小規模多機能型居宅介護の地域加算とは?特別地域15%・中山間10%・5%の要件を解説

小規模多機能型居宅介護(小多機)には、地域に着目した加算が3つあります。特別地域小規模多機能型居宅介護加算15%・中山間地域等における小規模事業所加算10%・中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算5%です。
いずれも所定単位数に対する率で加算されます。小多機の基本報酬は1月包括で要介護3なら22,359単位ですから、15%なら1人あたり月3,353単位(およそ3万3千円)。単位数の絶対額としては、小多機の加算のなかでも最大級になります。
算定率は特別地域3.9%・中山間10%が8.7%・5%が1.3%(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)。該当する地域にある事業所しか算定できないため低く見えますが、逆にいえば対象地域なら届出だけで確実に取れる加算です。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費の注10〜注12、厚生労働大臣が定める地域(平成24年厚生労働省告示第120号)、厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(平成21年厚生労働省告示第83号)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。
- 3つの地域加算の率と、それぞれの根拠となる告示
- 「事業所の所在地」で決まる加算と「利用者の居住地」で決まる加算の違い
- 特別地域加算15%の対象地域(告示120号)
- 中山間地域等10%の対象(告示83号第1号)と、特別地域を除く関係
- 5%加算の対象(告示83号第2号)と「通常の事業の実施地域を越えて」という条件
- 小多機には規模要件がないこと
- 15%と10%は同時に算定できるのかという論点
- 1人あたりいくらになるかの試算
- 要支援でも算定できること
3つの地域加算の全体像
| 加算 | 率 | 何で決まるか | 根拠となる地域の告示 |
|---|---|---|---|
| 特別地域小規模多機能型居宅介護加算 | 15% | 事業所の所在地 | 告示120号「厚生労働大臣が定める地域」 |
| 中山間地域等における小規模事業所加算 | 10% | 事業所の所在地 | 告示83号 第1号 |
| 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 5% | 利用者の居住地+実施地域外 | 告示83号 第2号 |
上の2つは事業所がどこにあるかで決まります。3つ目だけが利用者がどこに住んでいるかで決まる加算です。性格がまったく違います。
要介護度別に15%を計算すると次のようになります(同一建物以外の区分)。
- 要介護1:10,458単位 → 約1,569単位
- 要介護3:22,359単位 → 約3,353単位
- 要介護5:27,209単位 → 約4,081単位
総合マネジメント体制強化加算(Ⅰ)1,200単位や訪問体制強化加算1,000単位を上回る水準です。対象地域の事業所にとっては、収益構造の中心になります。
特別地域加算15%|告示120号の地域
告示126号の注10は、次のとおりです。
イについて、別に厚生労働大臣が定める地域に所在し、かつ、(中略)届出を行った指定小規模多機能型居宅介護事業所(その一部として使用される事務所が当該地域に所在しない場合は、当該事務所を除く。)又はその一部として使用される事務所の小規模多機能型居宅介護従業者が指定小規模多機能型居宅介護を行った場合は、特別地域小規模多機能型居宅介護加算として、1月につき所定単位数の100分の15に相当する単位数を所定単位数に加算する。
「別に厚生労働大臣が定める地域」は、告示120号が定めています。同告示は小規模多機能型居宅介護費の注10を名指しで挙げており、離島や過疎地域などが対象です。
- 加算の対象は「イ」=小規模多機能型居宅介護費(登録者)のみ。短期利用居宅介護費(ロ)には付きません
- サテライト等、一部として使用される事務所が対象地域外にある場合は、その事務所を除く
- 届出が必要
中山間地域等10%|特別地域と重ならないよう設計されている
注11の加算は、告示83号 第1号の地域が対象です。第1号は対象地域を次のように定義しています。
厚生労働大臣が定める一単位の単価(平成27年厚生労働省告示第93号)第2号のその他の地域であって、次のいずれかに該当する地域のうち厚生労働大臣が定める地域(平成24年厚生労働省告示第120号)に規定する地域を除いた地域
| 記号 | 対象となる地域(第1号) |
|---|---|
| イ | 豪雪地帯・特別豪雪地帯(豪雪地帯対策特別措置法) |
| ロ | 辺地(辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律) |
| ハ | 半島振興対策実施地域(半島振興法) |
| ニ | 特定農山村地域(特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律) |
| ホ | 過疎地域(過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法) |
