介護の陰部洗浄の手順と注意点|医行為との線引きも解説

陰部洗浄は日常的な清潔保持であり、通常は介護職が行えます。ただし膀胱留置カテーテルを挿入している方の陰部洗浄については、令和4年の通知で条件が明示されました。「医師又は看護職員が専門的管理は必要ないと確認した場合のみ」とされており、この確認なしに行うのは適切ではありません。
この記事では、介護における陰部洗浄について、手順と注意点に加えて、医行為との線引きを厚生労働省の通知にあたって整理しました。理学療法士・介護支援専門員として在宅と施設の両方を見てきた立場から書いています。
- 陰部洗浄が介護職の業務として行える理由
- 膀胱留置カテーテル挿入中の場合に必要な確認
- 令和4年の通知で示された内容
- 基本的な手順と、感染を広げない順序
- 男女で異なる注意点
- 皮膚トラブルを見つけたときの対応
- 羞恥心への配慮のしかた
- 記録に残すべきこと
陰部洗浄は医行為か
厚生労働省は平成17年の通知で、医師法等にいう「医行為」に該当しないと考えられる行為を例示しました。爪切り、口腔内の刷掃・清拭、耳垢の除去、ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること、自己導尿を補助するためのカテーテルの準備や体位の保持などが挙げられています。
陰部洗浄そのものは、この例示に含まれていません。もともと日常生活上の清潔保持であり、身体介護として行われるものだからです。入浴介助や清拭と同じ位置づけになります。
カテーテルが入っている場合は扱いが変わる
ここが本記事でいちばんお伝えしたい点です。令和4年12月1日の通知は、医行為ではないと考えられる行為をさらに整理し、膀胱留置カテーテル関係の項目を設けました。その中に次の記載があります。
- 専門的管理が必要無いことを医師又は看護職員が確認した場合のみ、膀胱留置カテーテルを挿入している患者の陰部洗浄を行うこと。
実務では、誰が、いつ、専門的管理は不要と確認したのかを記録に残してください。看護師との連携がある事業所なら、その記録をサービス提供の記録と紐づけておくのが確実です。
状態が変わったとき(発熱、尿の性状の変化、カテーテル周囲の異常など)は、その都度、医療職に確認し直す必要があります。
陰部洗浄の基本手順
- 本人に目的を説明し、同意を得る(毎回、必ず声をかける)
- 室温を調整し、カーテンやタオルで露出を最小限にする
- 物品を準備する(洗浄ボトル、微温湯、石けん、タオル、手袋、防水シーツ、交換用のおむつ)
- 手袋を装着し、防水シーツを敷く
- 湯温を自分の前腕内側で確認してから、本人にもかけて確認してもらう
- 陰部から肛門に向かって洗う(逆方向にしない)
- 洗浄後は押さえるように水分を拭き取る(こすらない)
- 皮膚の状態を観察し、乾いてから衣類やおむつを整える
- 手袋を外し、手指衛生を行う
- 実施内容と観察したことを記録する
洗う順序が感染予防の要
もっとも重要なのが「前から後ろへ」という順序です。肛門周囲の細菌を尿道側へ運ばないためで、とくに女性は尿道が短いため尿路感染のリスクが高くなります。
- 清潔な部分から不潔な部分へ、が原則
- 同じ面のガーゼやタオルで往復しない
- 使用したガーゼは一方向に一度だけ使う
- 石けんは十分に洗い流す(残ると皮膚炎の原因になります)
男女で異なる注意点
| 注意すること | |
|---|---|
| 女性 | 尿道が短く感染しやすい。陰唇の内側にも汚れが残りやすいが、強くこすらない。必ず前から後ろへ |
| 男性 | 包皮をやさしく引いて洗い、洗浄後は必ず元に戻す(戻し忘れは腫れの原因になります)。陰嚢の裏側は汚れが残りやすい |
| 共通 | 皮膚が薄く傷つきやすい。摩擦を避け、こすらず押さえ拭きにする |
新人が最も見落としやすく、かつ本人が訴えにくい部分です。
観察して報告すべきこと
陰部洗浄は、皮膚と排泄の状態を毎日見られる貴重な機会です。次の変化に気づいたら、看護職または医療職へ報告してください。
- 発赤、びらん、ただれ、水疱、出血
- 白いカスのようなもの(真菌感染の可能性があります)
- 腫れ、熱感、強い痛みの訴え
- 尿の色の濃さ、混濁、浮遊物、においの変化
- 出血や血液の混入
- カテーテル挿入中の場合:挿入部の分泌物、カテーテルのずれ、尿の流出の停止
「いつもと違う」に気づけるのは、毎日ケアしている職員だけです。判断は医療職が行うので、迷ったら報告してください。
ちびウルフ嫌がって暴れる方には、どうしたらいいの?
