「施設ケアマネは楽そう」「訪問がないぶん暇でしょう」。居宅から施設に移った人が、最初の1か月でこの認識を捨てるのを何度も見てきました。

この記事では、介護支援専門員として現場に関わってきた立場から、施設ケアマネ(計画担当介護支援専門員)の仕事内容と、居宅ケアマネとの制度上の違いを、省令の条文にさかのぼって整理します。転職を検討している方にも、実習・研修中の方にも使える形にしました。

この記事でわかること
  • 施設ケアマネの正式な呼び方と法令上の位置づけ
  • 施設サービス計画の作成手順(条文ベース)
  • 計画作成以外に課されている7つの業務
  • 居宅ケアマネとの担当人数の違い(100対1と44対1)
  • モニタリング頻度の規定の違い
  • 給付管理業務の有無という決定的な差
  • 兼務の可否と管理者要件の違い
  • 施設ケアマネの1日の流れと、しんどくなる場面

施設ケアマネの仕事内容は省令で決まっている

まず用語から。施設ケアマネという呼び名は通称で、省令上の名称は「計画担当介護支援専門員」です。指定介護老人福祉施設基準(特養の運営基準)第12条第2項に、施設サービス計画に関する業務を担当する介護支援専門員をそう呼ぶ、と定義されています。

人員基準はこうです。

指定介護老人福祉施設基準 第2条第1項第6号・第9項六 介護支援専門員 一以上(入所者の数が百又はその端数を増すごとに一を標準とする。)

9 第一項第六号の介護支援専門員は、専らその職務に従事する常勤の者でなければならない。ただし、入所者の処遇に支障がない場合は、当該指定介護老人福祉施設の他の職務に従事することができる。

ここに、この仕事の性格が凝縮されています。100人に1人という配置基準と、他職種との兼務が認められているという2点です。これが居宅との違いを生みます。

施設サービス計画を作成する流れ

特養の運営基準第12条は、計画作成の手順を細かく定めています。実務の順番どおりに並べるとこうなります。

  1. アセスメント|入所者の能力、置かれている環境等の評価を通じて課題を把握する。入所者及びその家族に面接して行うことが条文上の要件(第4項)。
  2. 原案の作成|本人・家族の意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、サービスの目標と達成時期、内容、留意事項等を記載(第5項)。
  3. サービス担当者会議または照会|施設サービスの提供に当たる他の担当者を招集して開催、または照会等により専門的見地からの意見を求める(第6項)。
  4. 説明と文書同意|原案の内容を入所者または家族に説明し、文書により入所者の同意を得る(第7項)。
  5. 計画の交付|作成した施設サービス計画を入所者に交付する(第8項)。
  6. モニタリング|実施状況の把握と継続的なアセスメントを行い、必要に応じて変更する(第9項・第10項)。
居宅と決定的に違うのはサービス担当者会議居宅は外部の事業所を招集しますが、施設は同じ建物の中の職員を集めます。生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員、管理栄養士。日程調整の負荷はまったく違いますが、そのぶん「会議のための会議」になりやすく、意見が出ない会議を回してしまう危険もあります。

計画作成以外に課されている7つの業務

施設ケアマネの業務は計画作成だけではありません。運営基準第22条の2(計画担当介護支援専門員の責務)が、計画作成業務に加えて行うものを列挙しています。

  1. 1入所時の情報把握|居宅介護支援事業者への照会等により、心身の状況、生活歴、病歴、サービス利用状況等を把握する
  2. 2居宅で生活できるかの定期的な検討|心身の状況と環境に照らして、居宅で日常生活を営めるかを定期的に検討する
  3. 3退所に必要な援助|居宅で生活できると認められる入所者に、本人・家族の希望や退所後の環境を勘案して援助を行う
  4. 4退所時の情報提供と連携|居宅サービス計画の作成等に資するため、居宅介護支援事業者へ情報提供し、関係者と密接に連携する
  5. 5身体的拘束等の記録|態様および時間、その際の入所者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録する
  6. 6苦情の内容等の記録|運営基準第33条第2項に規定する苦情の内容等を記録する
  7. 7事故の状況と処置の記録|運営基準第35条第3項に規定する事故の状況および採った処置を記録する

