「特養に申し込んだのに、いつまで経っても順番が回ってこない」「在宅介護はもう限界なのに、入れる施設が見つからない」——。費用の安さから人気の高い特別養護老人ホーム(特養)は、地域によっては入所待ち(待機)が発生します。

この記事では、訪問リハビリ・訪問看護の現場でご家族の相談を受けてきた視点から、特養の待機の実情と、少しでも早く入りたいときにできる対策を具体的にまとめました。待っている間の現実的な選択肢まで解説します。

この記事でわかること
  • 特養の待機者数の最新状況(厚労省調査)
  • 特養に入りやすくなる「入所の優先順位」の仕組み
  • 待機期間を短くするための具体的な対策
  • 入所を待っている間の現実的な選択肢

特養の待機者はどれくらい?最新の状況

まず現状を正しく知っておきましょう。厚生労働省の調査によると、2025年4月1日時点で、入所対象となる要介護3以上の待機者数は約20.6万人でした。3年前の調査からは約4.7万人(約18%)減少しているものの、依然として多くの方が順番を待っているのが実情です。

ちびウルフちびウルフ

20万人も待ってるの…?なんでそんなに入れないの?

リハウルフリハウルフ

特養は終身で暮らす方が多くて、空室が出にくいんだ。入所期間が3年以上の方が全体の4割近くを占めるという調査もあるんだよ。

特養が「入りにくい」と言われる背景には、費用が安く人気が高いことに加え、一度入所すると終身で利用する方が多く、空きが出にくいという構造的な理由があります。だからこそ、ただ待つだけでなく「入りやすくする工夫」が重要になります。

特養は「申し込み順」ではない|入所の優先順位の仕組み

大きな誤解として多いのが「先に申し込んだ人から入れる」というもの。実際は申し込み順ではなく、必要性(緊急度)の高い人から優先的に入所できる仕組みです。

多くの施設では、申込者の状況を点数化して優先順位を判断しています。主に次のような点が考慮されます。

評価される主な項目優先度が上がりやすいケース
本人の要介護度要介護4・5など、介護の必要性が高い
介護者の状況介護者が高齢・病気・不在、単身世帯
住環境・在宅介護の困難さ在宅での介護がすでに限界に近い
認知症の症状徘徊や夜間対応など在宅では危険が大きい
緊急性虐待のおそれなど、早急な保護が必要
ポイント優先順位の付け方は施設や自治体によって異なります。「自分の家庭の事情が、どう評価されるのか」を施設の相談員に直接確認しておくと、対策が立てやすくなります。

特養の待機期間を短くする5つの対策

待機期間は地域差が大きいものの、工夫次第で入所のチャンスを広げられます。現場でもおすすめしている対策を順番にまとめました。

  1. 複数の特養に同時に申し込む(1施設だけにしない)
  2. 申し込みは「待機が長い」と言われても、まず出しておく
  3. 在宅介護の困難さ・緊急性を、申込書に具体的に書く
  4. 状況が変わったら(介護度上昇・介護者の入院など)施設へ必ず再連絡する
  5. 地方・郊外の施設や、多床室(相部屋)も候補に入れる
ちびウルフちびウルフ

たくさん申し込んでもいいの?

リハウルフリハウルフ

大丈夫だよ。特養は複数施設に申し込めるんだ。エリアを少し広げたり、相部屋も候補にしたりすると、入所のチャンスはぐっと広がるよ。

注意状況が変わったのに施設へ連絡しないままだと、優先順位に反映されないことがあります。介護者が入院した・介護度が上がったなどの変化は、その都度必ず施設へ伝えましょう。

要介護1・2でも入れる?「特例入所」という選択肢

特養は原則要介護3以上が対象ですが、やむを得ない事情がある場合は、要介護1・2でも入所できる「特例入所」が認められています。次のようなケースが該当します。

  • 認知症があり、日常生活に支障をきたす症状・行動が見られる
  • 知的障害・精神障害などにより、日常生活に支障をきたす症状がある
  • 家族による虐待などで、心身の安全・安心の確保が難しい
  • 単身世帯や、同居家族が高齢・病弱で、家族の支援が期待できない

該当しそうな場合は、施設や市区町村の窓口、担当ケアマネジャーに相談してみましょう。

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特養の申し込みから入所までの流れ

「そもそも、どうやって申し込むの?」という方のために、申し込みから入所までの基本的な流れを整理しておきます。施設や自治体で細部は異なりますが、おおまかには次のステップで進みます。

  1. 要介護認定を受ける(特養は原則 要介護3以上が対象)
  2. 入所したい特養を選び、各施設に申込書を提出する(複数申込が可能)
  3. 施設が申込内容をもとに優先順位(緊急度)を判定する
  4. 空きが出た段階で、施設側から面談・健康状態の確認の連絡が入る
  5. 入所判定会議を経て、入所が決定する

