「同じことを何度も聞かれてつい強く言ってしまった」「お風呂を頑なに拒否されて途方に暮れた」——認知症の親や家族と向き合う毎日は、想像以上に心がすり減ります。正しい接し方を知りたくても、ネット情報はバラバラで、何を信じればいいのか分からない。そんなときに頼りになるのが、専門家や介護現場の知恵がまとまった「一冊の本」です。

この記事では、訪問リハビリ・訪問看護の現場で家族に本当におすすめできる認知症介護の本を6冊厳選しました。声のかけ方や接し方の入門書から、拒否への対応、困りごと別の実用書、痛みとBPSDの専門書、遠距離介護とお金の本まで、あなたの「今いちばん知りたい」に合わせて選べるよう、リハ職の視点で選び方とあわせて紹介します。

この記事でわかること
  • 認知症介護の本を選ぶときに失敗しない5つのポイント
  • 家族・在宅介護者におすすめの認知症介護本6冊と、それぞれが向いている人
  • 「声かけ・接し方」「困りごと」「お金」など悩み別の選び方
  • 本を読んだあと、実際の介護で活かすコツ(リハ職の現場視点)

そもそも、なぜ認知症介護に「本」が役立つのか

ちびウルフちびウルフ

ネットでも調べられるのに、わざわざ本を読む意味ってあるの?

リハウルフリハウルフ

あるよ。本は専門家や現場の知恵が体系立ててまとまっているから、断片的なネット情報より「なぜそうするのか」まで腑に落ちやすいんだ。介護で迷ったときに何度も読み返せる“手元の相談相手”になるよ。

認知症の人の言動には、本人なりの理由があります。たとえば「財布を盗られた」という訴え(物盗られ妄想)も、不安や記憶の障害という背景を知っていれば、頭ごなしに否定せず落ち着いて対応できます。本を読む最大の価値は、こうした「行動の理由」を理解できることです。理由が分かれば、こちらの声のかけ方や接し方が自然と変わり、結果として介護そのものがぐっとラクになります。

また、認知症介護は長期戦です。進行に伴って悩みの種類も変わっていきます。初期は「物忘れへの戸惑い」、中期は「拒否やBPSD(行動・心理症状)への対応」、そして「遠距離介護やお金の問題」——と、段階ごとに必要な知識は違います。だからこそ、自分の今の状況に合った一冊を選ぶことが大切です。

失敗しない!認知症介護の本の選び方5つのポイント

ちびウルフちびウルフ

たくさんあって、どれを選べばいいか分からないよ…

リハウルフリハウルフ

「誰が・何に困っているか」で選ぶのがコツだよ。下の5つの視点で選べば、自分にぴったりの一冊が見つかるよ。

本選びで失敗しないために、次の5つのポイントを意識してみてください。立場や悩みによって「読むべき本」は変わります。

選び方のポイントチェックすること
①読む人の立場家族(在宅介護)か、専門職か。家族向けは共感や実例が多く読みやすい
②今の悩みの種類声かけ・接し方/拒否・抵抗/困りごと(徘徊・妄想など)/痛み・BPSD/お金・手続き
③読みやすさイラスト・マンガ・大きめの文字など。介護で疲れていても読み切れるか
④具体性「優しく」だけでなく、具体的な声かけ例・場面別の対応が載っているか
⑤情報の信頼性医師・看護師・介護のプロなど、専門家が監修・執筆しているか
ポイント

最初の一冊は「声のかけ方・接し方」の入門書がおすすめです。日々の関わり方が変わるだけで、お互いのストレスが大きく減り、ほかの悩みも連鎖的に軽くなりやすいからです。

【家族向け】認知症介護のおすすめ本6選

リハウルフリハウルフ

ここからは、在宅で介護する家族に本当におすすめできる6冊を、入門から専門・お金の順に紹介していくよ。気になった本からチェックしてね。

1. 認知症の人の心に届く、声のかけ方・接し方

「何を言っても伝わらない」と感じたとき、最初に手に取ってほしい一冊です。認知症の人がどんな世界を感じているのかを丁寧に解説し、不安や混乱を和らげる声のかけ方・接し方の基本が学べます。難しい専門用語が少なく、介護を始めたばかりの家族でもすっと読み進められるのが魅力。「まず関わり方を変えたい」という人の最初の一冊にぴったりです。

2. 認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方

「お風呂に入ってくれない」「薬を飲んでくれない」——介護でいちばん消耗するのが、こうした拒否や抵抗への対応です。本書は、頑なになってしまう気持ちの裏側を読み解き、本人が自然と受け入れやすくなる関わり方を具体的に紹介します。正面からぶつかって疲れ果てる前に読んでおきたい、現場感のある一冊です。

3. 介護現場から生まれた 認知症の人に伝わるすごいひと言

「具体的に何と言えばいいの?」という疑問にダイレクトに答えてくれるのが本書。介護現場で実際に効果のあった“伝わるひと言”が場面別にまとまっており、明日からそのまま使える実用性が魅力です。声かけのレパートリーを増やしたい人、忙しくて長い本を読む余裕がない人にもおすすめできます。

