「家族が食事のたびにむせて、食べるのに時間がかかる」「最近よくむせるようになったけれど、何かの病気のサインなのかな?」——身近な人の食事中のむせこみが続くと、不安になりますよね。

むせること自体は、体を守るための大切な反応です。ただし、むせこみが頻繁に続く場合は「嚥下(えんげ)障害」など病気が隠れていることもあります。この記事では、むせる仕組みと原因、病気を疑うときに確認したいサイン、そして家庭でできる対処法を、訪問リハの視点でわかりやすくまとめました。気になる症状が続くときの受診の目安もお伝えします。

この記事でわかること
  • そもそも人がむせる理由と、むせやすい病気(嚥下障害)の関係
  • 病気を疑うときに確認したい「食事中」「普段」のサイン
  • 家庭でできる4つの対処法(嚥下体操・食事の工夫・環境・受診)
  • 受診を検討すべき目安とよくある質問

むせやすいのは病気?まずは「むせる理由」を知ろう

むせるのは、気管に入りかけた食べ物や唾液を、咳で外に出そうとする体の防御反応です。食べ物は本来、口からのどを通って食道へ送られますが、誤って気管側に入りそうになると、むせて押し返そうとします。つまり、むせること自体は「体を守る正常な働き」なのです。

気管に入りかけてしまう背景には、飲み込むタイミングがずれている、気管の入口(喉頭)をうまく閉じきれていない、といった原因が考えられます。たまにむせる程度なら心配いりませんが、毎食のように繰り返す場合は注意が必要です。

ちびウルフちびウルフ

むせるのは体を守る反応なんですね。じゃあ、むせること自体は悪くないの?

リハウルフリハウルフ

むせること自体は正常な反応だよ。問題は「むせる回数が増えてきた」「むせても出しきれない」場合なんだ。それは飲み込む力が落ちているサインかもしれないからね。

むせやすい病気=嚥下障害とは

むせやすさの背景にある代表的な状態が嚥下障害です。嚥下とは、食べ物を口に入れ、噛んで、のどへ送り、ごっくんと飲み込んで食道から胃へ運ぶ一連の運動のこと。この流れがうまくいかなくなった状態を嚥下障害といいます。

原因は、脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)、加齢による筋力低下、神経や精神面の要因などさまざまです。飲み込むタイミングがずれたり、飲み込む力が弱まったりすることで起こります。

注意食べ物が食道ではなく気管に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいます。むせて出しきれず、食べ物や唾液が肺に入って細菌感染を起こすと「誤嚥性肺炎」につながります。高齢者では命に関わることもあるため、早めの気づきが大切です。

むせやすい病気なのか確認する2つの場面

病気が隠れていないかを見極めるには、「食事中の様子」と「普段の様子」の2つの場面を観察します。

食事中に確認したいサイン

サイン考えられること
食事中によくむせる飲み込みと呼吸のタイミングのずれ
上を向いて飲み込もうとする舌がうまく使えていない可能性
口から食べ物がこぼれる/鼻から出る口唇やのどの筋力低下
口の中に食べ物が溜まる送り込む力の低下
食後にガラガラ声になる声帯付近に食べ物が残っている可能性
食べるのに時間がかかる/硬いものを残す噛む・飲み込む機能の低下

普段の様子で確認したいサイン

食事中だけでなく、日常生活のなかにもヒントがあります。次のような変化が続いていないか確認してみてください。

サイン考えられること
原因不明の発熱を繰り返す少量ずつ肺に食べ物や唾液が入っている可能性
痰(たん)が増えた/よだれが多い飲み込み・口の機能の低下
ろれつが回らない口やのどの筋肉・神経の問題
痩せてきた/食欲が低下した食べづらさによる摂取量の減少
食べ物の好みが変わったむせにくいものを無意識に選んでいる可能性
ポイント「好みが変わった」と感じる背景には、本人がむせずに飲み込めるやわらかいものを選んでいるケースがあります。嗜好の変化に見えて、実は飲み込みづらさのサインかもしれません。

むせやすい病気を疑ったら家庭でできる4つの対処法

受診を考えつつ、家庭でも食事をより安全にする工夫ができます。次の4つを試してみましょう。

  1. 食事前に嚥下体操で口とのどを準備する
  2. やわらかく水分のある、まとまりやすい食事にする
  3. 静かで集中できる食事環境を整える
  4. 気になる症状が続くなら病院を受診する

①食事前に嚥下体操をする

誤嚥は1口目に起きやすいといわれます。食べる前に口とのどを動かして準備しておきましょう。首を前後・左右にゆっくり動かす運動、「うー」「いー」と唇を動かす運動、「べー」と舌を出す運動を、それぞれ無理のない範囲で10回ほど。おでこに手を当てて押し合いながら下を向く体操は、飲み込みに関わる筋肉を鍛えます。「パ・タ・カ・ラ」の発音練習も効果的です。すぐに効果が出るものではないので、毎日少しずつ続けるのがコツです。

