病院から介護施設に移った療法士が、最初にとまどうのはここです。「単位」で動いていた1日が、いきなり「生活」で動く1日に変わる。

この記事では、理学療法士16年目・介護支援専門員として在宅と施設の両方に関わってきた立場から、介護施設で働くPT・OT・STの仕事内容を、人員基準と報酬の条文に沿って整理します。1日の流れは老健と特養で分けて示します。求人票では見えない部分まで書きました。

この記事でわかること
  • 老健と特養で「配置の名前」が違うこと
  • 老健のPT・OT・STの人員基準(入所者100人に1人)
  • 特養では機能訓練指導員として配置される意味
  • 施設種別ごとの1日の流れの違い
  • リハ職が関わる主な加算と2024年度改定の要点
  • リハ・口腔・栄養の一体的取組という新しい柱
  • 病院とのギャップ、やりがいとしんどさ
  • 1人職場で最初に手をつけるべきこと

介護施設のリハビリ職の仕事内容は「配置の名前」で決まる

まず押さえるべきは、同じPTでも、老健と特養では制度上の立場が違うということです。ここを知らずに就職すると、期待していた仕事と実際が食い違います。

老健は「理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士」として配置される

介護老人保健施設基準 第2条第1項第5号・第17条五 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士 常勤換算方法で、入所者の数を百で除して得た数以上

(機能訓練)第十七条 介護老人保健施設は、入所者の心身の諸機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるため、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを計画的に行わなければならない

入所者100人につき常勤換算1人以上。職種名がそのまま人員基準に書かれているのが老健の特徴です。在宅復帰・在宅療養支援が施設の役割なので、リハビリは施設機能の中核として位置づけられています。

特養は「機能訓練指導員」として配置される

一方、特別養護老人ホームの人員基準にPT・OT・STという職種名は出てきません。

指定介護老人福祉施設基準 第2条第1項第5号・第7項・第8項、第17条五 機能訓練指導員 一以上

7 機能訓練指導員は、日常生活を営むのに必要な機能を改善し、又はその減退を防止するための訓練を行う能力を有すると認められる者でなければならない。
8 機能訓練指導員は、当該指定介護老人福祉施設の他の職務に従事することができる。

(機能訓練)第十七条 指定介護老人福祉施設は、入所者に対し、その心身の状況等に応じて、日常生活を営むのに必要な機能を改善し、又はその減退を防止するための訓練を行わなければならない。

この「訓練を行う能力を有すると認められる者」に該当するのは、PT・OT・STのほか、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師です(はり師・きゅう師は、PT等の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で6か月以上機能訓練指導に従事した経験を有する者に限る、と厚生労働大臣が定める基準に規定)。

求人票を読むときの注意特養の「機能訓練指導員募集」は、PTを求めているとは限りません。看護師が兼務しているポジションの後任という場合もあります。また第8項のとおり他職務との兼務が明文で認められているため、実際には介護業務や送迎に時間を取られる求人も存在します。面接で「機能訓練に確保できる時間はどれくらいか」を必ず確認してください。

施設種別ごとの位置づけ

施設・サービスリハ職の配置仕事の性格
介護老人保健施設PT・OT・STとして常勤換算で入所者数÷100以上在宅復帰に向けた計画的リハビリ。短期集中リハなど加算が多く、実施記録の比重が大きい
特別養護老人ホーム機能訓練指導員として1以上(他職務と兼務可)生活機能の維持と重度化防止。集団体操、離床、ポジショニング、介護職への助言
介護医療院リハビリテーションを提供する体制が求められる医療的ケアの必要度が高い層。廃用予防と看取りまでを見据えた関わり
介護付き有料老人ホーム(特定施設)個別機能訓練加算を算定する場合、専従常勤のPT等を1名以上入居者の生活場面での自立支援。加算を取るための計画と記録が中心
通所介護(デイサービス)機能訓練指導員1以上(他職務と兼務可)個別機能訓練計画の作成と実施。利用者数が多く、回転の速さが求められる
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ざっくり言うと、老健は「リハビリをする施設」、特養は「生活の場にリハ職がいる」という構造です。どちらが良い悪いではなく、求められる動き方がまったく違う。ここを理解せずに特養へ行くと「リハビリらしいことができない」と言い出すことになります。

1日の流れ(老健と特養で比べる)

