令和5年12月11日に開催された介護給付費分科会第235回で「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)」が公表されました。
今回は通所リハビリテーションの内容を抜粋してまとめさせていただきます。
- 通所リハビリテーションにおける機能訓練事業所の共生型サービス、基準該当サービスの提供の拡充
- 豪雪地帯等において急な気象状況の悪化等があった場合の通所介護費等の所要時間の取扱いの明確化
- 医療機関のリハビリテーション計画書の受け取りの義務化
- 退院後早期のリハビリテーション実施に向けた退院時情報連携の推進
- 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入
- 高齢者虐待防止の推進
- 身体的拘束等の適正化の推進
- 訪問・通所リハビリテーションにおけるリハビリテーション、口腔、栄養の一体的取組の推進
- リハビリテーション・個別機能訓練、口腔管理、栄養管理に係る一体的計画書の見直し
- 訪問及び通所リハビリテーションのみなし指定の見直し
- 介護予防サービスにおけるリハビリテーションの質の向上に向けた評価(予防のみ)
- 通所リハビリテーションの事業所規模別基本報酬の見直し
- ケアプラン作成に係る「主治の医師等」の明確化
- 通所リハビリテーションにおける入浴介助加算(Ⅱ)の見直し
- 科学的介護推進体制加算の見直し
- 介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化
- テレワークの取扱い
- 外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し
- 運動器機能向上加算の基本報酬への包括化(予防のみ)
- 特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
- 通所系サービスにおける送迎に係る取扱いの明確化
通所リハビリテーションの令和6年度介護報酬改定(案)
1)通所リハビリテーションにおける機能訓練事業所の共生型サービス、基準該当サービスの提供の拡充
障害福祉サービスとの連携を強化し、障害者の身体機能・生活能力の維持・向上等に関する自立訓練(機能訓練)を拡充する観点から、通所リハビリテーション事業所において、共生型自立訓練(機能訓練)又は基準該当自立訓練(機能訓練)の提供が可能となることを踏まえ、自立訓練(機能訓練)を提供する際の人員及び設備の共有を可能とする。
2)豪雪地帯等において急な気象状況の悪化等があった場合の通所介護費等の所要時間の取扱いの明確化
豪雪地帯等において、積雪等のやむを得ない事情の中でも継続的なサービス提供を行う観点から、通所介護費等の所要時間について、利用者の心身の状況(急な体調不良等)に限らず、積雪等をはじめとする急な気象状況の悪化等によるやむを得ない事情についても考慮することとする。
3)医療機関のリハビリテーション計画書の受け取りの義務化
退院時の情報連携を促進し、退院後早期に連続的で質の高いリハビリテーションを実施する観点から、医師等の従業者が、入院中にリハビリテーションを受けていた利用者に対し退院後のリハビリテーションを提供する際に、リハビリテーション計画を作成するに当たっては、入院中に医療機関が作成したリハビリテーション実施計画書を入手し、内容を把握することを義務付ける。
4)退院後早期のリハビリテーション実施に向けた退院時情報連携の推進
退院時の情報連携を促進し、退院後早期に連続的で質の高いリハビリテーションを実施する観点から、医療機関からの退院後に介護保険のリハビリテーションを行う際、リハビリテーション事業所の理学療法士等が、医療機関の退院前カンファレンスに参加し、共同指導を行ったことを評価する新たな加算を設ける。
5)業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、基本報酬を減算する。
その際、一定の経過措置を設ける観点から、令和8年3月 31 日までの間、感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しないこととする。
なお、訪問系サービス、居宅介護支援については、令和3年度介護報酬改定において感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備が義務付けられてから間もないこと及び非常災害に関する具体的計画の策定が求められていないことを踏まえ、令和8年3月 31 日までの間、これらの計画の策定を行っていない場合であっても、減算を適用しないこととする。
6)高齢者虐待防止の推進
利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点から、全ての介護サービス事業者(居宅療養管理指導、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売を除く。)について、虐待の発生又はその再発を防止するための措置(虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること)が講じられていない場合に、基本報酬を減算する。その際、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売については、そのサービス提供の態様が他サービスと異なること等を踏まえ、3 年間の経過措置期間を設けることとする。
