「言語聴覚士はチーム医療でどんな役割を担うの?」「他職種とどう連携すればいいの?」——こうした疑問を持つST(言語聴覚士)や、これからSTを目指す学生さんは少なくありません。言語聴覚士は「話す・聞く・食べる」の専門家として、医療・介護のチームのなかで欠かせない存在です。

この記事では、現場で多職種と連携してきた視点から、言語聴覚士のチーム医療での役割、関わる職種、そして食事(嚥下)とコミュニケーションの具体的な実践までをわかりやすく整理します。病院だけでなく、訪問リハビリや訪問看護ステーションなど在宅領域で働くSTにも役立つ内容です。

この記事でわかること
  • 言語聴覚士のチーム医療での役割の基本
  • 障害種別・年齢・働く場所ごとに連携する職種の違い
  • 食事(嚥下)とコミュニケーション、それぞれの場面での具体的な動き方
  • 多職種連携をうまく進めるためのコツとよくある疑問
ちびウルフちびウルフ

言語聴覚士って、チームのなかでは何をする人なの?

リハウルフリハウルフ

ひと言でいうと「話す・聞く・食べる」を支える専門家だよ。チームの中ではこの3つの困りごとを評価して、他の職種につなぐ役割を担うんだ。順番に見ていこう。

言語聴覚士のチーム医療での役割とは?

言語聴覚士(ST)のチーム医療での役割を結論からいうと、音声・言語・聴覚・嚥下(えんげ=飲み込み)に関する評価と訓練を行い、その専門的な視点をチーム全体に共有することです。

これは法律にも根拠があります。言語聴覚士法では、STは音声機能・言語機能・聴覚に障害のある人の機能の維持向上のために、訓練や検査、助言・指導を行う専門職と定められています。さらに、医師または歯科医師の指示のもとで嚥下訓練や人工内耳の調整などを行えること、そして医師・歯科医師その他の医療関係者と緊密な連携を図らなければならないことも明記されています。

ポイント言語聴覚士法には「他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努めなければならない」と書かれています。つまり、多職種連携はSTにとって努力目標ではなく、法律上も求められている基本姿勢なのです。

言語訓練や嚥下訓練は、STひとりの力だけで完結するものではありません。医師の診断、看護師のケア、リハ職の評価、栄養士の食事調整などが組み合わさって、はじめて利用者・患者さんの生活が支えられます。そのなかでSTは「コミュニケーションと食べることの専門家」として、自分の評価結果を分かりやすく言語化し、チームに橋渡しする役割を担います。

言語聴覚士がチーム医療で関わる職種

言語聴覚士が連携する職種は、ひとつに固定されているわけではありません。「障害の種類」「対象者の年齢」「働く場所」の3つによって、関わる職種は大きく変わります。それぞれ見ていきましょう。

ちびウルフちびウルフ

連携する相手って、いつも同じメンバーじゃないんだね?

リハウルフリハウルフ

そうなんだ。同じSTでも、子どもの言葉を見るのか、高齢者の嚥下を見るのか、働く場所が病院か在宅かで、隣にいる職種はガラッと変わるんだよ。

障害種別による違い

まず、障害の種類によって連携する職種が変わります。医師・看護師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士は、障害の種類を問わず関わる機会の多い職種です。医師の指示のもとリハビリを行い、医療的ケアは看護師、姿勢や歩行は理学療法士(PT)、生活動作は作業療法士(OT)、日常のケアは介護福祉士と連携します。

そのうえで、障害ごとに加わる職種があります。

障害の種類連携することが多い職種
吃音などの発声発語障害心理面への配慮が必要なため、臨床心理士などの心理職
聴覚障害聴力検査を行う臨床検査技師
嚥下障害診療放射線技師(嚥下造影検査)、歯科医師・歯科衛生士(義歯調整・口腔ケア)、管理栄養士(栄養・食形態)など多職種

とくに嚥下障害は、関わる職種が最も多い領域です。検査・口腔・栄養・食事介助と、複数の専門職が同時に動く場面が多くなります。

年齢による違い

対象者の年齢によっても、連携先が変わります。成人と違い、お子さんは年齢に応じて関わる機関が変わるためです。幼少期は保育士、学童期は教師など、教育・保育の機関との連携が中心になります。

小児を担当するSTは、保育園や学校を訪問してお子さんの様子を観察し、保育士や教師に対応方法を助言し、情報を共有する役割を求められます。医療職だけでなく、教育の現場とつながる点が小児領域の特徴です。

働く場所による違い

働く場所によっても、関わる職種は変わります。STの主な勤務先は次のように分かれます。

区分主な勤務先連携することが多い職種
入院・入所病院、介護老人保健施設などの施設医師、看護師、PT、OT、介護福祉士 など
在宅系サービス通所リハ(デイケア)、通所介護(デイサービス)、訪問リハビリ、訪問看護ステーションケアマネジャー(介護支援専門員)、訪問診療医、訪問看護師、訪問介護員、福祉用具専門相談員 など
注意在宅領域では、医療機関のように同じ建物に職種がそろっているわけではありません。ケアマネジャーを通じた情報共有や、連絡ノート・報告書など「会わずに伝える工夫」がより重要になります。

言語聴覚士におけるチーム医療での役割(食事・嚥下編)

ここからは、STのチーム医療での役割を場面ごとに具体的に見ていきます。まずは食事(嚥下)に関する役割です。入院中の患者さんを例に、STの動きを時系列で整理します。

