訪問介護の地域加算3つを比較|特別地域15%・小規模事業所10%・中山間5%の違い

訪問介護には、地域に着目した加算が3つあります。特別地域訪問介護加算15%/中山間地域等における小規模事業所加算10%/中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算5%。名前が似ていて混同されがちですが、判定するものがまったく違います。
前の2つは事業所がどこにあるか。最後のひとつだけが利用者がどこに住んでいるかです。しかも3つとも、特定事業所加算(Ⅴ)を算定していると算定できません。
そして意外に知られていないのが端数処理。この3つは、1回ごとに計算するのではなく、月の対象単位数を合計してから割合を乗じます。通常の加算と計算順序が違います。
この記事では、指定居宅サービス介護給付費単位数表(厚生省告示第19号)訪問介護費 注13〜注15、厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号)、老企第36号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 3つの地域加算の加算率と、判定するものの違い
- 特別地域訪問介護加算はサテライト事業所単位で判定すること
- 小規模事業所加算の「1月当たり延訪問回数200回以下」という施設基準
- 訪問介護では当分の間「概ね200回」が400回程度を想定していること
- その他地域以外に所在していても当分の間算定できること
- 小規模事業所加算は利用者への事前説明と同意が必要なこと
- 中山間地域等居住者への加算は通常の事業の実施地域を越えることが要件
- この加算を算定すると交通費を受け取れないこと
- 3つとも特定事業所加算(Ⅴ)とは併算定できないこと
- 端数処理が通常の加算と違うこと(計算例つき)
3つの地域加算を一覧で整理する
| 加算 | 加算率 | 何を判定するか | 届出 |
|---|---|---|---|
| 特別地域訪問介護加算(注13) | 15% | 事業所の所在地 | 必要 |
| 中山間地域等における小規模事業所加算(注14) | 10% | 事業所の所在地+事業規模 | 必要 |
| 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算(注15) | 5% | 利用者の居住地+実施地域を越えること | 規定なし |
注13と注14は「別に厚生労働大臣が定める地域に所在し」——主語は事業所です。
注15だけが「別に厚生労働大臣が定める地域に居住している利用者に対して」——主語は利用者です。
したがって、都市部の事業所が中山間地域に住む利用者へ訪問する場合は注15、離島の事業所が近隣の利用者へ訪問する場合は注13というように、成り立つ場面がまったく異なります。
特別地域訪問介護加算15%——サテライト単位で判定する
別に厚生労働大臣が定める地域に所在し、かつ、(中略)届出を行った指定訪問介護事業所(その一部として使用される事務所が当該地域に所在しない場合は、当該事務所を除く。)又はその一部として使用される事務所の訪問介護員等が指定訪問介護を行った場合は、特別地域訪問介護加算として、1回につき所定単位数の100分の15に相当する単位数を所定単位数に加算する。ただし、注10(5)を算定している場合は、算定しない。
カッコ書きが読みにくいのですが、老企第36号が具体的に説明しています。
注13の「その一部として使用される事務所」とは、待機や道具の保管、着替え等を行う出張所等(サテライト事業所)を指し、例えば、本体の事業所が離島等以外に所在し、サテライト事業所が離島等に所在する場合、本体事業所を業務の本拠とする訪問介護員等による訪問介護は加算の対象とならず、サテライト事業所を業務の本拠とする訪問介護員等による訪問介護は加算の対象となるものであること。
サテライト事業所のみが離島等に所在する場合には、当該サテライト事業所を本拠とする訪問介護員等を明確にするとともに、当該サテライト事業所からの提供した具体的なサービスの内容等の記録を別に行い、管理すること。
- 判定は事業所単位ではなく、訪問介護員等の「業務の本拠」単位
- 本体が離島等以外、サテライトが離島等 → サテライト所属の職員の訪問だけが対象
- その場合、本拠となる職員を明確にし、記録を別管理することが求められる
ちびウルフ同じ事業所なのに、職員によって加算が付いたり付かなかったりするんですか?
