小規模多機能型居宅介護(小多機)の総合マネジメント体制強化加算は、(Ⅰ)1,200単位・(Ⅱ)800単位(いずれも1月につき)です。小多機の加算のなかで最も単位数が大きく、算定率も90.0%(令和4年3月サービス提供分・事業所ベース)と極めて高い加算です。

ただし令和6年度改定で、この加算は実質的な引き下げを伴う再編が行われました。従来の1,000単位は(Ⅱ)800単位になり、上位区分として(Ⅰ)1,200単位が新設されています。改定前から算定していた事業所が何も動かなければ、1月あたり200単位のマイナスです。

一方で、(Ⅰ)の追加要件は「新しい事業を始めろ」という内容ではありません。厚生労働省のQ&Aは「加算要件を満たすことを目的として、新たに資料を作成することは要しない」とまで書いています。すでに地域と関わっている事業所なら、記録の整理で届く可能性があります。

この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)小規模多機能型居宅介護費のヌ、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第56号、令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)を突き合わせて整理しました。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員です。

この記事でわかること
  • (Ⅰ)1,200単位・(Ⅱ)800単位という区分と、改定前との差
  • 放置すると200単位のマイナスになる理由
  • (Ⅱ)の要件が2つだけであること
  • (Ⅰ)で追加される3つの要件の中身
  • 5つ目の要件は4項目の「いずれか1つ」でよいこと
  • 「地域住民等の相談対応体制」に取組頻度の定めがないこと
  • 新たな資料の作成が不要であるとQ&Aが明言していること
  • 事例検討会を市町村と共催した場合の扱い
  • 看多機・定期巡回とも共通の加算であること
  • 算定率90%という水準の意味

(Ⅰ)1,200単位・(Ⅱ)800単位。改定で1,000単位が消えた

区分改定後(令和6年度〜)改定前
総合マネジメント体制強化加算(Ⅰ)1,200単位(新設)
総合マネジメント体制強化加算(Ⅱ)800単位1,000単位

厚生労働省の改定資料は、この見直しの趣旨を次のように説明しています。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び(看護)小規模多機能型居宅介護が、地域包括ケアシステムの担い手として、より地域に開かれた拠点となり、認知症対応を含む様々な機能を発揮することにより、地域の多様な主体とともに利用者を支える仕組みづくりを促進する観点から、総合マネジメント体制強化加算について、地域包括ケアの推進と地域共生社会の実現に資する取組を評価する新たな区分を設ける。なお、現行の加算区分については、新たな加算区分の取組を促進する観点から評価の見直しを行う。

最後の一文が200単位の引き下げにあたります。「上位区分を取りに来させるために、従来区分を下げた」という構造です。

要介護3で年間2,400単位のマイナス

1月200単位の減は、年間で2,400単位(およそ2万4千円)です。登録者20人なら年間48,000単位(約48万円)の差になります。

逆に(Ⅰ)を取れば1月400単位の増。登録者20人で年間96,000単位(約96万円)です。小多機の加算のなかで、これだけの幅が動くものは他にありません。

(Ⅱ)の要件は2つだけ

告示95号 第56号ロは、(Ⅱ)の基準を「イ(1)及び(2)に掲げる基準に適合すること」としています。その2つは次のとおりです。

  • 利用者の心身の状況またはその家族等を取り巻く環境の変化に応じ、随時、介護支援専門員・看護師・准看護師・介護職員その他の関係者が共同して、小規模多機能型居宅介護計画の見直しを行っていること
  • 利用者の地域における多様な活動が確保されるよう、日常的に地域住民等との交流を図り、利用者の状態に応じて地域の行事や活動等に積極的に参加していること

1つ目は小多機の本質そのものです。「定期的に」ではなく「随時」と書かれている点が要点で、状態が変わったらその都度、多職種で計画を見直すという運用が求められます。

(Ⅰ)で追加される3つの要件

告示95号 第56号イは、(Ⅱ)の2要件に加えて次の3つを求めます。

  • (3) 地域住民等の相談に対応する体制
    日常的に利用者と関わりのある地域住民等の相談に対応する体制を確保していること。
  • (4) 保険外サービスも含めた包括的な計画
    必要に応じて、介護給付費等対象サービス以外の保健医療サービス・福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること。
  • (5) 次の4項目のいずれかに適合
    ①地域住民等との連携により、地域資源を効果的に活用し、利用者の状態に応じた支援を行っている/②障害福祉サービス事業所、児童福祉施設等と協働し、地域において世代間の交流の場の拠点となっている/③地域住民等、他の指定居宅サービス事業者・指定地域密着型サービス事業者等と共同で事例検討会、研修会等を実施している/④市町村が実施する地域支援事業(法第115条の45第1項第2号に掲げる事業や同条第2項第4号に掲げる事業等)に参加している