第1号の定義には「告示120号に規定する地域を除いた地域」という限定が入っています。
つまり15%と10%は、対象地域が重ならないように設計されています。「両方取れるのでは」と考える必要はありません。自事業所の所在地がどちらの告示に該当するかを確認すれば、どちらか一方に決まります。
さらに前提として「一単位の単価のその他の地域」であることが必要です。地域区分で級地が付いている地域(1級地〜7級地)は対象外になります。
小多機には規模要件がない
訪問介護などでは、この10%加算に「1月あたりの延べ訪問回数が◯回以下」といった事業所規模の要件が課されています。「小規模事業所加算」という通称もそこから来ています。
しかし小多機の注11には、規模に関する要件が書かれていません。対象地域に所在し、届出を行っていれば算定できる、というのが条文の構造です。
もともと小多機は登録定員29人以下(本体)の小規模サービスであるため、あらためて規模要件を課す必要がない、という整理だと考えられます。
中山間地域等に居住する者への5%|唯一「利用者側」で決まる
注12は、次のとおりです。
イについては、指定小規模多機能型居宅介護事業所が、別に厚生労働大臣が定める地域に居住している登録者に対して、通常の事業の実施地域を越えて、指定小規模多機能型居宅介護を行った場合は、1月につき所定単位数の100分の5に相当する単位数を所定単位数に加算する。
- 登録者が告示83号 第2号の地域に居住していること
- かつ、通常の事業の実施地域を越えてサービスを提供していること
2つ目が重要です。対象地域に住んでいるだけでは足りず、事業所が運営規程で定めた「通常の事業の実施地域」の外である必要があります。
第2号の地域は第1号より広い
| 記号 | 対象となる地域(第2号) | 第1号にもあるか |
|---|---|---|
| イ | 離島振興対策実施地域 | × |
| ロ | 奄美群島 | × |
| ハ | 豪雪地帯・特別豪雪地帯 | ○ |
| ニ | 辺地 | ○ |
| ホ | 振興山村 | × |
| ヘ | 小笠原諸島 | × |
| ト | 半島振興対策実施地域 | ○ |
| チ | 特定農山村地域 | ○ |
| リ | 過疎地域 | ○ |
| ヌ | 沖縄振興特別措置法の離島 | × |
第2号には離島・奄美群島・振興山村・小笠原諸島・沖縄の離島が加わり、また第1号のような「特別地域を除く」「その他の地域に限る」という限定もありません。利用者の居住地を見る加算のほうが、対象地域は広く取られているということです。
ちびウルフ15%の地域にある事業所が、さらに実施地域の外の人を受け入れたら、5%も足せるんですか?
リハウルフ条文上は、注10(15%)と注12(5%)に相互を排除する規定がありません。見ている対象が違う(事業所の所在地 vs 利用者の居住地と実施地域外)ためです。
ただし、これは条文の構造からの読み方です。地域加算の重複算定は市町村の解釈が入りやすい部分なので、算定前に必ず確認してください。
実務で先に確認すべきは、運営規程の「通常の事業の実施地域」がどう書かれているかです。ここが広く書かれていると、そもそも「越えて」に該当しません。訪問の移動コストが重い地域ほど、この記載が効いてきます。
要支援でも算定できる
告示120号・告示83号のいずれも、介護予防小規模多機能型居宅介護費の注10・注11・注12を対象として明記しています。要支援の登録者についても同じ率で算定できます。
| 加算 | 介護給付 | 介護予防 |
|---|---|---|
| 特別地域加算 | 15% | 15% |
| 中山間地域等における小規模事業所加算 | 10% | 10% |
| 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 5% | 5% |
認知症加算や訪問体制強化加算が要支援では算定できないのに対し、地域加算は要支援でも算定できる側です。
算定率|対象地域なら取りこぼしは避けたい
| 加算 | 率 | 算定率(事業所ベース) |
|---|---|---|
| 中山間地域等における小規模事業所加算 | 10% | 8.7% |
| 特別地域小規模多機能型居宅介護加算 | 15% | 3.9% |
| 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 5% | 1.3% |
3つ合わせても14%弱です。これは要件が難しいからではなく、対象地域に所在する事業所が限られているからにほかなりません。
逆にいえば、対象地域にありながら届出をしていない事業所があれば、それは純粋な取りこぼしです。研修も人員配置も不要で、所在地の確認と届出だけで15%または10%が付きます。
- ①地域区分を確認する:1級地〜7級地が付いていれば、10%加算の「その他の地域」要件から外れます
- ②告示120号に該当するか:該当すれば15%(特別地域加算)
- ③告示83号第1号に該当するか:該当すれば10%。①②で外れていないことが前提
- ④実施地域外の登録者がいるか:告示83号第2号の地域に居住し、通常の事業の実施地域を越えていれば5%
①〜③は市町村の介護保険担当課が把握しています。自治体名で判定できる話なので、確認は電話1本で済みます。
小多機の地域加算は何種類ありますか?
