「作業療法士(OT)は増えすぎ」「もう飽和している」——SNSや口コミでこんな言葉を見かけて、これから資格を目指す人も、すでに現場で働く若手のOTも、不安になってしまうことは少なくありません。養成校が増え、有資格者の数が右肩上がりに増えてきたのは事実。だからこそ「自分の将来は大丈夫なのか」「給料は上がらないのでは」と感じるのは自然なことです。

ただ、こうした噂の多くは「なんとなくの印象」で語られていて、実際のデータや厚生労働省の需給推計をきちんと見た上での話ではないケースがほとんどです。この記事では、作業療法士が本当に増えすぎ・飽和なのかをデータで確認し、なぜ増えたのか、増えすぎると現場に何が起きるのか、そして飽和時代でも選ばれるOTになる方法までを、現役目線でバランスよく整理します。過度に不安を煽らず、事実に基づいて「これからどう動けばいいか」を一緒に考えていきましょう。

この記事でわかること
  • 作業療法士が「増えすぎ」と言われる背景を、有資格者数の推移データで確認できる
  • 厚生労働省の需給推計(2040年頃に供給が需要の約1.5倍)の中身がわかる
  • 増えすぎると給料・就職・求人にどんな影響が出るのかがわかる
  • それでも悲観しすぎなくてよい理由(高齢化・分野の偏在・OTならではの領域)がわかる
  • 飽和時代でも「選ばれるOT」になるための具体的な戦略がわかる

作業療法士は本当に増えすぎ?まずはデータで確認

ちびウルフちびウルフ

「作業療法士が増えすぎ」ってよく聞くけど、これって本当のことなの?ただの噂じゃないの?

リハウルフリハウルフ

「増えている」のは事実だよ。数字で見ると納得できるはず。まずは有資格者数の推移から一緒に確認していこうね。

結論から言うと、作業療法士の有資格者数は、この20〜25年ほどで大きく増えているのは間違いありません。おおまかな目安として、1999年頃には全国で約1.2万人だった有資格者数が、近年では8万人弱まで増加したとされています。単純計算でも6倍以上。これだけの伸びを見れば「増えすぎ」という言葉が出てくるのも無理はありません。

なぜここまで増えたのか

増加の一番の背景は、作業療法士を養成する学校(大学・専門学校)が全国で増えたことです。高齢化の進行にともなってリハビリ需要が高まると見込まれ、多くの養成校が新設・定員増を行いました。その結果、毎年数千人規模の新しいOTが誕生し続け、有資格者の総数が急速に積み上がってきたのです。

時期作業療法士 有資格者数(おおよその目安)
1999年頃約1.2万人
近年約8万人弱

※数値は「約」の概数です。有資格者数は年々変動します。

ポイント 「増えすぎ」という言葉の実態は、養成校の増加によって有資格者数が短期間で急増したという供給側の事実です。まずはこの「増えている」という前提を押さえておきましょう。

厚労省の需給推計|2040年頃に供給が需要の約1.5倍に

ちびウルフちびウルフ

国も「増えすぎ」って認めてるの?公式のデータってあるのかな?

リハウルフリハウルフ

あるよ。厚生労働省がちゃんと需給の推計を出しているんだ。将来を考えるなら、この数字は知っておいて損はないよ。

「増えすぎ」を語るうえで避けて通れないのが、厚生労働省の需給推計です。厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会 理学療法士・作業療法士需給分科会」(2019年4月)では、PT・OTの需給についての推計が示されました。

項目内容(推計)
対象理学療法士(PT)・作業療法士(OT)
推計時点2040年頃
需給バランス供給数が需要数の約1.5倍になると推計
提言計画的な養成の必要性が指摘された

つまり、このままのペースで有資格者が増え続けると、将来的には「働き手(供給)」が「必要とされる数(需要)」を大きく上回る可能性があると国自身が見込んでいる、ということです。これが「作業療法士は飽和する」と言われる最も大きな根拠になっています。

注意 需給推計はあくまで一定の前提に基づく「推計」であり、確定した未来ではありません。前提条件が変われば数字も変わります。「1.5倍」という数字を丸暗記して過度に悲観するのではなく、傾向として受け止めるのが正しい読み方です。

出典:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 理学療法士・作業療法士需給分科会」

増えすぎると現場に何が起きるのか

ちびウルフちびウルフ

実際に増えすぎると、僕たちの働き方にはどんな影響が出るの?

