夜間対応型の減算2つを解説|虐待防止とBCPの1%

夜間対応型訪問介護には、必要な取り組みができていないと報酬が下がる減算が2つあります。高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算で、いずれも所定単位数の100分の1です。どちらも書類だけでなく、実施した記録がないと減算の対象になります。
この記事では、この2つの減算を、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準の原文を確認して整理しました。
- 2つの減算がいずれも1%であること
- イとロで減算のかかり方が違うこと
- 虐待防止に必要な4つの取り組み
- 業務継続計画に必要な5つの取り組み
- 「計画はあるが訓練がない」が最も多い不備であること
- 記録がないと実施していない扱いになること
- 他の減算と重なる場合の計算
- 揃えておくべき書類の一覧
夜間対応型訪問介護の減算とは?
介護保険には、加算だけでなく求められる取り組みを行っていない場合に報酬が下がる仕組みがあります。夜間対応型訪問介護では、虐待防止と業務継続計画の2つが対象です。いずれも令和3年度の介護報酬改定で義務化され、経過措置を経て減算が適用されています。
減算の幅
| 減算 | 減算幅 | 根拠 |
|---|---|---|
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の100分の1 | 注2 |
| 業務継続計画未策定減算 | 所定単位数の100分の1 | 注3 |
- 注2 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
- 注3 別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、業務継続計画未策定減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する。
イとロで影響のしかたが違う
| 類型 | 減算のかかり方 | 影響 |
|---|---|---|
| イ(Ⅰ) | 訪問回数に応じた所定単位数に対して1% | 訪問が多いほど減算額も増える |
| ロ(Ⅱ) | 月額2,702単位に対して1% | 月あたり約27単位 |
2つの減算が同時に適用されることもあります。体制が整っていない事業所ほど、両方に該当しやすくなります。
高齢者虐待防止措置未実施減算
指定地域密着型サービス基準は、虐待の発生またはその再発を防止するため、次の措置を講じることを求めています。
| 必要な措置 | 確認されるもの |
|---|---|
| 虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、結果を従業者に周知徹底する | 議事録、周知の記録 |
| 虐待の防止のための指針を整備する | 指針の文書 |
| 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施する | 研修の記録、資料、出席者 |
| これらの措置を適切に実施するための担当者を置く | 担当者を定めた記録 |
4つすべてが必要です。委員会は開いているが指針がない、指針はあるが研修をしていない、という状態では減算の対象になります。
- 委員会はテレビ電話装置等を活用して行うことができます
- 委員会の結果を従業者に周知した記録まで必要です
- 担当者は「置くこと」が要件なので、誰が担当かを明確にしてください
- 夜間帯の勤務者にも研修と周知が届いているかを確認してください
・録画や資料配付による周知の記録を残す
・複数回に分けて開催する
・オペレーターと訪問担当の双方に届いているかを確認する
「開催したが全員には届いていない」状態にならないよう、周知の方法を決めておいてください。
業務継続計画未策定減算
感染症や非常災害が発生してもサービスの提供を継続できるようにするための計画(BCP)に関する減算です。
- 感染症の発生・まん延時、および非常災害時の業務継続計画を策定していること
- 計画に従い必要な措置を講じていること
- 従業者に対し計画を周知していること
- 必要な研修および訓練を定期的に実施していること
- 定期的に計画の見直しを行い、必要に応じて変更していること
訓練は机上のシミュレーションでも構いませんが、実施した記録(日時、参加者、想定した状況、気づいた課題)が必要です。記録がなければ、実施していないものとして扱われます。
夜間対応型では、夜間に災害が起きた場合の通報対応をどうするかを想定に含めておくと、実態に即した計画になります。
ちびウルフ1%なら、たいした金額じゃないよね?
