訪問看護の退院時共同指導加算とは?600単位・2回算定できる条件を解説

訪問看護の退院時共同指導加算は600単位。訪問看護の加算のなかでも、1回あたりの金額としてはターミナルケア加算に次ぐ大きさです。それにもかかわらず、算定できたはずのケースで取り漏れているのをよく見かけます。理由ははっきりしていて、「退院前カンファレンスに参加したかどうか」という、請求業務ではなく現場の動きで決まる加算だからです。
この記事では、告示と老企第36号の原文にもとづいて、600単位の算定要件を整理します。とくに初回加算とは併算定できないこと、特別な管理を必要とする利用者なら2回算定できること、そして准看護師では算定できないこと——この3点は実務での判断を左右するので、条文を引用しながら丁寧に扱います。筆者は理学療法士16年目・介護支援専門員で、訪問看護ステーションからの訪問にも長く関わってきました。
- 退院時共同指導加算600単位という単位数と、算定するタイミング
- 「退院時共同指導」の定義(告示の原文つき)
- 准看護師では算定できないこと
- 初回加算を算定する場合は併算定できないこと
- 特別な管理を必要とする利用者なら2回算定できる条件
- 老健・介護医療院からの退所も対象になること
- 前月に共同指導を行っていても算定できること
- 複数のステーションが入る場合の1回ずつの算定と、確認義務
- 医療保険・定期巡回・看多機との併算定の制限
- 要支援(介護予防訪問看護)でも同額で算定できること
ちびウルフ退院前カンファレンスって、行っても加算にならないこともあるんですか?
リハウルフあります。参加しただけでは算定できません。その後に初回の訪問看護を実施して、はじめて算定できるという構造です。カンファレンスに出たのに結局サービスが始まらなかった、というケースでは加算になりません。
訪問看護の退院時共同指導加算とは?600単位の算定要件
退院時共同指導加算は、指定居宅サービス介護給付費単位数表の訪問看護費「ホ」に定められた加算です。まず条文を確認します。
注 病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に入院中又は入所中の者が退院又は退所するに当たり、指定訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く。)が、退院時共同指導(中略)を行った後に、当該者の退院又は退所後に当該者に対する初回の指定訪問看護を行った場合に、退院時共同指導加算として、当該退院又は退所につき1回(特別な管理を必要とする利用者については、2回)に限り、所定単位数を加算する。ただし、ニの初回加算を算定する場合は、退院時共同指導加算は算定しない。」
(指定居宅サービス介護給付費単位数表 訪問看護費 ホより引用)
この短い条文のなかに、押さえるべき論点が4つ入っています。順に見ていきます。
「退院時共同指導」とは何をすることか
告示は、退院時共同指導を次のように定義しています。
- 病院・診療所・老健・介護医療院の主治の医師その他の従業者と共同すること
- 利用者本人またはその看護に当たっている者に対して、在宅での療養上必要な指導を行うこと
- その内容を提供すること(記録に残し、伝えること)
「カンファレンスに出席した」だけでは足りません。本人や家族に対して在宅療養上の指導を行い、その内容を提供したという事実が必要です。老企第36号は「退院時共同指導を行った場合は、その内容を訪問看護記録書に記録すること」としています。カンファレンスの議事録ではなく、自事業所の訪問看護記録書に残すという点に注意してください。
准看護師では算定できない
条文は「看護師等(准看護師を除く)」と明記しています。訪問看護費の本体では准看護師も「看護師等」に含まれますが、この加算だけは除外されています。
算定するのは「初回の訪問看護を実施した日」
老企第36号は、算定日を明確にしています。
なお、当該加算を算定する月の前月に退院時共同指導を行っている場合においても算定できること。」
(平成12年3月1日老企第36号 第二の4(26)①より引用)
後半が実務では重要です。月をまたいでも構いません。3月末にカンファレンスに参加し、4月に退院して初回訪問を行った場合、4月分の請求で600単位を算定できます。「先月の話だから」と諦めているケースをときどき見かけますが、算定できます。
初回加算とは併算定できない|どちらを選ぶべきか