リハウルフリハウルフ

大きく分けて「給料」と「就職・求人」の2つに影響が出やすいよ。順番に見ていこうね。

給料が上がりにくい「買い手市場」に

働き手が増えると、雇う側(事業所)にとっては人材を選びやすい「買い手市場」に近づきます。参考までに、作業療法士の平均年収は約443万円(厚労省 賃金構造基本統計調査)とされ、理学療法士(約444万円)とほぼ同水準です。給与所得者全体の平均年収が約460万円とされることを踏まえると、OT・PTはやや下回る水準にあります。供給が増えるほど、給料が大きく上がりにくい構造になりやすい点は意識しておきたいところです。

求人競争・新卒就職の変化

人気の職場(急性期・回復期の大きな病院や、都市部の好条件の施設など)には応募が集中しやすくなります。かつては「資格さえあればどこかに就職できる」時代でしたが、これからは「行きたい職場に行けるかどうか」で差がつく時代に変わりつつあります。新卒でも、実習での評価や志望動機、+αのスキルが選考でより重視される傾向が強まっています。

ポイント 増えすぎの影響は「仕事がなくなる」ではなく、「条件のよい職場や高い給料をめぐる競争が激しくなる」という形で現れやすい、と理解しておくと現実的です。

それでも悲観しすぎなくてよい理由

ちびウルフちびウルフ

じゃあやっぱり作業療法士は目指さない方がいいのかな…?なんだか不安になってきた。

リハウルフリハウルフ

そこまで悲観しなくて大丈夫。実は「悲観しすぎなくてよい理由」もちゃんとあるんだ。バランスよく見てほしいな。

数字だけを見ると不安になりますが、実態はもう少し複雑です。飽和が語られる一方で、需要そのものは当面なくならないという側面があります。悲観しすぎなくてよい理由を整理してみましょう。

高齢化で需要自体は当面ある

日本の高齢化はこれからもしばらく進みます。リハビリを必要とする高齢者は増え続けており、介護・在宅の分野を中心にOTの活躍の場は広がっています。需要が「ゼロになる」わけではなく、供給が需要を上回っていく、というのが推計の本質です。

分野・地域による偏在がある

「増えすぎ」は全国一律の話ではありません。都市部の人気病院はすでに飽和気味でも、地方や訪問・在宅の現場では人材が不足しているケースが少なくありません。分野や地域を柔軟に選べば、まだまだ求められる場所は多く残っています。

OTならではの領域は代替されにくい

作業療法士は、身体だけでなく精神科・発達領域・認知症・生活行為(作業)の視点を持つ専門職です。「その人らしい生活の再建」を支えるOTならではのアプローチは、他職種では代替しにくく、価値が下がりにくい領域といえます。

ポイント 「作業療法士 増えすぎ」=「仕事がない」ではありません。需要は当面あるが偏在しているのが実態。だからこそ「どこで・どんな強みで働くか」が将来を左右します。

飽和時代に選ばれるOTになる方法

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これからの時代に「選ばれるOT」になるには、具体的に何をすればいいの?

リハウルフリハウルフ

ポイントは「その他大勢のOTから抜け出す」こと。5つのステップで整理したから、できそうなものから取り組んでみてね。

供給が増える時代に大切なのは、「資格を持っている」だけで終わらず、自分にしかない強みで選ばれる存在になることです。次のステップを意識してみましょう。

  1. 専門分野に特化する:精神科・発達・認知症・生活期(訪問)など、需要があり競合が少ない領域を深めると、「この分野ならこの人」と指名されやすくなります。
  2. マネジメント力を身につける:後輩指導・チームの運営・リハ部門の管理など、現場をまとめる力は年齢を重ねるほど武器になり、給料アップにもつながります。
  3. 多職種連携を強みにする:看護師・ケアマネ・医師・介護職とスムーズに連携できるOTは、在宅・地域包括ケアの時代に重宝されます。
  4. +αの資格・スキルを持つ:福祉用具・住環境・認知症ケア・生活行為の評価など、関連スキルを掛け算すると替えのきかない人材になれます。
  5. 情報発信・実績を積む:勉強会・症例発表・SNS発信などで実績を可視化しておくと、転職やキャリアアップの場面で強い後押しになります。
注意 すべてを一度にやろうとすると疲れてしまいます。まずは「専門分野を1つ深める」ことから始めるのがおすすめです。強みは1点突破で十分です。

これからOTを目指す人・若手OTへのアドバイス

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今からOTを目指すのはもう遅い…?若手のうちにやっておくべきことってある?

