特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設=特養)は、基本報酬の引き上げに加えて、令和6年度(2024年度)改定で看取り・医療連携・認知症ケア・自立支援・感染対策など多くの加算が新設・見直しされました。さらに令和8年(2026年)6月の期中改定で処遇改善加算の加算率も変わり、施設の収益構造に直結する論点が増えています。

この記事では、特養で算定できる加算・減算を体系的に一覧化し、施設長・相談員・看護/介護リーダーが「取り漏れ」と「算定誤り」を防げるよう、最新の単位数と要点をまとめました。

この記事でわかること
  • 特養の基本報酬(従来型・ユニット型)の最新単位数
  • 看取り介護・協力医療機関連携・配置医師緊急時対応など医療系加算
  • 自立支援・重度化防止(個別機能訓練・褥瘡・排せつ支援・自立支援促進)加算
  • 認知症・感染対策・生産性向上・LIFE関連加算の整理
  • 2026年6月以降の処遇改善加算率(特養は最大17.6%)と主要な減算

特養の基本報酬(令和6年度改定後)

令和6年度改定で特養の基本報酬は引き上げられました。代表的な区分の単位数(1日あたり)を示します。

介護福祉施設サービス費(Ⅰ)<従来型個室>

要介護度2024年4月から
要介護1589
要介護2659
要介護3732
要介護4802
要介護5871

ユニット型介護福祉施設サービス費<ユニット型個室>

要介護度2024年4月から
要介護1670
要介護2740
要介護3815
要介護4886
要介護5955
ポイント 特養は原則要介護3以上が入所対象です(要介護1・2は特例入所)。多床室はサービス費(Ⅱ)、小規模は経過的サービス費と区分が分かれます。なお令和7年8月からは一定の多床室で室料負担が導入されるなど、利用者負担の見直しも進んでいます。
ちびウルフちびウルフ

特養って加算がすごく多いイメージ。全部取らないと損なの?

リハウルフリハウルフ

全部を一度に取る必要はないよ。入所者の状態像と施設の体制に合った加算を選ぶのが大事。看取りや医療連携など、特養ならではの加算から優先して整えると効果が大きいんだ。

医療・看取り関連の加算

特養は「生活の場」であると同時に「最期まで暮らす場」でもあります。令和6年度改定では医療連携と看取りの評価が手厚くなりました。

看取り介護加算

時期加算(Ⅰ)加算(Ⅱ)
死亡日前31〜45日+72+72
死亡日前4〜30日+144+144
死亡日前2〜3日+680+780
死亡日+1,280+1,580

※いずれも1日あたり。加算(Ⅱ)は、配置医師緊急時対応加算の体制など一定の要件を満たす施設で算定できます。

協力医療機関連携加算・配置医師緊急時対応加算

加算名単位数
協力医療機関連携加算(常時対応・入院受入体制あり)1月+50(経過措置期間は+100)
協力医療機関連携加算(上記以外)1月+5
配置医師緊急時対応加算(勤務時間外)1回+325
配置医師緊急時対応加算(早朝・夜間)1回+650
配置医師緊急時対応加算(深夜)1回+1,300
特別通院送迎加算1月+594
注意(2027年4月義務化) 協力医療機関との連携体制は、令和9年(2027年)4月から一定要件が義務化される予定です。加算の算定だけでなく、施設運営の前提として体制整備を進めておく必要があります。

自立支援・重度化防止の加算

LIFEの活用とあわせて、入所者の自立支援・重度化防止を評価する加算群です。リハ職・看護職・介護職の多職種連携が要になります。

加算名単位数算定単位
個別機能訓練加算(Ⅰ)+121日
個別機能訓練加算(Ⅱ)※LIFE+201月
個別機能訓練加算(Ⅲ)※新設+201月
ADL維持等加算(Ⅰ)+301月
ADL維持等加算(Ⅱ)+601月
褥瘡マネジメント加算(Ⅰ)+31月
褥瘡マネジメント加算(Ⅱ)+131月
排せつ支援加算(Ⅰ)+101月
排せつ支援加算(Ⅱ)+151月
排せつ支援加算(Ⅲ)+201月
排せつ支援加算(Ⅳ)+1001月
自立支援促進加算+3001月
科学的介護推進体制加算(Ⅰ)※LIFE+401月
科学的介護推進体制加算(Ⅱ)※LIFE+501月

認知症・栄養・口腔・体制の加算

加算名単位数
認知症専門ケア加算(Ⅰ)1日+3
認知症専門ケア加算(Ⅱ)1日+4
認知症チームケア推進加算(Ⅰ)※新設1月+150
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)※新設1月+120
日常生活継続支援加算(従来型)1日+36
日常生活継続支援加算(ユニット型)1日+46
栄養マネジメント強化加算1日+11
口腔衛生管理加算(Ⅰ)1月+90
口腔衛生管理加算(Ⅱ)1月+110
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)※新設1月+10
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)※新設1月+5
生産性向上推進体制加算(Ⅰ)※新設1月+100
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)※新設1月+10
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)1日+22
サービス提供体制強化加算(Ⅱ)1日+18
サービス提供体制強化加算(Ⅲ)1日+6
ちびウルフちびウルフ

新設の「認知症チームケア推進加算」って何が新しいの?

