通院等乗降介助は、令和6年度で1回97単位です。訪問介護員が自ら運転する車両への乗降を介助し、あわせて屋内外の移動介助または受診等の手続きの介助を行う場合に算定します。

この加算でいちばん誤解されているのは、「運転すれば算定できる」ではないという点です。老企第36号は「移送行為そのものすなわち運転時間中は当該所定単位数の算定対象ではなく、移送に係る経費(運賃)は、引き続き、評価しない」とはっきり書いています。評価されているのは乗り降りと、その前後の介助だけです。

もう1つのつまずきどころが、「乗降介助だけでは算定できない」という要件です。乗車・降車の介助に加えて、移動等の介助か受診等の手続きの介助を行う必要があります。

この記事では、老企第36号 第二の2(7)(8)と令和6年度改定の告示単位数を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • 通院等乗降介助の単位数(97単位・片道ごと)
  • 運賃と運転時間が評価対象外である理由
  • 「乗降介助だけ」では算定できないこと
  • 車内から見守るだけでは算定対象にならないこと
  • 院内介助が別に身体介護として算定できない理由
  • 要介護4・5に限って身体介護中心型に振り替えられる例外
  • 居宅サービス計画に記載しなければならない3項目
  • デイサービスの帰りに病院へ寄る場合の算定と、送迎減算の関係
  • 病院を2か所回る場合に3回算定できること
  • 介護タクシーとの関係と、道路運送法上の許可

通院等乗降介助は片道97単位。往復で194単位

令和6年度改定で、通院等乗降介助は99単位から97単位へ引き下げられました。老企第36号 第二の2(7)②は、算定単位について次のとおり定めています。

注4において「通院等乗降介助」の単位を算定することができる場合、片道につき所定単位数を算定する。よって、乗車と降車のそれぞれについて区分して算定することはできない。

項目内容
単位数97単位/回(令和6年度・改定前99単位)
数え方片道ごと。往復で2回=194単位
乗車・降車合わせて片道1回。分けて算定できない
運転時間算定対象外
運賃介護報酬では評価しない(別途実費)
身体介護中心型との併算定できない
運賃は介護保険の外にある

通院等乗降介助の97単位に、車の運賃は含まれていません。運賃は利用者から別途、実費として受け取ります。そして運賃を受け取って人を運ぶ以上、道路運送法上の許可(一般乗用旅客自動車運送事業、いわゆる介護タクシーの許可等)が必要になります。

老企第36号も「道路運送法等他の法令等に抵触しないよう留意すること」と明記しています。介護保険の算定要件を満たしていても、道路運送法の要件を満たしていなければ運行できません。これは別の法律の話なので、運輸支局への確認が要ります。

「乗降介助だけ」では算定できない

ここが最大の落とし穴です。老企第36号 第二の2(7)⑤は次のとおりです。

「自らの運転する車両への乗車又は降車の介助」に加えて、「乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助」を行うか、又は、「通院先若しくは外出先での受診等の手続き、移動等の介助」を行う場合に算定対象となるものであり、これらの移動等の介助又は受診等の手続きを行わない場合には算定対象とならない。

  • 必須:自らの運転する車両への乗車または降車の介助
  • 加えて、次のいずれか
    • 乗車前・降車後の屋内外における移動等の介助
    • 通院先・外出先での受診等の手続き、移動等の介助

玄関先で待っていて、車に乗るところだけ手を貸して、病院に着いたら降ろして終わり。この形は算定できません。家の中から玄関までの移動を介助するか、病院で受付や院内移動を介助するか、どちらかが必要です。

「見守るだけ」も算定できない

同⑤の前段は、判断基準を具体例で示しています。

例えば、利用者の日常生活動作能力などの向上のために、移動時、転倒しないように側について歩き、介護は必要時だけで、事故がないように常に見守る場合は算定対象となるが、乗降時に車両内から見守るのみでは算定対象とならない。

ポイントは「側について歩く」か「車の中から見ているだけ」かです。自立支援の観点から手出しをしない見守り的援助は算定対象になりますが、運転席から様子を見ているだけでは介助と評価されません。

ちびウルフちびウルフ

自分で歩ける人だと、算定できないってことですか?