(5)は4項目すべてではなく、いずれか1つで足ります。ここが最大のポイントです。

Q&Aが示した「新たな資料の作成は不要」

要件の文言だけを読むと、証拠書類をどう整えるかで身構えてしまいます。この点について、令和6年度改定に関するQ&A(Vol.1)問145は明確に答えています。

地域住民等からの相談への対応は、一定の頻度を定めて行う性格のものではなく、常に地域住民等からの相談を受け付けられる体制がとられていれば、当該要件を満たすものである。(中略)なお、地域住民等からの相談が行われていることは、日々の相談記録等、既存の記録において確認できれば足りるものであり、加算要件を満たすことを目的として、新たに資料を作成することは要しない。

  • 相談対応に回数のノルマはない
  • 「常に受け付けられる体制」があればよい
  • 証拠は既存の相談記録で足りる
  • 加算のための新規書類は不要

問146も、(5)①の「地域資源を効果的に活用し、利用者の状態に応じた支援を行うための取組」について、「一定の頻度を定めて行う性格のものではなく、(中略)常に問題意識をもって取り組まれていれば、当該要件を満たす」としています。あわせて、留意事項通知に例示された取組以外も該当し得るとしています。

ちびウルフちびウルフ

「体制があればいい」って、逆にどこまでやれば認められるのか分からなくないですか?

リハウルフリハウルフ

不安になる気持ちは分かります。ただ、この加算に関しては(5)の4項目のうち④が最も判定しやすいと思います。

「市町村が実施する地域支援事業等に参加していること」。参加実績は市町村側にも残るので、争いになりにくい。地域ケア会議や認知症サポーター養成講座、生活支援体制整備の協議体などが典型です。

担当したケースでも、小多機は地域包括支援センターとの距離が近い事業所が多い。すでに呼ばれて出ている会議が要件に当たらないか、まず棚卸しするのが早道です。

事例検討会は市町村との共催でもよい

(5)③について、Q&A問147は次のように答えています。

  • 市町村や地域の介護事業者団体等と共同して実施した場合も評価の対象になる
  • ただし「共同」とは、開催者か否かを問わず、地域住民や民間企業、他の居宅サービス事業者など複数の主体が参画することを指す
  • 市町村等と共同する場合でも、これらの複数の主体が開催者または参加者として参画することが必要

自事業所と市町村の2者だけでは足りないという読み方になります。地域住民や他事業者が参加者として入っているかどうかを確認してください。

要件を満たしやすいのはどの項目か

(5)の4項目を、実務上の取り組みやすさで並べると次のようになります。

項目内容確認のしやすさ
市町村が実施する地域支援事業等への参加高い(市町村側に記録が残る)
複数主体との共同での事例検討会・研修会高い(開催記録・参加者名簿)
障害福祉・児童福祉施設等と協働した世代間交流の拠点中(協働の実態が必要)
地域資源を活用した利用者支援中(頻度の定めはないが説明が要る)

すでに何かしら地域と関わっている事業所であれば、③か④のどちらかで拾えることが多いはずです。新しい活動を立ち上げる前に、既存の関わりを整理してください。

算定率90%|「取っていない事業所」の側が不利になる

厚生労働省の資料では、改定前の総合マネジメント体制強化加算(1,000単位)の算定率は事業所ベースで90.0%、件数ベースで90.8%でした(令和4年3月サービス提供分)。

加算算定率(事業所ベース)
認知症加算(Ⅰ)(改定前)92.3%
総合マネジメント体制強化加算90.0%
初期加算64.9%
訪問体制強化加算42.4%
科学的介護推進体制加算33.3%

9割の事業所が算定しているということは、この加算は小多機の標準装備だということです。単位数ベースでも総単位数の4.18%を占めており、加算のなかで最大です。

そのうえで令和6年度改定により、この9割の事業所が「(Ⅱ)800単位のまま据え置かれるか、(Ⅰ)1,200単位に上がるか」に分かれます。差が付くのはこれからです。

看多機・定期巡回とも共通の加算

総合マネジメント体制強化加算は、次の3サービスに共通して設けられています。単位数も(Ⅰ)1,200単位・(Ⅱ)800単位で同じです。

  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護

Q&A問145〜147も、この3サービスを対象とした回答です。複数のサービスを運営している法人なら、地域活動の記録を共通の枠組みで整理できます。ただし届出は事業所ごとに必要です。

よくある質問
総合マネジメント体制強化加算はいくらですか?

