通所リハビリ開始時に診療情報提供書は必要?法的根拠と実務をPTが解説
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「通所リハビリ(デイケア)を始めるときに、主治医から診療情報提供書をもらわなきゃダメだよね?」――そんな思い込みで毎回FAXを送っていませんか。実は、介護保険の通所リハビリには「開始時に診療情報提供書を取り付けなければならない」と定めたルールがありません。
とはいえ、現場では情報提供書をやり取りしている事業所が大多数。なぜ法令上は不要なのに、実務では必要なのか――この記事では訪問リハビリマガジン編集長・現役PTのリハウルフが、老企第36号や令和6年度介護報酬改定後の様式まで一次情報を踏まえて整理します。読み終わるころには、「何を根拠に・何を・いつもらえばいいか」が腑に落ちるはずです。
- 通所リハビリ開始時に診療情報提供書が法的に必要かどうかの結論
- 老企第36号(平成12年3月1日)で示された原則と例外の中身
- 主治医・かかりつけ医から情報提供を受けるべき実務上の3つの理由
- 医療保険のリハから介護保険通所リハへ移行する場合の別紙様式2-2-1の使い方
- 訪問リハビリの取り扱いとの違いと、現場で迷わないための実務ステップ

リハウルフ先生、うちの事業所では「通所リハの新規利用者は必ず診療情報提供書をもらってきて」って言われるんだけど、これって本当に必要なの?

いい質問だね、ちびウルフ。先に結論から言うと、法令上は「必要」と定められていないんだ。ただし、現場では「もらった方がいい場面」がはっきりあるよ。順番に紐解いていこう。
結論|通所リハビリ開始時に診療情報提供書は「法的には」必要ない
まず結論からお伝えします。介護保険の通所リハビリテーション(デイケア)を開始するにあたり、主治医からの診療情報提供書を必ず取り付けなければならないというルールは介護保険法・関係告示・解釈通知のいずれにもありません。
「絶対に取らないと算定できない」と勘違いされやすいポイントですが、原則として通所リハビリは事業所の医師の診療に基づいてリハビリテーション計画を立てるサービスです。事業所の医師が利用者を直接診察し、その診療をベースに計画を作成・指示する建てつけになっているため、外部の医療機関から情報提供書をもらうこと自体が算定の必須要件にはなっていません。
通所リハビリ=事業所の医師の診療に基づいて計画を立てるサービス。だから「外部の主治医からの診療情報提供書」を必ず取り付ける義務はない。
ただし、後述する例外(医療保険のリハから移行するケース)に該当する場合や、実務的に質の高い計画を立てるためには、診療情報提供書をもらうことが強く推奨されます。「法令上は不要」と「実務上は不要」はイコールではない、ということを最初に押さえておきましょう。
なぜ法令上は不要なのか|老企第36号の規定を確認
「ルールがない」と言われても、根拠を示してもらえないと現場では納得しづらいですよね。そこで、厚生労働省の留意事項通知である老企第36号(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について)を確認していきます。
通所リハビリは「事業所医師の診療に基づく計画」が原則
老企第36号では、通所リハビリテーションの算定要件として、以下のように整理されています(要旨)。
- 指定通所リハビリテーションは、事業所の医師の診療に基づき通所リハビリテーション計画を作成し実施することが原則
- 事業所の医師・PT・OT・ST・看護職員・介護職員などが共同して計画を作成する
- 計画作成にあたり、利用者の状態を把握し、目標と内容を明確にしておく必要がある
このとおり、通所リハビリは「事業所の医師」を中心に組み立てるサービス設計です。そのため、「外部医療機関の主治医からの診療情報提供書がなければ開始できない」とは書かれていません。

あれ?でも訪問リハビリでは「主治医からの情報提供」が制度で決まっていたよね?