リハウルフリハウルフ

いいえ。通知が示しているのは「転倒しないように側について歩き、必要時だけ介護し、常に見守る」形は算定対象ということです。手を貸していなくても、そばに付いて見守っていれば介助です。

ダメなのは車から降りずに見ているだけ。線引きはそこです。実務では「玄関まで付き添った」「院内を一緒に移動した」という事実を記録に残しておけば、まず問題になりません。

院内介助を別に身体介護で算定することはできない

老企第36号 第二の2(7)⑥は、通院等乗降介助が「一連のサービス行為」であることを明言しています。

「通院等乗降介助」は、(中略)一連のサービス行為として含むものであり、それぞれの行為によって細かく区分し、「通院等乗降介助」又は「身体介護中心型」として算定できない。例えば、通院等に伴いこれに関連して行われる、居室内での「声かけ・説明」・「目的地(病院等)に行くための準備」や通院先での「院内の移動等の介助」は、「通院等乗降介助」に含まれるものであり、別に「身体介護中心型」として算定できない。

行為扱い
居室内での声かけ・説明通院等乗降介助に含まれる
出かけるための準備通院等乗降介助に含まれる
屋内から車までの移動介助通院等乗降介助に含まれる
乗車・降車の介助通院等乗降介助そのもの
院内の移動等の介助通院等乗降介助に含まれる
受診等の手続き通院等乗降介助に含まれる

「乗降介助97単位+院内介助を身体介護で」という請求はできません。この誤りは実地指導の定番です。

また同⑥は、複数の訪問介護員等が交代して通院等乗降介助を行った場合も1回として算定し、訪問介護員ごとに区分して算定できないとしています。

要介護4・5だけの例外。身体介護中心型に振り替えられる

老企第36号 第二の2(8)が、唯一の振替ルールです。

要介護4又は要介護5の利用者に対して、通院等のための乗車・降車の介助を行うことの前後に連続して相当の所要時間(20〜30分程度以上)を要しかつ手間のかかる身体介護を行う場合には、その所要時間に応じた「身体介護中心型」の所定単位数を算定できる。この場合には、「通院等乗降介助」の所定単位数は算定できない。
(例)(乗車の介助の前に連続して)寝たきりの利用者の更衣介助や排泄介助をした後、ベッドから車いすへ移乗介助し、車いすを押して自動車へ移動介助する場合。

条件内容
要介護度要介護4または要介護5に限る
時間乗降介助の前後に連続して20〜30分程度以上
内容「手間のかかる」身体介護(更衣介助・排泄介助・移乗介助など)
算定身体介護中心型のみ。通院等乗降介助は算定できない

身体介護中心型は30分以上1時間未満で387単位ですから、97単位との差は大きい。ただし要介護3以下では、どれだけ手間がかかっても振り替えられません。ここは要介護度で機械的に切られています。

要介護3以下で手間がかかる場合はどうするか

制度上、要介護3以下では通院等乗降介助の97単位に収めるしかありません。担当したケースでも、要介護3で移乗に相当な介助が要る方について、事業所側が「これで97単位は厳しい」と漏らすことがありました。

現実的な打ち手は、通院の前後の準備・整えを、別の時間帯の身体介護として計画に位置付けることです。ただし「連続して行う」ものは一連のサービス行為に含まれるため、時間を分けたことに生活上の必然性が要ります。無理筋の切り分けは指導対象になります。

居宅サービス計画に書かなければならない3項目

老企第36号 第二の2(7)⑦は、居宅サービス計画への記載事項を具体的に列挙しています。ケアマネジャー側の宿題です。

  •  通院等に必要であることその他車両への乗降が必要な理由
  •  利用者の心身の状況から乗降時の介助行為を要すると判断した旨
  •  総合的な援助の一環として、解決すべき課題に応じた他の援助と均衡していること