4. 認知症の人の”困りごと”解決ブック 本人・家族・支援者の気持ちがラクになる90のヒント

徘徊、物盗られ妄想、同じ話の繰り返し、夜間の不穏——在宅介護で起こりがちな困りごとを90のヒントで網羅した“辞書のように使える”一冊です。困ったときに該当ページを開けば対処のヒントが見つかるので、手元に置いておくと安心。本人・家族・支援者それぞれの気持ちに配慮されているのも、現場で愛される理由です。

5. 認知症の人の「痛み」をケアする ―「痛み」が引き起こすBPSD・せん妄の予防

少し専門的ですが、ぜひ知っておいてほしいテーマが「痛み」です。認知症の人は痛みをうまく言葉にできず、それがBPSD(暴言・興奮など)やせん妄として現れることがあります。本書は、見逃されがちな痛みのサインと、その予防・ケアの考え方を解説。「急に怒りっぽくなった原因が分からない」という家族や、より深く学びたい人に役立ちます。

注意

急な性格の変化や強い興奮、ぼんやりする時間が増えた場合、痛み・脱水・感染症・薬の影響など身体的な原因が隠れていることがあります。自己判断せず、かかりつけ医や訪問看護師に早めに相談してください。

6. 親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと

離れて暮らす親が認知症かもしれない——そんなとき、接し方だけでなく見守りの仕組みやお金・手続きまで具体的に知りたいですよね。本書は遠距離介護のリアルに寄り添い、利用できるサービスや費用、成年後見など“お金まわり”の備えまでカバー。「これから介護が始まりそう」「実家の親が心配」という人が、最初に全体像をつかむのに最適な一冊です。

本を読んだあと、介護で活かす3つのコツ

ちびウルフちびウルフ

本を読んでも、いざとなると上手くできないんだよね…

リハウルフリハウルフ

大丈夫、最初はみんなそうだよ。全部を完璧にやろうとせず、次の3ステップで少しずつ試すのがコツだよ。

  1. 気になった声かけを1つだけ試す。完璧を目指さず「今日はこれ」と決めて、うまくいったかを翌日に振り返ります。
  2. うまくいった対応をメモする。本人に合う関わり方は人それぞれ。効いた方法を記録すると、家族間でも共有できます。
  3. 一人で抱え込まず専門職を頼る。ケアマネジャーや訪問看護師に本で得た悩みを相談すると、その人に合った具体策が見つかります。

本の知識は「正解集」ではなく「引き出し」です。同じ声かけでも、その日の体調や気分で反応は変わります。うまくいかなくて当たり前と考え、いくつかの引き出しを持って試す——その積み重ねが、結果的にいちばん介護をラクにしてくれます。

よくある質問(認知症介護の本選び)

最初の1冊はどれを選べばいい?
日々の関わり方を変えたいなら「声のかけ方・接し方」の入門書から始めるのがおすすめです。接し方が変わると、ほかの困りごとも連鎖的に軽くなりやすいためです。これから介護が始まる段階なら、全体像とお金まで分かる本から入るのも良い選び方です。
マンガやイラストが多い本のほうがいい?
介護で疲れていると活字を読むのもつらいもの。イラストやマンガ、図解が多い本は短時間で要点をつかめるのでおすすめです。一方、深く理解したいテーマ(痛み・BPSDなど)は、専門家が丁寧に解説した本のほうが納得感があります。目的で使い分けましょう。
本の通りにやってもうまくいきません。
それが普通です。認知症の人の反応はその日の体調や気分で変わるため、同じ対応でもうまくいくとは限りません。本はあくまで「引き出し」。複数の方法を持って試し、効いたものを記録していくことが大切です。うまくいかない日は、自分を責めないでください。
家族と専門職で読む本は分けたほうがいい?
基本的には同じ本を共有しても問題ありません。むしろ家族と支援者が同じ知識を持つと、対応の方向性がそろってケアが安定します。ただし制度や報酬など専門的な内容は専門職向けの資料も併用すると、より実務に活きます。
本だけで認知症介護は乗り切れますか?
本は強い味方ですが、それだけで抱え込むのは危険です。介護保険サービスやケアマネジャー、訪問看護・訪問リハビリなどの専門職を早めに頼ってください。本で得た知識を専門職に相談すると、あなたの家庭に合った具体策に落とし込めます。
まとめ
  • 認知症介護の本は「誰が・何に困っているか」で選ぶと失敗しません。立場・悩み・読みやすさ・具体性・信頼性の5点をチェック。
  • 最初の1冊は「声のかけ方・接し方」の入門書がおすすめ。関わり方が変わると介護全体がラクになります。
  • 拒否対応・困りごと・痛みとBPSD・遠距離介護とお金など、今の悩みに合った本を選びましょう。
  • 本は「正解集」ではなく「引き出し」。うまくいかなくて当たり前と考え、専門職も早めに頼ってください。

※本記事は一般的な介護・健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。気になる症状や対応は、かかりつけ医・訪問看護師・ケアマネジャーにご相談ください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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