注目してほしいのは5〜7です。身体的拘束、苦情、事故。施設で起きる「重い記録」が、条文上ここに集められています。求人票の業務内容欄には書かれないことが多いのに、実際には精神的な負荷がいちばん大きい部分です。

リハウルフリハウルフ

施設ケアマネを「計画を書く人」だと思って入ると、必ずギャップが出ます。実態は計画作成+記録の要+家族対応の窓口+入退所の調整役条文の第22条の2を読んでから求人を見ると、聞くべき質問が変わります。

施設ケアマネと居宅ケアマネの違い

まず全体を並べます。根拠は指定介護老人福祉施設基準と、指定居宅介護支援等基準(平成11年厚生省令第38号)です。

項目施設ケアマネ居宅ケアマネ
省令上の名称計画担当介護支援専門員介護支援専門員
作成する計画施設サービス計画居宅サービス計画(ケアプラン)
配置基準1以上(入所者100又はその端数を増すごとに1を標準)1以上(利用者44又はその端数を増すごとに1。ケアプランデータ連携システムの利用と事務職員の配置がある場合は49)
アセスメントの場入所者及びその家族に面接利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接
モニタリング定期的に入所者に面接し、定期的に結果を記録少なくとも1月に1回面接(原則として居宅訪問)し、少なくとも1月に1回結果を記録
サービス担当者会議施設内の担当者を招集。照会等でも可外部の各サービス事業所の担当者を招集
給付管理なしあり(区分支給限度基準額の管理、給付管理票の作成・提出)
兼務専従常勤が原則だが、入所者の処遇に支障がなければ施設内の他職務との兼務が可能管理者は原則専従(自事業所の介護支援専門員の職務等は例外)
管理者の資格要件介護支援専門員であることは要件ではない(施設長の要件による)主任介護支援専門員(令和9年3月31日までの経過措置あり)
報酬上の位置づけ施設サービス費に包括。単独の報酬はない居宅介護支援費として事業所の収入になる

担当人数「100対1」の読み方

数字だけ見ると施設のほうが2倍以上を担当することになりますが、そのまま「2倍きつい」とはなりません。施設は同じ建物にいて、毎日情報が入ってくるからです。移動時間もゼロです。

ただし注意点があります。100対1は「標準」であって上限ではありません。条文は「一以上(入所者の数が百又はその端数を増すごとに一を標準とする。)」です。定員120名の施設でケアマネ1人という配置が、直ちに基準違反になるわけではない。求人を見るときは、定員と配置人数を必ずセットで確認してください。

兼務は「支障がない場合」に限られる第2条第9項のただし書きは便利に使われがちですが、条件は「入所者の処遇に支障がない場合」です。介護職員として夜勤に入りながら100人分の計画を回すという状態は、この条件を満たしているのか。面接時に「兼務の有無と、その割合」を聞いておくと、入職後の落差を防げます。

モニタリング規定の違いが生む働き方の差

居宅は「少なくとも1月に1回、利用者に面接」「原則として居宅を訪問」「少なくとも1月に1回、結果を記録」と、回数が数字で切られています。一方、施設は「定期的に入所者に面接」「定期的にモニタリングの結果を記録」と書かれているだけです。

これは楽という意味ではありません。頻度を自分で設計しなければならないということです。多くの施設は月1回を目安に運用していますが、根拠は省令ではなく施設のルールです。監査で問われるのは「定期的に行っているか」と「その記録があるか」なので、運用ルールを文書で決めておく必要があります。

給付管理がないことの意味

これが働き方としては最大の違いです。居宅ケアマネの月末月初は、サービス提供票の配布と回収、実績の突合、給付管理票の作成・提出に持っていかれます。施設サービス費は包括的に算定されるため、施設ケアマネにこの業務はありません。