さらに「適切なアセスメントを通じて、生活全般の解決すべき課題に対応した様々なサービス内容の1つとして、総合的な援助の一環としてあらかじめ居宅サービス計画に位置付けられている必要があり」とされています。

事後にプランへ追記する形は認められません。「今日急に病院に行くことになったので乗降介助を」という運用は、原則としてできないということです。

デイサービスの帰りに病院へ寄る場合

令和3年度改定で明確化され、令和6年度も引き継がれている取扱いです。老企第36号 第二の2(7)⑧は次のとおりです。

目的地が複数あって居宅が始点又は終点となる場合には、目的地(病院等)間の移送や、通所サービス・短期入所サービスの事業所から目的地(病院等)への移送に係る乗降介助に関しても、同一の指定訪問介護事業所が行うことを条件に、算定することができる。なお、この場合、通所サービスについては利用者宅と事業所との間の送迎を行わない場合の減算が適用となり、短期入所サービスについては、利用者に対して送迎を行う場合の加算を算定できない。

パターン算定回数他サービスへの影響
居宅 → デイ →(乗降介助)→ 病院 →(乗降介助)→ 居宅2回デイの帰りの送迎減算
居宅 →(乗降介助)→ 病院 →(乗降介助)→ デイ → 居宅2回デイの行きの送迎減算
居宅 →(乗降介助)→ 病院A →(乗降介助)→ 病院B →(乗降介助)→ 居宅3回

条件は2つ。①居宅が始点または終点であること、②同一の訪問介護事業所が行うこと。

通所介護の送迎減算は片道47単位です。乗降介助97単位を算定して送迎減算47単位を受けるので、差引きでは50単位のプラスという計算になります。ただし通所介護事業所側の減算なので、事業所が別なら利害が一致しません。ケアマネジャーが調整する場面です。

入院・退院にも使える

見落とされやすい点として、老企第36号 第二の2(7)④は次のとおり定めています。

利用目的について、「通院等のため」とは、「身体介護中心型」としての通院・外出介助と同じものである。なお、この場合の「通院等」には、入院と退院も含まれる。

入院や退院の日の移送にも使えます。退院日は訪問リハビリや訪問看護が算定できないケースがある一方、訪問介護は算定できる(老企第36号 第二の1に「訪問介護等の福祉系サービスは別に算定できる」との記載あり)ため、退院時の支援としては現実的な選択肢になります。

複数の利用者を同時に運ぶ場合

同③は、「複数の要介護者に『通院等乗降介助』を行った場合であって、乗降時に1人の利用者に対して一対一で行う場合には、それぞれ算定できる」としています。

ただし続けて「効率的なサービス提供の観点から移送時間を極小化すること」とあります。同乗させて長時間走り回るような運用は想定されていません。

ちびウルフちびウルフ

結局、介護タクシーと通院等乗降介助って同じものですか?

リハウルフリハウルフ

別の話が重なっているだけです。「介護タクシー」は道路運送法の世界の言葉で、人を運んで運賃を取るための許可の話。「通院等乗降介助」は介護保険の報酬項目で、乗り降りの介助に97単位が付く話です。

だから「介護保険が使える介護タクシー」というのは、道路運送法の許可を持った事業者が、訪問介護事業所の指定も受けていて、乗降介助を算定している状態を指します。運賃は保険外、介助は保険内。財布が2つあると理解してください。

よくある質問

通院等乗降介助はいくらですか?

令和6年度で1回97単位です(改定前は99単位)。片道ごとに算定するため、往復では194単位になります。

乗車と降車で2回算定できますか?

できません。乗車と降車を合わせて片道1回です。通知に「乗車と降車のそれぞれについて区分して算定することはできない」と明記されています。

運賃は介護保険から出ますか?

出ません。通知は「移送に係る経費(運賃)は、引き続き、評価しない」としています。運賃は利用者から実費として受け取り、その場合は道路運送法上の許可が必要です。

乗り降りの介助だけでは算定できませんか?