時間老健のPT・OT・ST特養の機能訓練指導員
8:30申し送り。夜間の状態変化、入退所予定、リハ中止者の確認申し送り。転倒・体調変化・皮膚トラブルの情報を拾う
9:00個別リハ開始。20分単位で回す施設が多いフロア巡回。離床状況、車椅子の座り方、食事姿勢を確認
10:00個別リハ継続。短期集中リハの対象者を優先集団体操。介護職と一緒に実施し、動きの変化を見る
11:00入所前後の評価、退所前の家屋調査の準備個別の機能訓練。移乗、歩行、立ち上がりを生活場面で
12:00休憩(食事場面の観察に入ることも)食事場面の観察。姿勢、自助具、むせの有無をSTと共有
13:30個別リハ再開。合間にリハ計画書の作成・見直し福祉用具の調整、ポジショニング、介護職への助言
15:00リハビリテーション会議、多職種カンファレンス個別機能訓練計画の作成・見直し。サービス担当者会議への参加
16:00記録、加算要件の書類整備、家族への説明記録、ヒヤリハットの検討、介護職からの相談対応
17:00翌日の調整、退所後のサービスに関する情報提供翌日の準備、居室環境の見直し
実務としての違い老健は「自分の時間割」で動くのに対し、特養は「フロアの流れに入り込む」動き方になります。特養で成果を出す人は、訓練室に人を呼ぶのではなく、介護職が毎日行う介助そのものを変えにいきます。移乗の方法をひとつ変えるだけで、100人分の生活が変わることがある。ここが施設リハの効き所です。

リハ職が関わる主な加算(2024年度改定の要点)

介護施設のリハ職は、加算の要件と直結した働き方をします。主なものを整理します。

施設加算単位数・要件のポイント
老健認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)240単位/日(2024年度新設)。退所後に生活する居宅等を訪問し、把握した生活環境を踏まえたリハ計画を作成することが要件
老健認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)120単位/日。いずれも週3日を限度、算定期間は入所後3か月以内
老健リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)53単位/月(2024年度新設)。口腔衛生管理加算(Ⅱ)と栄養マネジメント強化加算の算定等が要件。(Ⅱ)は33単位/月
特養個別機能訓練加算(Ⅰ)12単位/日
特養個別機能訓練加算(Ⅱ)20単位/月
特養個別機能訓練加算(Ⅲ)20単位/月(2024年度新設)。(Ⅰ)(Ⅱ)と併算定可
特定施設個別機能訓練加算12単位/日。専ら機能訓練指導員の職務に従事する常勤のPT等を1名以上配置

2024年度改定の柱は「リハ・口腔・栄養の一体的取組」

新設された加算区分に共通する考え方が、ここに示されています。

介護保険施設におけるリハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組の推進
  • 口腔衛生管理加算(Ⅱ)及び栄養マネジメント強化加算を算定していること。
  • リハビリテーション実施計画等の内容について、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の情報を関係職種の間で一体的に共有すること。その際、必要に応じてLIFEに提出した情報を活用していること。
  • 共有した情報を踏まえ、リハビリテーション計画または個別機能訓練計画について必要な見直しを行い、見直しの内容について関係職種に対し共有していること。

この要件を満たす新たな区分として、老健のリハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)53単位/月、特養等の個別機能訓練加算(Ⅲ)20単位/月などが設けられました。

実務上の意味は明確です。これからの施設リハ職は、管理栄養士と歯科衛生士の情報を読めないと計画が書けません。体重の推移、食形態、口腔のアセスメント。リハ室の中だけで完結する仕事ではなくなっています。

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覚えることが多そう……。病院のリハとはやっぱり違うんだね。

病院との違いと、施設で働くやりがい

ギャップとして大きい5つ

  • 単位ノルマの代わりに、加算要件と記録が来る|1日の実施量よりも、計画と記録の整合性が問われます
  • 1人職場になりやすい|特養で機能訓練指導員1名、相談相手がいない配置は珍しくありません
  • 設備が乏しい|平行棒もエルゴメータもない前提で、生活場面を評価する力が要ります
  • 時間軸が長い|数か月で退院ではなく、数年から看取りまで関わります
  • 成果が数字で見えにくい|FIMが上がらなくても、転倒が減り、経口摂取が続いていれば成功です

それでも施設を選ぶ理由

  • 生活そのものを設計できる|起き方、座り方、食べ方、移動。24時間すべてが介入対象です
  • 介入の効果が環境に残る|自分が組んだ移乗方法や車椅子設定は、自分がいない時間も働き続けます
  • 多職種と本気で組める|毎日同じ建物にいるので、机上の連携になりません
  • 最期まで関われる|看取り期のポジショニングや呼吸の楽な姿勢は、明確にリハ職の仕事です
  • 介護保険制度を体で覚えられる|加算と計画に関わることで、制度の読み方が身につきます
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訪問リハが主戦場の私が言うのも何ですが、施設で「介護職に伝わる言葉」を覚えた療法士は、その後どこへ行っても強いです。専門用語を外して、同じ動作を目の前でやって見せる。この技術は、病院の中だけでは身につきません。