また、国の補助により都道府県が実施している事業において、ハラスメント等のストレス対策に関する研修を実施できることや、同事業による相談窓口について、高齢者本人とその家族だけでなく介護職員等も利用できることを明確化する。
7)身体的拘束等の適正化の推進
身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、以下の見直しを行う。
ア 短期入所系サービス、多機能系サービスについて、身体的拘束等の適正化のための措置(委員会の開催等、指針の整備、研修の定期的な実施)を義務づける。また、身体的拘束等の適正化のための措置が講じられていない場合は、基本報酬を減算する。その際、1年間の経過措置期間を設けることとする。
イ 訪問系サービス、通所系サービス、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、居宅介護支援について、利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないこととし、身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録することを義務づける。
8)訪問・通所リハビリテーションにおけるリハビリテーション、口腔、栄養の一体的取組の推進
リハビリテーション・口腔・栄養を一体的に推進し、自立支援・重度化防止を効果的に進める観点から、通所リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算について、以下の要件を満たす場合を評価する新たな区分を設ける。
ア 口腔アセスメント及び栄養アセスメントを行っていること。
イ リハビリテーション計画等の内容について、リハビリテーション・口腔・栄養の情報を関係職種の間で一体的に共有すること。その際、必要に応じて LIFEに提出した情報を活用していること。
ウ 共有した情報を踏まえ、リハビリテーション計画について必要な見直しを行い、見直しの内容について関係職種に対し共有していること。
また、報酬体系の簡素化の観点から、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算(B)の要件について新規区分とし、加算区分を整理する。
9)リハビリテーション・個別機能訓練、口腔管理、栄養管理に係る一体的計画書の見直し
リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組を推進する観点から、リハビリテーション・個別機能訓練、口腔管理、栄養管理に係る一体的計画書の見直しを行う。
10)訪問及び通所リハビリテーションのみなし指定の見直し
訪問リハビリテーション事業所を更に拡充する観点から、介護老人保健施設及び介護医療院の開設許可があったときは、訪問リハビリテーション事業所の指定があったものとみなす。
また、介護保険法第 72 条第1項による通所リハビリテーション事業所及び訪問リハビリテーション事業所に係るみなし指定を受けている介護老人保健施設及び介護医療院については、当該事業所の医師の配置基準について、当該施設の医師の配置基準を満たすことをもって基準を満たしているものとみなすこととする。
11)介護予防サービスにおけるリハビリテーションの質の向上に向けた評価
介護予防サービスにおけるリハビリテーションの質を評価し、適切なサービス提供とする観点から、以下の見直しを行う。
ア 利用開始から 12 月が経過した後の減算について、拡大を行う。ただし、定期的なリハビリテーション会議によるリハビリテーション計画の見直しを行い、LIFE へリハビリテーションのデータを提出しフィードバックを受けて PDCAサイクルを推進する場合は減算を行わないこととする。
イ 要介護認定制度の見直しに伴い、より適切なアウトカム評価に資するようLIFE へリハビリテーションのデータ提出を推進するとともに、事業所評価加算の廃止を行う。
12)通所リハビリテーションの事業所規模別基本報酬の見直し
リハビリテーションマネジメントを実施する体制等が充実している事業所を評価する観点から、事業所規模別の基本報酬について、以下の見直しを行う。
ア 通常規模型、大規模型(Ⅰ)、大規模型(Ⅱ)の3段階になっている事業所規模別の基本報酬を、通常規模型、大規模型の2段階に変更する。
イ 大規模型事業所のうち、以下の要件を全て満たす事業所については、通常規模型と同等の評価を行う。
ⅰ リハビリテーションマネジメント加算の算定率が利用者全体で一定数を超えていること。
ⅱ リハビリテーション専門職の配置が一定数を超えていること。
13)ケアプラン作成に係る「主治の医師等」の明確化
退院後早期に介護保険のリハビリテーションを開始することを可能とする観点から、介護支援専門員が居宅サービス計画書に通所・訪問リハビリテーションを位置づける際に意見を求めることとされている「主治の医師等」に、入院中の医療機関の医師を含むことを明確化する。
14)通所リハビリテーションにおける入浴介助加算(Ⅱ)の見直し