できません。乗車・降車の介助に加えて、乗車前・降車後の屋内外の移動等の介助か、通院先での受診等の手続き・移動等の介助のいずれかが必要です。

自分で歩ける利用者でも算定できますか?

転倒しないよう側について歩き、必要時のみ介護し常に見守る形は算定対象になります。算定できないのは、乗降時に車両内から見守るだけの場合です。

院内介助を身体介護として別に算定できますか?

できません。院内の移動等の介助や受診等の手続きは通院等乗降介助に含まれる一連のサービス行為とされています。

身体介護中心型で算定できる場合はありますか?

要介護4または要介護5の利用者に対し、乗降介助の前後に連続して20〜30分程度以上の手間のかかる身体介護を行う場合に限り、身体介護中心型で算定できます。この場合、通院等乗降介助は算定できません。

要介護3でも身体介護に振り替えられますか?

できません。通知は要介護4・5に限定しています。要介護3以下では、どれだけ手間がかかっても通院等乗降介助で算定します。

ケアプランには何を書けばよいですか?

①乗降が必要な理由、②心身の状況から乗降時の介助行為を要すると判断した旨、③他の援助と均衡していること、の3点を明確に記載する必要があります。あらかじめ位置付けておくことも要件です。

デイサービスの帰りに病院へ寄る場合も算定できますか?

できます。居宅が始点または終点であり、同一の訪問介護事業所が行うことが条件です。ただし通所介護側で送迎減算(片道47単位)が適用されます。

病院を2か所回る場合は何回算定できますか?

居宅→病院A→病院B→居宅なら3回算定できます。通知に具体例として示されています。

入院や退院の日にも使えますか?

使えます。通知は「この場合の『通院等』には、入院と退院も含まれる」と明記しています。

複数の利用者を一緒に乗せた場合はどうなりますか?

乗降時に1人ずつ一対一で介助した場合は、それぞれ算定できます。ただし「効率的なサービス提供の観点から移送時間を極小化すること」とされています。

まとめ
  • 通院等乗降介助は令和6年度で1回97単位(改定前99単位)
  • 片道ごとに算定し、乗車と降車を分けて算定することはできない
  • 運転時間中は算定対象外で、運賃は介護報酬で評価しない
  • 運賃を受け取るには道路運送法上の許可が別途必要
  • 乗降の介助「だけ」では算定できない
  • 屋内外の移動等の介助か、受診等の手続き・移動等の介助が加えて必要
  • 側について歩き見守る形は算定対象になる
  • 車両内から見守るのみでは算定対象にならない
  • 院内介助・声かけ・出かける準備は、すべて乗降介助に含まれる
  • これらを別に身体介護中心型として算定することはできない
  • 複数のヘルパーが交代しても1回として算定する
  • 要介護4・5に限り、前後に20〜30分程度以上の手間のかかる身体介護があれば身体介護中心型で算定できる
  • その場合、通院等乗降介助は算定できない
  • 要介護3以下には振替の余地がない
  • 居宅サービス計画に、乗降が必要な理由・介助を要すると判断した旨・他の援助との均衡を記載する
  • あらかじめ計画に位置付けられていることが要件で、事後追記は認められない
  • 居宅が始点または終点で、同一事業所が行う場合は目的地間の移送も算定できる
  • デイの前後に寄る場合、通所介護側に片道47単位の送迎減算がかかる
  • ショートステイの前後に寄る場合、送迎加算が算定できなくなる
  • 病院を2か所回る場合は3回算定できる
  • 「通院等」には入院と退院も含まれる
  • 複数の利用者を同乗させても、一対一の介助があればそれぞれ算定できる
  • 介護タクシーは道路運送法、通院等乗降介助は介護保険の話であり、財布が別
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。院内介助の取扱い、通院等乗降介助と身体介護中心型の区分、実費徴収の可否と項目は、保険者によって解釈・運用が異なる場合があります。道路運送法上の許可の要否・手続きについては、管轄の運輸支局にご確認ください。単位数は1単位10円の地域を前提とした表記で、実際の金額は地域区分により異なります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。ケアプラン作成上の調整に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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