リハウルフ金額そのものより、運営指導で「基準を満たしていない」と判断されることのほうが重いです。減算は過去にさかのぼって適用されることがあり、その分は返還になります。
それに、委員会も研修もBCPも、やること自体は事業所を守る取り組みです。書類を揃えるためではなく、夜間に何かあったときに動けるようにという視点で作ると、中身のあるものになります。
揃えておくべき書類
- 虐待防止委員会の議事録(開催日、出席者、検討内容、周知の方法)
- 虐待の防止のための指針
- 虐待防止研修の記録(日時、参加者、資料)
- 虐待防止の担当者を定めた記録
- 業務継続計画(感染症・非常災害の両方)
- 計画の周知の記録
- 研修および訓練の記録(日時、参加者、内容、課題)
- 計画の見直しの記録
これらは運営指導で必ず確認されます。1つのファイルにまとめておくと、確認がすぐ終わります。
他の減算と重なる場合
夜間対応型訪問介護には、同一建物減算(90%/85%)もあります。地域に関する加算も率で計算します。複数の率が重なる場合、掛ける順序と端数処理によって結果が変わります。
順序は留意事項通知で定められています。自己流で計算せず、保険者への確認と、請求ソフトの設定確認を行ってください。
減算のQ&A
よくある質問
減算幅はどのくらいですか?
いずれも所定単位数の100分の1です。ロの場合、月額2,702単位に対して約27単位になります。
2つ同時に適用されますか?
それぞれ独立した減算のため、両方の要件を満たしていなければ両方が適用されます。
委員会は開いていますが指針がありません。
減算の対象になります。委員会、指針、研修、担当者の4つすべてが必要です。
委員会はオンラインでもよいですか?
テレビ電話装置等を活用して行うことができます。開催記録は必要です。
夜勤者が研修に参加できません。
録画や資料配付による周知、複数回に分けた開催などで対応してください。周知した記録を残すことが重要です。
業務継続計画は作りましたが訓練をしていません。
減算の対象になります。策定・周知・研修・訓練・見直しがセットで求められています。
訓練は実地でないとだめですか?
机上のシミュレーションでも差し支えありませんが、実施した記録が必要です。
同一建物減算と重なったら計算はどうなりますか?
率を掛ける順序と端数処理は留意事項通知で定められています。保険者と請求ソフトの設定を確認してください。
いつから減算になりますか?
要件を満たさなくなった時点からの取扱いになります。具体的な起算については保険者にご確認ください。
- 減算は高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算の2つ
- いずれも所定単位数の100分の1
- イは訪問回数に応じた所定単位数、ロは月額2,702単位に対してかかる
- 2つが同時に適用されることもある
- 虐待防止は、委員会・指針・研修・担当者の4つすべてが必要
- 委員会はテレビ電話装置等を活用できるが、記録は必要
- 委員会の結果を従業者に周知した記録まで求められる
- 夜間対応型は職員が集まる機会が少なく、周知の方法を決めておく必要がある
- 業務継続計画は、策定・周知・研修・訓練・見直しがセット
- 「計画は作ったが訓練をしていない」が最も多い不備
- 訓練は机上でもよいが、実施記録が必要
- 夜間に災害が起きた場合の通報対応を想定に含めると実態に即する
- 減算は過去にさかのぼって適用され、返還につながることがある
- 同一建物減算や地域加算と重なる場合、計算順序を確認する
- 必要書類を1つのファイルにまとめておくと運営指導が早く終わる
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)(夜間対応型訪問介護費 注2・注3)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)e-Gov法令検索
- 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)e-Gov法令検索
※本記事の減算幅に関する記述は、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準にもとづいて整理したものです。虐待防止および業務継続計画に関する具体的な措置の内容は、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準に定められています。委員会や研修の開催頻度、減算の起算時点、複数の率が重なる場合の計算順序および端数処理については、留意事項通知および保険者の解釈をご確認ください。地域密着型サービスは市町村が指定・指導監督を行うため、取扱いが市町村によって異なる場合があります。個別の取扱いは、必ず保険者にご確認ください。2026年9月時点の内容として整理しています。





