看多機の排せつ支援加算とは?

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の排せつ支援加算は、(Ⅰ)10単位・(Ⅱ)15単位・(Ⅲ)20単位です。いずれも1月につき算定します。
3区分の構造は褥瘡マネジメント加算と似ていますが、より段階的です。(Ⅰ)はプロセス、(Ⅱ)は結果が1つ、(Ⅲ)は結果が2つ。おむつが外れた、尿道カテーテルが抜けた、排尿・排便の状態が改善した——こうした具体的な変化が単位数に直結します。介護報酬のなかでもアウトカム評価が明確な加算です。
この記事では、指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)複合型サービス費のナと、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第71号の3の原文を確認して整理しました。
- 排せつ支援加算(Ⅰ)10単位・(Ⅱ)15単位・(Ⅲ)20単位の違い
- (Ⅱ)と(Ⅲ)で求められるアウトカムの中身
- (Ⅲ)は結果を2つ同時に満たす必要があること
- 評価するのが医師または医師と連携した看護師であること
- 3月に1回の評価・見直しという頻度
- LIFEへの提出と活用が要件に入っていること
- 在宅サービスでこの加算があるのは看多機だけであること
- 特別管理加算(Ⅱ)との関係
ちびウルフおむつが外れたら加算が増えるんですか? 難しくないですか。
リハウルフ簡単ではありません。ただこの加算が求めているのは、まず「要介護状態の軽減が見込まれるか」を医師の目で判断することです。見込みがある人にだけ、原因を分析して支援計画を立てる。全員におむつを外そうという話ではなく、対象を絞る仕組みが先にあります。
看多機の排せつ支援加算とは?
看護小規模多機能型居宅介護の排せつ支援加算は、排せつに介護を要する利用者について、要介護状態の軽減が見込まれるかを評価し、原因を分析して支援計画にもとづく支援を継続した場合に算定する加算です。告示126号 複合型サービス費のナに規定されています。
排せつの自立は、在宅生活を続けられるかどうかに直結します。夜間のおむつ交換が介護者の睡眠を奪い、限界を迎えて施設入所に至るという流れは珍しくありません。逆に、日中だけでもトイレで排泄できるようになれば、介護者の負担は大きく変わります。
この加算は、「おむつを使い続ける」ことを前提にせず、改善の余地を医学的に見立てて働きかけることを評価するものです。褥瘡マネジメント加算と同じく、在宅系サービスで設けられているのは看多機だけで、施設系と同じ枠組みが適用されています。
令和6年度介護報酬改定では、この加算の単位数・要件に変更はありませんでした。
排せつ支援加算の単位数
ナ 排せつ支援加算
注 イについては、(略)届出を行った指定看護小規模多機能型居宅介護事業所において、継続的に利用者ごとの排せつに係る支援を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。
(1) 排せつ支援加算(Ⅰ) 10単位/(2) 排せつ支援加算(Ⅱ) 15単位/(3) 排せつ支援加算(Ⅲ) 20単位
| 区分 | 単位数 | 評価しているもの |
|---|---|---|
| 排せつ支援加算(Ⅰ) | 10単位 | 評価・分析・計画・支援・見直しのプロセス |
| 排せつ支援加算(Ⅱ) | 15単位 | プロセス+アウトカム1つ |
| 排せつ支援加算(Ⅲ) | 20単位 | プロセス+アウトカム2つ |
3区分の併算定はできません。結果が積み上がるほど上の区分に上がる構造です。
排せつ支援加算の算定要件
(Ⅰ)10単位の3要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) 評価とLIFE | 利用者ごとに、要介護状態の軽減の見込みについて医師または医師と連携した看護師が利用開始時に評価し、その後少なくとも3月に1回評価するとともに、その評価結果等の情報を厚生労働省に提出し、排せつ支援の実施に当たって当該情報等を活用していること |
| (2) 原因分析と支援計画 | (1)の評価の結果、排せつに介護を要する利用者であって適切な対応により要介護状態の軽減が見込まれるものについて、医師・看護師・介護支援専門員その他の職種の者が共同して、排せつに介護を要する原因を分析し、それに基づいた支援計画を作成し、支援を継続して実施していること |
| (3) 計画の見直し | (1)の評価に基づき、少なくとも3月に1回、利用者ごとに支援計画を見直していること |
評価するのは医師または医師と連携した看護師
(1)の評価者は限定されています。介護職員や介護支援専門員だけでは評価者になれません。「医師と連携した看護師」でよいので、主治医と情報をやりとりしたうえで看護師が評価する形が実務的です。