ここが最大の注意点です。告示のただし書きに「ニの初回加算を算定する場合は、退院時共同指導加算は算定しない」とあります。退院してきた新規利用者は、初回加算と退院時共同指導加算の両方の要件を同時に満たすことがほとんどですが、算定できるのは一方だけです。
| 加算 | 単位数 | 要件 |
|---|---|---|
| 退院時共同指導加算 | 600単位(2回なら1,200単位) | 退院前カンファレンスに参加し共同指導を実施 |
| 初回加算(Ⅰ) | 350単位 | 退院・退所した当日に看護師が初回訪問 |
| 初回加算(Ⅱ) | 300単位 | それ以外の新規(過去2か月に利用歴がないこと) |
金額だけ見れば、退院時共同指導加算のほうが250〜300単位多いことになります。カンファレンスに参加できたのであれば、こちらを選ぶのが通常の判断です。
2回算定できるのはどんな場合か
条文の「特別な管理を必要とする利用者については、2回」という部分です。通知が条件を具体化しています。
(老企第36号 第二の4(26)①より引用)
2回算定するには、次の2つを両方満たす必要があります。
- 対象者要件:厚生労働大臣が定める状態(=特別管理加算の対象となる状態)にある利用者であること
- 実施要件:複数日に退院時共同指導を行ったこと
同じ日に2回話し合っても2回にはなりません。日を分けて2回実施する必要があります。医療的な管理が複雑なケースでは、退院1週間前と退院前日というように2回に分けて調整することが実際にありますが、そのときは1,200単位を算定できます。対象となる状態の一覧は訪問看護の特別管理加算とは?対象者・単位数をわかりやすく解説で扱っています。
複数のステーションが入る場合
2回算定できる利用者について、複数の事業所が関わる場合の整理も通知にあります。
- 複数の訪問看護ステーション・定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所・看護小規模多機能型居宅介護事業所が退院時共同指導を行う場合、1回ずつの算定も可能
- その際は、主治の医師が所属する医療機関・老健・介護医療院に対し、他の事業所における退院時共同指導の実施の有無を確認すること
確認義務があります。2か所のステーションが入るケースでは、お互いに「向こうが取っているだろう」と思い込んだり、逆に両方が算定して過誤になったりします。カンファレンスの場で確認しておくのが確実です。
医療保険・他サービスとの併算定の制限
老企第36号は、同月内の重複算定を明確に禁じています。
(老企第36号 第二の4(26)④より引用)
末書きの「②の場合を除く」は、前述の「2回算定できる利用者に複数の事業所が関わり1回ずつ算定する場合」を指します。それ以外は、1人の利用者につき同月に1つの制度・1つのサービスでしか算定できないと理解してください。
老健・介護医療院からの退所も対象になる
見落とされやすいのですが、条文は「病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に入院中又は入所中の者」としています。医療機関からの退院だけではありません。
| 元の場所 | 算定の可否 |
|---|---|
| 病院・診療所からの退院 | ○ |
| 介護老人保健施設からの退所 | ○ |
| 介護医療院からの退所 | ○ |
| 特別養護老人ホームからの退所 | ×(条文に含まれない) |
| ショートステイからの帰宅 | × |
特養からの退所は対象外です。老健からの在宅復帰は訪問看護が入る典型的な場面なので、ここは覚えておく価値があります。
要支援でも同額600単位を算定できる
指定介護予防サービス介護給付費単位数表の介護予防訪問看護費「ニ」にも、まったく同じ内容の退院時共同指導加算600単位が定められています。単位数も、2回算定の条件も、初回加算との併算定不可も同じです。
介護予防のサービスは基本報酬が低く設定されるのが通例なので、要支援の方の退院時に「予防だから加算は少ないだろう」と思い込むのは損です。訪問看護の加算では、特別管理加算・専門管理加算・退院時共同指導加算が要介護と同額です。
退院前カンファレンスに参加しただけで算定できますか?
できません。共同指導を行った後に、退院・退所後の初回の訪問看護を実施してはじめて算定できます。カンファレンスに参加したものの、結局サービス利用に至らなかった場合は算定できません。算定日は初回の訪問看護を実施した日です。
准看護師がカンファレンスに参加した場合は算定できますか?
