訪問介護の2人訪問は200%|同意と3つの該当事由、算定できない場合を解説

訪問介護で2人の訪問介護員等が同時に訪問した場合、所定単位数の100分の200——つまり2倍を算定できます。ただし「2人で行けば2倍」ではありません。
要件は2段構えです。①利用者または家族等の同意を得ていること、②告示が定める3つの場合のいずれかに該当すること。同意だけでも、該当事由だけでも足りません。
そして通知には、現場でよくある運用を名指しで否定した一文があります。「単に安全確保のために深夜の時間帯に2人の訪問介護員等によるサービス提供を行った場合は、利用者側の希望により利用者や家族の同意を得て行った場合を除き、100分の200に相当する単位数は算定されない。」事業所の都合で2人体制にしたケースは、原則として対象外です。
この記事では、指定居宅サービス介護給付費単位数表(厚生省告示第19号)訪問介護費 注8、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第3号、老企第36号を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 所定単位数の200%を算定できること(加算ではなく単位数の倍化)
- 対象は身体介護中心型と生活援助中心型で、通院等乗降介助は対象外であること
- 利用者または家族等の同意が前提であること
- 告示が定める3つの該当事由(イ・ロ・ハ)
- イの具体例(体重が重い利用者の入浴介助等の重介護)
- ハの具体例(エレベータのない2階以上からの外出介助)
- ロが暴力行為・迷惑行為・器物破損行為であること
- 「安全確保のため深夜に2人」では原則算定できないこと
- 通院・外出介助で運転者が通院等乗降介助を別に算定できないこと
- 届出が不要であること
2人の訪問介護員等による訪問とは?単位数は200%
訪問介護は原則1人で提供しますが、一定の場合には2人で訪問し、所定単位数の2倍を算定できます。加算という名前は付いておらず、告示の注に置かれた「単位数の算定方法」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 算定できる単位数 | 所定単位数の100分の200 |
| 対象 | 身体介護中心型・生活援助中心型 |
| 対象外 | 通院等乗降介助 |
| 前提 | 利用者または家族等の同意 |
| 届出 | 不要(体制届出の規定なし) |
細かい話ですが、条文は「所定単位数の100分の200に相当する単位数を算定する」と書いています。訪問介護員2人分の単位を足し上げるのではなく、1回の訪問介護の所定単位数を2倍にするという構造です。
したがって、3人で訪問しても300%にはなりません。条文が想定しているのは「同時に2人」です。
告示の原文で構造を確認する
訪問介護費 注8です。
イ及びロについては、別に厚生労働大臣が定める要件を満たす場合であって、同時に2人の訪問介護員等が1人の利用者に対して指定訪問介護を行ったときは、所定単位数の100分の200に相当する単位数を算定する。
- 冒頭の「イ及びロについては」=身体介護中心型と生活援助中心型
- ハ(通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合)は対象外
- 同時に2人であること(時間をずらした2回の訪問は該当しない)
- 1人の利用者に対して行うこと
要件は「同意」+「3つの場合のいずれか」
「厚生労働大臣が定める要件」は、平成27年厚生労働省告示第94号(利用者等告示)第3号に置かれています。
三 指定居宅サービス介護給付費単位数表の訪問介護費の注8の厚生労働大臣が定める要件
二人の訪問介護員等により指定訪問介護を行うことについて利用者又はその家族等の同意を得ている場合であって、次のいずれかに該当するとき
イ 利用者の身体的理由により一人の訪問介護員等による介護が困難と認められる場合
ロ 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる場合
ハ その他利用者の状況等から判断して、イ又はロに準ずると認められる場合
| 段階 | 要件 |
|---|---|
| 前提 | 2人で行うことについて利用者または家族等の同意を得ている |
| 該当事由 | イ・ロ・ハのいずれかに該当する |
要件の書き出しは「二人の訪問介護員等により指定訪問介護を行うことについて」の同意です。訪問介護そのものへの同意ではありません。
2人で訪問すれば、利用者の自己負担も2倍になります。その説明と同意を得た記録がなければ、要件を満たしません。訪問介護計画に2人体制である旨と理由を明記し、同意を得たことを残してください。
イ:身体的理由により1人では困難な場合
老企第36号が具体例を示しています。
(利用者等告示)第3号イの場合としては、体重が重い利用者に入浴介助等の重介護を内容とする訪問介護を提供する場合等が該当し(後略)
キーワードは「重介護」です。体重が重い、あるいは身体状況から1人での移乗・入浴介助が安全に行えない——という利用者側の身体的理由が起点になります。
ちびウルフヘルパーさんが小柄で1人だと大変、という理由ではダメですか?