3つです。特別地域小規模多機能型居宅介護加算15%、中山間地域等における小規模事業所加算10%、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算5%です。
15%はいくらになりますか?
所定単位数に対する率なので要介護度で変わります。要介護3(22,359単位)なら約3,353単位、要介護5(27,209単位)なら約4,081単位です。
15%と10%は両方算定できますか?
できません。10%の対象地域を定める告示83号第1号が「厚生労働大臣が定める地域(告示120号)に規定する地域を除いた地域」としており、対象地域が重ならないよう設計されています。
10%加算に事業所の規模要件はありますか?
小多機の条文には規模要件が書かれていません。訪問介護等では延べ訪問回数などの要件がありますが、小多機は対象地域に所在し届出を行っていれば算定できる構造です。
5%加算は対象地域に住んでいれば算定できますか?
できません。告示83号第2号の地域に居住していることに加えて、「通常の事業の実施地域を越えて」サービスを提供していることが必要です。
「通常の事業の実施地域」はどこで決まりますか?
事業所の運営規程で定めます。ここが広く設定されていると、対象地域の利用者であっても「越えて」に該当せず、5%加算を算定できません。
第1号と第2号の地域はどう違いますか?
第2号には離島振興対策実施地域、奄美群島、振興山村、小笠原諸島、沖縄振興特別措置法の離島が加わります。また第1号のような「特別地域を除く」「その他の地域に限る」という限定もありません。
短期利用居宅介護費にも付きますか?
15%(注10)と5%(注12)は「イについては」と限定されており、登録者に対する小規模多機能型居宅介護費のみが対象です。10%(注11)は「イについては1月につき、ロについては1日につき」とされています。
要支援でも算定できますか?
できます。告示120号・告示83号のいずれも介護予防小規模多機能型居宅介護費の注10〜12を対象に挙げており、同じ率で算定できます。
自分の事業所が対象地域かどうかはどう調べますか?
市町村の介護保険担当課に確認するのが確実です。地域区分(級地)と、告示120号・告示83号の該当有無は自治体単位で判定できます。
- 小多機の地域加算は特別地域15%・中山間地域等10%・利用者居住地5%の3つ
- いずれも所定単位数に対する率で加算される
- 15%は要介護3で約3,353単位、要介護5で約4,081単位
- 金額としては総合マネジメント体制強化加算(Ⅰ)1,200単位を上回る
- 15%と10%は事業所の所在地、5%は利用者の居住地で決まる
- 15%の対象地域は告示120号(離島・過疎地域等)
- 10%の対象は告示83号第1号(豪雪地帯・辺地・半島振興・特定農山村・過疎地域)
- 第1号は「その他の地域」に限られ、告示120号の地域は除かれる
- したがって15%と10%の対象地域は重ならない
- 小多機の10%加算には事業所規模の要件がない
- 5%は告示83号第2号の地域に居住し、かつ通常の事業の実施地域を越えることが必要
- 第2号は離島・奄美群島・振興山村・小笠原諸島・沖縄の離島を含み、第1号より広い
- 「通常の事業の実施地域」は運営規程で定めるため、記載内容が算定可否を左右する
- 要支援(介護予防小規模多機能型居宅介護)でも同じ率で算定できる
- 算定率は10%が8.7%、15%が3.9%、5%が1.3%
- 低いのは要件の難しさではなく、対象地域が限られるため
- 対象地域にありながら未届出なら、研修も配置も不要な純粋な取りこぼしになる
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)別表 指定地域密着型サービス介護給付費単位数表「小規模多機能型居宅介護費」注10・注11・注12(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める地域(平成24年厚生労働省告示第120号)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める中山間地域等の地域(平成21年厚生労働省告示第83号)第1号・第2号(厚生労働省法令等データベース)
- 指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)別表「介護予防小規模多機能型居宅介護費」注10〜注12(厚生労働省法令等データベース)
- 社会保障審議会介護給付費分科会(第218回)資料2「小規模多機能型居宅介護」(PDF)小規模多機能型居宅介護の算定状況(介護給付費等実態統計 令和4年4月審査分)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および審議会資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。対象地域の該当性は市町村単位・区域単位で判定されるため、必ず市町村の介護保険担当課にご確認ください。特別地域加算(15%)と中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算(5%)の重複算定の可否は、条文に相互を排除する規定がないことからの読み方であり、市町村の解釈が異なる場合があります。本文中の金額は単位数を単純に計算した概算で、端数処理や地域区分により実際の請求額とは異なります。算定率は令和4年3月サービス提供分の数値です。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定や対象地域の指定状況の変更により取扱いが変わる可能性があります。確認の順序に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