  1. 評価・観察:スクリーニング検査のあと、口腔・構音器官や嚥下機能を詳しく評価。口腔ケアの様子を観察し、義歯の不具合や口腔内の衛生状態を確認します。
  2. 訓練プログラムの実施:口腔体操、構音訓練、顔面マッサージなど、評価に基づいた訓練を行います。
  3. 食事場面の調整:食事形態や加工方法を検討し、摂取量が少なければ補助食品の使用も検討。座位姿勢、箸やスプーンの操作、一口量、服薬の形状まで確認します。
  4. 精密な嚥下評価:必要に応じて嚥下造影検査(VF)や頸部聴診法で飲み込みの状態を評価します。
  5. 多職種への申し送り:安全な食事介助の方法を看護師・介護職に申し送り、介助場面で声をかけて周知します。
  6. 家族への指導:食事形態や加工方法を家族に伝え、退院後も安全に食べられるよう準備します。

このように、STは「飲み込みを評価する人」であると同時に、評価結果を看護師・介護職・栄養士・家族に翻訳して伝える人でもあります。どんなに正確な評価をしても、現場のケアに反映されなければ意味がありません。チームに伝わる言葉で共有することが、嚥下領域でのSTの大きな役割です。

ポイント食事は「誤嚥性肺炎の予防」「低栄養の予防」「食べる楽しみの維持」が同時に関わる場面です。STの嚥下評価は、医療安全と生活の質(QOL)の両方を支えています。

言語聴覚士におけるチーム医療での役割(コミュニケーション編)

次に、コミュニケーションに関する役割です。ここでは、言語障害である失語症の入院患者さんを例に説明します。

STは個別または少人数のグループで言語訓練を行い、患者さんが得意とするコミュニケーション手段を見つけて、それを多職種に伝えます。たとえば次のような工夫です。

ちびウルフちびウルフ

言葉が出にくい人とは、どうやってやりとりするの?

リハウルフリハウルフ

その人の「できる方法」を探すのがSTの腕の見せどころなんだ。はい/いいえで答えられる質問にしたり、絵やカードを使ったり。そしてその方法をチーム全員に共有するんだよ。

具体的には、Yes/Noで答えられる質問を投げかける、絵を提示する、「トイレに行く」「着替える」など使用頻度の高い行動を書いたコミュニケーションカードを用意する、といった手段です。さらに、失語症の説明とコミュニケーション方法を、時間をかけて家族にも伝えます。

注意失語症は「理解力まで失われている」と誤解されやすい障害です。STは「言葉が出にくいだけで、本人は分かっている」ことをチームや家族に丁寧に伝え、本人の尊厳を守る橋渡しをします。

多職種連携をうまく進めるためのコツ

STがチーム医療で力を発揮するには、専門性そのものと同じくらい「伝え方」が大切です。現場で意識したいポイントを整理します。

ポイント 専門用語をそのまま使わず、看護師・介護職・家族が今日から実践できる言葉に置き換える/「なぜそうするのか」の根拠を一緒に伝える/口頭だけでなく記録・カード・掲示などで残す/うまくいった工夫はチーム全体に横展開する——この4点を意識すると、評価が現場のケアに反映されやすくなります。

とくに在宅領域では、STが利用者宅を訪問できる回数は限られます。だからこそ、訪問しない日の食事やコミュニケーションをご家族やヘルパー、訪問看護師が支えられるよう、「STがいない場面でも安全が保たれる仕組み」を作ることが、チーム医療における重要な役割になります。

言語聴覚士のチーム医療に関するよくある質問

言語聴覚士はチーム医療の中でリーダーになることもありますか?
嚥下障害のように複数職種が同時に関わるケースでは、STが嚥下チームの中心的な役割を担うことがあります。一方で全体の方針は医師の指示が基本となるため、STは「専門領域の調整役・情報のまとめ役」として動くことが多いです。
嚥下障害のチームには、どんな職種が関わりますか?
医師・歯科医師・看護師・管理栄養士・歯科衛生士・診療放射線技師(嚥下造影検査)・PT・OT・介護福祉士などが関わります。STは嚥下機能の評価と訓練を担い、食形態や介助方法を各職種に橋渡しします。
在宅(訪問)で働くSTも多職種連携をしますか?
します。在宅ではケアマネジャーを中心に、訪問看護師・訪問介護員・福祉用具専門相談員・訪問診療医などと連携します。病院のように顔を合わせる機会が少ないぶん、報告書や連絡ノートを使った情報共有がより重要になります。
失語症の患者さんと、家族はどう関わればよいですか?
はい/いいえで答えられる質問にする、絵やカードを使う、急かさず待つ、といった工夫が有効です。STが家族にこうした方法を具体的に伝えることで、退院後の生活でもコミュニケーションが取りやすくなります。
まとめ
  • 言語聴覚士のチーム医療での役割は、音声・言語・聴覚・嚥下の評価と訓練を行い、その専門的視点をチームに共有すること。
  • 連携する職種は「障害の種類」「対象者の年齢」「働く場所」によって変わり、とくに嚥下障害は多職種が関わる。
  • 食事の場面では評価から多職種への申し送り・家族指導まで担い、誤嚥予防と「食べる楽しみ」の両方を支える。
  • コミュニケーションの場面では、本人が得意な手段を見つけてチーム・家族に橋渡しし、尊厳を守る役割を果たす。
  • 専門性を「現場で実践できる言葉」に翻訳して伝えることが、STがチーム医療で力を発揮するカギ。
ABOUT ME
リハウルフ
理学療法士/「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」監著・編集/「訪問リハビリマガジン」編集長/他に3メディアの編集長/ YouTube「リハウルフ」運営/セミナー経験多数/厚生労働省のホームページを見ることが趣味
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