介護ベッドや車いすを借りるとき、事業所から家に来る人がいます。福祉用具専門相談員です。「用具を運んでくる人」と思われがちですが、実際には法令で役割と義務が細かく定められた専門職で、やってもらえることは想像よりずっと多い。

この記事では、理学療法士・介護支援専門員として一緒に仕事をしてきた立場から、福祉用具専門相談員とは何者なのかを、介護保険法施行令・施行規則・指定基準の条文にもとづいて整理します。依頼していい内容が分かれば、使い方が変わります。

この記事でわかること
  • 福祉用具専門相談員の法令上の位置づけ
  • なれる人(9つのルート)
  • 事業所に何人いなければならないか
  • 法令で義務づけられている仕事の中身
  • ケアマネジャーとの役割の違い
  • 家族が依頼していいこと

福祉用具専門相談員はなぜ必要な職種なのか

介護保険法施行令第4条に、根拠があります。

施行令第4条(要旨)介護保険で行われる福祉用具の貸与・販売とは、利用者が福祉用具を選定するに当たり、福祉用具専門相談員から、福祉用具に関する専門的知識に基づく助言を受けて行われる貸与または販売をいう。

つまり、専門相談員の助言なしに行われた貸与・販売は、制度上の福祉用具貸与・販売ではないということです。物を届けるだけの仕事ではなく、助言そのものが給付の中身だと法令が定めています。

リハウルフリハウルフ

ここが分かると、遠慮がなくなります。相談することが、制度の前提なんです。「忙しそうだから聞きにくい」ではなく、聞くために来てもらっていると考えてください。

福祉用具専門相談員になれる人

施行令第4条第1項は、次のいずれかに該当する者としています。

国家資格などを持つ人保健師/看護師/准看護師/理学療法士/作業療法士/社会福祉士/介護福祉士/義肢装具士
指定講習を修了した人都道府県知事が指定する事業者が行う福祉用具専門相談員指定講習の課程を修了し、修了した旨の証明書の交付を受けた者

注意しておきたい点が2つあります。

  • 「福祉用具専門相談員」という国家資格があるわけではありません|上の要件を満たす人が、その職務に就いたときの呼び名です
  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)は、この列挙に入っていません|別の職種として整理されています

指定講習で何を学ぶのか

介護保険法施行規則第22条の31が、講習の目的を定めています。

施行規則第22条の31講習は、福祉用具貸与・特定福祉用具販売等の事業を行う場合において、福祉用具の選定の援助、機能等の点検、使用方法の指導等に必要な知識及び技術を有する者の養成を図ることを目的として行われる。

講習は講義及び演習により行うものとされ、修得が求められる知識・技術の修得がなされていることを確認する等、適切な方法で行われなければならないとされています。実施は年に1回以上、内容は厚生労働大臣が定める内容以上であることが求められます。

ちびウルフちびウルフ

「選定の援助」「点検」「使用方法の指導」って、目的にちゃんと書いてあるんだね

事業所には常勤換算で2人以上

指定居宅サービス等の基準(平成11年厚生省令第37号)第194条は、指定福祉用具貸与事業所ごとに置くべき福祉用具専門相談員の員数は、常勤換算方法で2以上と定めています。

