併算定できます。

加算併算定
看護体制加算
配置医師緊急時対応加算
日常生活継続支援加算
科学的介護推進体制加算
療養食加算

透析を受けている入所者は、腎臓病食など療養食の対象になることも少なくありません。療養食加算(6単位/回、1日3回まで)とあわせて算定できるため、透析患者の受入れが施設収益に与える影響は、594単位だけで測るものではありません。

送迎体制をどう組むか

この加算を取りにいくかどうかは、週3回の送迎を職員体制のなかに組み込めるかで決まります。

  • 送迎の曜日・時間帯を固定できるか(透析は通常、曜日と時間帯が決まっている)
  • 往復の間、職員が現場から抜ける時間をどう埋めるか
  • 透析中は待機するのか、いったん戻るのか
  • 通院先が複数の入所者で同じなら、まとめて送迎できないか
曜日が固定されているのが救い

透析は月水金・火木土のように曜日と時間帯が固定されているのが通常です。突発的な受診と違い、あらかじめシフトに組み込めるのが運営上の利点になります。

同じクリニックに通う入所者が複数いれば、1回の送迎でまとめられる可能性もあります。その場合でも、加算は入所者ごとに算定できる(1月につき594単位)ため、効率は大きく上がります。

算定に必要な記録

この加算について、通知は記録の様式を定めていません。しかし「月12回以上」「透析目的」「施設職員が送迎」という3点を後から示せる必要があります。

  • 送迎の日付(月ごとの回数を数えられる形で)
  • 通院の目的(透析かそれ以外かを区別)
  • 送迎した者(施設職員か家族等か)
  • やむを得ない事情(家族が送迎できない理由、通院先に送迎便がないこと等)
4つ目を残していない施設が多い

①〜③は送迎記録の様式に組み込めば自然に残ります。抜けやすいのが④「やむを得ない事情」の記録です。

条文は「その家族や病院等による送迎が困難である等やむを得ない事情があるもの」を対象としています。なぜ施設が送迎しているのかを、入所時のアセスメントや施設サービス計画に書き残してください。

家族の状況や通院先の送迎便の有無は、時間とともに変わります。年に1回程度は見直して、記録を更新しておくのが安全です。

算定にあたっての実務ステップ

  • 透析を受けている入所者を把握する
  • 通院先の医療機関に送迎サービスがあるかを確認する
  • 家族等による送迎が可能かを確認し、困難な理由を記録する
  • 「やむを得ない事情」を施設サービス計画等に記載する
  • 送迎記録に「通院目的」と「送迎した者」の欄を設ける
  • 月ごとに、施設職員が透析目的で送迎した回数を集計する
  • 12回以上に達した月に594単位を算定する
  • 12回未満の月は算定しない(入退所月・入院月に注意)
  • 家族の状況や通院先の体制が変わっていないか、定期的に見直す

5つ目と6つ目が実務の要です。透析目的の施設送迎だけを数えられる記録様式を先に作っておけば、月次の判定は集計するだけで済みます。

よくある質問

単位数はいくらですか?

1月につき594単位です。

いつ新設された加算ですか?

令和6年度介護報酬改定です。介護老人福祉施設と地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護が対象です。

透析以外の通院でも算定できますか?

できません。通知は「透析以外の目的による通院送迎は当該加算のための回数に含めない」としています。

透析10回+内科2回で12回になれば算定できますか?

できません。透析目的の送迎だけで12回以上に達している必要があります。

「やむを得ない事情」とは何ですか?

通知は「家族等による送迎ができない、送迎サービスを実施していない病院又は診療所を利用している場合等」を挙げています。

家族が送迎した回数も数えられますか?

この加算は施設職員が送迎を行った場合を評価するものです。家族が送迎した回については、施設職員による送迎回数には含まれません。

月12回に届かない月はどうなりますか?

その月は算定できません。入所月・退所月や入院があった月は12回未満になりやすいため注意が必要です。

いったん算定できなくなったら、その後も算定できませんか?

月ごとに判定する加算です。要件を満たした月には算定できます。

届出は必要ですか?

告示の注に体制の届出を求める規定は置かれていません。ただし請求上の取扱いは指定権者にご確認ください。

老健や介護医療院でも算定できますか?

できません。改定資料が対象として挙げているのは介護老人福祉施設と地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護です。

施設内で透析を行っている場合は?

通知は「施設外において透析が必要な入所者」を対象としています。送迎を評価する加算であるため、施設内で完結する場合は想定されていません。

どんな記録を残せばよいですか?

様式の定めはありませんが、送迎の日付、通院の目的(透析かどうか)、送迎した者、やむを得ない事情を残しておくことをおすすめします。

まとめ
  • 特養の特別通院送迎加算は1月につき594単位
  • 令和6年度介護報酬改定で新設された
  • 対象は介護老人福祉施設と地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 老健や介護医療院には設けられていない
  • 体制の届出を求める規定は置かれていない
  • 対象は透析を要する入所者
  • 施設外で透析を受けていることが前提
  • やむを得ない事情があることが要件
  • 例は家族等による送迎ができない、通院先に送迎サービスがない場合
  • 施設職員が送迎を行うこと
  • 1月に12回以上の送迎が必要
  • 透析以外の目的の通院送迎は回数に含めない
  • 他科受診と合算して12回にすることはできない
  • 家族が送迎した回は施設職員の送迎回数に含まれない
  • 入所月・退所月・入院月は12回未満になりやすい
  • 月ごとに判定するため、算定できない月があってもよい
  • 594単位は月12回なら1回あたり約495円(1単位10円換算)
  • 記録は日付・通院目的・送迎者・やむを得ない事情の4点
  • 「やむを得ない事情」の記録が抜けやすい
  • 家族の状況や通院先の体制は定期的に見直す
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、老企第40号の留意事項通知および令和6年度介護報酬改定の資料にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。「やむを得ない事情」に当たるかの判断、送迎回数の数え方(家族が送迎した回の扱いを含む)、記録の様式については通知に詳細な定めがない部分があり、指定権者によって取扱いが異なる可能性があります。判断に迷う場合は事前にご確認ください。本文中の月あたりの透析回数は一般的な週3回の場合を前提とした目安であり、実際の回数は主治医の指示によります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。記録様式や運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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