申込書には、本人の心身の状態だけでなく、在宅介護がどれだけ困難か(介護者の状況・住環境・緊急性)を具体的に書くことが大切です。ここが優先順位の判断材料になるため、遠慮せず実情を正確に伝えましょう。担当のケアマネジャーがいれば、記入のサポートを受けられます。

ポイント申し込みは早いほど有利…ではなく、「必要性が高い」ほど有利です。とはいえ、いざというときにすぐ動けるよう、早めに申し込んでおくことに損はありません。状況が変わったら更新する前提で、まず出しておきましょう。

特養の費用が安い理由と、待機中の費用の考え方

そもそも特養がこれほど人気なのは、入居一時金が不要で、月額費用も9〜15万円前後とおさえられるからです。さらに、所得が一定以下の方は「負担限度額認定」によって食費・居住費の負担が軽くなる制度もあります。

一方で、待機中に民間施設を利用する場合は費用が高くなります。「特養に入れるまでの一時的な費用」と割り切るか、そのまま民間施設で過ごすかは、家計と相談して決めましょう。費用の詳しい内訳は、種類別の費用相場をまとめた記事もあわせてご覧ください。

待っている間どうする?現実的な3つの選択肢

「入所までに数か月〜年単位かかるかもしれないけれど、在宅介護はもう限界」——。そんなときの現実的な選択肢を紹介します。

① ショートステイを活用する

短期間だけ施設に宿泊できるショートステイを定期的に使い、在宅介護の負担を分散しながら待つ方法です。介護者の休息(レスパイト)にもなります。

② 民間施設に一時的に入居する

介護付き有料老人ホームやサ高住に入居して待つ方法です。費用は特養より高くなりますが、すぐに入りやすく、特養に空きが出たら住み替えるという考え方もできます。

③ 訪問サービスを増やして在宅を支える

訪問介護・訪問看護・訪問リハビリを組み合わせ、在宅生活を支えながら待つ方法です。リハビリ職の視点では、生活機能を維持・改善できれば、本人にとっても住み替えの負担を減らせるため、待機中の有力な選択肢です。

ポイントどの方法が合うかは、本人の状態・家族の状況・予算で変わります。担当ケアマネジャーに「特養を待つ間のプラン」を相談すると、具体的な組み合わせを提案してもらえます。

リハビリ・看護職の視点|「待つ=在宅で何もしない」ではない

待機期間を、ただ我慢して過ごす時間にしないことが大切です。現場では、特養を待つ間に訪問リハビリで生活機能を立て直し、結果的に在宅生活を続けられたケースもあります。

逆に、在宅介護の限界を抱え込みすぎてご家族が体調を崩してしまう例も少なくありません。「無理をして待つ」より「使える手段を組み合わせて待つ」。この発想が、本人にとってもご家族にとっても結果的に良い形につながります。

待機は不安なものですが、見方を変えれば「本人に合った施設をじっくり選べる準備期間」でもあります。ショートステイで複数の施設を試したり、見学を重ねたりしながら、納得できる入所先を探していきましょう。困ったときは一人で抱え込まず、担当ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することが何よりの近道です。

よくある質問(FAQ)

特養の待機期間はどれくらいですか?
地域や施設、本人の状況(優先順位)によって大きく異なり、数か月で入れることもあれば、年単位で待つこともあります。申し込み順ではなく必要性の高い人が優先されるため、一概に「○年待ち」とは言えません。複数施設への申し込みが有効です。
複数の特養に申し込んでも問題ないですか?
問題ありません。特養は複数施設へ同時に申し込めます。エリアを広げる、相部屋も候補にするなど、選択肢を増やすほど入所のチャンスは広がります。
申し込んだ後、放っておいても順番は進みますか?
状況が変わったときは施設への連絡が大切です。介護度が上がった、介護者が入院した、在宅介護が難しくなったといった変化は優先順位に影響するため、その都度施設へ伝えましょう。
要介護2ですが特養に入れますか?
原則は要介護3以上ですが、認知症や家族の支援が見込めないなど、やむを得ない事情がある場合は「特例入所」が認められることがあります。施設や市区町村の窓口、ケアマネジャーに相談してみましょう。
まとめ
  • 特養の待機者は要介護3以上で約20.6万人(2025年4月・厚労省調査)と依然多い
  • 特養は申し込み順ではなく、必要性(緊急度)の高い人が優先される
  • 複数施設への申し込み・緊急性の明記・状況変化の再連絡が待機短縮のコツ
  • 要介護1・2でも、やむを得ない事情があれば「特例入所」の可能性がある
  • 待つ間はショートステイ・民間施設・訪問サービスを組み合わせて在宅を支える

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参考:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」ほか公的資料

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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