また第195条により、事業所ごとに専らその職務に従事する常勤の管理者を置くことも必要です(管理上支障がない場合は兼務が認められます)。

法令で義務づけられている仕事

ここからが本題です。基準省令第199条は「指定福祉用具貸与の具体的取扱方針」として、専門相談員が行うべきことを列挙しています。これは義務です。

情報提供と同意専門的知識に基づき相談に応じ、目録等の文書を示して福祉用具の機能、使用方法、利用料、全国平均貸与価格等に関する情報を提供し、個別の貸与に係る同意を得る
貸与と販売の提案貸与・販売のいずれも選べる用具については、いずれかを選択できることを十分に説明したうえで必要な情報を提供し、医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・ケアプランに位置付けた担当者等の意見と本人の身体の状況等を踏まえて提案を行う
点検貸与する福祉用具の機能、安全性、衛生状態等に関し、点検を行う
調整と指導身体の状況等に応じて福祉用具の調整を行い、使用方法・使用上の留意事項・故障時の対応等を記載した文書を交付して十分な説明を行い、必要に応じて実際に使わせながら使用方法の指導を行う
使用後のフォロー利用者等からの要請等に応じて使用状況を確認し、必要な場合は使用方法の指導、修理等を行う
複数の選択肢の提示同一種目における機能または価格帯の異なる複数の福祉用具に関する情報を提供する
身体的拘束の禁止生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない(行う場合は態様・時間・心身の状況・理由を記録)
家族が知っておくべき2つ「複数の選択肢を出すこと」と「全国平均貸与価格を含む情報を提供すること」は、義務として条文に書かれています。1つしか提案されなかったら、「他の機能・価格帯のものも教えてください」と言って構いません。当然の権利です。
リハウルフリハウルフ

「実際に使わせながら使用方法の指導を行う」も条文にあります。デモ機を出してもらうのは、わがままではありません。むしろ、それをせずに納品するほうが基準から外れています。

福祉用具貸与計画を作る

基準省令第199条の2により、専門相談員は福祉用具貸与計画を作成しなければなりません。ケアマネジャーが作るケアプランとは別の計画です。

  • 利用者の希望、心身の状況、置かれている環境を踏まえて作成する
  • 記載事項は、貸与の目標、目標を達成するための具体的なサービスの内容、モニタリングを行う時期等
  • すでに居宅サービス計画(ケアプラン)が作成されている場合は、その内容に沿って作成する
  • 内容を利用者または家族に説明し、利用者の同意を得る
  • 作成したら、利用者と担当の介護支援専門員に交付する
  • 特定福祉用具販売の利用があるときは、販売計画と一体のものとして作成する

説明を受け、同意し、書面をもらう。これが法令上の流れです。何も渡されていないなら、確認してください。

モニタリングは6か月以内に少なくとも1回

計画を作って終わりではありません。同条は次のように定めています。

基準省令第199条の2(要旨)計画の作成後、モニタリング(実施状況の把握)を行う。とくに貸与・販売のいずれも選べる対象福祉用具については、サービス提供の開始時から6月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、その継続の必要性について検討する。結果は記録し、ケアプランを作成した居宅介護支援事業者に報告する。結果を踏まえ、必要に応じて計画を変更する。

つまり、「借りっぱなし」は制度が想定していません。合わなくなった用具を使い続けているなら、モニタリングの機会に言ってください。継続の必要性を検討することまでが仕事です。

ちびウルフちびウルフ

合わなくなったって言っていいんだ。気を使ってた

ケアマネジャーとの違い

ケアマネジャー生活全体を見てケアプラン(居宅サービス計画)を作る。デイ、訪問、用具などサービス全体の配分を決める
福祉用具専門相談員用具について福祉用具貸与計画を作る。選定、点検、調整、使用方法の指導、モニタリングを担当する
関係貸与計画はケアプランの内容に沿って作られ、作成後はケアマネジャーに交付される。モニタリング結果も居宅介護支援事業者に報告される

窓口としてはケアマネジャーが先です。ただし、用具の具体的な話(この商品とあの商品はどう違うのか、高さは合っているか)は、専門相談員に直接聞いたほうが早く正確です。

ちびウルフちびウルフ

ケアマネさんと役割が違うんだね。両方に聞いていいのか

研修と自己研鑽の義務

基準省令第201条は、事業者に対して福祉用具専門相談員の資質の向上のために、福祉用具に関する適切な研修の機会を確保しなければならないと定め、専門相談員本人にも常に自己研鑽に励み、必要な知識及び技能の修得、維持及び向上に努めなければならないと定めています。

また第202条は、事業者に対して「利用者の身体の状態の多様性、変化等に対応することができるよう、できる限り多くの種類の福祉用具を取り扱うようにしなければならない」としています。品ぞろえも基準のうちだということです。