リハウルフそこは条文の書き方をよく見てほしい。イは「利用者の身体的理由により」となっている。主語は利用者側なんだ。
職員の体格や経験を理由にした2人体制は、条文上は読み込みにくい。ただ現実には、「1人の訪問介護員等による介護が困難と認められる」かどうかの判断に、介助の実態が影響するのは事実だと思う。
だから記録の書き方が大事になる。「ヘルパーが小柄だから」ではなく「利用者の体重◯kg、全介助での移乗が必要で、1人では転倒リスクが高い」と、利用者の状態から書く。同じ現場でも、根拠の立て方で説明できるかが変わる。
ロ:暴力行為・著しい迷惑行為・器物破損行為
ロは身体介助の重さではなく、サービス提供中の安全確保に関わる事由です。
- 暴力行為
- 著しい迷惑行為
- 器物破損行為
これらが「認められる場合」とされています。実際に発生した記録がある、あるいは発生の可能性が具体的に見込まれる状況が想定されます。いつ・どのような行為があったかの記録が、そのまま算定根拠になります。
なお、この事由に該当する場合も利用者または家族等の同意は必要です。行為の主体が利用者本人である場合、同意を誰から得るかは実務上の難所になります。家族等からの同意を得て記録に残す運用が現実的です。
ハ:イまたはロに準ずる場合
通知が挙げる具体例は、意外なものです。
同号ハの場合としては、例えば、エレベータのない建物の2階以上の居室から歩行困難な利用者を外出させる場合等が該当するものであること。
イが利用者の身体的理由、ロが行動上の理由であるのに対し、ハには住環境に起因する事情が含まれています。
エレベータのない集合住宅の2階以上、階段が急な戸建て——こうした条件で歩行困難な利用者を外出させる場面は、決して珍しくありません。「うちの利用者は重度ではないから対象外」と決めつける前に、住環境を確認してください。
算定できない典型:「安全確保のため深夜に2人」
通知は、現場でありがちな運用をはっきり否定しています。
したがって、単に安全確保のために深夜の時間帯に2人の訪問介護員等によるサービス提供を行った場合は、利用者側の希望により利用者や家族の同意を得て行った場合を除き、所定単位数の100分の200に相当する単位数は算定されない。
| 2人体制の理由 | 200%算定 |
|---|---|
| 訪問介護員の安全確保(事業所側の判断) | 不可 |
| 利用者側の希望により、同意を得て2人で訪問 | 可 |
| イ・ロ・ハに該当し、同意を得ている | 可 |
起点が事業所側か利用者側か——これが分かれ目です。深夜の単独訪問を避けるために2人で回るのは事業所のリスク管理として妥当ですが、その費用を利用者に転嫁することは認められていません。
運営指導でこの200%算定が問われたとき、説明の材料になるのは記録だけです。
「夜間は職員の安全確保のため2名で対応」とだけ書かれていれば、算定要件を満たしていないと読まれます。イ・ロ・ハのどれに該当するのか、利用者のどのような状態・状況によるのかを、訪問介護計画と記録の両方に書いてください。
通院・外出介助での注意:運転者は乗降介助を算定できない
もうひとつ、通知が明示している論点です。
なお、通院・外出介助において、1人の訪問介護員等が車両に同乗して気分の確認など移送中の介護も含めた介護行為を行う場合には、当該車両を運転するもう1人の訪問介護員等は別に「通院等乗降介助」を算定することはできない。
- 1人が車両に同乗して移送中の介護を行う
- もう1人が運転する
- この場合、運転者が別に通院等乗降介助を算定することはできない
身体介護中心型として算定する通院・外出介助と、通院等乗降介助(97単位)を二重に取ってはいけないという趣旨です。そもそも注8の200%算定も、通院等乗降介助(ハ)には適用されません。
夜間・早朝・深夜加算との関係
2人訪問による200%算定と、夜間・早朝加算(25%)・深夜加算(50%)は別の規定です。要件をそれぞれ満たせば、両方が働きます。
| 規定 | 内容 |
|---|---|
| 注8(2人の訪問介護員等) | 所定単位数の100分の200 |
| 注9(夜間・早朝) | 1回につき所定単位数の100分の25を加算 |
| 注9(深夜) | 1回につき所定単位数の100分の50を加算 |
ただし前述のとおり、「深夜だから2人」という理由づけでは200%は算定できません。深夜加算はサービス提供の時間帯で決まり、200%はイ・ロ・ハの該当性と同意で決まる——別々に判断してください。
なお夜間・早朝・深夜加算については、通知が「居宅サービス計画上又は訪問介護計画上、訪問介護のサービス開始時刻が加算の対象となる時間帯にある場合に算定する」としています。
算定にあたっての実務ステップ
- 2人体制が必要な理由が、イ・ロ・ハのどれに当たるかを整理する
- 理由を「利用者の状態・状況」の側から具体的に書き出す(体重、移乗の介助量、行為の内容、住環境など)
- 2人で訪問することと自己負担が2倍になることを利用者・家族に説明する
- 利用者または家族等から同意を得て、記録に残す
- 訪問介護計画に2人体制である旨と理由を明記する
- ケアマネジャーと共有し、居宅サービス計画に位置付けてもらう
- 同時に2人が訪問した事実を、サービス提供記録に残す
- 通院・外出介助の場合、運転者が通院等乗降介助を別に算定していないか確認する
- 状態が変わったら2人体制の必要性を見直す
2つ目が要です。「職員が大変だから」ではなく「利用者がこういう状態だから」で書けるか——ここで算定の可否がほぼ決まります。
よくある質問
2人で訪問すると単位数はどうなりますか?