リハウルフそうなんだ。この加算が評価しているのは「離島等から出発して訪問する移動コスト」だから、本拠がどこかで判断する。
だから実務上は「どの職員がサテライトを本拠にしているか」を先に決めて、名簿にしておく必要がある。あとから「この訪問はサテライトの職員が行きました」と言っても、記録が別管理になっていなければ説明できない。
記録の別管理は、通知が明示的に求めている事項だからね。ここを整えていないと、届け出ていても算定根拠を示せない。
中山間地域等における小規模事業所加算10%——200回以下という規模要件
別に厚生労働大臣が定める地域に所在し、かつ、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして、(中略)届出を行った指定訪問介護事業所(中略)の訪問介護員等が指定訪問介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の10に相当する単位数を所定単位数に加算する。ただし、注10(5)を算定している場合は、算定しない。
「厚生労働大臣が定める施設基準」は、平成27年厚生労働省告示第96号に置かれています。
一 (中略)訪問介護費の注14に係る施設基準
一月当たり延べ訪問回数が二百回以下の指定訪問介護事業所であること。
「概ね200回」は400回程度を想定している
ここが最大の論点です。老企第36号に、条文からは読み取れない緩和規定があります。
② 延訪問回数は前年度(3月を除く。)の1月当たりの平均延訪問回数をいうものとする。
③ 前年度の実績が6月に満たない事業所(新たに事業を開始し、又は再開した事業所を含む。)については、直近の3月における1月当たりの平均延訪問回数を用いるものとする。したがって、新たに事業を開始し、又は再開した事業者については、4月目以降届出が可能となるものであること。平均延訪問回数については、毎月ごとに記録するものとし、所定の回数を上回った場合については、直ちに(中略)届出を提出しなければならない。
④ 訪問介護費においては、②及び③の規定にかかわらず、当分の間、前年度のいずれかの月における総訪問回数が概ね200回以下である場合であっても算定できるものとする。なお、「概ね200回」は400回程度を想定しており、例えば、前年度の平均延訪問回数600回以下の事業所等も対象となり得るものである。
⑤ 訪問介護費においては、当分の間、(中略)その他地域以外の地域に所在する指定訪問介護事業所であっても算定できるものとする。
⑥ 当該加算を算定する事業所は、その旨について利用者に事前に説明を行い、同意を得てサービスを行う必要があること。
施設基準は「1月当たり延べ訪問回数200回以下」。しかし訪問介護費については、当分の間、「概ね200回」を400回程度として扱い、前年度の平均延訪問回数600回以下の事業所も対象となり得ると通知が明記しています。
月600回といえば、1日あたり20回程度。決して極小規模の事業所だけの加算ではありません。中山間地域等に所在する事業所は、一度実績を計算してみる価値があります。
また⑤により、地域区分が「その他地域以外」であっても当分の間は算定できます。
- 原則は前年度(3月を除く)の1月当たり平均延訪問回数
- 前年度実績6月未満なら直近3月の平均。新規開設は4月目以降に届出可
- 毎月ごとに記録し、回数を上回ったら直ちに届出
- 当分の間、平均600回以下でも対象となり得る
- 利用者への事前説明と同意が必要
最後の⑥は、他の2つの加算にはない要件です。利用者の自己負担が10%増える加算なので、事前の説明と同意が明示的に求められています。
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算5%——利用者側で判定
指定訪問介護事業所の訪問介護員等が、別に厚生労働大臣が定める地域に居住している利用者に対して、通常の事業の実施地域を越えて、指定訪問介護を行った場合は、1回につき所定単位数の100分の5に相当する単位数を所定単位数に加算する。ただし、注10(5)を算定している場合は、算定しない。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 利用者の居住地 | 厚生労働大臣が定める地域(中山間地域等) |
| 提供の態様 | 通常の事業の実施地域を越えて行うこと |
2つ目が要件の核心です。中山間地域等に住んでいても、通常の事業の実施地域の範囲内であれば算定できません。「実施地域の外まで足を延ばした」ことが評価の対象だからです。
この加算を算定すると交通費を受け取れない
注15の加算を算定する利用者については、指定居宅サービス基準第20条第3項に規定する交通費の支払いを受けることはできないこととする。
通常の事業の実施地域を越えた訪問については、運営基準上、利用者から交通費の支払いを受けることができます。しかしこの加算を算定する場合は、交通費を受け取れません。