家族が依頼していいこと

1複数の候補を出してもらう:同一種目で機能・価格帯の異なる複数の情報提供は義務です。「他にはどんなものがありますか」と聞いてください。
2実際に試させてもらう:使用方法の指導は「必要に応じて実際に使用させながら」行うとされています。カタログだけで決めないこと。
3高さや角度を調整してもらう:身体の状況に応じた調整も業務に含まれます。「なんとなく使いにくい」で呼んでいい場面です。
4点検・修理を頼む:機能・安全性・衛生状態の点検、要請に応じた使用状況の確認と修理等が定められています。ガタつきや異音は放置しない。
5買うか借りるかの相談をする:選択制の用具については、説明と提案が義務づけられています。判断材料を出してもらってください。
リハウルフリハウルフ

いい専門相談員は、家の中を見て動線から提案してきます。用具そのものより、暮らし方を見ている人が本当のプロです。合わないと感じたら、事業所を変えることもできます。ケアマネジャーに相談してください。

よくある質問
福祉用具専門相談員は国家資格ですか?
「福祉用具専門相談員」という名称の国家資格はありません。介護保険法施行令第4条が定める要件(保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・義肢装具士のいずれか、または都道府県知事が指定する講習の修了)を満たす人が、その職務に就いたときの呼称です。
ケアマネジャーがいれば、専門相談員は必要ありませんか?
必要です。介護保険法施行令第4条は、福祉用具の貸与・販売を「福祉用具専門相談員から専門的知識に基づく助言を受けて行われるもの」と定義しています。また介護支援専門員は、施行令が列挙する要件に含まれていません。
提案が1つしかありませんでした。
基準省令は「同一種目における機能又は価格帯の異なる複数の福祉用具に関する情報を利用者に提供する」ことを定めています。ほかの選択肢を出してもらうよう伝えて問題ありません。
借りたあと、誰も来ません。
福祉用具貸与計画の作成後はモニタリングを行うこととされており、貸与・販売の選択制の対象福祉用具については、開始から6月以内に少なくとも1回モニタリングを行い継続の必要性を検討するとされています。連絡がない場合は、事業所または担当ケアマネジャーにご相談ください。
事業所を変えることはできますか?
できます。担当ケアマネジャーに相談してください。合わない用具を使い続けることのほうが、本人にとって不利益です。
まとめ
  • 介護保険の福祉用具の貸与・販売は、福祉用具専門相談員から専門的知識に基づく助言を受けて行われるものと定義されている。
  • なれるのは、保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・義肢装具士、または都道府県知事が指定する講習の修了者。
  • 「福祉用具専門相談員」という名称の国家資格はない。ケアマネジャーは列挙に含まれない。
  • 講習の目的は、選定の援助、機能等の点検、使用方法の指導等に必要な知識・技術を持つ者の養成。
  • 事業所には常勤換算で2人以上の配置が必要。
  • 義務として、複数の機能・価格帯の情報提供、全国平均貸与価格等の情報提供、点検、調整、実際に使わせながらの指導、要請に応じた確認と修理等が定められている。
  • 貸与と販売を選べる用具については、説明と提案が義務づけられている。
  • 福祉用具貸与計画を作成し、説明・同意・交付を行う。ケアプランの内容に沿って作る。
  • 選択制の対象福祉用具は、開始から6月以内に少なくとも1回モニタリングし、継続の必要性を検討する。
  • 事業者には研修機会の確保と、できる限り多くの種類の福祉用具を取り扱う努力が求められている。
  • 複数候補、試用、調整、点検・修理、購入との比較は、遠慮なく依頼してよい。
参考にした情報

※本記事の制度に関する記述は、介護保険法施行令・施行規則および指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準の条文にもとづきます。条文は要旨として整理しており、正確な文言は原典をご確認ください。講習の具体的な時間数・科目は厚生労働大臣が定める内容によります。実務に関する記述は筆者(理学療法士・介護支援専門員)の経験にもとづくものです。個別の対応は事業所によって異なるため、担当ケアマネジャー・福祉用具貸与事業所にご相談ください。内容は2026年8月時点で確認できた情報です。

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リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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