通所リハビリテーションにおける入浴介助加算(Ⅱ)について、利用者の居宅における入浴の自立への取組を促進する観点から、入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件である、「医師等による、利用者宅浴室の環境評価・助言」について、人材の有効活用を図る観点から、医師等に代わり介護職員が訪問し、医師等の指示の下、ICT 機器を活用して状況把握を行い、医師等が評価・助言する場合も算定することを可能とする。
加えて、利用者の居宅における自立した入浴への取組を促進する観点から、入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件に係る現行の Q&A や留意事項通知で示している内容を告示に明記し、要件を明確にする。
15)科学的介護推進体制加算の見直し
科学的介護推進体制加算について、質の高い情報の収集・分析を可能とし、入力負担を軽減し科学的介護を推進する観点から、以下の見直しを行う。
ア 加算の様式について入力項目の定義の明確化や他の加算と共通している項目の見直し等を実施。
イ LIFE へのデータ提出頻度について、少なくとも「6月に1回」から「3月に1回」に見直す。
ウ 初回のデータ提出時期について、他の LIFE 関連加算と揃えることを可能とする。
16)介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化
介護職員等の確保に向けて、介護職員の処遇改善のための措置をできるだけ多くの事業所に活用されるようにする観点から、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化を行う。その際、令和6年度末までの経過措置期間を設けることとする。
また、以下の見直しを行う。
ア 職種間の賃金配分について、職種に着目した配分ルールは設けず、一本化後の新加算全体について、事業所内で柔軟な配分を認める。
イ 新加算の配分方法について、 新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、一番下の区分の加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てることを要件とする。
その際、それまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その2/3以上を月額賃金の改善として新たに配分することを求める。
ウ 職場環境等要件について、生産性向上及び経営の協働化に係る項目を中心に、人材確保に向け、より効果的な要件とする観点で見直しを行う。
17)テレワークの取扱い
人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種のテレワークに関して、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないこと等を前提に、取扱いの明確化を行い、職種や業務ごとに具体的な考え方を示す。
18)外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し
就労開始から6月未満の EPA 介護福祉士候補者及び技能実習生(以下「外国人介護職員」という。)については、日本語能力試験 N1 又は N2 に合格した者を除き、両制度の目的を考慮し、人員配置基準への算入が認められていないが、就労開始から6月未満であってもケアの習熟度が一定に達している外国人介護職員がいる実態なども踏まえ、人員配置基準に係る取扱いについて見直しを行う。
具体的には、外国人介護職員の日本語能力やケアの習熟度に個人差があることを踏まえ、事業者が、外国人介護職員の日本語能力や指導の実施状況、施設長や指導職員等の意見等を勘案し、当該外国人介護職員を人員配置基準に算入することについて意思決定を行った場合には、就労開始直後から人員配置基準に算入して差し支えないこととする。その際、適切な指導及び支援を行う観点、安全体制の整備の観点から、以下の要件を設ける。
ア 一定の経験のある職員とチームでケアを行う体制とすること。
イ 安全対策担当者の配置、指針の整備や研修の実施など、組織的に安全対策を実施する体制を整備していること。
19)運動器機能向上加算の基本報酬への包括化
予防通所リハビリテーションにおける身体機能評価を更に推進するとともに、報酬体系の簡素化を行う観点から、以下の見直しを行う。
ア 運動器機能向上加算を廃止し、基本報酬への包括化を行う。
イ 運動器機能向上加算・栄養改善加算・口腔機能向上加算のうち、複数の加算を組み合わせて算定していることを評価する選択的サービス複数実施加算について見直しを行う。
20)特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法において、「過疎地域」とみなして同法の規定を適用することとされている地域等が、特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の算定対象地域に含まれることを明確化する。
21)通所系サービスにおける送迎に係る取扱いの明確化
通所系サービスにおける送迎について、利便性の向上や運転専任職の人材不足等に対応する観点から、送迎先について利用者の居住実態のある場所を含めるとともに、他の介護事業所や障害福祉サービス事業所の利用者との同乗を可能とする。