するどい!訪問リハと通所リハは医師の関わり方の制度設計が違うんだ。後の章で表にして比べてみよう。まずは通所リハの方を整理し切っちゃおうね。
事業所医師=主治医とは限らない
ここで気をつけたいのが、「事業所の医師」と「主治医(かかりつけ医)」は同じ人とは限らないという点です。通所リハビリの事業所には併設の医療機関の医師が指示医として配置されますが、利用者が日頃通院しているかかりつけ医はまったく別の医療機関であることがほとんどです。
このギャップを埋める「公式の手段」が制度として通所リハに義務付けられているわけではないため、診療情報提供書のやり取りも事業所の判断に委ねられています。ここが、訪問リハビリと通所リハビリの大きな違いです。
それでも診療情報提供書をもらった方がいい3つの理由
制度上は不要だと述べてきましたが、リハウルフとしては通所リハビリ開始時にも主治医(かかりつけ医)からの診療情報提供書をもらうことを強く推奨しています。理由は3つあります。
理由1|利用者の医学的情報を一から取り直さずに済む
かかりつけ医はその利用者の既往歴・服薬・検査値・併存疾患の経過を継続的に把握しています。事業所の医師がゼロから問診や情報収集を行うのは時間的にも医学的にも非効率で、重要な情報の見落としリスクもあります。診療情報提供書があれば、初診の段階から必要な配慮が組み込めます。
理由2|主治医との治療方針のズレを防げる
たとえば「血圧管理上、運動強度を◯Mets以下に」「人工関節術後で◯◯肢位は禁止」など、主治医側に明確な治療方針がある場合、それを共有せずに通所リハを開始すると、事業所の運動プログラムと主治医の指示が食い違うリスクがあります。診療情報提供書があれば、こうしたズレを未然に防げます。
理由3|質の高いリハビリテーション計画を共同で立てやすい
通所リハビリは事業所の医師・PT・OT・ST・看護職員・介護職員などが共同で計画を作るサービスです。共同作業のスタート地点でかかりつけ医からの情報があれば、目標設定や中止基準の合意形成がスムーズになり、結果として利用者・ご家族にとって安全で納得感のあるサービスを提供できます。
法令で「必須」と書かれていないからといって、「もらわなくていい」とは違う。利用者の安全と質の確保のために、実務では原則もらうことを推奨します。
例外|医療保険のリハから介護保険通所リハへ移行する場合
ここからが、通所リハ開始時の情報提供書を語るうえで一番のキモです。医療保険のリハビリテーション料を算定していた患者が、介護保険の通所リハに移行するケースでは、老企第36号に明記された例外規定が動きます。
例外規定の対象となるリハ料
老企第36号では、次の医療保険のリハビリテーション料を算定していた患者が介護保険の通所リハへ移行する場面が想定されています。
- 脳血管疾患等リハビリテーション料
- 廃用症候群リハビリテーション料
- 運動器リハビリテーション料
これらの患者が通所リハへ移行する際は、医療機関から事業所が情報提供を受け、別紙様式2-2-1(リハビリテーション計画書)をもって通所リハの計画書とみなして算定を開始することができる運用が用意されています。
令和6年度改定後の別紙様式2-2-1の位置づけ
令和6年度介護報酬改定に伴い、リハビリテーション・個別機能訓練・栄養・口腔の一体的取り組みに関する事務処理手順及び様式例が整理されました。別紙様式2-2-1(リハビリテーション計画書)は、医療保険リハから介護保険リハへの移行時の連携書類としても活用される位置づけです。
例外規定で別紙様式2-2-1を用いて通所リハを開始した場合でも、算定開始の日が属する月から起算して3か月以内に、事業所医師の診療に基づいて次回のリハビリテーション計画を作成する必要があります。「もらいっぱなしで運用し続ける」はNGです。
例外規定を使う場合の流れ
- 医療機関からの情報提供を受ける医療保険のリハ料を算定していた医療機関から、別紙様式2-2-1(リハビリテーション計画書)の提供を受けます。
- 事業所医師が利用者を診療事業所の医師が利用者を診療したうえで、別紙様式2-2-1の内容を確認します。
- 計画書として活用できるか判断「指定通所リハビリテーションの提供を開始しても差し支えない」と判断できれば、別紙様式2-2-1をリハビリテーション計画書とみなして算定開始できます。
- 3か月以内に次回計画を作成算定開始月から3か月以内に、事業所医師の診療に基づき次回のリハビリテーション計画を作成します。

つまり、この例外って「医療リハから介護リハへスムーズに引き継ぐための仕組み」なんだね!