そのかわり、施設ケアマネには居宅にはない業務が来ます。入退所の判定、空床管理に関わる調整、入院・退院の連絡、家族への説明、加算要件を満たすための記録の整備。月末に山が来る居宅に対し、施設は突発的な業務が日常的に差し込まれる形です。

ちびウルフちびウルフ

忙しさの「形」が違うってことなんだね。

リハウルフリハウルフ

そう。居宅は「量」で、施設は「割り込み」です。計画を書こうと座った10分後に転倒の一報が入り、家族に電話し、記録を書く。まとまった時間が取れないことが、施設ケアマネのいちばんの負荷だと思っています。

施設ケアマネの1日の流れ

特養(定員100名前後、ケアマネ1名配置)を想定した一例です。施設の規模と兼務の有無で大きく変わります。

時間主な動き
8:30出勤。夜勤帯の申し送りと介護記録の確認。体調変化、転倒、入院、家族からの連絡を拾う
9:00フロア巡回。声かけと観察。計画の見直しが必要な人を目で確認する
10:00モニタリング面接。数名ずつ回し、その場で記録に落とす
11:00入所予定者の書類確認、居宅ケアマネや病院の相談員への照会
12:00休憩(食事介助の応援に入る施設も多い)
13:30サービス担当者会議。看護、介護、機能訓練指導員、管理栄養士、生活相談員と本人・家族
15:00施設サービス計画の作成・修正。同意をもらう書類の準備
16:00家族対応の電話、入院中の入所者の状況確認、退所前カンファレンスの調整
17:00記録の整備(身体的拘束、苦情、事故)、翌日の準備
17:30退勤。ただし急変・事故があればここが崩れる
実際にはこの通りに進まない1日のうち、計画作成に確保できる時間は正味2時間もあれば良いほうです。だから多くの施設ケアマネは、面接や巡回の場で得た情報をその場で記録に落とす習慣を持っています。「あとでまとめて書く」を選ぶと、確実に破綻します。

向き不向きと、しんどくなる場面

施設ケアマネに向いている人

  • 多職種の中に入って調整するのが苦にならない人|毎日顔を合わせる相手と交渉し続ける仕事です
  • 記録を溜めない人|身体的拘束・苦情・事故の記録が条文上の責務として乗ってきます
  • 割り込みに強い人|集中を切られても戻ってこられるかどうかが効率を決めます
  • 組織の中で立場を作れる人|介護職員と管理職の板挟みになりやすいポジションです

実際にしんどくなる場面

  • 身体的拘束の記録を書き続けるとき|自分が同意した拘束を、自分で記録に残す構造になります
  • 事故後の家族対応|説明の窓口になりやすく、感情の矢面に立ちます
  • 「居宅で生活できるか」の定期検討|条文上の責務ですが、退所先がない現実との間で板挟みになります
  • 兼務が重いとき|介護職員としての勤務が増えるほど、計画は時間外に押し出されます

逆に言えば、この4つに施設としての支援体制があるかどうかが、職場選びの実質的な判断軸になります。面接で「拘束の記録は誰が書きますか」「事故報告の家族説明は誰が同席しますか」と聞いてみてください。答えの具体性で、組織の成熟度が分かります。