つまり「所定単位数の5%を加算する」か「交通費を実費で受け取る」かの二者択一です。移動距離が長く実費が大きい場合は、交通費を受け取ったほうが事業所にとって有利になることもあります。
利用者の負担という観点でも、5%の1割(または2割・3割)負担と交通費実費のどちらが軽いかは変わります。ケアマネジャーと相談のうえ、事前に決めておくべき事項です。
3つとも特定事業所加算(Ⅴ)とは併算定できない
注13・注14・注15のいずれにも、「ただし、注10(5)を算定している場合は、算定しない」というただし書きが付いています。注10(5)とは特定事業所加算(Ⅴ)(所定単位数の3%)です。
| 加算 | 加算率 | 特定事業所加算(Ⅴ)との併算定 |
|---|---|---|
| 特別地域訪問介護加算 | 15% | 不可 |
| 中山間地域等における小規模事業所加算 | 10% | 不可 |
| 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 5% | 不可 |
特定事業所加算(Ⅴ)は、中山間地域等に居住する利用者への継続的なサービス提供体制を評価する区分です。通知は、その趣旨をこう説明しています。
中山間地域等において、地域資源等の状況により、やむを得ず移動距離等を要し、事業運営が非効率にならざるを得ない状況の中、指定訪問介護事業所が利用者へ継続的なサービス提供体制を構築していることについて評価するものである。
評価している対象が重なるため、二重取りを避ける設計になっています。どちらが有利かは加算率で比べれば明らかで、特別地域15%・小規模事業所10%のほうが特定事業所加算(Ⅴ)3%より大きい——ただし特定事業所加算は他の区分(Ⅰ)20%・(Ⅱ)(Ⅲ)10%もあるため、事業所全体の設計として検討してください。
端数処理が違う——月の合計に割合を乗じる
実務でもっとも間違えやすいのが計算方法です。老企第36号の通則が、明確に区別しています。
単位数の算定については、基本となる単位数に加減算の計算(何らかの割合を乗ずる計算に限る。)を行う度に、小数点以下の端数処理(四捨五入)を行っていくこととする。つまり、絶えず整数値に割合を乗じていく計算になる。
ただし、特別地域加算等の支給限度額管理対象外となる加算(中略)を算定する場合等については、対象となる単位数の合計に当該加減算の割合を乗じて、当該加減算の単位数を算定することとする。
通知が挙げている計算例を並べると、違いがはっきりします。
| ケース | 計算 |
|---|---|
| 通常の加算(夜間・早朝25%+特定事業所加算Ⅳ3%) | 387×1.25=483.75→484単位 484×1.03=498.52→499単位 ※387×1.25×1.03=498.2625として四捨五入するのではない |
| 特別地域加算(月6回・15%) | 387×6回=2,322単位 2,322×0.15=348.3→348単位 |
特別地域加算等は、1回ごとに15%を乗じて四捨五入するのではなく、月の対象単位数を合計してから15%を乗じます。
1回あたりでは数単位の差でも、月間・年間では無視できない差になります。請求ソフトが正しく処理していれば問題ありませんが、手計算で確認する場合は計算順序に注意してください。
算定にあたっての実務ステップ
- 事業所(本体・サテライトそれぞれ)の所在地が、厚生労働大臣が定める地域に該当するかを確認する
- 該当する場合、特別地域訪問介護加算(15%)を届け出る
- サテライトのみが該当する場合は、そのサテライトを本拠とする職員を明確にし、記録を別管理する
- 中山間地域等に所在する場合は、前年度(3月を除く)の1月当たり平均延訪問回数を算出する
- 200回を超えていても、当分の間の緩和(平均600回以下も対象となり得る)に該当しないか確認する
- 小規模事業所加算を算定する場合は、利用者に事前に説明し、同意を得る
- 平均延訪問回数を毎月記録し、回数を上回ったら直ちに届け出る
- 中山間地域等に居住する利用者へ、通常の事業の実施地域を越えて訪問する場合は5%の加算を検討する
- その際、加算を取るか交通費を受け取るかをケアマネジャーと調整する
- 特定事業所加算(Ⅴ)を算定している場合は、3つとも算定できないことを確認する
- 請求時、月の対象単位数の合計に割合を乗じる計算になっているかを確認する
5つ目が、この記事でいちばん伝えたい点です。「200回を超えているから対象外」と判断する前に、通知の緩和規定を確認してください。
よくある質問
3つの地域加算の違いは何ですか?
特別地域訪問介護加算(15%)と中山間地域等における小規模事業所加算(10%)は事業所の所在地で判定し、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算(5%)は利用者の居住地で判定します。
サテライト事業所だけが離島にある場合はどうなりますか?