1人職場で最初にやるべきこと

  1. 1算定している加算を全部確認する|自分の業務がどの要件に紐づいているかを把握します。重要事項説明書で確認できます
  2. 2計画書の様式と記録の運用ルールを聞く|前任者の様式をそのまま使うと、要件を満たさないまま引き継ぐことがあります
  3. 3介護職の1日の動線を実際に歩く|朝の起床介助と夕方の排泄介助を一度見れば、変えるべき点が見えます
  4. 4ケアマネと管理栄養士に自己紹介をしておく|計画も加算も、この2職種との連携なしには回りません
  5. 5外部に相談先を作る|1人職場は技術が孤立します。職能団体の研修や地域のリハ職の集まりに、早めにつながっておきます
よくある質問
特養にPT・OT・STの配置義務はありますか?
ありません。特別養護老人ホームの人員基準は「機能訓練指導員 一以上」であり、職種名の指定はありません。機能訓練指導員は「日常生活を営むのに必要な機能を改善し、又はその減退を防止するための訓練を行う能力を有すると認められる者」とされ、PT・OT・STのほか看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師が該当します(はり師・きゅう師には実務経験の要件があります)。
老健のPT・OT・STは何人配置されますか?
介護老人保健施設基準第2条第1項第5号により、常勤換算方法で入所者の数を100で除して得た数以上とされています。入所者100人の施設なら常勤換算1人以上が最低ラインです。実際には加算の算定状況によって、これより多く配置している施設が多くあります。
機能訓練指導員は他の業務と兼務させられますか?
制度上は可能です。特養の人員基準第2条第8項は「機能訓練指導員は、当該指定介護老人福祉施設の他の職務に従事することができる」と明記しています。通所介護でも同様の規定があります。そのため求人を検討する際は、機能訓練に確保できる時間の実態を必ず確認してください。
2024年度改定でリハ職の仕事はどう変わりましたか?
リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養を一体的に取り組むことを評価する加算区分が新設されました。老健のリハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)53単位/月、特養等の個別機能訓練加算(Ⅲ)20単位/月などです。要件には、口腔衛生管理加算(Ⅱ)と栄養マネジメント強化加算の算定、関係職種間での一体的な情報共有、必要に応じたLIFE情報の活用、共有情報を踏まえた計画の見直しが含まれます。リハ単独で完結しない設計になったのが大きな変化です。
病院から施設へ転職すると、スキルが落ちませんか?
評価と治療の対象が変わるだけで、落ちるとは限りません。設備を使わずに生活場面から機能を評価する力、環境調整の技術、介護職に伝えて実行してもらう力は、施設でしか鍛えられません。一方で急性期の医学的管理や機器を使った治療から離れるのは事実なので、外部研修や事例検討の場を自分で確保しておくことをおすすめします。
認知症短期集中リハビリテーション実施加算の(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?
2024年度に新設された(Ⅰ)は240単位/日で、入所者が退所後に生活する居宅または社会福祉施設等を訪問し、把握した生活環境を踏まえたリハビリテーション計画を作成していることが要件です。(Ⅱ)は120単位/日で、従来の要件(PT等の適切な配置と、入所者数に対する適切な人数)に該当するものです。いずれも週3日を限度とし、算定期間は入所後3か月以内です。
まとめ
  • 老健はPT・OT・STとして人員基準に明記され、常勤換算で入所者数÷100以上の配置。
  • 老健は運営基準第17条で「リハビリテーションを計画的に行わなければならない」とされている。
  • 特養にPT等の配置義務はなく、「機能訓練指導員 一以上」として配置される。
  • 機能訓練指導員には、PT・OT・STのほか看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師が該当する。
  • 特養の機能訓練指導員は、他の職務との兼務が省令上明文で認められている(第2条第8項)。
  • 老健は自分の時間割で動き、特養はフロアの流れに入り込む。求められる動き方が違う。
  • 特養で効くのは訓練室での個別対応より、介護職の日々の介助そのものを変えること。
  • 主な加算は、老健の認知症短期集中リハ(Ⅰ)240単位/日・(Ⅱ)120単位/日(週3日限度、入所後3か月以内)。
  • 老健のリハビリテーションマネジメント計画書情報加算は(Ⅰ)53単位/月(2024年度新設)、(Ⅱ)33単位/月。
  • 特養等の個別機能訓練加算は(Ⅰ)12単位/日、(Ⅱ)20単位/月、(Ⅲ)20単位/月(2024年度新設、併算定可)。
  • 2024年度改定の柱は、リハ・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組。LIFE情報の活用と職種間共有が要件に入った。
  • ギャップは、記録の比重、1人職場、設備の乏しさ、長い時間軸、成果の見えにくさ。
  • やりがいは、生活そのものの設計、環境に残る介入、多職種との実質的な連携、看取りまでの関わり。
  • 着任後はまず、算定加算の確認、計画書と記録の運用ルール、介護職の動線の把握、ケアマネと管理栄養士への接続、外部の相談先の確保。
参考にした情報

※制度に関する記述は上記の省令・告示・改定資料にもとづきます。条文は要旨として整理している箇所があり、正確な文言は原典をご確認ください。単位数および加算の要件は令和6年度改定時点のもので、その後の改定により変わる可能性があります。加算の算定には、ここに挙げた以外の要件が定められているものがあります。実際に算定する際は、告示および留意事項通知の原文と、指定権者の解釈をご確認ください。1日の流れ、病院との違い、着任後の動き方に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。配置人数、兼務の範囲、業務の内訳は施設ごとの運用によって大きく異なります。内容は2026年8月時点で確認できた情報です。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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