②やわらかく水分のある食事にする

やわらかく、口の中でまとまりやすい食事は飲み込みやすくなります。ご飯はやわらかめに、焼き魚は煮魚に、根菜は煮物にするなど調理を工夫しましょう。サラサラの水分はかえってむせやすいため、とろみをつけると安全です。口の中が乾燥するとむせやすくなる方もいるので、水分を含んだメニューを意識してください。

③静かな食事環境を整える

テレビがついていたり人が動き回っていたりすると、飲み込みに集中できずむせやすくなります。窓辺や壁を向いた席など、落ち着ける場所を試してみましょう。いつもの場所と静かな場所とで、食べる様子を見比べてみるのもおすすめです。

④病院を受診する

むせこみが続くなら、早めの受診を検討しましょう。嚥下障害は耳鼻咽喉科や嚥下の専門外来などで相談できます。食事のむせこみ以外にも体の症状が隠れていることがあるため、自己判断だけで様子を見続けないことが大切です。

ちびウルフちびウルフ

どのくらいむせたら受診したほうがいいんですか?目安が知りたいです。

リハウルフリハウルフ

「毎食むせる」「むせて咳が止まらない」「原因不明の発熱を繰り返す」「体重が減ってきた」——このどれかが当てはまるなら、早めに受診したほうが安心だよ。誤嚥性肺炎を防ぐためにも、迷ったら相談してね。

誤嚥性肺炎を防ぐために家庭で意識したいこと

むせやすさが続くとき、最も避けたいのが誤嚥性肺炎です。家庭でのちょっとした心がけで、リスクを下げることができます。ここでは、食事の工夫と並んで大切な3つのポイントを紹介します。

毎日の口腔ケアを丁寧に行う

口の中には多くの細菌が住んでいます。この細菌が唾液や食べ物と一緒に気管へ入り込むと、誤嚥性肺炎の引き金になります。毎食後または1日数回、歯みがきとうがいで口の中を清潔に保ちましょう。入れ歯の方は、入れ歯の洗浄も忘れずに。寝ている間に唾液を誤嚥することもあるため、就寝前の口腔ケアは特に大切です。

食後すぐに横にならない

食後すぐに横になると、胃の内容物が逆流して気管に入りやすくなります。食後は30分〜1時間ほど、上体を起こした姿勢で過ごすと安心です。すぐに休みたい場合も、背もたれを高くして座った姿勢を保ちましょう。

体調が悪い日は無理をさせない

発熱や体調不良のときは、いつもより飲み込む力が落ちていることがあります。無理に普段どおりの食事を続けず、量を減らす・形態をやわらかくするなど臨機応変に対応しましょう。少しでも様子がおかしいと感じたら、早めに医療機関や訪問看護・訪問リハの専門職に相談してください。

ポイント訪問リハビリや訪問看護を利用していれば、嚥下の評価や食事姿勢の指導、口腔ケアの助言などを受けられます。「むせが心配」と感じたら、ケアマネジャーに相談して専門職につないでもらうのも一つの方法です。

むせやすい病気に関するよくある質問

水を飲むときによくむせます。とろみをつけたほうがいいですか?
サラサラの水分は流れるスピードが速く、むせやすい代表例です。市販のとろみ剤で適度なとろみをつけると飲み込みやすくなります。ただし濃すぎると逆に飲みにくくなるため、適量を守りましょう。心配な場合は専門職に相談を。
誤嚥性肺炎を防ぐために、家庭でできることはありますか?
食事の工夫や嚥下体操に加え、口の中を清潔に保つ口腔ケアがとても重要です。口の中の細菌が誤嚥で肺に入ると肺炎の原因になるため、毎日の歯みがき・うがいを丁寧に行いましょう。
食事中の姿勢で気をつけることはありますか?
あごを軽く引き、背中を起こした安定した姿勢が基本です。あごが上がると気管に入りやすくなるため、テーブルや椅子の高さを調整しましょう。食後すぐに横にならないことも誤嚥予防になります。
何科を受診すればよいですか?
まずは耳鼻咽喉科や、嚥下を診てくれる専門外来が相談先になります。かかりつけ医がいる場合は、まず相談して適切な科を紹介してもらうのもよいでしょう。リハビリ専門職(言語聴覚士など)が在籍する医療機関なら、嚥下の評価や訓練を受けられることもあります。
本人が「むせていない」と言い張る場合はどうすればいいですか?
むせを自覚しにくい「不顕性誤嚥(むせない誤嚥)」の可能性もあります。原因不明の発熱や痰の増加など別のサインがないか観察し、気になる場合は本人の自覚にかかわらず受診を検討してください。家族が日々の様子を記録しておくと、受診時の説明に役立ちます。
まとめ
  • むせるのは体を守る正常な反応だが、繰り返す場合は嚥下障害など病気のサインのことも
  • 「食事中」「普段」の様子を観察し、発熱の繰り返しや体重減少などの変化に注意
  • 家庭では嚥下体操・やわらかい食事・静かな環境・口腔ケアで誤嚥を予防できる
  • むせこみが続く・発熱を繰り返す・痩せてきたなら、耳鼻咽喉科や嚥下の専門外来へ早めに相談を

※本記事は一般的な情報をまとめたものです。症状や対処法は個人差があります。気になる症状が続く場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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