所定単位数の100分の200、つまり2倍を算定します。加算ではなく、単位数そのものが倍になる仕組みです。
3人で訪問した場合は300%になりますか?
なりません。告示は「同時に2人の訪問介護員等が1人の利用者に対して」行った場合に100分の200としています。
通院等乗降介助でも200%になりますか?
なりません。注8は「イ及びロについては」と定めており、身体介護中心型と生活援助中心型が対象です。
利用者の同意は必要ですか?
必要です。「二人の訪問介護員等により指定訪問介護を行うことについて利用者又はその家族等の同意を得ている場合」が要件の前提になっています。
該当する場合とは具体的にどんなときですか?
①利用者の身体的理由により1人での介護が困難と認められる場合、②暴力行為・著しい迷惑行為・器物破損行為等が認められる場合、③その他①②に準ずると認められる場合——のいずれかです。
①の具体例はありますか?
通知は「体重が重い利用者に入浴介助等の重介護を内容とする訪問介護を提供する場合等」を挙げています。
③の具体例はありますか?
通知は「エレベータのない建物の2階以上の居室から歩行困難な利用者を外出させる場合等」を挙げています。
深夜に職員の安全確保のため2人で行く場合は算定できますか?
原則できません。通知は「単に安全確保のために深夜の時間帯に2人の訪問介護員等によるサービス提供を行った場合は、利用者側の希望により利用者や家族の同意を得て行った場合を除き」算定されないとしています。
ヘルパーが小柄で1人では大変、という理由でも算定できますか?
告示は「利用者の身体的理由により」と定めており、主語は利用者側です。利用者の状態から1人での介護が困難と認められることを、記録で説明できる必要があります。
通院介助で1人が運転、1人が同乗した場合はどうなりますか?
運転するもう1人の訪問介護員等が別に「通院等乗降介助」を算定することはできません。
深夜加算と一緒に算定できますか?
別の規定なので、それぞれの要件を満たせば両方が働きます。ただし「深夜だから2人」という理由では200%の要件を満たしません。
届出は必要ですか?
告示の注に体制の届出を求める規定は置かれていません。ただし請求上の取扱いは指定権者にご確認ください。
- 2人の訪問介護員等が同時に訪問した場合、所定単位数の100分の200を算定できる
- 加算ではなく、所定単位数そのものが2倍になる仕組み
- 3人で訪問しても300%にはならない
- 対象は身体介護中心型と生活援助中心型
- 通院等乗降介助は対象外
- 体制の届出を求める規定は置かれていない
- 要件は「同意」+「3つの場合のいずれか」の2段構え
- 同意は「2人で行うこと」についての同意
- 自己負担が2倍になることの説明と同意の記録が必要
- イは利用者の身体的理由により1人での介護が困難な場合
- イの例は体重が重い利用者への入浴介助等の重介護
- ロは暴力行為・著しい迷惑行為・器物破損行為等
- ハはイまたはロに準ずる場合
- ハの例はエレベータのない建物の2階以上からの外出介助
- 住環境に起因する事情もハに含まれる
- 「安全確保のため深夜に2人」は原則として算定できない
- 利用者側の希望により同意を得た場合は算定できる
- 記録は「職員が大変」ではなく「利用者の状態」から書く
- 通院・外出介助で運転者が通院等乗降介助を別に算定することはできない
- 夜間・早朝加算・深夜加算とは別の規定で、それぞれ要件を満たせば働く
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号) 訪問介護費 注8・注9(全国老人保健施設協会 法令Q&A検索システム)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号) 第3号
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス等に係る部分)等の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号) 訪問介護費(12)2人の訪問介護員等による訪問介護の取扱い等、(13)早朝・夜間、深夜の訪問介護の取扱い
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および老企第36号の留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(都道府県・市町村)の解釈をご確認ください。「利用者の身体的理由により一人の訪問介護員等による介護が困難と認められる場合」「イ又はロに準ずると認められる場合」に当たるかの判断は個別の状況によるものであり、指定権者やケアマネジメントの過程で結論が分かれる可能性があります。同意の取得方法や記録の様式についても指定権者によって取扱いが異なる場合があります。単位数は1単位あたりの単価(地域区分)により実際の報酬額が変わります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。記録の書き方や説明の進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