リハウルフ抵抗の理由は、たいてい説明なく触れられることと寒さです。声をかけてから触れる、湯温を確認してもらう、露出を最小限にする。この3つでかなり変わります。それでも難しいときは、無理に続けず一度離れてください。認知症のある方では、担当を同性の職員に変えるだけで落ち着くこともあります。
羞恥心への配慮
- ケアの前に必ず声をかけ、何をするか説明する
- ドアやカーテンを閉め、他者から見えない環境にする
- バスタオルなどで、洗う部分以外は覆う
- 複数人で対応する必要がある場合、人数と理由を説明する
- 可能な範囲で、本人に持ってもらう・拭いてもらうなど参加してもらう
- 同性介助の希望があれば、可能な限り調整する(できない場合は理由を説明する)
同性介助については、事業所の人員体制上、必ず実現できるとは限りません。できないことを曖昧にせず、契約時に説明しておくほうが、後のトラブルを防げます。
記録に残すこと
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 実施内容 | 陰部洗浄を実施。微温湯と石けんを使用 |
| 皮膚の状態 | 鼠径部に軽度の発赤あり。前日より範囲が拡大 |
| 尿・便の状態 | 尿は淡黄色、混濁なし。便は普通便1回 |
| 本人の反応 | 「気持ちいい」と発言。抵抗なく実施できた |
| 報告の有無 | 発赤について看護師へ報告(14時、〇〇看護師) |
| カテーテルがある場合 | 専門的管理不要の確認済み(〇月〇日、〇〇看護師)。挿入部の異常なし |
とくに報告した相手と時刻は必ず残してください。皮膚トラブルが悪化した場合、いつ気づき、誰に伝えたかが問われます。
よくある質問
陰部洗浄は介護職が行ってよいのですか?
通常の陰部洗浄は日常生活上の清潔保持であり、身体介護として行えます。入浴介助や清拭と同じ位置づけです。
カテーテルが入っている場合はどうですか?
令和4年12月1日の通知により、専門的管理が必要ないことを医師または看護職員が確認した場合のみ行うこととされています。確認の記録を残してください。
その確認はどう残せばよいですか?
誰が、いつ、専門的管理は不要と確認したかを記録してください。状態が変わったときは、その都度確認し直す必要があります。
洗う方向に決まりはありますか?
前から後ろへ(陰部から肛門へ)が原則です。逆方向に洗うと、肛門周囲の細菌を尿道側へ運ぶことになります。
湯温はどう確認しますか?
まず自分の前腕内側で確認し、そのうえで本人にもかけて確認してもらってください。高齢者は温度を感じにくいことがあります。
男性で気をつけることは何ですか?
洗浄のために引いた包皮を、必ず元に戻すことです。戻し忘れると腫れや痛みの原因になります。手順書に明記してください。
皮膚が赤くなっていたらどうしますか?
強くこすらず、状態を記録して看護職または医療職へ報告してください。判断と処置は医療職が行います。
強く拒否される場合は?
説明なく触れることと寒さが原因であることが多いです。声かけ、湯温の確認、露出の最小化を試し、それでも難しければ無理をせず一度離れてください。
同性介助はしてもらえますか?
事業所の人員体制によります。実現できない場合もあるため、契約時に説明しておくことが望ましいです。
- 通常の陰部洗浄は日常生活上の清潔保持であり、身体介護として行える
- 膀胱留置カテーテル挿入中の場合は、令和4年12月1日の通知で条件が示された
- 「専門的管理が必要無いことを医師又は看護職員が確認した場合のみ」とされている
- 確認がないまま行うのは、この整理の範囲外になる
- 誰が、いつ確認したかを記録に残す
- 状態が変わったら、その都度確認し直す
- 洗う方向は前から後ろへ。逆方向は尿路感染の原因になる
- 同じ面のタオルで往復しない。石けんは十分に洗い流す
- 湯温は自分の前腕で確認し、本人にも確認してもらう
- 男性は包皮を必ず元に戻す。戻し忘れは腫れの原因になる
- 皮膚は薄いため、こすらず押さえ拭きにする
- 発赤、白いカス、腫れ、尿の変化は医療職へ報告する
- 抵抗の理由は、説明なく触れられることと寒さが多い
- 羞恥心への配慮として、声かけ・環境・露出の最小化を徹底する
- 記録には、報告した相手と時刻まで残す
- 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)(令和4年12月1日 医政発1201第4号)
- 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(平成17年7月26日 医政発第0726005号)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)e-Gov法令検索
※本記事の医行為の解釈に関する記述は、厚生労働省の通知にもとづいて整理したものです。実際に介護職が行える行為の範囲は、利用者の状態、事業所の体制、医師および看護職員の判断によって異なります。カテーテル挿入中の陰部洗浄については、必ず医師または看護職員の確認を得たうえで行い、その記録を残してください。皮膚の異常や体調の変化が見られる場合の判断・処置は医療職が行います。本記事の手順は一般的な整理であり、個別の実施方法は所属する事業所の手順書および医療職の指示に従ってください。実務上の注意点は、筆者(理学療法士・介護支援専門員)の実務経験にもとづく整理です。2026年9月時点の情報として整理しています。