リハウルフリハウルフ

遅くないよ。ただ「なんとなく続ける」のと「戦略を持って動く」のとでは、10年後に大きな差が出る。今のうちに意識してほしいことを伝えるね。

これからOTを目指す人へ。「増えすぎ」を理由に諦める必要はありません。むしろ、飽和が語られる今だからこそ「どの分野で・どんなOTになりたいか」を早い段階で考えておくことが、将来の安心につながります。学生のうちから興味のある領域を意識し、実習で積極的に学ぶ姿勢が、就職活動でも評価されます。

若手OTへは、3〜5年目までに「自分の得意分野」の種をまいておくことをおすすめします。目の前の業務に追われがちな時期ですが、勉強会に参加したり、関心のある領域の症例を意識的に担当したりするだけで、数年後のキャリアの選択肢が大きく広がります。「その他大勢」から一歩抜け出す準備は、早ければ早いほど効いてきます。

【実践】現役OT視点で”埋もれない”戦略

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「埋もれないOT」って、実際どう動けばいいの?もっと具体的に知りたい!

リハウルフリハウルフ

大事なのは「需要のある場所」に「自分の強み」を持ち込むこと。実践的な3つの視点を紹介するね。

供給が増える時代に埋もれないためには、「需要のある場所」と「自分の強み」の掛け算を意識するのが実践的です。以下の3つの視点を持っておきましょう。

1. 需要が伸びる「在宅・生活期」に目を向ける

病院内のポストは限られますが、訪問リハビリ・通所・在宅分野は高齢化とともに需要が伸びています。生活期のOTは、利用者の「暮らし」を支える視点が活きる領域。人手が足りない現場も多く、キャリアの選択肢として押さえておく価値があります。

2. 「数字で語れる」OTになる

評価やアウトカムを記録し、改善を数字で示せるOTは、事業所からも利用者からも信頼されます。感覚だけでなく根拠を持って説明できる力は、飽和時代の大きな差別化ポイントです。

3. 「相談される人」になる

後輩・多職種・家族から「困ったらあの人に聞こう」と思われる存在は、どんな時代でも必要とされます。日々の丁寧なコミュニケーションの積み重ねが、結果的に替えのきかない人材を作ります。

作業療法士「増えすぎ」に関するよくある質問(FAQ)

今から作業療法士を目指すのは遅いですか?
遅くはありません。有資格者は増えていますが、高齢化により需要自体は当面あります。ただし「資格を取れば安泰」という時代ではないため、早いうちから「どの分野で強みを持つか」を意識しておくことが大切です。目的を持って学べば、これからでも十分に活躍できます。
増えすぎで就職できなくなりますか?
「就職先がまったくない」という状況は考えにくいですが、人気の職場をめぐる競争は今後より激しくなる可能性があります。地方や在宅など人材が不足している分野に目を向けたり、+αのスキルを身につけたりすることで、選択肢は大きく広がります。
地方と都市部で状況は違いますか?
はい、違います。都市部の人気病院はすでに飽和気味な一方、地方や訪問・在宅の現場では人材不足のケースが少なくありません。「増えすぎ」は全国一律の話ではなく、地域や分野による偏在が大きいのが実態です。
これから給料は下がってしまいますか?
供給が増えると給料が大きく上がりにくい構造になりやすいのは事実です。ただし「必ず下がる」わけではありません。専門分野の特化やマネジメント力、+αの資格など、自分の価値を高める行動をとることで、平均以上の待遇を得ることは十分可能です。
作業療法士はPT(理学療法士)より厳しいですか?
需給推計はPT・OTをまとめて扱っており、両者は共通の課題を抱えています。平均年収もほぼ同水準(OT約443万円・PT約444万円)で、「OTだから特に厳しい」とは言い切れません。むしろ精神科・発達など、OTならではの領域を強みにできる点は魅力です。
まとめ
  • 作業療法士の有資格者数は1999年頃の約1.2万人から近年8万人弱まで増加。「増えている」のは事実。
  • 厚労省の需給推計では、2040年頃に供給が需要の約1.5倍になると推計され、計画的養成が提言された。
  • 増えすぎの影響は「仕事がなくなる」ではなく「よい条件をめぐる競争が激しくなる」形で現れやすい。
  • 高齢化で需要は当面あり、分野・地域による偏在も大きいため、悲観しすぎる必要はない。
  • 専門特化・マネジメント・多職種連携・+αの資格で「選ばれるOT」を目指せば、飽和時代でも活躍できる。

出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査/厚生労働省 医療従事者の需給に関する検討会 理学療法士・作業療法士需給分科会

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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