看多機は看護職員が配置されており、訪問看護を通じて主治医との連携もあります。この要件を満たしやすい体制がもともと備わっているサービスです。
(Ⅱ)15単位=アウトカム1つ
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| (一) | 要介護状態の軽減が見込まれる者について、利用開始時と比較して排尿または排便の状態の少なくとも一方が改善し、かついずれにも悪化がないこと |
| (二) | 利用開始時におむつを使用していた者であって要介護状態の軽減が見込まれるものについて、おむつを使用しなくなったこと |
| (三) | 利用開始時に尿道カテーテルが留置されていた者であって要介護状態の軽減が見込まれるものについて、尿道カテーテルが抜去されたこと |
(Ⅱ)は(一)〜(三)のいずれか1つを満たせば算定できます。
(Ⅲ)20単位=(一)と(二)の両方
条文は「イ(1)から(3)まで並びにロ(2)(一)及び(二)に掲げる基準のいずれにも適合すること」としています。
- (Ⅰ)の3要件すべて
- 排尿または排便の状態が改善し、いずれにも悪化がない((一))
- かつ、おむつを使用していた方がおむつを使用しなくなった((二))
尿道カテーテルの抜去((三))は(Ⅲ)の要件に含まれていません。条文が挙げているのは(一)と(二)だけです。カテーテル抜去だけを達成した場合は(Ⅱ)にとどまる、という読み方になります。
アウトカムを取りにいく順序
| 区分 | 単位数 | 現実的な達成イメージ |
|---|---|---|
| (Ⅰ) | 10単位 | 評価と計画を仕組みとして回す |
| (Ⅱ) | 15単位 | 排尿・排便のどちらかが改善、またはおむつが外れる、またはカテーテルが抜ける |
| (Ⅲ) | 20単位 | 状態の改善とおむつの卒業を同時に達成する |
単位数の差は小さく、(Ⅰ)と(Ⅲ)で10単位です。金額のために取りにいく加算ではありません。
担当したケースでも、夜間のみおむつを使っていた方について、水分摂取のタイミングと就寝前のトイレ誘導を見直したことで、日中の失禁がなくなったことがありました。訪問で自宅のトイレまでの動線を見て、手すりの位置を変えたのが効いています。看多機は訪問・通い・泊まりのすべてで排泄場面に関われるため、原因分析の材料が多いサービスです。
他の加算との関係
| 加算 | 単位数 | 排せつに関する対象 |
|---|---|---|
| 排せつ支援加算 | 10/15/20単位(月) | 排せつに介護を要し、要介護状態の軽減が見込まれる方 |
| 特別管理加算(Ⅱ) | 250単位(月) | 在宅自己導尿指導管理を受けている状態、人工肛門・人工膀胱を設置している状態など |
| 特別管理加算(Ⅰ) | 500単位(月) | 留置カテーテルを使用している状態など |
告示に併算定を制限する定めはありません。尿道カテーテルが留置されている方は特別管理加算(Ⅰ)500単位の対象です。そのカテーテルを抜去できれば排せつ支援加算(Ⅱ)に上がりますが、特別管理加算(Ⅰ)500単位は外れます。
報酬の増減で判断する話ではありませんが、算定の切り替えが発生する点は事務として押さえておく必要があります。
排せつ支援加算の注意点
評価は全登録者に行う
(1)は「利用者ごとに、要介護状態の軽減の見込みについて」評価するとしています。排せつに介護を要する方だけを選んで評価するのではありません。支援計画の作成((2))は、評価の結果として軽減が見込まれる方に絞られます。
「原因を分析」が要件
(2)は支援計画の作成の前に「排せつに介護を要する原因を分析し」を置いています。漫然とトイレ誘導を計画に書くだけでは要件を満たしません。認知機能、移動能力、薬剤、住環境、水分摂取など、何が原因かを記録に残してください。
「継続して実施」が要件
(2)の末尾は「支援計画に基づく支援を継続して実施していること」です。単発の関与では足りません。
3月に1回は最低頻度
(1)の評価も(3)の見直しも「少なくとも3月に1回」です。状態が変われば都度対応する必要があります。
短期利用居宅介護費には加算されない
ナの注は「イについては」と書かれています。対象は看護小規模多機能型居宅介護費であり、短期利用居宅介護費には加算されません。
- 市町村長への届出を済ませているか
- 全登録者について要介護状態の軽減の見込みを評価しているか
- 評価者が医師または医師と連携した看護師か
- LIFEへの提出と活用を行っているか
- 排せつに介護を要する原因の分析を記録しているか
- 支援計画にもとづく支援を継続しているか
- 3月に1回の評価・見直しを記録しているか
よくある質問
看多機の排せつ支援加算はいくらですか?