1月につき(Ⅰ)1,200単位・(Ⅱ)800単位です。令和6年度改定前は1,000単位の1区分でした。

改定で単位数は下がったのですか?

従来の1,000単位に相当する区分は(Ⅱ)800単位になりました。上位区分(Ⅰ)1,200単位が新設されており、体制を整えれば増額になります。

(Ⅱ)の要件は何ですか?

①利用者の心身の状況や家族等を取り巻く環境の変化に応じ、随時、多職種が共同して小規模多機能型居宅介護計画を見直していること、②日常的に地域住民等との交流を図り、利用者の状態に応じて地域の行事や活動等に積極的に参加していること、の2つです。

(Ⅰ)で追加される要件は何ですか?

③地域住民等の相談に対応する体制の確保、④保険外サービスも含めた包括的な居宅サービス計画の作成、⑤4項目のいずれかへの適合、の3つです。

(Ⅰ)の5つ目は4項目すべて必要ですか?

いいえ。いずれか1つに適合すれば足ります。市町村が実施する地域支援事業等への参加でも要件を満たします。

地域住民の相談対応は何回すればよいですか?

回数の定めはありません。Q&Aは「一定の頻度を定めて行う性格のものではなく、常に地域住民等からの相談を受け付けられる体制がとられていれば要件を満たす」としています。

加算のために記録様式を新しく作る必要がありますか?

不要です。Q&Aは「日々の相談記録等、既存の記録において確認できれば足りるものであり、加算要件を満たすことを目的として、新たに資料を作成することは要しない」と明記しています。

事例検討会を市町村と共催した場合も要件に当たりますか?

当たります。ただし「共同」とは複数の主体が参画することを指し、市町村等と共同する場合でも、地域住民や他の事業者などが開催者または参加者として参画している必要があります。

留意事項通知に例示されていない取組でも認められますか?

Q&Aは「当該通知に例示する以外の取組も該当し得る」としています。地域の実情に応じてさまざまな取組が考えられるためです。

看多機でも同じ加算がありますか?

あります。看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護にも同じ(Ⅰ)1,200単位・(Ⅱ)800単位の加算が設けられています。

どのくらいの事業所が算定していますか?

改定前の数値ですが、事業所ベースで90.0%です(令和4年3月サービス提供分)。単位数ベースでも総単位数の4.18%を占め、小多機の加算では最大です。

まとめ
  • 総合マネジメント体制強化加算は(Ⅰ)1,200単位・(Ⅱ)800単位(1月)
  • 令和6年度改定で、従来の1,000単位が(Ⅱ)800単位に引き下げられた
  • 据え置きのままだと1月200単位、登録者20人なら年間約48万円のマイナス
  • (Ⅰ)を取れば1月400単位の増で、年間約96万円の差になる
  • (Ⅱ)の要件は「随時の計画見直し」と「地域住民等との交流」の2つ
  • 計画見直しは「定期的に」ではなく「随時」が求められている
  • (Ⅰ)は地域住民等の相談対応体制、保険外サービスを含む包括的な計画、4項目のいずれかへの適合が加わる
  • 4項目は「いずれか1つ」でよい
  • 相談対応に回数のノルマはなく、受け付けられる体制があればよい
  • 証拠は既存の相談記録で足り、新たな資料の作成は不要とQ&Aが明言
  • 地域資源を活用した支援も頻度の定めはなく、常に問題意識をもって取り組んでいればよい
  • 留意事項通知に例示されていない取組も該当し得る
  • 事例検討会は市町村や事業者団体との共催でも対象になる
  • ただし「共同」には複数の主体の参画が必要で、市町村と2者だけでは足りない
  • 実務上は④市町村の地域支援事業への参加がもっとも確認しやすい
  • 改定前の算定率は事業所ベースで90.0%と、小多機の標準装備といえる水準
  • 単位数ベースでも総単位数の4.18%を占め、加算では最大
  • 看多機・定期巡回にも同一区分・同一単位数の加算がある
参考にした情報

※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示、Q&Aおよび審議会資料にもとづいて整理したものです。実際の算定・届出にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。地域密着型サービスの指定・指導は市町村が行うため、要件充足の判断や必要な記録の水準が自治体によって異なる場合があります。本文中の年間金額は単位数を単純に積算した概算であり、地域区分により実際の金額とは異なります。算定率は令和4年3月サービス提供分の数値で、改定前の区分にもとづくものです。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。取り組みやすさの評価や棚卸しの進め方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。

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リハウルフ
理学療法士/介護支援専門員/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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