リハウルフリハウルフ

令和6年度改定で新設された加算で、BPSD(行動・心理症状)の評価と、チームでの計画的な対応を評価するものなんだ。所定の研修を受けた職員の配置やチーム体制が要件だよ。認知症ケアの質を「仕組み」で底上げする狙いがあるんだ。

2026年6月以降の処遇改善加算(特養の加算率)

令和8年(2026年)6月の期中改定で、介護職員等処遇改善加算の加算率が引き上げられ、加算ⅠとⅡに上乗せ区分「ロ」が新設されました。特養(施設サービス)の加算率は全サービス中でも高い水準です(所定単位数に対する割合)。

区分加算率備考
処遇改善加算Ⅰイ16.3%旧加算Ⅰ相当
処遇改善加算Ⅰロ17.6%2026年6月新設(生産性向上等の要件あり)
処遇改善加算Ⅱイ15.9%旧加算Ⅱ相当
処遇改善加算Ⅱロ17.2%2026年6月新設(生産性向上等の要件あり)
処遇改善加算Ⅲ13.6%
処遇改善加算Ⅳ11.3%
ポイント 併設の短期入所生活介護(ショートステイ)も特養と同じ加算率が適用されます。加算で得た額は全額を職員の賃金改善に充てる必要があり、上位区分(Ⅰロ・Ⅱロ)は生産性向上の取り組みなど追加要件を満たすことが条件です。

見落としやすい減算

減算項目内容
夜勤職員の勤務条件基準を満たさない×97/100
入所者数が定員超過×70/100
介護・看護職員・ケアマネの員数不足×70/100
身体拘束廃止未実施減算▲10/100
高齢者虐待防止措置未実施減算▲1/100
業務継続計画(BCP)未策定減算▲3/100
栄養管理の基準を満たさない1日▲14単位
安全管理体制未実施減算1日▲5単位
注意 特養のBCP未策定減算は▲3/100と、通所系(▲1%)より重く設定されています。また身体拘束廃止未実施減算は▲10/100と影響が大きいため、委員会の開催・指針・研修などの記録を確実に残しましょう。

施設長・相談員のための算定マネジメント

  1. 身体拘束・虐待防止・BCPなど「減算が重い項目」の体制を最優先で固める
  2. 看取り・医療連携など特養の強みになる加算を入所者像に合わせて整える
  3. LIFE提出体制を構築し、科学的介護推進・自立支援系加算を積み上げる
  4. 認知症チームケア・生産性向上など新設加算は研修計画とセットで取得を進める
  5. 処遇改善加算は上位区分の要件を確認し、賃金規程と配分ルールを整備する
ちびウルフちびウルフ

加算を取るより、減算を防ぐほうが先なんだね。

リハウルフリハウルフ

そう。穴の空いたバケツに水を足しても貯まらないのと同じで、まず減算という穴をふさぐのが先決。土台が固まってから、加算で上積みしていくのが堅実だよ。

よくある質問(FAQ)

看取り介護加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは?
死亡日前2〜3日と死亡日の単位が(Ⅱ)で高く設定されています。(Ⅱ)は配置医師緊急時対応加算の体制を整えるなど、より手厚い医療・看取り体制が要件です。
特養の処遇改善加算率はなぜ高いのですか?
24時間体制で介護職員の配置比率が高い施設サービスであることなどが背景です。2026年6月以降、特養はⅠイ16.3%・Ⅰロ17.6%など、在宅系より高い率が設定されています。
個別機能訓練加算(Ⅲ)はいつ新設されましたか?
令和6年度改定で新設され、1月あたり+20単位です。LIFEを活用した(Ⅱ)とあわせて、機能訓練の質と継続性を評価する仕組みになっています。
協力医療機関の体制はいつから義務ですか?
令和9年(2027年)4月から一定要件が義務化される予定です。経過措置期間中に協力医療機関連携加算の上位区分を算定しながら、体制を整えておくのが現実的です。
身体拘束廃止未実施減算はどのくらい重いですか?
所定単位数の▲10/100と、特養の減算のなかでも特に影響が大きい項目です。委員会開催・指針整備・研修の実施と記録が必須です。
まとめ
  • 特養の基本報酬は令和6年度改定で引き上げ(従来型・ユニット型で区分)
  • 看取り・協力医療機関連携・配置医師緊急時対応など医療系加算が充実
  • 自立支援・重度化防止(個別機能訓練・褥瘡・排せつ支援・自立支援促進)はLIFE活用が鍵
  • 認知症チームケア・感染対策向上・生産性向上は令和6年度改定の新設加算
  • 処遇改善加算は2026年6月改定でⅠイ16.3%〜と高水準、Ⅰロ・Ⅱロが新設
  • 身体拘束▲10%・BCP▲3%など減算が重い。まず体制整備で減算回避を

出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」「令和8年度介護報酬改定について」(老発0313第6号 令和8年3月13日)等。単位数・要件は告示・留意事項通知が正本です。経過措置・義務化時期は今後の通知で変わる可能性があるため、最新情報をご確認ください。

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リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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