そのとおり。リハの空白期間を作らないための制度設計だよ。逆にいえば、これに該当しないケースは「通常どおり事業所医師が診療して計画を立てる」のが原則になるんだ。
訪問リハビリと通所リハビリの違い|情報提供の取り扱いを比較
「訪問リハビリでは主治医からの診療情報提供書のやり取りが必須なのに、なぜ通所リハではそうじゃないの?」――この混乱は現場あるあるです。違いを表で整理しましょう。
| 項目 | 訪問リハビリ | 通所リハビリ |
|---|---|---|
| 指示医 | 原則は事業所医師。事業所医師が診療しない場合は外部主治医 | 事業所医師 |
| 外部主治医からの診療情報提供書 | 事業所医師が診療しない場合は必須 | 原則は不要(実務では推奨) |
| 計画書の作成主体 | 事業所医師の指示のもと、リハ職員らが作成 | 事業所医師を中心に多職種共同で作成 |
| 医療リハ→介護リハ移行時の例外 | ― | 別紙様式2-2-1をリハ計画書とみなして算定開始可 |
訪問リハビリでは、事業所医師が直接利用者を診療できない場合に、外部の主治医からの診療情報提供書を必須として情報提供を受けるルートが制度化されています。一方の通所リハビリは事業所医師による診療が前提のサービスなので、外部主治医からの情報提供は制度的に義務化されていません。設計思想が違う、ということです。
通所リハ開始時に事業所がやるべき情報共有の実務ステップ
では、現場ではどう動けば良いのか。法令と実務の両面を踏まえた具体的なステップを示します。
- ケアマネジャーから依頼を受ける居宅介護支援事業所のケアマネからサービス利用の依頼を受けます。この段階で、医療保険リハからの移行の有無を確認しておくと判断が早いです。
- 主治医(かかりつけ医)情報を確認利用者基本情報・サービス計画書に記載のかかりつけ医を確認します。事業所医師=かかりつけ医のケースは少数なので、外部主治医の有無を必ず把握します。
- 診療情報提供書の依頼(推奨)法令上は必須ではありませんが、かかりつけ医に診療情報提供書を依頼します。依頼書には「通所リハ開始にあたり、運動制限・既往歴・服薬・直近の検査値・主治医の方針をご教示ください」と目的を明示すると返信率が上がります。
- 事業所医師による診療事業所の医師が利用者を診療し、医学的所見・運動の可否・中止基準を整理します。診療情報提供書があれば、その情報を踏まえて診療が進みます。
- リハビリテーション計画書の作成事業所医師・PT・OT・ST・看護職員・介護職員などが共同で計画書を作成し、利用者・ご家族に説明・同意を得ます。
- サービス提供開始・モニタリング計画に沿ってサービスを提供し、状態変化時には主治医との連絡・情報共有を継続します。
診療情報提供書を依頼する際は、「事業所の書式」「返信用FAX番号・封筒」「依頼の目的」をセットで渡すと主治医側の事務負担を下げられ、返信率・スピードが上がります。
よくある質問(FAQ)
診療情報提供書がなくても通所リハの加算は取れますか?
はい。通所リハビリの基本報酬や加算の算定に、原則として「外部主治医からの診療情報提供書」は要件として含まれていません。ただし、医療保険リハから介護保険通所リハへの移行で別紙様式2-2-1をリハビリテーション計画書とみなす場合は、医療機関からの情報提供が前提となります。
診療情報提供書をもらえなかった場合、どう対応すれば良いですか?
事業所の医師が利用者を直接診療し、必要な情報を医学的所見として整理したうえで計画を立てれば、制度上は問題ありません。ただし主治医との方針のズレを防ぐため、開始後に電話・サマリーレポート等で情報共有を取りに行くことを推奨します。
診療情報提供書の様式は決まっていますか?
医療保険リハから介護保険通所リハへの移行ケースでは、令和6年度改定後の別紙様式2-2-1(リハビリテーション計画書)を活用する流れが整備されています。それ以外の任意の情報提供では、事業所が独自に「通所リハ開始のための情報提供依頼書」を作成して使うのが一般的です。
事業所医師が主治医を兼ねている場合は、診療情報提供書は不要ですか?
事業所医師=主治医の場合は、外部からの情報提供をあらためて取り付ける意味は薄くなります。ただし、他科の主治医(循環器・整形外科など)がいるなら、必要に応じて該当主治医から情報提供を受けることを推奨します。
診療情報提供書には費用がかかりますか?
診療情報提供書の作成は、医療機関側で診療情報提供料(医療保険)として算定されることがあります。利用者の自己負担の有無や金額は医療機関の運用によるため、事前にご家族・主治医側と確認しておくとトラブルを避けられます。
令和6年度介護報酬改定で、通所リハの開始時の取り扱いは変わりましたか?
「開始時に外部主治医からの診療情報提供書が必須」というルールが新設されたわけではありません。ただし、リハビリテーション・個別機能訓練・栄養・口腔の一体的取り組みの整理に伴い、別紙様式2-2-1の位置づけが明確化されたため、医療リハからの移行時の運用は意識しておく必要があります。
まとめ|通所リハ開始時の診療情報提供書は「法令不要・実務推奨」
通所リハビリ(デイケア)開始時の診療情報提供書について、本記事のポイントを整理します。
- 通所リハビリ開始時に主治医からの診療情報提供書を取り付ける義務は介護保険法・関係通知に存在しない
- 通所リハは事業所医師の診療に基づく計画作成が原則(老企第36号)であり、外部主治医からの情報提供は必須ではない
- ただし利用者の安全と質の高い計画作成のため、実務的にはかかりつけ医からの診療情報提供書をもらうことを強く推奨
- 医療保険リハから介護保険通所リハへの移行は例外規定の対象。別紙様式2-2-1をリハ計画書とみなして算定開始でき、3か月以内に事業所医師の診療に基づく次回計画作成が必要
- 訪問リハと通所リハでは医師の関与・情報提供のルールが異なるため、混同せず使い分けることが重要
制度の「不要」と現場の「不要」はイコールではありません。利用者の安全・サービスの質・事業所のリスク管理という3つの視点から、診療情報提供書のやり取りを仕組み化しておきましょう。
出典・参考
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年3月1日老企第36号)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」関連通知・事務連絡
- 厚生労働省「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の実施に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」別紙様式2-2-1
※本記事は2026年5月時点の公的資料に基づき作成しています。報酬改定や通知改正により取り扱いが変わる場合があるため、最新情報は厚生労働省・所管自治体の公式情報をご確認ください。
(厚生労働省より引用)-640x360.png)
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