サテライト事業所を業務の本拠とする訪問介護員等による訪問だけが加算の対象になります。本体事業所を本拠とする職員の訪問は対象外です。
サテライトで算定する場合に必要なことは?
当該サテライト事業所を本拠とする訪問介護員等を明確にするとともに、そのサテライト事業所から提供した具体的なサービスの内容等の記録を別に行い、管理することが求められています。
小規模事業所加算の規模要件は何回ですか?
施設基準は1月当たり延べ訪問回数200回以下です。ただし訪問介護費については、当分の間、「概ね200回」は400回程度を想定し、前年度の平均延訪問回数600回以下の事業所等も対象となり得るとされています。
開設したばかりでも届け出られますか?
前年度の実績が6月に満たない事業所は直近3月の平均を用いることとされ、新規開設は4月目以降に届出が可能です。
訪問回数が増えたらどうすればよいですか?
平均延訪問回数を毎月記録し、所定の回数を上回った場合は直ちに届出を提出しなければなりません。
小規模事業所加算に利用者の同意は必要ですか?
必要です。通知は「その旨について利用者に事前に説明を行い、同意を得てサービスを行う必要がある」としています。
中山間地域に住んでいれば5%の加算は必ず算定できますか?
できません。通常の事業の実施地域を越えて訪問介護を行った場合が要件です。実施地域の範囲内であれば算定できません。
5%の加算と交通費は両方もらえますか?
もらえません。この加算を算定する利用者については、指定居宅サービス基準第20条第3項に規定する交通費の支払いを受けることはできないとされています。
特定事業所加算と併算定できますか?
特定事業所加算(Ⅴ)を算定している場合は、3つの地域加算はいずれも算定できません。
計算方法は他の加算と同じですか?
違います。特別地域加算等の支給限度額管理対象外となる加算は、1回ごとに割合を乗じるのではなく、対象となる単位数の合計に割合を乗じて算定します。
地域区分が「その他地域以外」でも小規模事業所加算を算定できますか?
訪問介護費については、当分の間、その他地域以外の地域に所在する事業所であっても算定できるとされています。
- 訪問介護の地域加算は3つある
- 特別地域訪問介護加算は15%、事業所の所在地で判定する
- 中山間地域等における小規模事業所加算は10%、所在地+事業規模で判定する
- 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算は5%、利用者の居住地で判定する
- 特別地域加算はサテライト事業所単位(職員の業務の本拠)で判定する
- サテライトのみが該当する場合は本拠職員の明確化と記録の別管理が必要
- 小規模事業所加算の施設基準は1月当たり延べ訪問回数200回以下
- 判定は前年度(3月を除く)の1月当たり平均延訪問回数
- 前年度実績6月未満は直近3月の平均、新規開設は4月目以降に届出可
- 当分の間「概ね200回」は400回程度を想定している
- 前年度の平均延訪問回数600回以下の事業所も対象となり得る
- 当分の間、その他地域以外に所在していても算定できる
- 平均延訪問回数は毎月記録し、上回ったら直ちに届出
- 小規模事業所加算は利用者への事前説明と同意が必要
- 5%の加算は通常の事業の実施地域を越えることが要件
- 実施地域の範囲内では算定できない
- 5%の加算を算定する場合、交通費の支払いを受けられない
- 3つとも特定事業所加算(Ⅴ)とは併算定できない
- 端数処理は月の対象単位数の合計に割合を乗じる
- 1回ごとに割合を乗じて四捨五入する通常の加算とは計算順序が違う
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号) 訪問介護費 注10・注13・注14・注15(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号) 第1号
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス等に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号) 第一 1(1)算定上における端数処理について、訪問介護費(14)特定事業所加算について、(17)特別地域訪問介護加算について、(18)注14の取扱い、(19)注15の取扱い
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号) 第20条第3項(利用料等の受領)、第29条第5号(通常の事業の実施地域)
※本記事の加算率・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第36号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。対象となる地域(特別地域・中山間地域等)は厚生労働大臣が定める告示で市町村等を指定して列挙されており、自事業所や利用者の住所が該当するかは必ず指定権者にご確認ください。「当分の間」とされている緩和規定の取扱い、サテライト事業所の記録の別管理の方法、交通費と加算の選択についても指定権者によって取扱いが異なる場合があります。加算率は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。運用や調整の進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