よくある質問
施設ケアマネの正式名称は何ですか?
計画担当介護支援専門員です。指定介護老人福祉施設基準第12条第2項で「施設サービス計画に関する業務を担当する介護支援専門員(以下「計画担当介護支援専門員」という。)」と定義されています。介護老人保健施設や介護医療院にも同様の規定があります。
施設ケアマネは1人で何人まで担当しますか?
特養の人員基準では「一以上(入所者の数が百又はその端数を増すごとに一を標準とする。)」とされています。100人に1人が標準という意味であり、上限を定めた規定ではありません。居宅介護支援は利用者44人(ケアプランデータ連携システムの利用と事務職員の配置がある場合は49人)ごとに1人が基準です。
施設ケアマネに給付管理業務はありますか?
ありません。施設サービス費は包括的に算定されるため、区分支給限度基準額の管理やサービス提供票・給付管理票の作成といった業務は発生しません。そのかわり、入退所の調整、入院時の対応、加算要件に関わる記録の整備といった業務が加わります。
施設ケアマネは他の職務と兼務できますか?
できます。特養の人員基準第2条第9項は「専らその職務に従事する常勤の者でなければならない」としたうえで、ただし書きで「入所者の処遇に支障がない場合は、当該指定介護老人福祉施設の他の職務に従事することができる」と定めています。ただし条件は「支障がない場合」です。兼務の内容と割合は、就職前に確認しておくべき項目です。
施設ケアマネのモニタリングは月1回必要ですか?
省令上は「定期的に入所者に面接すること」「定期的にモニタリングの結果を記録すること」と定められており、回数は明示されていません。居宅介護支援のように「少なくとも1月に1回」という規定ではないため、頻度は施設の運用ルールで決めることになります。多くの施設が月1回を目安にしていますが、根拠は省令ではなく施設のルールである点に注意してください。
居宅ケアマネから施設ケアマネに転職すると、何が一番変わりますか?
月末月初の給付管理がなくなる一方で、業務が突発的に差し込まれる形に変わります。また、居宅では外部事業者との調整だったものが、施設では同じ組織の同僚との調整になります。関係が近いぶん情報は早く入りますが、断りにくさや組織内での立ち位置の難しさが出てきます。管理者要件も異なり、居宅介護支援事業所の管理者は原則として主任介護支援専門員である必要があります(令和9年3月31日までの経過措置あり)。
まとめ
  • 施設ケアマネの省令上の名称は「計画担当介護支援専門員」(特養基準第12条第2項)。
  • 配置基準は1以上、入所者100又はその端数を増すごとに1が標準。上限規定ではない。
  • 専従常勤が原則だが、入所者の処遇に支障がない場合は施設内の他職務と兼務できる(第2条第9項)。
  • 計画作成の流れは、アセスメント→原案作成→担当者会議または照会→説明と文書同意→交付→モニタリング。
  • アセスメントは入所者及びその家族に面接して行う。居宅のような「居宅を訪問して」の要件はない。
  • 計画作成以外の責務は7つ(第22条の2)。入所時の情報把握、居宅生活可否の定期検討、退所援助、退所時の情報提供、身体的拘束等の記録、苦情の記録、事故の記録。
  • 居宅ケアマネの配置基準は利用者44人ごとに1(データ連携システム利用+事務職員配置で49人)。
  • モニタリングは、居宅が「少なくとも1月に1回」面接・記録と明示。施設は「定期的に」とのみ規定。
  • 給付管理は居宅のみ。施設サービス費は包括算定のため、施設ケアマネには給付管理業務がない。
  • 居宅介護支援事業所の管理者は原則として主任介護支援専門員(令和9年3月31日までの経過措置あり)。
  • 忙しさの質が違う。居宅は月末に集中する「量」、施設は日常的に差し込まれる「割り込み」。
  • 1日のうち計画作成に確保できるのは正味2時間程度。記録をその場で落とす習慣が必須。
  • 負荷が集中するのは、拘束・事故・苦情の記録と家族対応。職場選びではここの支援体制を確認する。
参考にした情報

※制度に関する記述は上記の省令にもとづきます。条文は要旨として整理している箇所があり、正確な文言は原典をご確認ください。本記事は特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)の基準を軸に整理しています。介護老人保健施設、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設、認知症対応型共同生活介護(計画作成担当者)では、それぞれの基準省令により規定が異なりますので、該当する施設の基準をご確認ください。1日の流れ、向き不向き、負荷が集中する場面に関する記述は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。配置人数、兼務の範囲、モニタリングの頻度は施設ごとの運用によって大きく異なります。内容は2026年8月時点で確認できた情報です。

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リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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