(Ⅰ)10単位、(Ⅱ)15単位、(Ⅲ)20単位です。いずれも1月につき算定します。
(Ⅱ)の要件は何ですか?
(Ⅰ)の要件に加えて、排尿・排便の状態の改善、おむつの卒業、尿道カテーテルの抜去のいずれか1つを達成することです。
(Ⅲ)の要件は何ですか?
(Ⅰ)の要件に加えて、排尿または排便の状態が改善しいずれにも悪化がないこと、かつおむつを使用しなくなったことの両方です。
カテーテル抜去だけで(Ⅲ)になりますか?
なりません。条文が(Ⅲ)に挙げているのは(一)と(二)で、尿道カテーテルの抜去(三)は含まれていません。
評価は誰が行いますか?
医師または医師と連携した看護師です。介護職員や介護支援専門員だけでは評価者になれません。
評価は全登録者に行いますか?
行います。支援計画の作成は、評価の結果として要介護状態の軽減が見込まれる方が対象です。
評価の頻度は?
利用開始時と、その後少なくとも3月に1回です。支援計画の見直しも少なくとも3月に1回行います。
LIFEへの提出は必要ですか?
必要です。評価結果等の情報を厚生労働省に提出し、活用していることが要件です。
支援計画は誰が作成しますか?
医師・看護師・介護支援専門員その他の職種の者が共同して作成します。
特別管理加算と併算定できますか?
告示に併算定を制限する定めはありません。留置カテーテルを使用している方は特別管理加算(Ⅰ)の対象にもなります。
在宅サービスで他にこの加算はありますか?
看多機以外の在宅系サービスにはありません。地域密着型特養・特養・老健・介護医療院と同じ枠組みが適用されています。
短期利用の利用者にも算定できますか?
できません。ナの注は「イについては」とあり、対象は看護小規模多機能型居宅介護費です。
- 看多機の排せつ支援加算は(Ⅰ)10単位・(Ⅱ)15単位・(Ⅲ)20単位(1月につき)
- 対象はイ(看護小規模多機能型居宅介護費)で、短期利用は対象外
- 3区分の併算定はできない
- (Ⅰ)はプロセス、(Ⅱ)はアウトカム1つ、(Ⅲ)はアウトカム2つ
- (Ⅱ)のアウトカムは状態の改善・おむつの卒業・カテーテル抜去のいずれか
- (Ⅲ)は状態の改善とおむつの卒業を同時に満たす必要がある
- 尿道カテーテルの抜去は(Ⅲ)の要件に含まれていない
- 評価するのは医師または医師と連携した看護師
- 評価は全登録者に行い、支援計画は軽減が見込まれる方に作成する
- 支援計画の前に「排せつに介護を要する原因の分析」が必要
- 支援は継続して実施することが要件
- 評価も見直しも少なくとも3月に1回
- LIFEへの提出と活用が要件に含まれる
- 在宅系サービスでこの加算があるのは看多機だけ
- 特別管理加算との併算定を制限する定めはないが、カテーテル抜去で算定の切り替えが生じる
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第126号)別表「複合型サービス費」ナ、ワ、ネ(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準(平成27年3月23日厚生労働省告示第95号)第71号の3(地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護費、看護小規模多機能型居宅介護費、介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス及び介護医療院サービスにおける排せつ支援加算の基準)(厚生労働省法令等データベース)
- 厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年3月23日厚生労働省告示第94号)第6号(特別管理加算の対象状態)(厚生労働省法令等データベース)
※本記事の単位数・算定要件は、厚生労働省の告示にもとづいて整理したものです。実際の算定にあたっては原文および指定権者(市町村)の解釈をご確認ください。看護小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであり、指定・指導は市町村が行うため、解釈や運用が自治体によって異なる場合があります。とくに「要介護状態の軽減が見込まれる」ことの判断基準、排尿・排便の状態の改善を判定する指標、アウトカムを判定する時期、LIFEへの提出頻度については告示本文に明記がなく、留意事項通知および市町村の取扱いによります。所在市町村に確認してください。制度に関する記述は2026年8月時点の内容として整理していますが、その後の改定により取扱いが変わる可能性があります。実務に関する記述は、筆者の実務経験にもとづく整理であり、制度上の定めではありません。