できません。告示は「指定訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く。)」と明記しています。保健師・看護師、またはPT・OT・STが参加する必要があります。
先月カンファレンスに出て、今月退院した場合も算定できますか?
算定できます。老企第36号に「当該加算を算定する月の前月に退院時共同指導を行っている場合においても算定できること」と明記されています。算定するのは初回の訪問看護を実施した日、つまり今月です。
初回加算と退院時共同指導加算はどちらを算定すべきですか?
両方の要件を満たす場合、金額の大きい退院時共同指導加算600単位を算定するのが通常です。初回加算は(Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位なので、250〜300単位の差があります。ただし退院前カンファレンスに参加していない場合は退院時共同指導加算を算定できないため、初回加算を算定することになります。
2回算定するには何が必要ですか?
①利用者が厚生労働大臣が定める状態(特別管理加算の対象となる状態)にあること、②複数日に退院時共同指導を行ったこと——この両方が必要です。同じ日に2回話し合っても1回としてしか算定できません。
2か所の訪問看護ステーションが入る場合はどうなりますか?
2回算定が可能な利用者(特別な管理を必要とする状態の方)については、各事業所が1回ずつ算定することも可能です。その際は、主治医が所属する医療機関等に対して、他の事業所における退院時共同指導の実施の有無を確認する必要があります。
オンラインでカンファレンスに参加した場合も算定できますか?
算定できます。テレビ電話装置等を活用して行うことが認められています。ただし利用者またはその看護に当たる者の同意を得る必要があり、個人情報保護および医療情報システムの安全管理に関するガイドライン等を遵守することが求められます。
老健からの退所でも算定できますか?
算定できます。条文は「病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に入院中又は入所中の者」としており、老健・介護医療院からの退所も対象です。ただし特別養護老人ホームからの退所やショートステイからの帰宅は条文に含まれておらず、対象外です。
要支援の人にも算定できますか?
算定できます。介護予防訪問看護費にも同額600単位の退院時共同指導加算が定められており、2回算定の条件や初回加算との併算定不可の扱いも同じです。
同じ月に医療保険の訪問看護でも退院時共同指導加算を算定できますか?
できません。介護保険で請求した場合、同月に医療保険の訪問看護における当該加算、定期巡回・随時対応型訪問介護看護および看護小規模多機能型居宅介護における当該加算は算定できません。ただし2回算定が可能な利用者に複数の事業所が関わり1回ずつ算定する場合は例外です。
- 退院時共同指導加算は訪問看護費「ホ」に定められた600単位の加算
- 算定するのは退院・退所後の初回の訪問看護を実施した日
- カンファレンスへの参加だけでは足りず、本人・家族への在宅療養上の指導が必要
- 准看護師では算定できない(看護師等から明示的に除外されている)
- 初回加算を算定する場合は併算定できない
- 初回加算(Ⅰ)350単位・(Ⅱ)300単位より600単位のほうが有利
- 特別な管理を必要とする利用者に複数日実施した場合は2回(1,200単位)
- 同じ日に2回話し合っても1回としてしか算定できない
- 前月に共同指導を行っていても、今月の初回訪問で算定できる
- 老健・介護医療院からの退所も対象(特養・ショートステイは対象外)
- 複数事業所が関わる場合は主治医の所属先に実施の有無を確認する義務がある
- テレビ電話装置等での参加も可能(本人・家族の同意が必要)
- 同月に医療保険・定期巡回・看多機で同加算を算定していれば算定できない
- 実施内容は訪問看護記録書に記録する
- 要支援(介護予防訪問看護)でも同額600単位を算定できる
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)別表 指定居宅サービス介護給付費単位数表「訪問看護費」ホ
- 指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第127号)別表 指定介護予防サービス介護給付費単位数表「介護予防訪問看護費」ニ
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号)第二の4(26)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第六号
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示および留意事項通知にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者の解釈をご確認ください。「特別な管理を必要とする利用者」の範囲などの解釈は、都道府県・市町村によって異なる場合があります。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務上の運用に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




